いつも生放送を見てくれている方はこんにちは。ブログだけの方はお久しぶりです。Hareruya Prosの井川です。
プロツアーの権利を得るために連戦に次ぐ連戦で、ついブログの更新を怠っていました。申し訳ありません。
さて今回は、この間のグランプリ・神戸2017で使用して12-3と好成績だった《死の影》デッキについて簡単に解説したいと思います。
死の影ジャンドを選択した理由
1 《沼》 1 《森》 2 《血の墓所》 1 《草むした墓》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《神無き祭殿》 4 《新緑の地下墓地》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《湿地の干潟》 1 《樹木茂る山麓》 -土地(18)- 4 《死の影》 4 《タルモゴイフ》 1 《熱烈の神ハゾレト》 4 《通りの悪霊》 -クリーチャー(13)- |
4 《コジレックの審問》 4 《思考囲い》 4 《ウルヴェンワルド横断》 3 《致命的な一押し》 1 《タール火》 2 《ティムールの激闘》 2 《終止》 1 《突然の衰微》 1 《コラガンの命令》 4 《ミシュラのガラクタ》 2 《ヴェールのリリアナ》 1 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(29)- |
3 《頑固な否認》 3 《未練ある魂》 2 《集団的蛮行》 2 《コジレックの帰還》 2 《虚無の呪文爆弾》 1 《湿った墓》 1 《古えの遺恨》 1 《大渦の脈動》 -サイドボード(15)- |
デッキの簡単な解説については、モダンデッキ案内の記事/動画をご覧ください。
- 2017/04/28
- モダンデッキ案内 -死の影ジャンド-
- 井川 良彦(Hareruya Pros)
元々、今回のグランプリではエルドラージトロンを使うつもりでした。しかし、練習すればするほど、一つの欠点が大きく浮かび上がってきました。
それは、親和とタイタンシフトにまったく勝てないことです。
エルドラージトロンが大流行し、トップメタと目されている現状、エルドラージトロンに強いこの2種のデッキもまたグランプリで台頭してくるだろうと思うと、エルドラージトロンで出るのは少しリスキーに感じました。
そこで白羽の矢が立ったのが、グランプリ・ブリスベン2017でも使用した、愛機ともいえる死の影ジャンドです。
《儀礼的拒否》の採用など、過剰に意識されていたエルドラージトロンとは異なり、グランプリ・神戸2017時点で僕が想定していたメタゲーム上で、不利なデッキが少ないアーキタイプだったからです。
有利 | 微有利 | 五分 | 微不利 | 不利 |
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※相性には個人差があります
エルドラージトロンには《死の影》《タルモゴイフ》のサイズが《難題の予見者》《現実を砕くもの》を上回るため盤面で押せますし、無限コンボ入りのカンパニーデッキにも《ティムールの激闘》やサイドの《集団的蛮行》《コジレックの帰還》で優位に立つことができます。
《瞬唱の魔道士》+《致命的な一押し》でこちらのクリーチャーを殲滅してくるグリクシスシャドウ/グリクシスコントロールや、手札破壊に耐性がありつつ除去もさして効果的でない発掘/リビングエンドにはどうしても苦戦を強いられますが、それらのマッチすら手札破壊からの《タルモゴイフ》《死の影》+《ティムールの激闘》という黄金パターンで相性差を覆すことも多々あるほど。
そこで、この弱点をできるだけ改善した死の影ジャンドこそがベストデッキなのではと思い、今回のリストを作り上げました(青白コントロールだけはどうやっても不利なので無視しました)。
工夫した点
今回のリストで特徴な点は以下の通りです。
メインに《熱烈の神ハゾレト》を採用
グリクシスシャドウやグリクシスコントロールへのキラーカードとして採用したのがこの《熱烈の神ハゾレト》です。
《グルマグのアンコウ》《黄金牙、タシグル》に対して一方的に殴ることができ、どんなサイズであろうとも《死の影》を止めることができます。そして一度盤面を止めたが最後、相手の残り少ないライフを「エンドに2点」だけで仕留めることになります。
とにかくグリクシス系にはほぼ「出せば勝ち」に近い性能があるので、他のマッチで多少腐るのも覚悟の上で、メインに1枚採用しました。この《熱烈の神ハゾレト》1枚の採用により、グリクシスシャドウとの相性が微不利から微有利まで改善できたと感じています。 弱いマッチアップのときは《ヴェールのリリアナ》で捨てましょう。
《頑固な否認》をサイドに採用
メインから《頑固な否認》を採用したタイプも回してみたのですが、黒緑ベース+赤(《ティムールの激闘》) / 青(《頑固な否認》)という4色なので、ドローしたフェッチランドの枚数依存で赤or青のどちらかしかサーチできなかったり、逆に赤青揃えたせいで緑緑が出ない(=《ウルヴェンワルド横断》から《タルモゴイフ》が即出せない)といったことが起きたので、あまり感触はよくありませんでした。ミラーマッチで《頑固な否認》が腐りやすいというのも個人的にはマイナス。
ですがこの《死の影》+《タルモゴイフ》という組み合わせと《頑固な否認》はとても相性がよく、特に《死せる生》や《集合した中隊》、そしてバーンの火力など、手札破壊だけでは防げない「トップデッキ」に対して蓋ができるのは非常に効果的だったので、サイドボードに採用することにしました。
また、苦手デッキであるリビングエンドや発掘にも効果的なので、弱点をうまく補うことができ、サイドボードとして100点でした。
サイドインするときは、「常に打つ対象に困らない(バーン、ストームを代表とするコンボデッキ)=3枚」、「対象は多くないが、その1枚が致命的になりうる(エルドラージトロン、《集合した中隊》)=2枚」という自分ルールでサイドインしていました。
《イーオスのレインジャー》の不採用、《未練ある魂》の採用
個人的にはこれもポイントです。
《ウルヴェンワルド横断》→《イーオスのレインジャー》を同一ターンにしようとすると5マナ必要=そんなに土地は伸びないので、基本的には「サーチするターン」と「出すターン」に分かれることが多いです。ですが、その間に《幽霊街》や《広がりゆく海》、《大爆発の魔道士》で《神無き祭殿》を失うと二度とプレイできなくなってしまいます。
サイドの《イーオスのレインジャー》《未練ある魂》パッケージは広く知れ渡っており、サイドボード後に土地を攻められることも多々あったので、《イーオスのレインジャー》は諦め《未練ある魂》のみに絞りました。
《未練ある魂》も《イーオスのレインジャー》同様《神無き祭殿》に依存しているカードですが、《未練ある魂》は3マナでプレイできる(《イーオスのレインジャー》よりも《神無き祭殿》をサーチせずに我慢するターンが短い)のと、仮に《神無き祭殿》を失っても《ヴェールのリリアナ》経由で墓地からプレイできる=完全に腐るわけではないのが大きな差です。
稀に黒赤緑の純正3色に絞って《未練ある魂》を採用していない死の影ジャンドのリストもありますが、これには大反対です。
特に《死の影》ミラーマッチやアブザン/ジャンド/グリクシスコンといった除去が多い消耗戦をするマッチアップで、《未練ある魂》の有無はそのまま勝敗に直結します。《未練ある魂》を抜くのは、これらのマッチアップを捨てているといっても過言ではないでしょう。
《森》の採用
マナベースについても1点だけ。
《森》が入っているリストと入っていないリストがあり、Magic Onlineでは《森》なしのリストが主流になっています。ですが、僕は《森》を採用する派です。
《森》が入っていないリストではフェッチランドが多めに採用され、よりスムーズに動く(黒+黒+黒が実現しやすい)ようになっています。初手に来てしまった《森》/《踏み鳴らされる地》はこの黒+黒のムーブの妨げになるため、減らしたいのもよく分かります。
ただし、モダン特有の《幽霊街》/《流刑への道》といったカードの存在や、バーン/親和といった高速マッチでの2点の重み、そして何より《血染めの月》耐性で大きく差がつくので、僕は常に《森》を入れるようにしています。
特に相手が《血染めの月》デッキの場合は、最悪《森》さえサーチしていれば《ウルヴェンワルド横断》から《沼》と動くだけで相手の《血染めの月》を無効化できるので、《森》が1枚入っているか否かだけで大きく勝率が変わるのです。
元々《血染めの月》デッキには相性があまりよくないため、《森》1枚と、その《森》をサーチできる5枚目のフェッチである《樹木茂る山麓》を採用することで、《血染めの月》への耐性を上げるようにしました。
サイドボーディングについて
最後に、簡易ではありますが、主要デッキに対するサイドボーディングは以下の通りです。
ただし、こんだけ書いておいてアレですが、《頑固な否認》をサイドボードに採用することを決めたのは前日の深夜(!)なので、少しサイドインアウトがおかしいものもあるかもしれません。あらかじめご了承ください。
VS 《死の影》(グリクシス/ジャンド)
In
Out
とにかく消耗戦をするマッチアップ。《未練ある魂》が一番輝くマッチアップでもあります。
《未練ある魂》ゲーを乗り越えられる《ティムールの激闘》は1枚残してもいいと思うかもしれませんが、大体は手札破壊で見られたり、そもそも盤面にクリーチャーがいなくなって手札に腐って負けるので、サイドアウトするのが無難です。
VS エルドラージトロン
In
Out
グリクシスシャドウと違って《タルモゴイフ》のサイズが《難題の予見者》《現実を砕くもの》より大きく頼もしいので、微有利なマッチです。
《大祖始の遺産》《虚空の杯》の両方に引っかかる《ウルヴェンワルド横断》と、最序盤しか機能しない《コジレックの審問》を減らして、万能除去とアーティファクト破壊、そして相手の《解放された者、カーン》《全ては塵》へのピンポイントカウンターを少量サイドインします。
VS 親和
In
Out
(※後手は《通りの悪霊》を1枚抜き、代わりに《思考囲い》を1枚多く残す)
メイン微不利ですが、サイド後は一転してかなり有利になります。
《未練ある魂》で相手の細かいクリーチャーをシャットアウトできますし、手札破壊しきれなかった/トップデッキされた《刻まれた勇者》すら《コジレックの帰還》で対処できます。
VS 《献身のドルイド》コンボ
In
Out
有利なマッチアップです。
相手の盤面はこちらの《死の影》《タルモゴイフ》に対してチャンプブロックしかできず、かつ1枚ではさして機能しないクリーチャーの山なので、手札破壊も除去も適度に刺さります。《ティムールの激闘》も効果的です。
サイド後は《集団的蛮行》で相手のクリーチャーを倒しつつ、手札の《集合した中隊》《召喚の調べ》《流刑への道》を抜けばゲームセット。
VS バーン
In
Out
火力のみの手札をキープしてくることも少なくないですし、相手の1マナクリーチャーに対して2マナ除去を打つ展開だとほぼ負けているので、重い除去はすべてサイドアウト。
逆に手札破壊をすべて残して、相手の好きなように火力を打たせない=こちらである程度ダメージコントロールをすることに注力します。
VS 発掘
In
Out
手札破壊は最初の1-2ターン目(《安堵の再会》《信仰無き物あさり》《傲慢な新生子》)にしか効かず、また除去も効果的ではないため、不利なマッチアップです。メインは《ティムールの激闘》での最速パターンに期待しましょう。
サイド後に《致命的な一押し》が残ってしまうのが、サイドインする枚数の不足を如実に表しています。もし発掘に対しての勝率を上げたい場合は、サイドボードの《虚無の呪文爆弾》を増やしたり、《コジレックの帰還》を《神々の憤怒》に変更することをおすすめします。
VS タイタンシフト
In
Out
非常に有利なマッチアップです。手札破壊が効果的で、かつ相手からの妨害もほぼないため、こちらの土俵で戦うことができます。
もしキルターンが遅くなりそうな場合は、素引き《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》で即死しないように、フェッチ+ギルドランドでのペイライフを控えてライフを7で止めておくとよいでしょう。
サイド後も基本的に有利ですが、《虚空の杯》だけは簡単に負け得るのでケアするように。
拙いデッキ解説ではありましたが、いかがだったでしょうか。
7月からはモダンのPPTQも始まりますし、少しでも参考になれば幸いです。
それでは、皆さんもよい《死の影》ライフを!
おまけ。
現在のプロポイントは14点。プロツアー『破滅の刻』の権利はなし。
残りのプレミアイベントはプロツアー『破滅の刻』地域予選、グランプリ・シドニー2017、そしてグランプリ・京都2017のみです。
井川、大ピンチ。
つづく。
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