プロツアー地域予選のトップ8マッチというのは、かなり特殊な空気感だ。
同じトップ8でも、自分と他の対戦テーブルに座った6人は、その時点で一切関係がない。目の前の対戦相手、ただ1人を倒せばプロツアーなのだ。
ましてドラフトともなれば、ランダムに席が決定した段階で、対面のプレイヤーが自分の対戦相手と決まってしまう。そこからドラフトのピックを行うのであるから、当然ピック戦略にも影響が出てくる。
「対面のあいつにだけ勝てるピックを」 そのような思いで荒井が組み上げたのは、白黒ゾンビ。これに対してYoungは赤白のアグロデッキを組み上げた。
いまここが、2人にとっての決勝戦。4つの決勝戦が並行して行われる中で、荒井とSanとの戦いが幕を開けた。
Game 1
《ネフ一門の鉄球戦士》→《束縛のミイラ》→《仕える者たち》と赤白らしい猛攻を見せるSanに対し、荒井は《むら気な召使い》からの《徹頭+徹尾》で《ネフ一門の鉄球戦士》を戦闘で打ち取り、さらに《呪われたミノタウルス》を展開して両者ともに主導権を譲らない立ち上がり。
Sanはなおも《アン一門の壊し屋》に《結束のカルトーシュ》を纏わせて「督励」アタックという強手に打って出るが、返すターンに《瘴気ミイラ》を出されてしまうと、強引な攻めの代償か、残り1枚の手札だった《投げ飛ばし》を捨てさせられてしまう。
さらに《アン一門の壊し屋》が「督励」で動けずターンを返すしかないSanに対し、荒井はきっちり《徹尾》でこれを破壊。
全てのクロックを失ったSanを、《呪われたミノタウルス》がゆっくりと介錯したのだった。
荒井 1-0 San
Game 2
3ターン目《アン一門の壊し屋》から《ター一門の精鋭》と強力な「督励」クリーチャーを並べていくSanに対し、荒井も《仕える者たち》《ター一門の精鋭》と場を固めて応えようとする。
だが、「督励」なしで殴ってきた《ター一門の精鋭》を鏡打ちでブロックしにいったところに《凶暴な力》を合わせられ、さらに《仕える者たち》を追加されると、次のターンにはダブル「督励」の大ダメージが約束された状況となってしまう。
Young San
さらに《研ぎ澄まされたコペシュ》まで追加されての総攻撃に対して、《仕える者たち》を2体並べてブロックの構えを見せる荒井だが、1体は《アン一門の壊し屋》の「督励」で無力化される。それでも、Sanの総攻撃に合わせて《力強い跳躍》でようやく《ター一門の精鋭》を打ち取り、継続的なクロックを排除することに成功したが、強烈な一撃を受けた荒井の残りライフはわずかに3。
やがてSanの戦場に《道拓きの修練者》が着地すると、ただ黙っていても負けるだけの荒井はダメ元のフルアタックを敢行するのだが、Sanの冷静なブロックを見て、3ゲーム目に移ることを選択した。
荒井 1-1 San
Game 3
《道拓きの修練者》スタートのSanに対し、《呪われたミノタウルス》から《枯死コウモリ》の速攻アタックと、先手の利を生かして攻め立てる荒井。
《平地》がなく動きの鈍かったSanも4ターン目にはようやくこれを引き込み、威迫持ちの《呪われたミノタウルス》に対して地上の守りを固めることで対抗しようとする。
《枯死コウモリ》の2点クロックは受けつつも、さらに《結束の試練》で地上の防壁を保ったまま反撃に出るSan。しかし、この攻撃をチャンプブロックでしのいだ荒井が、Sanの残りマナが《山》1枚で手札が1枚であることと、ライフが残り8点であることを確認する。
荒井 健一郎
そして《瘴気ミイラ》でSanの手札の《結束のカルトーシュ》を奪い去り、次のターンに再度の《結束の試練》でゲームを決着させるつもりだったSanのプランを崩すと、自身は手札2枚から《力強い跳躍》を捨てつつ、2枚目の《力強い跳躍》で《呪われたミノタウルス》を飛ばして《枯死コウモリ》とともに2体アタック!
……完全に「勝った」という表情の荒井。だがプロツアーがかかったゲームの最後の詰めということで気が逸ったのだろう、《枯死コウモリ》と《力強い跳躍》した《呪われたミノタウルス》の打点を足しても、7点しかない 。
Sanの反応からすぐにそのことに気づいた荒井。《瘴気ミイラ》を出さずに《力強い跳躍》を2枚打っていれば勝ちだったのだが、やってしまったものは仕方がないとばかりにターンを返す。
とはいえ、Sanもライフ1で手札ゼロ、《枯死コウモリ》が止まっていないため、飛行クリーチャーを止められるカードを引かなければ即負けとなる。しかしこの状況で、Sanには逆に引けば直ちに勝ちとなるカードがあった。《結束の試練》を使いまわせる上にブロッカーの《瘴気ミイラ》を排除できる、《激情のカルトーシュ》が。
引けばプロツアー。存在しないはずだった1ターン。この日のために積み上げてきたもの、全てを込めたSanの最後のドロー。それは。
……《道拓きの修練者》、だった。
荒井 2-1 San
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