SE Table 2: 加藤 健介(青白) vs. イトウ ミズキ(黒緑)

晴れる屋

By Atsushi Ito

 競技としてマジックに向き合うというのは、楽しいことばかりではない。

 どれだけの時間と情熱を捧げたとしても、必ず勝てるとは限らない。それだからこそマジックとも言えるのだが、本気で競技としてのマジックに向き合ったことがある者にしかわからない苦しみもある。

 BIGs所属、グランプリ・東京2016トップ8の加藤も、プロツアーの権利を得るためとはいえ、RPTQの参加権を獲得するべく毎週末各地のPPTQを遠征してまわる生活に、疑問を感じていたのだろう。

 RPTQを前にしての、全力のPPTQ行脚からの卒業宣言。

 だがマジックとは不思議なもので、一生懸命追っているときには結果が伴わないのに、諦めて吹っ切れた途端に結果が付いてきたりするのだ。

 そう、加藤はいま再びプロツアーの門を叩いている。グランプリ・東京2016の最終戦、台湾のトッププロ・Huang Hao-Shanと対戦したときと同じように。

 そしてそれは、対戦相手として向き合っているイトウにとっても同じことだ。あと一勝でプロツアー。飛行機のチケットは、もう手の届くところにある。

 自分こそがその舞台にふさわしいのだと、証明するために。

 青白の加藤と黒緑のイトウ。プロツアーの参加権をかけた、最後の戦いが始まった。

Game 1

 加藤の《突風歩き》に対しイトウが《苦刃の戦士》で応え、初動は互いに2マナ域の「督励」クリーチャーを出し合うというこの『アモンケット』環境の定番の展開でゲームがスタートする。

 続くイトウの《気性の荒いクーズー》《検閲》した加藤は《ター一門の散兵》を送り出すが、《横断地のクロコダイル》に走られ、返すターンに《排斥》してどうにか事なきを得る。

 一方のイトウは《突風歩き》《不帰+回帰》で除去しつつ《活力の模範》を展開、さらに加藤が《微光鱗のドレイク》を送り出して空から攻める構えを見せたところで、強力なレアである《名誉あるハイドラ》を降臨させる。

名誉あるハイドラ

 これによりダメージレース的に不利な状況に追い込まれた加藤だが、それでも構わず《微光鱗のドレイク》をレッドゾーンに送り出すと、一度は攻撃をもらいつつエンド前の《叱責の風》《名誉あるハイドラ》をバウンス。さらに続くターンに出しなおされたところでエンド前に《エイヴンの思考検閲者》を飛行のクロックとして追加しつつ、続くターンの攻撃は《猶予の侍臣》で一時的に防ぎ、教科書通りの地上と飛行のダメージレースで、このままいけば先にイトウを倒しきれるというところまで持っていく。

 だが、いよいよ《微光鱗のドレイク》《エイヴンの思考検閲者》がイトウの残りライフ5点を先に削り切ろうとしたところで、イトウの手札から放たれたのは《最後の報賞》。これにより《微光鱗のドレイク》が追放され、イトウはライフ3点を残して踏みとどまることに成功する。

加藤 健介

 こうなると逆に追い込まれたのは加藤。返す《名誉あるハイドラ》の攻撃は《オケチラの従者》でトランプル3点を受けつつチャンプブロックするものの、次の攻撃は防ぐ手段がない。《エイヴンの思考検閲者》が2回のアタックを通すために、加藤はちょうどあと1ターン、《名誉あるハイドラ》の攻撃を防ぐ必要がある。

 ゆっくりと引き込んだ加藤のドローは……2枚目の《猶予の侍臣》!!

 次のターン攻撃に向かわせた《名誉あるハイドラ》が追放され、最悪の局面で「猶予」を作られてしまったことを確認したイトウは、手早くカードを片づけた。

加藤 1-0 イトウ

Game 2

 《苦刃の戦士》《用心深いナーガ》《気性の荒いクーズー》と並べていくイトウに対し、加藤は《仕える者たち》《権威の殿堂》で守る構えを見せる。

 そのまま加藤が5マナを立ててターンを返したところで、イトウはゾンビ・トークンに加えて《苦刃の戦士》《用心深いナーガ》を両方「督励」でレッドゾーンに送り出し、ゾンビ・トークンを《猶予の侍臣》で失いつつも、《用心深いナーガ》《仕える者たち》にブロックされたところに《弱さからの脱皮》を合わせて戦線を打開しようとするのだが、さらに《叱責の風》を合わせられて地上の突破はかなわない。

 それでも、加藤が《威厳あるカラカル》で一息つこうとした返しで《活力のカルトーシュ》《気性の荒いクーズー》につけてすぐにこれを打ち取ると、さらに《巨大百足》を戦線に追加してなおも攻め手を緩めない。

 だが《権威の殿堂》が睨みをきかせている上に、加藤に2体目(!)の《威厳あるカラカル》を展開されてしまうと、いよいよ攻め入る隙がない。《最後の報賞》《弱さからの脱皮》を構えて無理矢理攻撃に行くが、加藤に適切な全力の複数体ブロックをお見舞いされ、これらのスペルを使わされる結果となってしまう。

イトウ ミズキ

 単身クロックを刻んでいた《エイヴンの思考検閲者》こそ《驚天+動地》するイトウだが、この時点で互いに呪文を使いつくし、盤面は完全に膠着。互いに9枚もの土地が並んだまま、引いたカードを出すだけのターンが続く。勝敗は、どちらが先に決め手を引き込むかに委ねられた。

 イトウが《大いなるサンドワーム》を引き込めば加藤は《強制的永眠》をこれに合わせ、加藤が《微光鱗のドレイク》を出せばイトウが《不帰+回帰》ですぐさまこれを対処する。

 だが地上が膠着している現状、均衡を崩す力は飛行クリーチャーを有する青白の方が強かった。加藤が《突風歩き》を引き込むと、イトウはこれを咎める手段がなく、「督励」で2ターンに1回、イトウのライフが3点ずつ削れていく。

 対して、この危機にイトウのライブラリーは応えない。ついに13枚目の土地を引き込んだとき、イトウのライフは残りわずか2点。

 《突風歩き》の「督励」アタックに合わせて《強制的永眠》つきの《大いなるサンドワーム》を生け贄に捧げて残り1点で耐え、これであと2ターン……と思いきや、加藤が戦闘後に《猶予の侍臣》で自らの《突風歩き》を追放するファインプレイを見せると、「督励」のタイムラグなく次のターンに致死アタックを受けることが確定してしまう。

 そして加藤の残りライブラリーが2枚となったところで。

 ついに勝者を祝福するべく、イトウが右手を差し出したのだった。

加藤 2-0 イトウ

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