Translated by Takuma Kusuzawa
※訳注: 原文は《霊気池の驚異》禁止前の6月8日に公開されたものです。
こんにちは!
もうご存知かもしれませんが、私が先日優勝したグランプリ・アムステルダム2017に持ち込んだのは、スタンダード最強である霊気池デッキではありませんでした。私がプレイしたのは、二週間前にGPトップ8を達成したShaun Mclarenの黒緑昂揚です。どうしてこのデッキを選んだのか、どうデッキをいじったのか、相手毎に大事なカードは何なのか。それが知りたいなら、ぜひ最後まで読んで下さい!
※画像はMAGIC: THE GATHERINGより引用しました。
コペンハーゲンでのモダンGPに参加できなかったので、次に私が参加できたのはアムステルダムでした。練習を始めるに際して、霊気池デッキを使いたくないと思っていたのですが、代わりの案を思いつけなければ使わざるを得ないとも考えていました。
プロツアーで霊気池デッキを使って6-4したときの4敗はすべてマルドゥで、MOCSでは4-4でしたが、ここでもマルドゥに良く負けました。皆が勝てている相手に何を間違え、なぜ負けているのか、分からないでいたのです。
結局原因が分からぬまま他のデッキにも負けるようになってしまい、もう次の大会ではいよいよ使いたくなくて、たくさんのことを試しました。
Sam Blackのトークンデッキ、《賞罰の天使》を軸にした色々なデッキ (良いところもあるのですが、《大天使アヴァシン》と競わないといけないのがネックでした)、《ギデオンの介入》デッキ、青赤コントロール、ティムール《電招の塔》に《牙長獣の仔》と《不屈の追跡者》をサイドボードに入れたもの、赤緑エネルギー、黒緑エネルギー、エスパーアグロ、そしてもちろん様々な霊気池デッキまで試しました。
GP直前の月曜の段階では黒緑エネルギーが一番手応えが良く、自分でも納得のいくプレイができましたが、そこで黒緑昂揚も試したくなったのです。何回かリーグで試して、昂揚を使おうという結論に至ったのです。
黒緑エネルギーは《牙長獣の仔》と《光袖会の収集者》を採用しているので、《残忍な剥ぎ取り》が入っている昂揚デッキに比べて二手目が強く、攻撃的なので霊気池デッキ相手でも相性が良いです。
黒緑エネルギーの問題は《緑地帯の暴れ者》や《逆毛ハイドラ》など、多くのカードのポテンシャルが低めなことです。昂揚型ならコントロール寄りのサイドボードも用意できますが、エネルギー型はアグロ以外の選択肢がありません。またエネルギー型はゲームが長引くと弱いカードが増えていきますが、昂揚型ではそういうことはありません。Thomas HendriksとIvan Flochに話をしたところ、昂揚がいいかもねと二人から同意を得て、皆で調整を始めたのです。
何回かリーグで試したところ、概ね4-1できてとても満足していたので、振り返ることをしませんでした。結局何が良かったのか誰も自信がなく、一番良いデッキの形とサイドボーディングを探していかないといけませんでした。
参考までに、まずはグランプリ・モントリオール2017のトップ8を取ったShaun Mclarenの使ったデッキから見てみましょう。
7 《森》 4 《沼》 3 《進化する未開地》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 -土地 (22)- 4 《歩行バリスタ》 4 《残忍な剥ぎ取り》 4 《巻きつき蛇》 3 《不屈の追跡者》 2 《ピーマの改革派、リシュカー》 1 《ゲトの血の長、カリタス》 1 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (19)- |
4 《ウルヴェンワルド横断》 3 《致命的な一押し》 4 《造反者の解放》 2 《不帰+回帰》 4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 2 《最後の望み、リリアナ》 -呪文 (19)- |
4 《精神背信》 2 《没収》 2 《不帰+回帰》 2 《ヤヘンニの巧技》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 1 《不屈の追跡者》 1 《豪華の王、ゴンティ》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード (15)- |
彼のリストはとても良く、試してみても変えないといけないところはほとんどなかったということをあらかじめ言っておきます。数日間色々と試し、論理立てていった結果、私とThomas Hendricksが使ったリストがこちらです。
6 《森》 5 《沼》 3 《進化する未開地》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 -土地 (22)- 4 《歩行バリスタ》 4 《残忍な剥ぎ取り》 4 《巻きつき蛇》 4 《不屈の追跡者》 2 《ピーマの改革派、リシュカー》 2 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (20)- |
4 《ウルヴェンワルド横断》 4 《致命的な一押し》 4 《造反者の解放》 2 《不帰+回帰》 3 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 1 《最後の望み、リリアナ》 -呪文 (19)- |
4 《精神背信》 2 《豪華の王、ゴンティ》 2 《闇の掌握》 2 《没収》 2 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 1《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《不帰+回帰》 1 《最後の望み、リリアナ》 -サイドボード (15)- |
Ivanはこのリストから《新緑の機械巨人》を1枚《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》に、あとはサイドボードの《精神背信》を1枚《ゲトの裏切り者、カリタス》に変更しています。
私たちのリストとShaunのものを比較するとわかりますが、変更したのはほんの少しだけです。ここからは変更した理由について、説明していきましょう。
4枚目の《致命的な一押し》
《致命的な一押し》は多くのデッキ相手に強く、霊気池デッキ相手でも《導路の召使い》などに打てば使えないことはありません。青赤コントロールが相手だと邪魔でしかありませんが、青赤コントロール自体はそんなにいないだろうと踏んでいました。
Magic Onlineでは多くの人がエネルギーアグロ(赤緑、黒緑、青赤緑)を使い始めていて、彼ら相手には最高の一手です。このデッキは長いゲームでも強いので、強いカードを打てるときにいつでも使えることが大事です。1マナの除去呪文はそんなときに一番心強いのです。
4枚目の《不屈の追跡者》
ミッドレンジのデッキならこれ以上にいいカードありません。Shaunが3枚しか入れない理由も理解できて、4枚目の《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を入れることで、デッキをもっとアグレッシブにしたかったからだと思っているのですが、マナフラッドしないようにしたいのと、デッキに一貫性をもたせたかったので、4枚目を投入することに決めました。
《ゲトの裏切り者、カリタス》を不採用
カリタス自体はとても好きなんですが、残念ながら今は入れたいカードではないと思っています。生き残れば強いのですが、環境に良い対策カードが多すぎるのです。《致命的な一押し》、《蓄霊稲妻》、そして《栄光をもたらすもの》は特に厄介で、4マナも使ってクリーチャーを出しても、盤面に何の影響を与えられぬまま懲らしめられてしまいます。
《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を3枚に
《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》と《巻きつき蛇》を出すのはこのデッキで一番強い行動です。5マナで4/5のクリーチャーとプレインズウォーカー、それに他のクリーチャーにも+1/+1カウンターを2つずつ乗せられるのは、ただただ強いです。それだけに多くの人が4枚入れるのもわかりますが、飛行クリーチャーが多いデッキなど相性の悪いデッキがあったり、《巻きつき蛇》がいないときや大きな脅威がいる場合には心許なく、何よりまとめて2枚引いたときは目も当てられません。
こういった理由もあって、1枚減らして代わりに《新緑の機械巨人》の2枚目を入れることにしました。《新緑の機械巨人》であれば、《巻きつき蛇》との強い動きがありつつも単体で強いですし、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》を2枚引くよりもそれぞれ1枚ずつ引いたほうがよいでしょう。
《新緑の機械巨人》を2枚に
機械巨人については先程も触れましたが、2枚に抑えていることについてはここで補足します。1枚入っていた段階で、道中で引き込む強さには気付いていましたが、やはり5マナのカードなのでたくさんプレイできるわけではなく、手札で何枚もつっかえてしまうのは避けなければならなかったのです。
《新緑の機械巨人》は最近Magic Onlineで良く見かけるようになったエネルギーデッキに相性がよいです。エネルギーデッキには《牙長獣の仔》や《逆毛ハイドラ》のようにそこそこ大きくなるクリーチャーが入っていますが、機械巨人はそれを上回るサイズになるので地上を攻撃するのはかなり難しくなるはずです。
《最後の望み、リリアナ》を1枚に
1ゲーム目は速いターンでゲームに勝ちたいのですが、リリアナはこういう戦略のときには合いません。ゾンビデッキやマルドゥなど相性のよいデッキもいるので、2枚目を入れておきたいのですが、1ゲーム目は流れるように動けるようにしたかったのです。1枚引く分には何かしらいい動きをするのですが、最強である霊気池デッキには強くないので、サイドボードに2枚とも下げてしまうのもいいんじゃないかと思います。
《森》を6枚、《沼》を5枚に
このデッキは黒黒が必要なことが多くて、森ばかりでつっかえてしまうことがあるとThomasがすぐに気付き、土地の枚数を変更していました。サイドボードに《闇の掌握》を2枚入れてからは、私もそう結論付けるのまで長くありませんでした。
《ウルヴェンワルド横断》と黒の土地だけではマリガンしないといけないので、一貫性が少し失われていますが、緑の出る土地が17枚入っていれば十分だと思います。
サイドボード
《闇の掌握》を2枚に
サイドボードの中で一番良い選択肢です。何度も言いますが、エネルギーデッキは長いゲームでは対抗できないため、《牙長獣の仔》や《通電の喧嘩屋》、《光袖会の収集者》などの軽くて強いクリーチャーであなたを圧倒しようとするので、速やかにこれらに対応しないといけません。
除去できるカードが少ないので、《栄光をもたらすもの》が現環境で一番厄介な相手ですが、《闇の掌握》は5ターン目に出るこのクリーチャー殺しなドラゴンを大きなテンポロスへと変えることができるのです。3枚目を入れてもいいと思います。
《豪華の王、ゴンティ》を2枚に
動きの遅い相手には広く強いカードでありながら、他に良い対抗策のない《逆毛ハイドラ》に対する切り札ともなります。
《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を1枚に
マルドゥ、特に《呪文捕らえ》の入った青いバージョンに良いです。相性を改善したかった赤緑や青赤緑のエネルギーデッキにも強いです。
《ヤヘンニの巧技》を0枚
ゾンビデッキと白単、白赤の人間デッキ相手に強いのですが、使う人が多くないと思われたので、削りました。もし使う人がまた増えれば、2枚入れ直すべきでしょう。
《領事の旗艦、スカイソブリン》を0枚に
サイドボードの中でもよい一枚で、とても強く、解答を用意しにくいです。《蓄霊稲妻》以外にはほぼアーティファクト破壊しか対抗策がなく、黒緑ミラーやマルドゥ相手の有効打になります。
問題は、すでに《新緑の機械巨人》《墓後家蜘蛛、イシュカナ》と5マナのカードを増やしてしまっていて、デッキ内に多くても4枚に抑えたいので、抜くことにしました。また《墓後家蜘蛛、イシュカナ》などのクリーチャーを1枚差すと、《ウルヴェンワルド横断》のおかげで擬似的に5枚追加できているとして考えられますが、クリーチャーでないカードを1枚だけ増やしてもほとんどお目見えできないだろう、というのも理由の一つです。
サイドボーディング
ティムール霊気池
このデッキとは相性が五分で、相手がどのタイプの霊気池デッキでサイドボードをどうするか次第です。1ゲーム目はあなたが倒し切るのが先か、相手が《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をどうにか唱えるのが先か、という純粋なスピード勝負になります。黒緑デッキは、《造反者の解放》を構えながら《残忍な剥ぎ取り》か《巻きつき蛇》に対応されないまま殴りきる、などの速い動きが可能です。
霊気池相手にはこういう動きが理想で、こうなると対戦相手はウラモグを一回目の起動で当てないと、手遅れになるか霊気池が壊されてしまいます。ただ、こちらの引きが振るわなくて、相手のコンボが間に合う隙を与えてしまう事も残念ながらあるでしょう。
サイドボードの後はもっと良くなって、基本的には霊気池側のプランをもう少しうまく丸め込むことが出来ます。相手のデッキには《不屈の追跡者》や《天才の片鱗》、《反逆の先導者、チャンドラ》など他にも強いカードが入っているので、霊気池を《没収》したとしても負けてしまうこともあるでしょう。
それでもダラダラとしたゲームであれば、あなたにアドバンテージがあるはずなので、霊気池を対策することをまず優先して、残りのフェアなゲームを超シナジーで勝ちきりましょう。
ただ、これはいつも通り気にするべきことですが、かっちり決まった変更というのは存在しなくて、相手のデッキの型やサイドボードに合わせて、自分のサイドボードも調整するのを心がけましょう。
先手であれば、大体このような形で入れ替えます。
VS ティムール霊気池
Out
In
後手ならば、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》を入れずに《造反者の解放》を残しておきます。
赤緑《静電気式打撃体》
この対戦では生き残ることがすべてで、長いゲームになれば基本的には勝てるはずです。例えば、《歩行バリスタ》を「X=0」でプレイすることで《残忍な剥ぎ取り》の昂揚を達成し、《通電の喧嘩屋》と相打ちが取れるようにするなど、相手のペースに合わせてできることを全てやりましょう。
相手がほとんど意味のない強化スペルを引いている間に、強力なカードが勝ちへ導いてくれるはずなので、カードアドバンテージは大きな問題じゃありません。なので、特に大事なカードは《致命的な一押し》と《巻きつき蛇》になります。
前者は一対一交換をすることでテンポアドバンテージを稼げますし、後者は相手が除去を十分に持ってないがゆえに生き残り、ひどいことをして圧倒してしまえます。対戦相手のベストなカードは《不屈の神ロナス》と《栄光をもたらすもの》です。こちらのデッキにいい答えがあまり入っていませんし、これらとは速さを競わないといけなくなることがあります。
《逆毛ハイドラ》が鬱陶しく感じられるかもしれませんが、《新緑の機械巨人》か《巻きつき蛇》と何かがいれば、攻撃されなくなるくらいには大きいクリーチャーを作ってくれているでしょう。ただ《放たれた怒り》や《投げ飛ばし》には気をつけましょう。私自身、負けるはずないと思ったところから《投げ飛ばし》を打たれ、そのときはブロックするクリーチャーの数が少なくて負けてしまいました。皆さんはこんなことにならないよう気をつけてください!
VS 赤緑《静電気式打撃体》
ミラーマッチ
片方が《残忍な剥ぎ取り》か《巻きつき蛇》をたくさん叩きつけるか、もし膠着状態になったのなら《不屈の追跡者》をたくさん引いた方の勝ちになります。《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》は除去としてだけではなく、他の難しい盤面で勝ちきることもできたり、良い動きをします。
《豪華の王、ゴンティ》も同じです。イシュカナが欲しいかもしれませんが、《新緑の機械巨人》の方が良いと思いますし、5マナのカードをそれほど多く引きたいとは思いません。《最後の望み、リリアナ》もいい動きをすることがありますが、今のところはそこまで良く感じませんでした。私はこんな感じに変えています。
VS ミラーマッチ
青赤コントロール
1ゲーム目は、終盤の《さまよう噴気孔》を殺す以外にできることがない《致命的な一押し》が4枚も入っていて、悲惨なことになります。私からできるアドバイスは、そんなリスクを取ってでも4枚入れておくべきだということです。
《奔流の機械巨人》を出されればどのみち厳しい盤面なのであれば、相手が6マナ残していて《造反者の解放》を持っていなかったとしてもアタックすると良いでしょう。アタックしなくても事態が好転することはないですし、ただ相手にドロー呪文を重ねる余裕を作るだけです。
覚えていて欲しいのは、相手はドロー呪文を4マナ残して打ちたいと思っていることで、切り札はその上で切るタイミングを選びましょう。《検閲》のことは気にしないでプレイすることが多いですが、プレインズウォーカーのような、解決したら対処が難しいスペルのときは意識します。
サイドボード後は彼らよりすごく良くなりますが、相手にも《氷の中の存在》や《栄光をもたらすもの》のような勝ちプランが加わっているので、それらを意識した除去を増やす必要はあります。
《巻きつき蛇》は青赤相手だとあまり良くなくて、放っていても他のカードを対処すればいいと思われてしまいます。2/3では相手を倒しきるのに時間がかかりますし、《氷の中の存在》に立ちはだかられることも多々あります。欲しくなったときにサーチできるよう1枚だけ残しておきますが、気にせず《歩行バリスタ》に変えてしまった方がいいかもしれません。
VS 青赤コントロール
Out
In
この記事を読んで黒緑昂揚について何かしら得るものが皆さんにあって、今後のトーナメントで結果を残せるよう願っています。
ここまで読んでくれてありがとう。
Lukas Blohon
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