By Kazuki Watanabe
昨日発売された、『破滅の刻』。この環境はまだまだ始まったばかりだが、練習会に参加しているプレイヤーたちの手によって、少しずつ環境の理解が進んでいく。
ドラフトで勝利するために必要なのは、「抱負な経験」と、それに基づく「環境理解」だ。
『破滅の刻』が発売されたことで、ドラフトには大きな変化が生じた。この練習会はその変化を確認し、環境を理解するためのものである。解明までにはまだまだ時間がかかるが、プロプレイヤーが持つ環境初期の“第一感”には、貴重な思考と感覚が詰まっているはずだ。
そこで今回は、リミテッドの達人である殿堂プレイヤーの中村 修平に話を伺った。
ドラフト練習会中は、ほとんど休憩を取ることなくピック、そして対戦が行われる。その合間のわずかな時間に、「『破滅の刻』ドラフトの第一感」を聞いてみよう。
環境の基準は、”タフネス4″
――「まず、この環境の雑感を教えていただけますか」
中村「そうですね……タフネス4が基準、という印象が強いですね。タフネス4をどうやって突破するかが、この環境では重要だと思います。シンプルにパワーが4以上のクリーチャーの評価も高めです」
――「なるほど。具体的に、どのような意味で”基準”なのでしょうか」
中村「たとえば、《忘れられた王族の壁》。このクリーチャーはよく見かけると思うのですが、突破するのに手間取ることも多いと思うんですよ」
――「そうですね。延々と1点ダメージを飛ばされつつ、こちらの攻撃は受け止められてしまう、という状態になりがちです」
中村「そういった場合、突破するために複数のカードを投入することになりがちですよね。コンバットトリックを使用したり、除去呪文を使用したり。すると、その後に展開してくる強力なクリーチャーを除去できなくなるんです」
――「結果、その強力なクリーチャーにやられてしまう、と」
中村「そういうことですね。なので、アグロ気味に組むならば、どうやって手札を過度に使用せずに突破するかが重要です。逆に、コントロール気味で壁に頼るのならば、突破された場合の二の矢……言わば“後の後”を考える、といったところでしょうか」
『アモンケット』の評価は?
――「なるほど。ありがとうございます。では、『アモンケット』3パックを使用していた頃と比較すると、どのような印象をお持ちですか?」
中村「全体的なカードパワーは下がったと思いますね。『アモンケット』が強すぎた、という意味でもあるんですけど。そういった中で、やはりタフネス4の重要度は上がった印象です」
――「ここでもその数字が重要なわけですね。評価が下がったカードはありますか?」
中村「当たり前なのですが、《活力の試練》を始めとする試練サイクルでしょうね。カルトーシュをピックできる可能性が当然低いので、試練は一度盤面に出したら終了、という一期一会になりがちです」
――「各色のカルトーシュの評価はいかがですか?」
中村「複数ピックできる可能性は減りましたが、カルトーシュ自体の評価はそこまで落ちていないですね。たとえば、黒の《野望のカルトーシュ》の評価は上がったと思います」
――「そうなのですね。それはどういった理由なのですか?」
中村「タフネス4が重要でありながら、この環境にはタフネス1のカードも多いんです。なので、-1/-1カウンターが除去の役割を果たしてくれる場面も増えました。《猛火の斉射》の評価も上がっていると思いますね。盤面を一掃できる可能性もありますから」
と、ここで次のラウンドが始まった。中村はいつものように颯爽と、「じゃあ、今回はこれで」と告げてドラフトテーブルに向かった。
中村は、自身の対戦が終わると各テーブルを回って参加者と積極的に意見を交換していく。そこで交換されるものは、プロプレイヤー同士の対戦によってもたらされた経験だ。
時に耳を傾け、時に意見を述べながら、第一感を、思考を研ぎ澄ましていくトッププロたち。
さて、次のラウンドが終わったあとは、どのような”経験”が共有されるのだろう?