『破滅の刻』ドラフトの感覚 -熊谷 陸が語る環境の変化-

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 練習会では、長時間の休憩が取られることはない。ほぼノンストップで、ドラフトが行われている。

 早めに対戦が終わった者同士で意見交換をし、別の卓の対戦を眺め、終わったら再び意見交換。互いのピック、構築、そして対戦中の選択について議論を交わしている内に次の対戦が始まり……と、まさにドラフト漬けの時間が流れている。

 実戦、そして議論を繰り返す中で研ぎ澄まされ、『破滅の刻』ドラフトに対するプロプレイヤーの感覚にも少しずつ変化が生じているようだ。

 今回は、Hareruya Hopesの熊谷 陸に話を伺った。

 熊谷は『アモンケット』のリミテッドで行われたグランプリ・北京2017で、見事トップ8に入賞を果たしている。

 この練習会は、昨日、つまり発売翌日から始まった。その練習会までに、

熊谷「ドラフトは、友人たちと、それからMO……合わせて10回ほどやりました」

 とのこと。実戦と議論の中で、熊谷の持つドラフトの感覚は、どのように変化しているのだろうか?

熊谷が語る、「小型クリーチャーの質」

――「早速ですが、熊谷さんの中で『練習会までの10回と現在』を比較すると、この環境に対する印象に変化はありましたか?」

熊谷「少しずつ変わってきていますね。当初は、軽いクリーチャーを揃えてビートダウンする速いプランがしっくり来ていたのですが、練習会のラウンドが進むに連れて『重いカードで決定打を決めた方が良い』という風に変わってきました」

――「速さよりも重さ、ですね。そのように変わった理由について、少し詳しく教えてください」

熊谷「端的に言ってしまえば、『破滅の刻』と『アモンケット』のクリーチャーの質が違うからですね。特に、小型クリーチャーの質が大きく異なるんです」

――「熊谷さんがこの環境で最初にしっくり来た”速いプラン”で用いるクリーチャーたちですね」

熊谷「そうですね。このプランは『アモンケット』のドラフトでも有効なプランだったのですが、『アモンケット』が1パックになったことで、『督励』と『不朽』を持つ小型クリーチャーが減りました。その影響ですね」

ネフ一門の鉄球戦士エイヴンの修練者

――「なるほど。そういったクリーチャーをピックできることが減ったわけですね」

熊谷「はい。なので、小型クリーチャーの質は全体的に下がっています。相手の防衛線を突破することが難しくなっているので、単純に速いプランを選択するだけでは攻めきれない、勝てないという状況が増えたように思います」

――「そして、少し重めのプランの方が良いのでは? となったわけですね」

熊谷「そうなりますね。ただ、速いプランが有効な可能性が完全に消滅したわけではありません。『クリーチャーの質が下がった』といいうのはプレイヤーの共通認識でもあると思うので、軽めのカードが流れて来やすい状況でもありますから」

この環境で重要なことは?

――「では、そういった状況の中で、熊谷さんから読者に向けて、この環境のドラフトで勝利するため、楽しむためのアドバイスはありますか?」

熊谷「当たり前なのかもしれませんが、レアを活かすことでしょうか。全体的なカードパワーが下がっているとは言え、レアの強さは揺るぎませんので」

――「なるほど。”レアを活かす”、つまりレアが使えるデッキを構築する、ということですね」

熊谷「そうですね。レアの中には、1枚でゲームを決めてくれるものもあります。しかし、それ1枚だけでゲームができるわけではありません。重たいレアカードは、唱えるまで時間が必要ですからね」

蝗の神王神、ニコル・ボーラス霰炎の責め苦

――「たしかに、《王神、ニコル・ボーラス》をピックできても、プレイする前に負けてしまっては意味がないですよね」

熊谷「なので、レアを取ったら、そのレアを使えるようなデッキをしっかりと思い描き、漠然とピックするのではなくて、その”完成形”を目指したピックを心がけてみると良いと思います。そして、ピック中は『自分の完成形に必要なカード』『レアを活かせるカード』を逃さず、プレイ中はそれぞれを有効活用することが重要だと思います」


 練習会を経て、熊谷の感覚には少しずつ変化が生じている。対戦を終えてからも積極的に意見を交換している姿を見る限り、その変化は現在も進行中だ。

 これまで有効であった速いプランの決定力不足を実感し、じっくりと重さを活かす。とはいえ速いプランの可能性を安易に捨て去ることなく、熊谷は次のドラフトへ。ピック中は「レアを活かす」という意識を持ち、次の勝利へと向かう。

 練習会の時間は残りわずかだが、熊谷の変化が留まることはないであろう。その変化の先にあるのは、この環境でのグランプリ、そしてプロツアーでの勝利に違いない。

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