齋藤友晴のGPワシントンDCレポート

齋藤 友晴


GPワシントンDCに参加してきた。

前回のGPシカゴからそのままアメリカに滞在しての連戦。


シカゴ終了後の月曜日、国内線の飛行機で次の会場近くにあるホテルに移動した。「このホテル、最近も来た気がするな」と思って調べたら、やっぱり半年前のレガシーGPで来てたらしい(笑)アメリカらしく広くてのどかな場所で物価も安い。レストランも多く、裏手はスーパーだったので快適に滞在できた。


1番多く利用した飲食店は、ランチビュッフェをやっていたメキシコ料理屋。


「ランチビュッフェといえば食べ放題。食べ放題といえばフードファイト!」


という発想から、さぞ大食漢がいるのだろうと期待したが……

果たして本場アメリカのフードファイターには出会えなかった。



ちなみに世の中にはこういう店もある。





ここは晴れる屋トーナメントセンターから高田馬場駅に背を向け奥に5分ほど歩くと見えるシチズンボウル付属のカフェのランチビュッフェだ。1000円弱と安くはないものの、色んな素朴で美味しいものがたらふく食べられるからたまに行く。置いてある料理の種類は多くない代わりに、なくなったら違う料理と入れ替わる珍しいシステムで、いつでも食べ放題を楽しめる。割とおすすめだから気になる方はぜひ試してほしい。


高田馬場はそこそこに、ワシントンDCに話を戻そう。


滞在した週初めの月曜と火曜は、GPシカゴ中に溜まったデスクワークを進めつつ、疲れがたまっていると感じたのでリラックスをテーマに過ごした。

今回のGPワシントンDCのフォーマットは触り慣れたテーロスブロックのリミテッドだったけど、

環境末期は練習や戦略で差がつきにくく、相対的に参加時のコンディションの重要度が増すと考えていたため、体調を整えることをいつもより重視した。

そこで、スーパーで食糧を買い込んだり、ホテルのプールに行ったり、テレビでワールドカップを観戦したり、ダウンタウンまでうまい飯を食いに行ったり酒を飲んだりと、のどかで有意義な時間を過ごして英気を養った。


普段の海外GPへの遠征は、

木曜日に現地について、そのまま金曜日から日曜日まで沢山の仕入れと試合で駆け抜けて、月曜日には帰国する

という過密スケジュールだから、現地入りが早く、余裕を持って参加できる今回のGPの結果には期待が持てた。


続く水曜日と木曜日は部屋でMOでの練習を盛んにした。同行していたナベ(渡辺 雄也)との意見交換もそれなりに行った。


金曜日は仕入れを行い、土曜日の本戦は珍しくスリープインスペシャルを利用して参加した。GPシカゴからの2連戦で仕入れの進捗は上々だったし、環境末期であるゆえに技術差がつきにくいという理由もあり、

「心身ともにベストコンディションで参加する」ことこそが今回の第1テーマだったからだ。





初日のシールドデッキがこれ。

対象取るカードと決め手が不足していた「白青英雄」に緑のパワーカード3枚をタッチした形。カードパワーには問題ないものの、マナサポートはあったけどそれでも3色だということでの減点は大きく、中の中か、中の上程度のデッキだったと思う。

優良アンコモンである《難局》がエース。

このデッキでの初日の成績は、極端な事故にも見舞われたが7勝2敗(不戦勝3回)と、予想から遠からずの成績に落ち着いた。

最近のGPは参加人数の増加に伴い、2日目に進出しても初日に2敗していると厳しいことが多い。単純にプレーオフに進出するには最低でも2日目に全勝する必要があるし、前週のGPシカゴで自分が経験した(泣)ように最終的に2敗でも参加人数が多いとトップ8に残らないこともある。

とにかく全勝しばりとなったドラフト。

今回の戦略は以下のものだった。



ここまでの経験で自分の中で強い色の組み合わせは上から順に、

赤黒
青緑
“超えられない壁”
赤白
青黒


この4つのアーキタイプのなかに2つずつクレジットされている「赤」「黒」「青」への意識をあげて、ドラフト中の情報の機微に合わせる「受けドラフト」をベストコンディションで行うこと。


かなりシンプルな戦略だ。


『ニクスへの旅』が発売されてからおよそ2ヶ月が経った。

同じ環境だったGPアトランタで準優勝した赤戦略ではなく、今回は3色を軸にした「受けドラフト」を徹底することにした。

これは環境初期に有効だった赤戦略は、周囲のプレイヤーよりも早く認識したこそ効果が高いもので、環境終盤を迎えた現在ではもう賞味期限切れが近いと考えていたから。



そして1回目のドラフトを迎えた。






デッキは1番強い組み合わせだと思っている赤黒になった。

初手パックは弱めで《脳蛆》《貪欲なるレウクロッタ》の2択だった。


脳蛆貪欲なるレウクロッタ



「赤」「黒」「青」を重視するという指針に従って黒いカードである《脳蛆》をピックすると、そのまま流れが良かった黒を固め取ることができた。

2色目には候補として白と赤があがったが、これまた重視する3色を指針に「赤」を選ぶと『神々の軍勢』でおいしいカードにありつくことができた。

3パック目には《アスフォデルの灰色商人》2枚も出現する幸運にも恵まれて強いデッキができあがった。


このドラフトでの上家は、世界最強の一角であるオーウェンで、彼とはいきなり初戦でマッチアップすることになった。
彼のデッキは青緑で、自分の赤黒と綺麗に強い色を棲み分ける形となっていた。全力で臨んだものの、お互いにデッキが強く、1-1からのマリガン+事故で敗北してしまった。

この段階でもう、

トップ8の目はなくなった。

つまり、自分のプロポイントの状況的には、トップ16で1点上乗せすることを目指すほかなくなった。このトップ16についてもオポーネント合戦になるので、2日目の初戦を敗北でスタートしたことで厳しく思えた。

でも、自分の目標の一つには「生涯獲得プロポイント世界一」がある。

トップ8には届かなくても、トップ16も厳しそうでも。

早々と芽を摘まれたこんな時でも長く楽しめるから、大きな目標を持っていてよかったな、と思う。

その後はデッキの強さでサクッと2連勝して、このドラフトは2-1でフィニッシュした。


2回目のドラフトのデッキは以下のもの。





初手は強いけど重い《惑乱のセイレーン》を渋々ピック。

惑乱のセイレーン



また対抗馬が《貪欲なるレウクロッタ》しかなかった(笑)

2手目弱めのパックから《ニクスの注入》をピックし、

3手目は《ニクスの注入》《壮大な英雄譚》で、《ニクスの注入》を重ね黒を固めた。


ニクスの注入壮大な英雄譚



しかし、ここはピックミスだった。

たしかに《壮大な英雄譚》はパワーカードだが、その強さにしては評価が低い人が多い。そのため、このカードが3手目まで流れてきたことを「緑が空いている」というシグナルだと受け取ることは危険だと思ってしまった。

ただ、どちらかと言えば3手目《ニクスの注入》のほうが当てにすることはできなかった

この環境は上家と取り合っても強いと言える色はなく、少なくとも黒は違うから、自分が採ろうとしていた「受けドラフト」戦略を全うするならば、リスクを減らすために《壮大な英雄譚》をピックして手を広げるべきだった。《ニクスの注入》を取ってしまったことで、上家が黒をやっていたら最悪かつ単純にカードパワー損なピックをしてしまった。

結果的には最悪の展開は免れ、初手でピックした青が以降に全く見えず、黒と緑の流れがともに良かったため緑黒に落ち着くこととなった。

順当に2連勝することはできたものの、最終戦で青黒の「こってりコントロール」に一歩及ばず負けてしまい、

2回目のドラフトも2-1と悔しさが残る終わり方となってしまった。



これでトータル11勝4敗の58位で、プロポイントを1点(キャップされているから今シーズンは不参照)と少しばかりの賞金を獲得して終了となった。




第1テーマでもあった「ベストコンディションで臨めた」こともあり、2回目のドラフトでの1手のピックミス以外は万全だったが、結果は寂しいものだった。運要素的には普通か若干下振れ程度での成績だ。

これが意味することは、やっぱり「環境末期は差が少なくなって厳しい」ということだ。

特にリミテッドではなおさらだと感じた。

当たり前のことだけど、みんなが環境に慣れれば慣れるほど、その中で秀でることは難しくなる。


構築では、メタゲームが成熟しつつあっても、使われていないカードやデッキで隙をつくことは珍しくなく、メタゲームがローテーションし続ける環境もあるから、期間内で成熟しきらないこともある。


リミテッドも数年前までは成熟しきることは珍しかったが、プレイヤー層全体の経験値がどんどんあがりつつ、近年ではインターネット上の情報共有が進み、戦略や点数付けが浸透しやすく期間内に成熟しやすくなっている。


自分が成熟した中で突出できる戦略を見つけ出せなかったことは確かに敗因のひとつだが、それを見つけにくい状況だったことも理解している。


だからこそ、


おそらくプロの中では平凡でしかない戦略であっても、無理をせずに心身のコンディション調整を優先して臨んだ。

GPワシントンDCという単一のトーナメントで見て、今回の戦略に悔いはない。

ピックミスの1手ぐらいは、誰にだっていつだって起こりうる。

こうやってブログで振り返ることで整理されたものは、もっと大きな視点の要素だと思っている。


■環境初期の試合
・環境末期より、やりこめるプレイヤーの優位性が高い
・環境末期より、マジック経験値の高いプレイヤーの優位性が高い

■環境末期の試合
・環境初期より、やりこめるプレイヤーの優位性が低い
・環境初期より、マジック経験値の高いプレイヤーの優位性が低い

書いてみると当然の要素だけど、情報の伝達は早くなる一方で、この要素は加速し続けていると思う。



つまり、勝ちたければ、


環境初期のやりこみ度を上げる

環境初期の試合の参加優先度を上げる


ことが大事になってくる。


これらを意識してスケジュールを調整するレベルを上げていくことが勝利に繋がる。

現在でもできてる部分はあるけれど、新セット発売時に業務タスクがスッキリしてるように更に尽力していきたい。来月の8月頭にはプロツアー基本セット2015があるから、今のうちにひたすら頑張って、今月後半はプロマジックに専念したい。


〈晴れる屋の幽霊議員/Ghost Council of Hareruya〉と呼ばれることを目指していく←


逆に、ライトなプレイヤーほど環境末期のほうが上級者との差を埋めやすく勝ちやすいだろう、と付け加えておきたい。もちろん、それなりに情報収集を行ったうえでの話だけれど。


「相変わらずトモハルぐちゃぐちゃうるせえな!」


って自分でも思うけど、

こうやって勝利に向けてデッキとか戦略を真剣に考えてる時が


マジックやっていて1番楽しい♪


今から3週間は試合がないし、何か役に立ちそうなことでも書きはじめようかな^^


それじゃあまた!

皆様の「マジック充」をお祈りしております!(パクリ


トモハル