By Atsushi Ito
プロツアーは463人全員がプロや殿堂もしくは何らかの予選を抜けた強豪プレイヤーであり、4勝4敗で2日目に進出できるとはいえ、順調に勝ち進むプレイヤーもいれば敗北して沈んでいくプレイヤーも存在する。
また、実力があるからといって必ずしも勝てるわけではないのがプロツアーの面白いところだ。
現に今回、Lukas Blohonや八十岡 翔太といった世界的に見てもトッププロに属するプレイヤーたちでさえ初日敗退となってしまっている。
そしてここにもう一人、開幕のブースタードラフトで0-3してしまい、スタンダードでは奮闘するも一歩及ばず初日で対戦エリアを去ることになったプロプレイヤーがいた。
中村 修平……殿堂プレイヤーにしてゴールド・レベルプロ。世界を周る旅人として知られ、このサイトでもなかしゅー世界一周を連載してくれている彼に、今回のプロツアーにおける敗因と、今後のスタンダードの展望についてインタビューしてみた。
マジックで常に勝ち続ける人間は存在しない
--「今回、残念ながらドラフト0-3が響いて初日敗退となってしまいましたが、敗因は何だったのでしょうか?」
中村「敗因はまあ、そういう日だったからとしか言いようがないですね。土地14枚でまあまあの青赤を組んだけれども、1回戦目は《造反の代弁者、サムト》《焼けつく双陽》《混沌の大口》入りのデッキにボコボコにされ、2回戦目は《スカラベの神》にボコボコにされ、3回戦目で『なぜ2回負けたのか』というレベルの白赤にボコボコにされました。あとは1-7くらいに流れてきた《棘モロク》を流して《敵意ある砂漠》をピックしたのが結果的にはミスかもな、という程度です」
--「それだとあまり反省点が見当たらないですね……」
中村「いや、無理なものは無理だから!というか、このゲームで常に勝ち続けられると思っている方がおかしいんですよ」
--「え、そうなんですか?でも今回優勝したPV (Paulo Vitor damo da Rosa) とか、いつも勝ってるイメージですけど……」
中村「パウロは現役で一番強いレベルのプレイヤーかもしれませんが、それでもプロツアー『カラデシュ』とプロツアー『アモンケット』は賞金なしラインでしたよ。それに1年間ずっと勝てなくて、世界選手権出てたのにシルバー落ちになった時期もあります。あとデッキをレジスト (登録) した後で今回のチームデッキである『ラムナプ・レッド』にはぶつくさ文句を言い続けてましたし。『なんでこんなデッキを使わないといけないんだ』という感じで。プレイの選択肢が少ないデッキは、PVは大嫌いですから」
--「そうだったんですね……」
中村「マジックで常に勝ち続ける人間がいると信じているのは、マジックをやったことがない人ですね」
--「それは、運が絡むゲームだからでしょうか?」
中村「運と呼ぶかは人それぞれですが、コントロールできない領域についてあまり気にしても仕方がないという話ですね」
現代マジックにおいては、1枚のカードでデッキをメタろうという考えが間違っている
--「興味深い話をありがとうございます。それではもう一点、今回”Face to Face Games”&”Channel Fireball”連合軍の一員としてPVの赤単の調整過程なども見ていたと思うのですが、スタンダードで赤単に強いカードを3枚挙げていただければ……」
中村「相手のマリガン」
--「え?」
中村「あと自分の先手。それと相手が《反逆の先導者、チャンドラ》や《栄光をもたらすもの》でサイド後にコントロールシフトしてきた場合でも勝てる強いサイドボード」
--「あの……具体的なカード名で挙げていただけるとありがたいのですが……」
中村「そんなカードあるわけないでしょ!《窒息》とか《非業の死》じゃあるまいし、現代マジックにおいて1枚のサイドカードで相手のデッキをメタろうという考えが間違ってるわけですよ」
--「なるほど……1枚のカードで殺しにいくのではなく、ビートからミッドレンジ/コントロールへの転換やその逆など、プランを変えるのが現代マジックだと」
中村「そうですね」
--「でも赤単がそんなに強いとわかっていたのに、中村さんはゾンビを使用したわけですよね。それはなぜですか?」
中村「赤単に相性が良く、しかもガードが下がっていそうだったからですね。黒緑との2択だったんですが、津村 (健志) や大礒 (正嗣) に相談したら『逆に黒緑の良いところってなんですか?』と問い返されて、答えられなかったので」
--「ゾンビは何がきつかったんでしょうか?」
中村「ランプなど、クリーチャーデッキ以外のデッキ全般ですね」
--「プロツアーは赤単の優勝という結果に終わったわけですが、今後スタンダードはどうなっていくと予想されますか?」
中村「特に変わらないんじゃないかと思いますね。《王神の贈り物》は前評判ほどには強くなかったということで数を減らすとは思いますが、ゾンビは弱点も多いので」
--「ありがとうございました」
1回のプロツアーの結果に一喜一憂しないのは、殿堂プレイヤーの中村らしい。今回は振るわない結果となったが、優勝&準優勝が調整チーム仲間だったということで、調整コミュニティの実力は疑いようもなく、来季は3日目の舞台に立つ姿が見られるかもしれない。
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