Deck Tech: 松本 友樹の「ボーラス・コントロール」

晴れる屋

晴れる屋

by Kazuki Watanabe

 『破滅の刻』の全カードリストが発表されて、皆様は何を考えただろうか?

 カードリストを眺めたときに“何に注目するか”は、プレイヤーによって大きく異る。新しいデッキコンセプトとなるカードを探す人もいれば、既存のデッキの新たなパーツを探す人もいる。美麗なイラストに注目する人もいるであろうし、背景ストーリーを色濃く反映したフレイバーテキストに注目する人もいるはずだ。

 ただ、『破滅の刻』で最も多くの人が注目し、「使いたい!」という欲求を刺激したカードは間違いなく王神であろう。

王神、ニコル・ボーラス

 《王神、ニコル・ボーラス》を使いたい!

 多くの人が魅入られ、グリクシスカラー(青黒赤)のデッキを構築しようとしたに違いない。他ならぬ筆者も、《王神、ニコル・ボーラス》を予約購入しつつ、青黒赤のカードはとりあえず揃えた人間である。

 しかし、初期こそ姿を見せたものの、その後の動きは乏しく、大会結果で「グリクシスコントロール」という名前を見ることは次第に少なくなっていった。黒が抜けた「青赤コントロール」はある程度の成績を残したが、そこに王神の姿はなかった。ゾンビやケンラの餌食となった王神は数え切れない。

「強力なプレインズウォーカーであることは間違いない。しかし、この環境では居場所がないのか……」

 そう思いながら過ごす日々が続き、迎えた環境末期。この第9期スタンダード神挑戦者決定戦で、出場者のデッキリストを眺めていた筆者の目に、王神の姿が飛び込んできた! このグリクシスコントロール、否、ボーラス・コントロールの使用者は、一体!?

松本《王神、ニコル・ボーラス》を使いたかったんですよね」

 Big Magic所属プロ、松本 友樹は笑顔でそう語ってくれた。早速、話を伺ってみよう!

■ 現在の環境と、コントロールの立ち位置

――「『赤単』を始めとする速いデッキの台頭で『コントロールは厳しいのかな?』と思っていたのですが、今回コントロールを選んだ理由をお聞かせ願えますか?」

松本「たしかに『赤単』が多数存在していた頃は厳しかったと思いますが、環境全体を見ると『赤単』は減少傾向にありますよね。意識され過ぎているのでしょうね。大会で一定の結果を残している強いデッキなのですが、『きっと意識されているだろうから』という理由で使用する人が減っているのかもしれません」

――「なるほど。プロツアー『破滅の刻』で優勝を果たしましたが、そこから少しずつ減ってきているわけですね。それでも、強いことに違いはない、と」

地揺すりのケンラならず者の精製屋

松本「現在の環境では、『赤単』と『ティムール』が強いですよね。『赤単』が非常に尖った強さを持っているのに対して、『ティムール』は飛び抜けた有利もなければ不利もないデッキです。環境の殆どのデッキと”戦えるデッキ”なので、『どちらにするか』と迷ったプレイヤーの多くは『ティムール』を選択しているのだと思います」

――「そして、『ティムール』と戦える『コントロール』も活躍を始めたわけですか」

松本「そうですね。ただ、『破滅の刻』が発売されて以降、従来通りのコントロールデッキは難しいと考えています

――「そうなのですか? 具体的に、どの辺りが難しいのでしょうか?」

松本《奔流の機械巨人》が使いづらくなっているんです

《奔流の機械巨人》の強さと脆さ

奔流の機械巨人

――「青絡みのコントロールと言えば、《奔流の機械巨人》が4枚採用されているデッキがほとんどですよね? 非常に強力なクリーチャーだと思うのですが……」

松本「ええ、もちろん強力であることは間違いありません。ただ、《削剥》によってこれまでのような活躍はできなくなっていますね《奔流の機械巨人》で呪文を再利用して、そのまま戦線を支える、という動きができたのですが、今は盤面になかなか居座れません。簡単に除去されてしまうんですよ」

削剥

――「なるほど。《削剥》は”赤絡みならば必ず入っている”と言っても良いカードですから、遭遇率も高いですよね」

松本「『赤単』もそうですが、『ティムール』もメインボードから採用していますからね。もちろん《奔流の機械巨人》は強いカードですが、以前のような感覚で使うのは難しいんです。そういった理由もあって、今活躍しているコントロールのほとんどは、《奔流の機械巨人》に依存していないという特徴があると思いますね」

――「今活躍している、というと『青白《副陽の接近》』ですか?」

副陽の接近スカラベの神

松本「そうですね。《奔流の機械巨人》を使用していないコントロールです。『青黒コントロール』も環境に姿を見せていますが、こちらは《スカラベの神》という強力なカードを採用しています」

――「確かにどちらも《奔流の機械巨人》に依存しているデッキではありませんね。そして、今回の松本さんのデッキにも不採用、と。《奔流の機械巨人》の枠は、何に替わっているのですか?」

王神、ニコル・ボーラス王神、ニコル・ボーラス明日からの引き寄せ炎呼び、チャンドラ

松本「まずは《王神、ニコル・ボーラス》が2枚。それから2枚目の《明日からの引き寄せ》。そして《炎呼び、チャンドラ》にしてみました。少し重たい構成にしてあります」

――「《炎呼び、チャンドラ》は重めのカードですが、こちらも強力なプレインズウォーカーですよね」

炎呼び、チャンドラ

松本とにかく強いですね。今日もかなり活躍してくれました。『青赤コントロール』に入れても良いと思うくらいです。コントロールを使用するなら、ぜひ採用を考えて欲しいですね」

■ 松本から、コントロールを使いたい人へ

――「『コントロールを使用したい!』と思っているプレイヤーはたくさんいると思うのですが、松本さんから読者に向けて、『使いこなすためのアドバイス』はありますか?」

松本「コントロールは“勝ち手段をいかに残すか”が大事です。アグロデッキなどとくらべても”勝ち手段”が限られているデッキなので、その限られたものをどうやって残し、活かしていくかが重要だと思いますね」

――「相手を妨害しつつ、フィニッシャーをどうやって盤面に降り立たせるか、ということですね」

松本「そうですね。ただ、フィニッシャーに依存しすぎてもダメです。この辺りが非常に独特というか難しくて、たとえば、コントロール・マスターである八十岡 翔太さんはこの辺りの感覚も鋭いんですよ。フィニッシャーよりも前に、序盤にミシュラ・ランドを起動して相手のライフを削っておく、という判断が上手いんですよね」

写真はマジック:ザ・ギャザリング公式から引用しました。

――「つい『フィニッシャーで勝てるから、まだ我慢しておこう』と思ってしまいがちですが、そうではないんですね」

松本「そうなんです。序盤でライフを削っておくと、終盤の立ち回りが替わってきます。たとえば相手の残りライフが少なく、こちらの攻撃がマストブロック、つまり『攻撃を通したら負けてしまう』という状態になったとしますよね? そうなると、相手は戦力を削ってでもブロックしなければなりません。この状態では、こちらの攻撃そのものが除去のように効いてくるわけです

――「な、なるほど! そういった状況を作るためにも、序盤からの攻撃は重要なわけですね」

松本「コントロールを使用していても、一方的に勝てるということはほとんどありません。大抵の場合、終盤はお互いのライフが一桁、という状態になります。そういった場面で『あと1点、攻撃しておけば……』というのはよくあることですから」

――「覚えておきます! その他には何かありますか?」

松本「当たり前なのかもしれませんが、“カウンターすべきカード”を把握しておくことですね

――「いわゆる、マストカウンターと言われるものですね」

ゼンディカーの同盟者、ギデオン逆毛ハイドラ

松本「ええ、簡単に言ってしまえば”自分が負けてしまうカード”です。例えば、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》は、1枚で負けてしまうカードですよね。他のカードはカウンターせずにじっと耐えて、そういった”負けてしまうカード”をしっかりとカウンターすることが重要です。『ティムール』の場合は《逆毛ハイドラ》ですね」

――「なるほど。コントロールを使うならば他のデッキについての知識は、当然重要ですよね」

松本「そうですね。先ほどの”勝ち手段をいかに残すか”と同様に身につけることは簡単ではないかもしれませんが、対戦して、情報を調べて、とやっていく内に、きっと身につくと思います」

■ 使いたいカードでデッキを組むことが、マジックの楽しさ

――「今回、『使いたかった』という理由で《王神、ニコル・ボーラス》の入ったデッキを構築されたわけですが、同じような理由でデッキを組むことは多いのですか?」

松本「多いですね。『勝ちたい!』という気持ちももちろんありますが、同じくらい『このカードを使いたい!』という気持ちもあるんです。そうやってデッキが組めるのも、マジックの楽しさなので

 そう言って、いつもの笑顔を見せてくれた松本。プロプレイヤーとして戦いの中に身を置きながらも、彼は「楽しみたい」という気持ちを忘れない。

 それ故、私から投げかけた「神決定戦への意気込みは?」という質問に対して、彼は……今は「神挑戦者を目指すもの」の一人として戦いに挑みながら、「挑戦を受ける神」でもある、この世界にたった一人しかいないフロンティア神は、笑顔でこう答えたのだ。

松本「とにかく、楽しみたいですね。どんなデッキを使おうか、そしてどんなデッキと戦うのか、今から楽しみで仕方がありません」


 「使いたいカードでデッキを組む、それがマジックの楽しさ」

 そう松本は語ってくれた。そして、その”楽しさ”は、勝利することで何倍にも膨れ上がる。

 松本は、このボーラス・コントロールを使用して見事トップ8入賞を果たしている。神挑戦者には一歩届かなかったが、松本は今日のトーナメントを楽しんでくれたに違いない。

 そして、勝利の楽しさは神決定戦で味わってくれることだろう。


松本 友樹「ボーラス・コントロール」
第9期スタンダード神挑戦者決定戦(スイスラウンド8位)

7 《島》
5 《山》
1 《窪み渓谷》
4 《霊気拠点》
4 《尖塔断の運河》
4 《さまよう噴気孔》
2 《永遠衆の墓所》

-土地 (27)-


-クリーチャー (0)-
2 《マグマのしぶき》
4 《蓄霊稲妻》
4 《検閲》
3 《本質の散乱》
3 《削剥》
2 《明日からの引き寄せ》
4 《至高の意志》
2 《不許可》
4 《天才の片鱗》
2 《破滅の刻》
1 《炎呼び、チャンドラ》
2 《王神、ニコル・ボーラス》

-呪文 (33)-
3 《否認》
2 《守られた霊気泥棒》
2 《チャンドラの敗北》
2 《ジェイスの敗北》
2 《焼けつく双陽》
2 《即時却下》
1 《スカラベの神》
1 《マグマのしぶき》

-サイドボード (15)-
hareruya

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