by Kazuki Watanabe
簡潔に述べてしまえば、第9期スタンダード神挑戦者決定戦の決勝は『ティムールエネルギー』の同型戦となった。
とは言っても、決勝に進出した両者のデッキはアーキタイプこそ”同型”ではあるが、まったく違ったデッキと言っても過言ではない。
岡井 俊樹(東京)の操るデッキは、メインボードに3枚の《反逆の先導者、チャンドラ》を採用していること、そして大抵のリストで選択されている《牙長獣の仔》が《森の代言者》に変更されている点に特徴がある。
対する山口 智裕(茨城)のリストには、《奔流の機械巨人》や《天才の片鱗》、《本質の散乱》といったカードがメインボードから採用されている。
トップ8プロフィールで、岡井は《反逆の先導者、チャンドラ》を、山口は《奔流の機械巨人》をデッキのベストカードとして挙げている。それぞれ独自の調整が功を奏し、この決勝戦にまでたどり着いたわけだ。
岡井 俊樹(東京) vs. 山口 智裕(茨城)
選択には思考が、言わば勝利への意志が詰められている。同じアーキタイプでも、選択されているカードが違えば動きが変わり、まったく違った戦いを見せ、その結果が勝負の分け目となることも多い。
勝利を掴み挑戦者となるのは、岡井か、それとも山口か?
Game 1
両者ダブルマリガンを選択して5枚のカードを手にし、決勝戦が開始される。先攻の山口は《植物の聖域》。岡井は《森》から《霊気との調和》で《山》を手札に加える。
続くターン、山口が《森》を置いて《導路の召使い》を唱えると、対する岡井も同じく《導路の召使い》を唱え、両者エネルギーを確保しながらマナを伸ばす手筈を整える。
1ゲーム目は、山口が一歩先んじる。《導路の召使い》からマナを生み出し、《逆毛ハイドラ》を盤面に送り出した。
少し姿勢を正した岡井は、再び《霊気との調和》。《島》を手札に加え、ティムールの三色を揃える。ここで再び《導路の召使い》を戦場に加えて、エネルギーを7まで伸ばした。
山口は《ならず者の精製屋》を唱えて手札とエネルギーを補充しつつ《逆毛ハイドラ》で攻撃。これが決勝戦、最初のダメージとなる。
じっくりと盤面を見つめる岡井。エネルギー、マナ、どちらも潤沢。この2つをどのように使うか、思考を巡らせていく。
まずは《導路の召使い》を2体利用して《反逆の先導者、チャンドラ》。さらに「+1」能力でマナを生み出し、《つむじ風の巨匠》も戦線へ送り出す。居座る間もなく山口の《削剥》に襲われるが、飛行機械トークンを形見として遺していった。
山口 智裕
ターンを受けた山口は全軍で《反逆の先導者、チャンドラ》を攻撃して墓地へ沈めるすると、2体目の《逆毛ハイドラ》を戦線に加えてターン終了。
岡井は再び《導路の召使い》からマナを生み出し、《栄光をもたらすもの》を唱える。ここでは攻撃をすることなく、そのままターンを返す。
ここから山口は《ならず者の精製屋》、《導路の召使い》と続けて戦力を整えながらエネルギーを補充する。岡井は《森の代言者》を送り出した。
そして、襲いかかる2体の《逆毛ハイドラ》。これに対する適切なブロックを、岡井は何度もクリーチャーを並べながら考える。これまでの戦闘で岡井のライフは残り8。
どうにか一度目の攻撃を凌いだが、続くターンも山口の攻撃は緩まない。懸命にブロックを続けながら、《蓄霊稲妻》で《ならず者の精製屋》の除去することにこそ成功したものの、大きく開いたライフ差が縮まることはない。数度目の《逆毛ハイドラ》による攻撃を見て、岡井は土地を畳んだ。
岡井 0-1 山口
Game 2
キープを選択し、2ターン目《導路の召使い》、3ターン目《ならず者の精製屋》と両者まったく同じ動き出し。
4ターン目、岡井は《導路の召使い》にマナを生み出させる。それが何色かを、岡井が告げる前に山口が言い当てた。
山口「赤……」
岡井が小さく頷きながら唱えたのは、《栄光をもたらすもの》。
戦場に降り立つとすぐさま攻撃に加わり、山口の《導路の召使い》を「督励」の炎で飲み込む。並んで攻撃に参加した《ならず者の精製屋》は相打ちとなった。
山口が2枚目の《導路の召使い》を唱えれば、岡井は2枚目の《栄光をもたらすもの》を戦場へ。こちらは「督励」せずに山口に襲いかかる。
空を翔ける二頭のドラゴンを前に、山口は《逆毛ハイドラ》を唱えて地上を固める。
しかし、岡井が《反逆の先導者、チャンドラ》を唱えたことで、地上の防衛線は役割を失った。
ドローを確認して、山口は一度頷く。決勝戦が3ゲーム目へもつれ込む合図である。
岡井 1-1 山口
Game 3
山口は悩んだ末にキープ。岡井は即座にマリガンを宣言。
両者が《植物の聖域》をプレイして、決勝戦最後のゲームが始まる。山口の初動は3ターン目の《ならず者の精製屋》。
対する岡井は1ターン目から《霊気との調和》、続いて《導路の召使い》と動き出す。さらに3ターン目には4マナを揃えて《反逆の先導者、チャンドラ》を唱え、手始めに《ならず者の精製屋》を除去。優勢を築いて序盤を終える。
《霊気拠点》を置いた山口は、深く呼吸をしてから《逆毛ハイドラ》を盤面へ。
岡井も静かに盤面を見つめ、ドローを確認してから一呼吸。《霊気との調和》を唱えてから、《反逆の先導者、チャンドラ》の「+1」能力でマナを生み出し、こちらも《逆毛ハイドラ》を戦場に送り出す。さらに《導路の召使い》も唱えて戦力は十分。
続くターン、岡井は再び《霊気との調和》でエネルギーを補充。《反逆の先導者、チャンドラ》でライブラリートップを追放する。めくれたカードは、2ゲーム目に勝利をもたらした、《栄光をもたらすもの》。無論、ここでは唱えることを選択する。
これに対して山口は《天才の片鱗》でライブラリートップ2枚を確認。《尖塔断の運河》2枚をボトムに送り込んだ。
《栄光をもたらすもの》と《逆毛ハイドラ》による攻撃。空は致し方ないとして、地上は《逆毛ハイドラ》でブロックすることを選ぶ。両者がエネルギーを注ぎ込み、ここでは相打ちに終わる。
無人となった戦場を見つめる山口は《霊気との調和》で土地とエネルギーを確保し、《栄光をもたらすもの》を唱える。「督励」の炎で《導路の召使い》を焼き払いながら、《反逆の先導者、チャンドラ》に襲いかかった。
岡井 俊樹
岡井は攻撃を確認すると、《反逆の先導者、チャンドラ》を墓地へ。一度手札に落とした視線を、ターンを受けると同時に戦場に戻し、手札から再び《反逆の先導者、チャンドラ》を唱えた。即座に《栄光をもたらすもの》を沈めて、総攻撃を仕掛ける!
残りライフが10まで削れた山口は、《伐採地の滝》をプレイし、静かにターンを返す。
攻勢を止めない岡井は、手始めに《反逆の先導者、チャンドラ》でデッキトップを追放して火力に変換する。山口も反撃の機会を伺い、《天才の片鱗》を唱え、ドローした《蓄霊稲妻》で《栄光をもたらすもの》を除去し被害を抑える。
大きくライフを削り、優勢となった岡井。勝利は目前とは言え、急ぎ慌てることなく、落ち着いてターンを受ける。
変わらぬ手つきでライブラリーに手を伸ばし、ドローを確認。潤沢になった土地からわずか2枚の土地を倒して、戦場に《森の代言者》を送り出した!
土地の数は潤沢。4/5で戦場へ現れ、勝利を阻もうと試みる山口の前に立ちはだかる!
山口は一縷の望みをかけて《反逆の先導者、チャンドラ》。ライブラリートップを火力に変えて、相手のチャンドラに見舞う。さらに《導路の召使い》を唱えて、相手の攻撃を受け止める構えだ。
ターンを受けた岡井。その手は今までのようにライブラリーに伸びることはなく、手札に残った1枚のカードを公開するだけであった。
岡井 2-1 山口
見事に勝利し、スタンダード神・和田 寛也への挑戦権を獲得し、新たな挑戦者となった岡井。トロフィーショットの撮影と生放送への出演を終えて、トーナメントセンターを後にする。
その背中を見つめながら、「ここから少し慌ただしくなる」と筆者は思った。我々が今期見つめた“挑戦者の背中”は、岡井で5人目である。
そう、この日のスタンダード神挑戦者決定戦を以って、9/17(日)に開催される第9期神決定戦の挑戦者が出揃ったのだ。
挑戦者決定戦という過酷な戦いに勝利し、神へと挑む者たち。そこに新たな名前を、最後の挑戦者の名を刻む日が、ようやくやって来た。
第9期スタンダード神挑戦者決定戦、優勝は岡井 俊樹!
おめでとう!!
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