By Kazuki Watanabe
上位卓のデッキリストを眺めていた際に、筆者が思わず漏らした言葉。これが、このインタビューのきっかけだ。その言葉とは……。
――「……なんだこれ?」
そして、プレイヤー名を見て、筆者は納得した。「なるほど、小澤さんか」と。
小澤 卓也。
晴れる屋のスタッフでもあるこの男を表するのにもっとも的確な言葉は、「デッキビルダー」であろう。
『カラデシュ』発売初日に「赤緑エネルギー」で大会に出場し、世界一早くデッキリストを世に送り出した。その後、同様に《静電気式打撃体》を使用したワンショットキルが世界中で流行したことはご存知であろう。
また、モダンの「白青ベルチャー」はデッキビルダーたちの目を射抜き、伊藤 敦(まつがん)の週刊デッキウォッチングで紹介されたのみならず、海を越えてGoldfishでも取り上げられた。まさに、“世界が注目するデッキビルダー”だ。
Much Abrew: Wu Charbelcher (Modern) https://t.co/clKMIcihVw #mtg #mtgo #muchabrew pic.twitter.com/nhKFPqPBVq
— MTGGoldfish (@MTGGoldfish) 2017年7月10日
筆者は何度も彼のオリジナルデッキと対戦するのだが、都度新しいギミックを見せてくれる。その奇想天外な発想は、度肝を抜き続けてくれる。しかも、その発想を武器に勝利を掴むのだから恐ろしい。事実、彼は今回の『破滅の刻』環境名人戦のスタンダードラウンドを無敗で駆け抜け、トップ8入賞を果たしているのだ。
それでは、小澤謹製「マルドゥ《立身+出世》」について伺ってみよう!
■ 《立身+出世》を使うために -小澤デッキ最新作-
小澤「《立身+出世》を使いたかったので、組んでみました。そして、《単体騎手》と《栄光半ばの修練者》の絆魂でライフ差を生み出し、余剰なライフは《光袖会の収集者》のドローに充てる、というものですね」
――「なるほど。その3枚は、どれも《立身+出世》で墓地から戻せるカードですね」
小澤「かなり使い勝手の良いカードで、2ターン目に出した《単体騎手》が返しのターンに除去されても、次のターンに《立身+出世》で戻しながら+2/+0、速攻を付与。そうすれば、即座に裏返すことができます。序盤に裏返せば、ライフ差を大きくできるので、かなり有利になれますね」
――「相手に除去されても繋げられる、強力な動き出しですね」
小澤「対象にできるクリーチャーは複数あるので、盤面に応じて選べるのも良いですね。《スレイベンの検査官》を戻すことはほとんどありませんが、先ほどのマッチでは手がかりトークンのドローによって勝利できたので、選択肢ではありますよ」
■ さらに強力な《栄光をもたらすもの》
――「なるほど。脇を固めているのは、この環境の強力なカード、という感じですね。《栄光をもたらすもの》はその代表かと思いますが、このデッキで選択した理由はありますか?」
小澤「現在の環境では《栄光をもたらすもの》が強力で、使用率も高いですよね。相手の《栄光をもたらすもの》をどうにか止められる方法はないか、と考えたときに、相手よりも強い状態の《栄光をもたらすもの》を使えないかな? と考えたことがきっかけです。そして、《永遠の見守り》を採用しました」
――「『督励と警戒』の相性の良さは知られていますが、それをここで実戦投入したわけですね」
小澤「相手のクリーチャーに火力を飛ばしながら、5/5、飛行で攻撃できるので、一方的に攻撃することができます。相手の《栄光をもたらすもの》は動けなくなりますし、チャンプブロックに回らなければならない場面も多いので」
――「そうなってしまえば、勝利は目前、と」
小澤「そうですね。さらに、《永遠の見守り》がある状態ならば、《単体騎手》の強さも際立ちます。裏返った状態ならば5/5になりますし、この環境ではタフネス5を突破する手段は限られていますからね」
■ 小澤ルール -マジックを楽しむための、”2つの制約”-
――「なるほど、ありがとうございます。そう言えば、小澤さんはデッキを作成する際に制約があるそうですね」
小澤「そんなに大それたものではないのですが、2つルールを決めているんですよ。1つは、シングルカードは500円以下というルールです」
――「縛りプレイみたいなルールですね……それだと使用できるカードに物凄い制限があるような気がするのですが?」
小澤「ありますね。なので、もう1つルールを決めていて、パックを剥いて出たカードは使用して良いとしています。例えば、《難題の予見者》はシングル買いではなく、『ゲートウォッチの誓い』のパックを購入して4枚集めたんですよ」
――「な、なるほど……その他のカードも500円以下か、自分で当てたものなんですね」
小澤「ええ、安いものを探す楽しみもありますし、パックを剥いて出たカードや、安いカードを見つけたときに『これは使えるかも?』と考えることも好きなんです。自分なりにマジックを楽しむためのルールのようなものですね」
このインタビューは、第8ラウンドで小澤が勝利した後、トップ8入賞を確定させた中、行われた。嬉しそうにデッキの説明をしてくれる小澤は、「自分の作ったデッキで大会に出場し、勝利する」という多くのプレイヤーにとっての”夢”を叶えている。
『破滅の刻』環境最終盤。アーキタイプが出揃い、デッキリストも洗練された中での、オリジナルデッキの活躍。「環境最終盤にも、新たな発見がある」と、筆者は痛感した。
『イクサラン』発売後も、小澤は自分に課したルールの元で、新しいデッキを見せてくれることだろう。今回の戦いによって得たアイディアを、必ず形にしてくれるに違いない。
そして、筆者は待つ。ある言葉を、常に待っている。そう、彼が笑顔で、
「新しいデッキ、作りましたよ!」
と話しかけてくれることを。
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