By Kazuki Watanabe
本日の日付は9月2日(土)。『イクサラン』の発売を月末に控えた中、『破滅の刻』環境名人戦が開催された。この環境は、まさに最終盤を迎えている。
環境最終盤というのは、ともすれば「変化がない」と思われがちだ。大会数も減少し、世間の目が大会結果よりも新しいカードに向いているので、そう思われるのも無理はない。
しかし、最終盤でもメタゲームは緩やかに動き続けている。既存のデッキによる勝敗だけではなく、新しいデッキの登場を伴って。
スイスラウンドを勝ち上がり、準々決勝に進出した小澤 卓也の「マルドゥ《立身+出世》」は、この最終盤に登場したオリジナルデッキだ。《栄光半ばの修練者》と《単体騎手》の絆魂によってライフ差を生み、《難題の予見者》《栄光をもたらすもの》といったパワーカードを活かす、というコンセプトは、今日この時まで知られていなかったものであろう。
対する山﨑 匠の「ティムールエネルギー」は、世界各地の大会で結果を残している、この環境のトップメタだ。数多のプレイヤーによってリストが洗練されているため、今回山﨑が使用ているものにも大きな変化はない。それでも、細部に調整が見られ、環境最終盤の戦いを勝ち上がるために磨き上げられていることが分かる。
世界で一人しか使っていないデッキと、世界各地で使用されているデッキの対決。早速お届けしよう。
Game 1
両者マリガンを選択。6枚の初手を眺めて山﨑はキープ、小澤はダブルマリガンを選択する。
山﨑の《霊気との調和》からゲームがスタート。2、3ターン目に続けて《導路の召使い》を送り出し、エネルギーとマナを確保していく。
対する小澤は《栄光半ばの修練者》を唱え、次のターンには「督励」で攻撃。いきなりライフ差を広げていった。
山﨑が《牙長獣の仔》でエネルギーの使用先を確保してターンを返すと、小澤が唱えたのは《単体騎手》。《栄光半ばの修練者》が再び「督励」すれば、即座に変身を遂げるだろう。
それを良しとせず、山﨑は《領事の旗艦、スカイソブリン》で《栄光半ばの修練者》に砲撃を見舞って除去。そこから《牙長獣の仔》で攻撃してエネルギーをさらに確保し、さらに1/+1カウンターを乗せて、搭乗要員としての役割も担うことになった。
小澤も反撃の機会を伺うがマナを伸ばすことができず、《立身+出世》で《単体騎手》を戻しはしたものの、《領事の旗艦、スカイソブリン》を留めるほどの力は得られない。
《領事の旗艦、スカイソブリン》による再度の砲撃で《単体騎手》を失い、そこに《削剥》が加わったことで、1ゲーム目は終幕を迎えた。
山﨑 1-0 小澤
両者がサイドボードに手を伸ばしてデッキを眺める。慌ただしかった卓に数秒の静寂が訪れるが、それを破ったのは小澤の悔しそうな一言であった。
小澤「土地さえ引ければ……」
そこから交わされる短い会話。その会話が止むと、山﨑は真剣な表情で手を止め、サイドボードを見つめた。
山﨑が使用する「ティムールエネルギー」は、大抵のデッキに対して対応が可能な“この環境の最適解”と思わせるデッキである。
とは言え、それは最適な対処法を知っていれば、の話だ。小澤が使用しているデッキは、完全なるオリジナル。何をサイドインするべきかを決めるのは、非常に困難である。初めて見るデッキに対応できるかどうかは、プレイヤーの力量次第であろう。
対する小澤は、「ティムールエネルギー」の存在を意識した上でデッキを組み上げている。戦略もしっかりと決まっているようで、手早くサイドボーディングを終えてシャッフルを始めた。
山﨑も一足遅れてシャッフルを始め、デッキを差し出す。2ゲーム目の開始を告げるのは、小澤のはっきりとした言葉であった。
小澤「先攻貰います」
Game 2
小澤の初動は《栄光半ばの修練者》。これが次のターンに「督励」しながら攻撃し、早くもライフ差を8に広げる。対する山﨑は《牙長獣の仔》を2体盤面に送り出し、戦闘準備を整えた。
続くターン、小澤は《難題の予見者》を唱えて山﨑の手の内を暴く。公開された2枚の《蓄霊稲妻》と《栄光をもたらすもの》、そして《つむじ風の巨匠》の中から《蓄霊稲妻》を追放させる。
臆することなく山﨑は展開を続け、まずは《ならず者の精製屋》で手札とエネルギーを補充する。そして、2体の《牙長獣の仔》で攻撃を仕掛け、《難題の予見者》にブロックされた側にエネルギーを使用して相打ちに持ち込んだ。
反撃のために小澤が唱えた《栄光をもたらすもの》には、ありったけのエネルギーを注ぎ込んで《蓄霊稲妻》を見舞う。相手の《栄光半ばの修練者》による攻撃を一旦スルーして、ここでは戦力展開を優先。《ならず者の精製屋》、《つむじ風の巨匠》と続けてあっという間にエネルギーを6まで戻す。それを飛行機械トークン生成に利用し、6体のクリーチャーが小澤のライフを削るために戦場に並んだ。
小澤は、静かに盤面を見つめる。
小澤 卓也
1ゲーム目の終了時に小澤が漏らした「土地さえ引ければ……」という一言。そこには、マナが用意できず、手札とデッキにカードを眠らせていた状態に対する悔しさが籠められていた。
オリジナルデッキ。つまり、サイドボードを含む75枚すべて、小澤の選択である。ここで彼がマナを注ぎ込んで叩きつけたカードは、戦況を好転させる、これ以上ない最適な選択であった。
唱えられたのは、相手の戦力を灰燼に帰させ、ライフを回復させる《燻蒸》。
山﨑は息を吐きながら戦場を更地に戻す。そして、一度頷いてから、再び展開を始め、《栄光をもたらすもの》を唱えて攻撃を加えた。それに呼応するかのように小澤も《栄光をもたらすもの》を送り出す。山﨑はひとまず《霊気との調和》で今後の戦略を練る。
しかしながら、続くターンに小澤が《光袖会の収集者》を送り出したところから、数秒立たずにゲームが決まった。
《光袖会の収集者》を山﨑が通すと、小澤は手札から《立身》。《栄光半ばの修練者》を戦場に戻す。
威迫持ちを防げず、《栄光をもたらすもの》と合わせて8点。山﨑の手元のメモに記されていたライフも、8点。
山﨑 1-1 小澤
Game 3
小澤は再びダブルマリガン。山﨑が先手、という1ゲーム目と同じ状況から3ゲーム目は動き出す。
最初に戦場に降り立ったのは、小澤の《栄光半ばの修練者》。山﨑はこれを居座らせずに、《削剥》で除去しておく。《ならず者の精製屋》を唱え、ターンを返した。
ここで小澤が大きく動き出す。唱えたのは、《立身+出世》! 《栄光半ばの修練者》を戦場に戻し、速攻を付与。6/4、絆魂で攻撃を加え、ライフは26対14の12点差となった。
山﨑は大きく動いたライフをメモに記すと、《逆毛ハイドラ》を戦場へ。
小澤は《難題の予見者》を唱えて山﨑の手札を確認。《否認》《栄光をもたらすもの》《反逆の先導者、チャンドラ》の中から《栄光をもたらすもの》を追放しておく。
山﨑 匠
次のターン、山﨑は《反逆の先導者、チャンドラ》を唱えてライブラリートップを火力に変換。対する小澤は《削剥》で《ならず者の精製屋》を除去して少しでも戦力を削るが、山﨑も《導路の召使い》を唱えて戦力増強を続ける。
ターンを受けた小澤。ドローを確認してから数秒間、手札を見つめる。5枚目の土地が、まだ引けない。ここでも《石の宣告》で《導路の召使い》を除去するに留まった。
《反逆の先導者、チャンドラ》がライブラリートップを次々と2点火力に変換する。攻勢を続け、2体目の《逆毛ハイドラ》も戦場に送り出し、勝負を決めにかかる。
小澤はターンを受け、祈るようにドローを確認。
悔しさをこめて「負けました」と告げ、戦場を片付けた。
山﨑 2-1 小澤
この記事内で掲載されたカード
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする