By Yuuya Hosokawa
フロンティア。
『基本セット2015』以降に発売した通常エキスパンションのカードを使用できるこのオリジナルフォーマット。スタンダードの禁止カードやヴィンテージの制限カードが飛び交う特殊な環境は、まさに未開拓と言っていい場所だ。
そんなフォーマットを見事に開拓し、「フロンティア神」に就任したプレイヤー。
BIG MAGIC所属のシルバーレベル・プロプレイヤー、松本 友樹である。
2度のグランプリ・チャンピオンという輝かしい実績を持つプロプレイヤー松本が挑む、初めての神防衛戦。
その胸の内を、語ってもらった。
フロンティア神挑戦者決定戦に向けて
--「いよいよ、フロンティア神としての戦いが近づいてきましたね」
松本「そうですねー。ついにやってきたかー、といったところです(笑)」
--「準備はそれほど完璧ではないですか?」
松本「残念ながら……もちろんフロンティアの結果を追ったりはしているんですけど、突然赤青《アーティファクトの魂込め》デッキが勝ったり、かと思えば今回の挑戦者の松田さんは青黒コントロールだったりで。混乱する一方ですよ」
--「フロンティアはカオスである、と」
松本「はい。でも面白い環境だと思いますね。それこそ自分のやりたいことができる場所ですから。それがプレイヤーからもデッキリストからも伝わってきて、僕もついデッキ構築に熱が入っちゃいますね」
--「松本さんと言えばオリジナルデッキですね」
松本「そうですね。僕は好きなカードからデッキを作りたい派なので、フロンティアが好きです。特に《時を越えた探索》が大好きなんですよ。これが4枚使える唯一無二のフォーマットであるというだけでも、フロンティアは素晴らしいです」
プロとカジュアルフォーマット
--「松本さんって、プロプレイヤーとしては珍しく、競技フォーマット以外もよく遊ばれますよね。ヴィンテージもやられていましたし」
松本「そうですね。なんていうんでしょうか、マジックが好きなので全部好きなんですよね。だからなんでもやりたいんです」
--「ちなみにEDHもやっていたりしますか?」
松本「もちろんです! ちょうど昨日やってきましたよ!」
--「それはまたタイムリーですね」
松本「EDH、最高ですよ! 週末がRPTQじゃなければもっとEDHをしていたかったんですけどね」
--「練習と本番頑張ってください。それにしても、松本さんは本当に競技と同じぐらい、カジュアルなマジックが好きですよね。松本さんの思うカジュアルフォーマットの魅力は一体なんでしょうか?」
松本「やっぱり好きなカードが使える、というのが一番だと思います。スタンダードでは、例えば《王神、ニコル・ボーラス》が好きだったとしても、環境的に重すぎたらデッキに入れられないですよね。そういうのが凄く悲しいんです。スタンダードやモダンは競技フォーマットですからプロが介入して、そうなるとプレイアブルなカードとそうでないカードが出てきちゃいますよね」
--「スタンダードではそれはより顕著ですね」
松本「そうですね。やはりプロツアーのフォーマットというのも大きいです。使いたいと思うカードがあっても、環境が成熟して強いデッキが固まってくれば、それに勝てないという理由だけで、使えなくなります。《師範の占い独楽》が禁止になる前のレガシーも似たような状態でした」
--「なるほど」
松本「一方、カジュアルフォーマットって、突き詰められていないじゃないですか。だから、自分が好きなカードでデッキを組んでも、そこそこは勝てるんです。好きなカードで、勝つ。これ以上に楽しいことはないと思ってます。これがカジュアルフォーマットの魅力ですね」
フロンティア環境の変化と現在
--「少し話は前後するのですが、フロンティア環境は、松本さんが優勝された1月と比べて、変わったのでしょうか?」
松本「大きく変わったと言っていいと思います。まずあの頃は『霊気紛争』がありませんでした。《守護フェリダー》、《致命的な一押し》がなかったですからね!」
--「その2枚が特にフロンティア環境に影響を与えている、と」
松本「《守護フェリダー》は一気にフロンティア環境の主役級になりましたからね。《霊気池の驚異》とハイブリッドするデッキも出てきたぐらいです。《致命的な一押し》は、フェッチランドがあるフロンティア環境では、モダンと同じぐらい使いやすいカードですし、1マナと非常に軽いので、《時を越えた探索》を使用するデッキがさらに強くなりました」
--「なるほど」
松本「この他にも、赤青《アーティファクトの魂込め》は最近出てきた新しいデッキですし、《集合した中隊》デッキもアップデートされています。もはや僕が勝ったときのあの環境とは別物だと思いますよ」
--「ちなみに松本さんは、今何かデッキのアイディアは浮かんでいますか?」
松本「そうですね。《アルハマレットの書庫》とか《紅蓮術師のゴーグル》を使ったデッキを組みたいなーとは思ってますね」
--「そういう悪さするアーティファクト、お好きですよね」
松本「ええ、大好きです(笑) でも実は《アルハマレットの書庫》は実は前に使ったときがあって、『フロンティア神決定戦』の前日に、《岸の飲み込み》と《アルハマレットの書庫》と《僧院の包囲》を使って相手をハメるデッキを組んでたんですよ。もうこれ凄いし楽しいしでテンション上がりまくってて」
--「結果はどうだったんですか?」
松本「全く勝てませんでした! さすがにこのデッキでは勝てないと思って一晩でスゥルタイを組んだんですよ」
--「そのデッキで見事フロンティア神になった、と。まさかあのデッキが一晩で出来上がっていたなんて……!」
挑戦者、松田 幸雄について
--「『神決定戦』で重要な要素といえば対戦相手ですが、ずばり松田さんについてはどう思いますか?」
松本「恐怖の感情しかありません」
--「(笑)」
松本「だって何をしてくるかわからないじゃないですか。メタデッキの親和やグリクシスシャドウを使ったと思えば、ヴィンテージでは突然ランタンを持ち込んだりする。はっきり言って闇ですよ。姿がまるで見えません」
--「ここまで予想できない人、そうはいませんよね」
松本「はい。今回の第9期フロンティア神挑戦者決定戦でも、決勝の光安さんなんかは、赤いデッキの対策をすればとりあえず問題ないだろうと思えますけど、松田さんにはそれが全くありませんから。トーナメントで同じデッキを使ってるのを見たことがないですよ」
--「どんなデッキも使いこなしますよね」
松本「そうです。いろいろなデッキを使って、そのどれもが高いプレイ精度なんです。その腕があるから沢山のデッキを回しているのかもしれませんけども。フロンティアで強いとされているカードのうちどれを使ってくるのか、見当もつきません」
原点に還る
松本「1対1でそれも相手があの松田さんということで、原点に還ろうと思っています」
--「原点、ですか?」
松本「はい。マジックを楽しもうという気持ちですね。好きなカードを使って、好きなことをして、勝つ。楽しさを追求してこそのカジュアルフォーマットですから」
--「相手にとらわれずにデッキを作ろうということですね」
松本「はい! なのである意味挑戦ですよね。今回、立場上は僕が迎え撃つ側ですけど、挑戦者として臨もうと思います」
--「デッキも挑戦的なものになるのでしょうか?」
松本「そうかもしれません。自由にデッキを作ってみようと思います。楽しさを求めて作ったデッキはもちろん失敗することもありましたけど、カジュアルな思考だったからこそ成功したこともありました。楽しくて強い、を実現させたいですね」
--「松本さんがそう言うと期待感が高まりますね。『神決定戦』、楽しみにしています。頑張ってください」
松本「ありがとうございます。期待していてください!」
シルバーレベル・プロプレイヤーとしてプロツアーシーンで活躍をしながらも、カジュアルフォーマットを日々遊ぶ松本は、その遊び心を忘れてはいない。
そんな松本がフロンティア神として防衛に臨む第9期神決定戦。迎え撃つ立場にありながら挑戦。まさしくこの開拓という意味の込められた『フロンティア』の神に相応しい。
好きなカードを使ってデッキを作り、そして勝利する。誰もが夢見るであろう理想を、松本ならばきっと実現してくれるだろう。そう思わせる創造力と想像力が、松本にはある。
松本が『フロンティア神決定戦』で放つ意欲作、お見逃しなく。
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