By Kazuki Watanabe
『イクサラン』発売から一週間。新たな環境は、始まったばかりだ。
世界選手権2017に出場する24名が使用しているデッキリストは、すでに公開されている。
このリストによれば、今大会の最大勢力は赤単であった。
なぜ多くのプレイヤーが赤単を選んだのか。赤単を使用する一人であり、Hareruya Prosに加入したばかりのクリスティアン・カルカノに「赤単を選んだ理由」を聞いてみよう。
赤単を選んだ理由
――「早速ですが、今回赤単を選んだ理由を教えていただけますか?」
クリスティアン「まず最初に考えたのが、『多くのプレイヤーが、ティムールやスゥルタイといったエネルギーデッキを使用するだろう』ということでした。少なくとも、これらに不利なデッキを選ぶわけにはいきません。その中でもっとも自分に合っているのが、赤単だったんです」
――「なるほど。前環境から引き続き活躍をしている赤単ですが、ローテーションによってどのような変化がありましたか?」
クリスティアン「このデッキはローテーションによって失ったカードが少なく、これまでとほとんど同じ感覚ので使用できます。ティムールエネルギーに有利な青黒コントロールも候補ではありましたが、限られた日数で磨き上げることを考えると、変化がごくわずかだった赤単の方が良いという結論になったのです」
――「では、そのわずかな変化について教えてください」
クリスティアン「まず、失ったのは《ファルケンラスの過食者》と《焼夷流》です。これらは確かに重要なカードでしたが、『イクサラン』でそれ以上の切り札を手に入れました。それが、《稲妻の一撃》です」
――「貴重なインスタントの呪文ですね」
クリスティアン「そうですね。このカードの強さはマジックの歴史を見れば明らかですが、何よりも赤単というデッキにふさわしい一枚です。インスタントタイミングでゲームを動かすことができるのは《焼夷流》にはなかった強さですし、対戦相手を対象にできることが《削剥》と違う利点です。今回は《ショック》《削剥》《稲妻の一撃》vを4枚ずつ採用してみました」
――「12枚のインスタントを採用したわけですね。その他の変化で言うと、サイドボードに恐竜が採用されていますね?」
クリスティアン「《暴れ回るフェロキドン》ですね。これは、『イクサラン』で手に入れたもう一つの切り札です。ライフゲインの部分はひとまず置いておくとして、クリーチャーが戦場に出るたびに1点という能力が凶悪なんです」
――「たしかに強そうですが、採用の理由をもう少し詳しく教えてください」
クリスティアン「赤単と対戦したことがある人はお分かりだと思いますが、このデッキはライフを驚異的なスピードで削ります。『クリーチャーで攻撃を加えて、残りは呪文で』というのが典型的なパターンですが、その展開を一気に加速させることができます。そして、これも『エネルギーデッキを使用するプレイヤーが多い』という予想の上での採用なんです」
――「つまり、エネルギー対策になる、ということですか?」
クリスティアン「そのとおりです。例えば、ティムールエネルギーがこちらの攻勢を凌ぐために、《つむじ風の巨匠》にトークンを生み出させて耐える、というのはよくあるパターンですよね」
――「そうですね。攻撃を止めて時間を稼ぎ、戦線を支える、という展開は多かったです」
クリスティアン「これまでは、1/1の飛行機械トークンが非常に厄介でした。それを《暴れ回るフェロキドン》は許しません。ブロック要員を生み出すたびに、貴重なライフを捧げることになるわけですからね。威迫も重要で、仮に飛行機械トークンで攻撃を凌ごうとした場合、6個のエネルギーと2点のライフ、そして2体のトークンを犠牲にする必要があります」
――「なるほど! あ、この能力は自分がクリーチャーを出した場合もライフを失うんですね」
クリスティアン「重要なポイントですね。もちろん気をつけるべきことですが、こちら以上に、相手にライフを失わせることの方が重要なんです。ぜひ、採用してみてください」
重要なのは、攻撃を途絶えさせないこと
――「前環境から赤単は人気でしたが、このデッキを使いこなす上でのアドバイスを貰えますか?」
クリスティアン「これは時々勘違いされることですが、このデッキを使いこなすのは簡単ではありません。確かにデッキパワー自体が高いので、使えばある程度の勝利は得られるでしょう。ですが、勝率を上げるにはデッキを使いこなす必要があります。そして、このデッキを使いこなすコツはたった一つ、攻撃を途絶えさせないことです」
――「シンプルではありますが、非常に難しいことですよね」
クリスティアン「ええ、とても難しいと思います。このデッキは、攻めているときの圧倒的な強さこそが武器です。一度守勢に回ってしまうと、それを覆すことは難しく、大きくリソースを使わなければいけません。可能な限り、リソースは相手のライフを削ることに割く必要があります」
――「かといって攻めすぎてしまうと、攻撃が途絶えてしまう、と」
クリスティアン「そうですね。消極的になっても、積極的になり過ぎてもダメです。これがこのゲームの難しさで、自分のターンを終えたら、相手にターンを渡さなければいけません。次の攻撃のためにクリーチャーを並べておくのか、呪文のためにマナを残しておくのか、このバランスを上手く取ることが重要です」
――「なるほど……これはサイドボード後も変わらないのですか?」
クリスティアン「まったく変わりません。サイドボード後はコントロールのように振舞う、というのはよく知られたパターンだと思いますが、そのときも攻撃を途切れさせないように気をつける必要があります。攻撃というのは、クリーチャーをタップすることではなく、盤面と手札、そして思考で行うものですから。難しいと思いますが、使いこなせたときの圧倒的な強さは、環境トップレベルです。頑張ってみてください」
15 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 1 《屍肉あさりの地》 -土地 (24)- 4 《ボーマットの急使》 4 《損魂魔道士》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 4 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (23)- |
4 《ショック》 4 《削剥》 4 《稲妻の一撃》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (13)- |
4 《暴れ回るフェロキドン》 3 《ピア・ナラー》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《チャンドラの敗北》 1 《霊気圏の収集艇》 -サイドボード (15)- |
おまけ
さて、次のラウンド開始までには、あと10分ほど時間がある。そこで雑談混じりに、こんな話を聞いてみた。
――「そういえば、日本のアニメが好きなんですよね? 最初に観たアニメは覚えていますか?」
クリスティアン「僕が最初に観たのは、『ドラゴンボールZ』でした。そこから、様々な作品を見続けていますよ」
――「なるほど。では、一番のお気に入りを選ぶとしたら、どの作品ですか?」
クリスティアン「それは難問だ! うーん、たった一つを選ぶのは難しいですね。とにかく何でも見るんです。お気に入りもたくさんあります。今一つを選ぶとしたら、『僕のヒーローアカデミア』は欠かさず観ているくらい好きですが……難しいですね。でも、アニメ映画なら生涯最高の作品に最近出会ったんですよ」
――「そうなんですね。どの作品ですか?」
クリスティアン「『君の名は』です。あの作品は本当に素晴らしい! 文句なしで最高の作品です。ストーリーも素晴らしくて、映像も綺麗。細かな部分にまで美しさがあって、例えば神社の……」
……この話は、次のラウンド開始まで続いた。
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