Translated by Yoshihiko Ikawa
(掲載日 2017/10/13)
先週末、僕は今のシステムになってから初の世界選手権に参加してきました。大会が近づくにつれ少しナーバスになっていましたが、ひとたび落ち着くと、間違いなく世界最高であるプレイヤーたちとプレイするための準備に心躍りました。
今回の記事では、僕がこの大会に向けてどのように調整し、どうしてラムナプ・レッドを選んだのか、『イクサラン』ドラフトのアプローチと合わせてお伝えしたいと思います。
一度状況が落ち着くと、Mint Cardのチームメイトであるケルビン・チュウ、リー・シー・ティエン、ハビエル・ドミンゲスと共に調整できることに興奮しました。昨シーズンのプロツアーで一緒に調整していたので、彼らが調整相手として最高の仲間たちであることを僕は知っていました。
その後、ハビエルの良き友人であるマルシオ・カルバリョが加わりました。マルシオと調整するのは僕にとって初めてでしたが、世界最高のリミテッドプレイヤーと共に戦えることをリミテッドプレイヤーの1人としてとても楽しみにしていました。
僕たち5人は世界中に散らばった別々の国に住んでいるので、テストプレイの大部分はMagic Onlineで行いました。『イクサラン』ドラフトがMagic Onlineでリリースされてすぐに、僕たちはできる限りのドラフトを開始しました。そして、3-0デッキリストと自分たちの考えをチームメイトに共有するために、Facebookに情報を集約したのです。
カードリストがすべて公開されたとき、このセットが部族を基調としたアーキタイプになるであろうことは明らかでした。これは僕が、安く流れてくるであろう非部族のカードを主軸としたアーキタイプを試してみようと思いついたときでもあります。《立ち枯れの守り手》や《這い回る心止虫》、それに《火の祭殿の守り手》といったカードはよく一周します。
これらの1マナ域と3種類のオーラ(《風と共に》《向こう見ず》《吸血鬼の印》)、軽いコンバットトリック(《卑怯な行為》《確実な一撃》《潜水》)により、グリクシスカラーの組み合わせ(青黒/黒赤/赤青)の軽いマナ域のデッキをドラフトでき、このレベルの攻撃的なデッキを対処できない、あらゆるデッキを速やかに倒せることを僕は知ったのです。
この戦略をドラフトする際に、僕は以下のような順番で優先順位をつけていました。
もし黒赤のように飛行クリーチャーが少ない場合は、《継ぎ当ての翼》がこの戦略の素晴らしい追加戦力であり、評価が上がることもお伝えしておきます。理想のマナカーブとしては「1マナ域:5-6枚、2マナ域:6-7枚、3マナ域:3-4枚、4マナ域:0-2枚(理想は《深海艦隊の殺し屋》です。盤面にクリーチャーを追加するだけでなく、攻撃すべきでないようなタイミングでも良い攻撃の機会を与えてくれます。)、5マナ域:0-1枚」が良いと感じています。
また僕からのアドバイスとして、土地は16枚を下回らないようにすることをオススメします。後半は《立ち枯れの守り手》のために8マナ必要にもなりますし、《決別の砲撃》もしくは《闇の滋養》のような5マナのカードを1枚はデッキに入れるからです。お気づきかもしれませんが、上のピック優先順位リストの中に除去は含まれていません。
《板歩きの刑》や《依頼殺人》(《立ち枯れの守り手》起動の8マナへの助けになります!)があれば嬉しいですが、軽いクリーチャーをピックしてマナカーブを安定させることの方が優先度が高いと感じています。
攻撃を継続させるという点では除去は嬉しいですが、回避能力のないパワー1や2のクリーチャーしかいなければ、ブロッカーに除去を打って攻撃したところで次のクリーチャーで止まってしまうでしょう。
世界選手権でご覧いただいた通り、僕はこの戦略で1stドラフトを3-0することができました。4枚の《向こう見ず》を搭載した、超攻撃的な黒赤です!
幸運なことにファーストドラフトではすべてプラン通りに進み、僕が遅い順目で欲しかったカードをすべてピックすることができたのです。しかしながら、続く2日目の2ndドラフトにおいて、問題は明確です。誰もがこの戦略を知った状態で僕は同じようにピックできるのでしょうか?
きっと同じように《向こう見ず》をピックすることはできないでしょうが、僕は青黒の方が好みなので、特に問題ないと判断しました。《風と共に》がベストコモンだと僕は感じていますし、エンチャントしたクリーチャーを守る方法が複数あることも青黒をより好んでいる理由です。2日目はフィーチャー側のドラフトポッドで、僕のすべてのピックが中継に映ることになりました。
僕が開けた最初のパックで、注目すべきカードは《自然形成師》と《火炎砲発射》でした。しかしながらカバレージの皆さんが驚かれたように、僕は《欲望の深み》をピックしたのです!このピックの理由は、マーフォークをやりたくないため、青緑に行きたくなかったからです。マーフォーククリーチャーは優秀であるため、マーフォークデッキをドラフトしているかどうかに関わらず、青もしくは緑をやっているプレイヤーに取られてしまうので、できる限り避けようと決めていました。 。
《火炎砲発射》を流した理由は既に述べた通り、除去をそこまで評価していないですし、特にこのカードは(赤)(赤)が厳しいからです。メインカラーを黒にして赤か青を足す形にしたいので、僕が狙っているデッキの方向としては《欲望の深み》がベストであると感じました。
2手目では《流血の空渡り》と《吸血鬼の印》があり、他の色は見るべきところがなかったので、簡単なピックでした。《吸血鬼の印》は確かに重要ですが、《流血の空渡り》は飛行を持っていて、アグレッシブなデッキにとって嬉しい1点ドレインもついている、この戦略のベストな3マナ域なのです。
3手目もかなり簡単でした。《巧射艦隊の追跡者》が優れたカードだとはまったく思いませんし、《水罠織り》は《流血の空渡り》に次ぐ優秀な3マナ域ですからね。
2ndドラフトで一番難しかったのが、この4手目です。僕の選択肢は《セイレーンの嵐鎮め》《卑怯な行為》《水罠織り》《川潜み》《女王湾の兵士》の5枚!僕がやりたいことを体現しているかのようなパックで、「1パック目をこれで終わりにする代わりに、これ全部ピックさせてもらえないかな?」とも思いました。ですがそんなことは無理なので、最終的にいくつかの理由から《セイレーンの嵐鎮め》をピックすることに決めました。
この《セイレーンの嵐鎮め》は青いクリーチャーであり、飛行があり、後半では他のクリーチャーを守ることもでき、《海賊のカットラス》やオーラを付けて殴ることもできる、僕の戦略での最高の1マナ域です。僕が欲しいカードたちを多数流すことはとても辛かったですが、これは「青も黒もやっていい」という強烈なシグナルでもあり、この中のどれかが一周して帰ってくるかもしれないのです!
しかし僕にとって不幸なことに、1枚たりとも帰ってこなかったので、《強迫》をピックすることになりました。最終的に僕が望んだほどのデッキにはなりませんでしたが、まだ良かった方ではあります。
このドラフトで僕にとって問題だったのは、《風と共に》が卓に1枚しか出なかったこと(2パック目の初手でピックしました)、そして《吸血鬼の印》も僕が1パック目で流して帰ってこなかった1枚しか出なかったことです。これによりオーラが足りなくなりましたが、《探査の短剣》と《海賊のカットラス》でなんとか穴埋めできました。
結局このドラフトは1-2で終わってしまいましたが、3マッチともとても惜しい試合でしたし、満足しています。世界選手権においてドラフトで4-2できたことに興奮しつつ、スタンダードの話に行きましょう。僕は最終的にラムナプ・レッドを手に取ることに決めました!
僕たちのスタンダードのテストプレイは、大会の数日前から、個別に行いました。僕たちは会う前にいくつかのアイディアをそれぞれ試しましたが、この環境の二大巨頭が《熱烈の神ハゾレト》と《スカラベの神》であることは明確でした。
しかしながら、世界選手権のテストプレイは他の大会とは異なります。他のプレイヤーが使うデッキを予測できるのであれば、彼らに勝つ絶好のチャンスだからです。そういった情報も踏まえて、僕たちはフィールドの大部分が「ティムール/スゥルタイ/4色エネルギー、ある程度のラムナプ・レッド、そして少しのコントロールや未知のデッキ」だと予測しました。
僕は他のプレイヤー達も同じように考え、そして多くのプレイヤーがエネルギーデッキへの対抗策に焦点を当てることを思うと、ラムナプ・レッドが最高の選択肢であると考えました。しかしそれは同時にラムナプ・レッドのミラーマッチへの備えが欲しくなるという意味でもありました。
僕たちが想定していたメタゲームはほとんど正しく、ケルビン・チュウとハビエル・ドミンゲスの2名をトップ4に送り込むことができました!彼らの活躍にこれ以上ないほど興奮しましたし、この大会の一員として参加できたことを本当に幸せに思いました。
僕個人としては7-7の11位、プロポイント4点、5,000ドルという好成績で大会を終えました。この大会は間違いなくこれまで参加してきた中で最高の大会でした。週末を通して本当に最高の試合ができましたし、最初から最後まで、すべてが素晴らしかったです。
ケルビン、リー、ハビエル、マルシオ、そして権利を持っていないにも関わらず調整に付き合ってくれたすべてのMint Cardのチームメイトたち、本当にありがとう!彼らは私たちがテストしなければならなかった限られた時間を驚異的なまでに手助けしてくれましたし、大会を通しての彼らのサポートは、私の友人からのものと同様、本当に素晴らしいものでした。
次は今週末(※原文掲載時点)のアメリカ選手権です。アメリカ代表としてレイド・デュークと共に戦えるよう、頑張ってきます。
アメリカ選手権で何を使うかは現段階で決めていませんが、ケルビンが世界選手権で使ったような青黒コントロールを使おうかなと考えています。ですが、ラムナプ・レッドがまだまだ行けそうだと思ったら、きっと手に取るでしょう。一方のドラフトはどうピックしたいかが決まっていますが、さてどうなるでしょうね。
この記事を楽しんで読んで、そして大いに暴れてもらえると嬉しいです!
読んでくれてありがとう!
クリスティアン・カルカノ
この記事内で掲載されたカード
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする
グランプリトップ8入賞は7回を数え、【グランプリ・ミネアポリス2012】と【グランプリ・アトランティックシティ2015】では優勝。
プロツアーでのトップ16も3回経験しており、【プロツアー『アモンケット』】で念願のトップ8入賞を果たした。
世界が注目する、トッププレイヤーの1人。親日家としても知られており、日本のアニメが大好き。