スタンダードの変遷

Oliver Polak-Rottmann

Translated by Daijiro Ueno

原文はこちら
(掲載日 2017/10/11)

やあ、また会ったね!新しいスタンダードがちょうど始まったところだ。そこで今日はこの2週間の内に起こったことについて、簡単なまとめをお届けしようと思う。

我々はこのローテーションで《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《大天使アヴァシン》といった大きなインパクトを持ったカードをたくさん失った。一方で、全フォーマットで使われるようなオールスターカードが一緒になって帰ってきたんだ。

稲妻の一撃選択強迫呪文貫き

《稲妻の一撃》《選択》《強迫》、そして《呪文貫き》はとても軽くて対戦相手に干渉できるカードだし、私の意見ではこれらはとても望まれていたものだね。同時に我々は恐竜達を得て、それらが固有のアーキタイプを形成するのに十分なほど強いはずだと思った人もいるかもしれない。明らかにそれは実際に起きたことではないし、恐竜達は全く見られることはなかった。まだ新環境が始まったばかりだが、現状では私は次のセットが出るまで彼らはスタンダードの舞台に出られるほど強くないと思う。

前環境の終わりではティムールエネルギーがこのフォーマットのベストデッキで、青黒コントロールやラムナプレッドがすぐそれに続くという形だった。他の選択として《王神の贈り物》デッキやマルドゥ機体、ランプとかもあったが、大体最初に挙げた3種が支配していたね。

絶え間ない飢餓、ウラモグ

《絶え間ない飢餓、ウラモグ》といったジョーカーがないからランプがしばらく環境から退場することになったのは間違いない。その一方で、我々は最初に挙げた3種のデッキがほとんど他のデッキに負けることがない、つまりこれらのデッキこそ打ち負かさなきゃいけない相手だと気付いたんだ。

ゼンディカーの同盟者、ギデオン大天使アヴァシンスレイベンの検査官

マルドゥ機体は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《大天使アヴァシン》、そして最も重要な《スレイベンの検査官》を失う大損害を受けた。《スレイベンの検査官》がこのデッキをまとめる接着剤の役目を果たしていたことは確実で、今やこのデッキはマナベース問題を抱えるラムナプレッドのようだ。望むような形ではないっていうことだね。

傲慢な新生子

《王神の贈り物》デッキは《傲慢な新生子》を失った。これはマルドゥ機体における《スレイベンの検査官》と似た役割を果たしていたんだ。私はこれらのデッキはこの先また見かけることになると考えているが、ただ今はまだその時期ではないね。

前環境で成功したこれらのデッキのほかに、ほとんどパーツを失わなかった黒緑《巻きつき蛇》デッキがある。これは最初の2週間で私が選択した有力候補のうちの一つだ。ペトル・ソフーレク/Petr Sochurekが彼の最新の記事の中で同様にスタンダードのことを書いていたから、彼が示したデッキについて議論するつもりはない。

それでは、マジックオンライン、StarCityGames.com Open、世界選手権では何が起こったんだろうか?

最初のSCGではスゥルタイエネルギーが勝った。


Andrew Jessup「スゥルタイエネルギー」
SCG Open Dallas(優勝)

4 《森》
2 《沼》
1 《島》
2 《異臭の池》
4 《花盛りの湿地》
4 《植物の聖域》
4 《霊気拠点》

-土地 (21)-

4 《歩行バリスタ》
4 《光袖会の収集者》
4 《牙長獣の仔》
4 《巻きつき蛇》
4 《ならず者の精製屋》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
4 《人質取り》
1 《スカラベの神》

-クリーチャー (27)-
4 《霊気との調和》
4 《顕在的防御》
4 《致命的な一押し》

-呪文 (12)-
4 《貪る死肉あさり》
4 《強迫》
2 《否認》
2 《ヴラスカの侮辱》
1 《スカラベの神》
1 《呪文貫き》
1 《秘宝探究者、ヴラスカ》

-サイドボード (15)-
hareruya

デッキリストを眺めていると、私はこのデッキには精巧な点がいくつかあることに気付いたが、同時に黒緑《巻きつき蛇》デッキやティムールエネルギーが受けていた恩恵を利用していないことにも気づいた。

《顕在的防御》は奇妙に感じたし、《新緑の機械巨人》なしの《巻きつき蛇》も間違っているように見える。皆は神経をすり減らす戦いか、あるいは勢い十分で相手を打ち負かすような戦いがしたいだろう。このリストでは我々はその中間に陥ることになる。そして引きたいカードを引けないというようなことが多々起こるだろう。このデッキは初めて《人質取り》を輝かせたデッキであり、サイドボードにも新しいカードがひしめきあっているね。

人質取り貪る死肉あさりヴラスカの侮辱

同じ週末、クラシック部門では素晴らしい構築の手腕で知られるザック・エルシク/Zac Elsikが勝った。


Zac Elsik「グリクシス即席」
SCG Classic Dallas(優勝)

3 《沼》
1 《島》
1 《山》
3 《腐臭の地》
4 《産業の塔》
4 《尖塔断の運河》
3 《水没した地下墓地》
1 《竜髑髏の山頂》
1 《発明博覧会》

-土地 (21)-

3 《禁制品の黒幕》
2 《ピア・ナラー》
4 《異端の飛行機械職人》
1 《スカラベの神》
4 《艱苦の伝令》

-クリーチャー (14)-
4 《致命的な一押し》
4 《金属の叱責》
4 《改革派の地図》
4 《予言のプリズム》
3 《歯車工の組細工》
1 《霊気装置の設計図》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《霊気圏の収集艇》
3 《策謀家テゼレット》

-呪文 (25)-
4 《否認》
3 《屑鉄場のたかり屋》
3 《橋上の戦い》
3 《テゼレットの手法》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《霊気圏の収集艇》

-サイドボード (15)-
hareruya

私は往年のテゼレットファンだから、このデッキの構造は好きだ。他のどんなデッキにも勝てる手段を持ってるけど、コントロール相手だけは本当に弱いね。相手は何が起こるか分からないから、こういうデッキは「分からん殺し」ができるんだ。

策謀家テゼレット艱苦の伝令異端の飛行機械職人

これら2つのデッキの他にもいくつか《副陽の接近》デッキが存在するメタゲームの中で、よく知られたデッキ達が順当な割合を占めた。そしてこの結果は皆が世界選手権を待ち望んでいた週としてはむしろ大人しいものだったね。

皆新しいデッキが輝くのに期待していたけど、基本的に3種類のデッキだけがプレイされたマジック:ザ・ギャザリング世界選手権2017はこの点に関して完全にがっかりなものだった。

アーキタイプ名 使用者数
ラムナプレッド10名
ティムールエネルギー9名
青黒コントロール5名

心に留めて置かなければならないのは、これは普段3~5人のグループで調整しているたった24人のプレイヤー達の、練り込まれていないメタゲームにすぎないということだ。1つぐらいは新しいデッキを待ち望んでいたにしても、この結果はそんなにおどろくことじゃないね。

例としてトップ4デッキリストのうち3つを用意した。これらは全てスタンダード構築部門で6-2の成績を収めたものだ。


Javier Dominguez「ラムナプレッド」
世界選手権2017(準優勝)

15 《山》
4 《ラムナプの遺跡》
4 《陽焼けした砂漠》
1 《屍肉あさりの地》

-土地 (24)-

4 《ボーマットの急使》
4 《損魂魔道士》
4 《地揺すりのケンラ》
3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》
4 《アン一門の壊し屋》
4 《熱烈の神ハゾレト》

-クリーチャー (23)-
4 《ショック》
4 《稲妻の一撃》
4 《削剥》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文 (15)-
4 《暴れ回るフェロキドン》
3 《ピア・ナラー》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》
2 《栄光をもたらすもの》
2 《チャンドラの敗北》
1 《霊気圏の収集艇》

-サイドボード (15)-
hareruya


William Jensen「ティムールエネルギー」
世界選手権2017(優勝)

4 《森》
2 《山》
1 《島》
4 《植物の聖域》
3 《尖塔断の運河》
4 《根縛りの岩山》
4 《霊気拠点》

-土地 (22)-

4 《導路の召使い》
4 《牙長獣の仔》
4 《つむじ風の巨匠》
4 《ならず者の精製屋》
3 《逆毛ハイドラ》
4 《栄光をもたらすもの》

-クリーチャー (23)-
4 《霊気との調和》
2 《マグマのしぶき》
4 《蓄霊稲妻》
2 《本質の散乱》
1 《削剥》
1 《慮外な押収》
1 《暗記+記憶》

-呪文 (15)-
4 《否認》
2 《奔流の機械巨人》
2 《人工物への興味》
1 《チャンドラの敗北》
1 《削剥》
1 《霊気圏の収集艇》
1 《至高の意志》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《天才の片鱗》
1 《慮外な押収》

-サイドボード (15)-
hareruya


Kelvin Chew「青黒コントロール」
世界選手権2017(4位)

8 《沼》
7 《島》
4 《異臭の池》
1 《進化する未開地》
4 《水没した地下墓地》
1 《水没した骨塚》
1 《廃墟の地》

-土地 (26)-

3 《スカラベの神》
2 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (5)-
4 《致命的な一押し》
4 《本質の散乱》
3 《検閲》
3 《不許可》
2 《至高の意志》
2 《本質の摘出》
4 《天才の片鱗》
3 《ヴラスカの侮辱》
2 《霊気溶融》
2 《アズカンタの探索》

-呪文 (29)-
4 《強迫》
3 《才気ある霊基体》
2 《否認》
2 《本質の摘出》
1 《豪華の王、ゴンティ》
1 《アルゲールの断血》
1 《大災厄》
1 《バントゥ最後の算段》

-サイドボード (15)-
hareruya

これらのリストは全て標準的に見えるけど、私は「Peach Garden Oath」 (編注:William Jensen / Reid Duke / Owen Turtenwald から成るチームの名称) 型ティムールエネルギーの革新的なサイドボードが本当に大好きだ。コントロールデッキ相手にかなり相性が悪いから、彼らは《奔流の機械巨人》を採用してコントロール寄りにしたんだ。これはとてもエッジが効いてるね。

マッチアップ マッチ数 勝率
青黒 VS ティムール10-953%
青黒 VS ラムナプレッド5-456%
ティムール VS ラムナプレッド24-973%

この表はスイスラウンドでどの様な試合運びがあったか印象づけるものだ。コントロールが今後使われるデッキの様に見えるが、実際はこの中でより良いパーセンテージを持つティムールエネルギーが使われるだろう。我々はスタンダード環境がすぐに変わることを知っているから、この意見はアメリカ選手権で覆されるかもしれないね。

私が得た感想はラムナプレッドが少し押し込まれるだろうということ、新しいデッキはコントロールとエネルギーデッキに対して対等なゲームプランを持つものに居場所がありそうだが、ラムナプレッドには弱くなりそうだということだね。世界選手権のカバレージは本当に素晴らしかったけど、私はすでにアメリカ選手権で何が起きるかこの目で見ること、誰かが成功をつかむための違う方法をすでに見つけたかどうかを楽しみにしているよ。

読んでくれてありがとう。また会うときまで!

オリヴァー

この記事内で掲載されたカード

Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事