Translated by Takuma Kusuzawa
(掲載日 2017/10/05)
こんにちは!
今日は新しいスタンダードについてです。まさしく今、新しいカードが印刷されてから数週間が経ち、今後どうなっていきそうなのか、話していきましょう。
しかしながら、世界選手権2017の影響があるので、次のメタゲームを正確に予測するのは普段より少し難しくなっています。世界の頂点を目指す選手たちが選んだベストが何であるか、それだけであなたが選ぶデッキは決まらないでしょう。ですが、今後の大会での皆のデッキ選択には影響を与えます。デッキをコピーする人がいれば、それを予測して自分のデッキを調整したり、デッキを選ぶ人もいるわけですからね。
新セットはとても面白くて、ローテーションも相まって劇的な変化を与えるツールがたくさん入ってきます。ただ、エネルギーデッキと赤単が相変わらず強いとも思っています。新しいデッキが勝ち上がってくるという期待もしていますが、せいぜい新しいギミックを入れた馴染みのデッキを見る程度になるでしょう。
見慣れたデッキたち
Magic Onlineで開催された直近のPTQでは、こんなデッキがトップ8に入っていました。
3 4色エネルギー
3 赤単
1 BUGエネルギー
1 青白副陽コントロール
優勝は4色エネルギーが勝ち取りましたが、もうそれで驚く人はいないでしょう。このデッキはまだまだ強く、少し調整を加えればどんなデッキでも倒せます。まずは、今回優勝したデッキを見てみましょう。
3 《森》 2 《山》 1 《島》 1 《沼》 2 《隠れた茂み》 4 《植物の聖域》 2 《尖塔断の運河》 1 《花盛りの湿地》 2 《根縛りの岩山》 4 《霊気拠点》 -土地 (22)- 4 《牙長獣の仔》 4 《導路の召使い》 4 《ならず者の精製屋》 4 《つむじ風の巨匠》 3 《逆毛ハイドラ》 1 《人質取り》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《スカラベの神》 -クリーチャー (24)- |
4 《霊気との調和》 1 《マグマのしぶき》 4 《蓄霊稲妻》 3 《削剥》 1 《慮外な押収》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (14)- |
4 《否認》 2 《呪文貫き》 2 《野望のカルトーシュ》 1 《多面相の侍臣》 1 《マグマのしぶき》 1 《チャンドラの敗北》 1 《栄光の刻》 1 《慮外な押収》 1 《捲土+重来》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード (15)- |
新しい環境の初期では必ず起きることなのですが、以前から存在していたデッキがしっかりと調整され、可能性を秘めた新しいデッキをすべて蹴散らして、初期に開かれる大会をメチャクチャにしてしまいます。新環境でも赤単とエネルギーデッキほど良いデッキはなさそうで、見つかるまで時間がかかるかもしれません。
この結果は、古くからのデッキが新しいデッキに勝ったという点だけではありません。新進気鋭のデッキでスマートに勝ち上がるぞ、と証明するべく参加して、結果的にPTQの権利と参加費をただ無駄にしてしまう形になるのを誰もが避けたがるというのも大きな要因なのです。結果として、リーグを5-0したデッキにはより多くのイノベーションを見つけることができるわけですが、とりあえずはこのティムールのリストを見ていくことにします。
新しいカードは、《人質取り》とサイドボードの《呪文貫き》の二種類だけで、特に変わったことはありません。《人質取り》はかなり好みで、次環境の定番カードになると思っています。新セットのカードが出揃ったとき、海賊やマーフォークの話は飛び交いましたが、《人質取り》をただの「海賊」として、多くの人が見過ごしているように感じていました。
海賊というキーワードだと、少なくとも次のセットが出るまで競技レベルのデッキには届かないと思います。ですが、《人質取り》は単体でとても強く、様々なデッキで見るようになると期待しています。もちろん必ずそうなるとは限りませんし、《逆毛ハイドラ》や《反逆の先導者、チャンドラ》と4マナの枠を競わねばならないので、結局はメタゲームによるとしか言えないのですが、とても良いカードだと思います。
赤単も明らかに強い上に、《稲妻の一撃》や《暴れ回るフェロキドン》を新たに獲得しています。しかし、このデッキがどういう動きをして、そして《熱烈の神ハゾレト》がどれくらい強力か、ということは知れ渡っていると思うので、今日は触れずに置いておくことにして、他の新しいデッキに注目してみましょう。
僕の目に飛び込んできたのは、青白《副陽の接近》で、リストはこちらです。
8 《平地》 3 《島》 4 《灌漑農地》 4 《氷河の城砦》 4 《イプヌの細流》 2 《廃墟の地》 -土地 (25)- -クリーチャー (0)- |
4 《選択》 4 《検閲》 4 《至高の意志》 4 《天才の片鱗》 3 《残骸の漂着》 4 《燻蒸》 3 《副陽の接近》 2 《アズカンタの探索》 4 《排斥》 3 《試練に臨むギデオン》 -呪文 (35)- |
4 《威厳あるカラカル》 3 《奔流の機械巨人》 3 《否認》 3 《領事の権限》 2 《陽光鞭の勇者》 -サイドボード (15)- |
新セットが入ると、コントロールは急激に弱くなります。僕の直感では《呪文貫き》と《強迫》が再録され、《殺戮の暴君》もいますので、平凡止まりだとは思いますが、それでも想像より悪くはなさそうです。
《殺戮の暴君》を実際に使用する人は、赤いデッキに対しての相性が極めて悪いので実際には少ないでしょう。それならば、他のカードをサイドボードに入れたほうが賢明だと思います。
コントロールが悪くない理由としては、《強迫》《否認》《呪文貫き》のどれもがランプデッキ相手に強くて、コントロール相手であれば相手の弱点を見極めつつ、《ならず者の精製屋》などで寄り切ればよいのです。
6ターン目、もしくは土地が引けていなければさらに遅いターンにフルタップで《燻蒸》を唱えるのは、たしかに弱く見えます。白くないコントロールと比較しての強みではあるのですが、実際に使っている人は多くないですし、サイドボードの枠を余分に使うことになると思います。
今コントールを選ぶのであれば、青白にするしかなく、《副陽の接近》でマウントをとるのが良いと思っています。新しく出たあの重いエンチャント、《太陽鳥の祈祷》を使った青白赤デッキの方が良いという気もしたのですが、きっと僕の気のせいでしょう。
青赤デッキのいつもの戦略である、「一対一交換で凌ぎつつ、カードアドバンテージで押し切る」というのは、今のところは悪い選択に思えます。これに対して、青白であれば《選択》《アズカンタの探索》《残骸の漂着》など、極めて相性の良い選択肢がたくさん追加されています。
このデッキの以前からある問題点は、まだ残っています。サイドボード後は明らかに弱くなりますし、赤いデッキ相手の1ゲーム目は酷いものになるので、サイドボードの大部分をこの対策に強いられます。ただ、新しいカードを使えば勝率を45%から55%までは押し上げることができると思うので、結果に期待しましょう!
部族デッキ
マジックを楽しむ誰もが部族について話をしていましたが、残念ながらどのデッキも結果を残せないと思っています。部族の特徴は、それぞれのカードがお互いを強化していくことで強さを発揮するというものですが、今のスタンダードでは除去が無限にありますからね。
歴史的にも、ジャンドのようなデッキがフォーマットを牽引していると、カード一枚一枚ではパワー不足になってしまう部族デッキが強くあるのは難しいのです。唯一の例外となりうるのが恐竜で、リーグで5勝したデッキもあります。
4 《森》 2 《山》 1 《島》 4 《植物の聖域》 2 《尖塔断の運河》 3 《根縛りの岩山》 4 《霊気拠点》 -土地 (20)- 4 《大物群れの操り手》 4 《導路の召使い》 2 《不屈の神ロナス》 4 《切り裂き顎の猛竜》 4 《レギサウルスの頭目》 4 《焼熱の太陽の化身》 -クリーチャー (22)- |
4 《霊気との調和》 4 《恐竜との融和》 4 《蓄霊稲妻》 4 《削剥》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (18)- |
3 《呪文貫き》 3 《マグマのしぶき》 3 《否認》 3 《慮外な押収》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《チャンドラの敗北》 -サイドボード (15)- |
このリストでは《殺戮の暴君》の代わりに、新たな《業火のタイタン》である《焼熱の太陽の化身》が採用されている点にも注目してください。
恐竜に関しては先ほどの「カード一枚一枚ではパワー不足」という特徴が当てはまりません。もちろん部族のシナジーで相手の不意を突いてアドバンテージを得ることもできますし、カードパワー自体が十分に高いのです。注目のカードも多く入っていて、十分に戦えると思います。
《レギサウルスの頭目》が強いというのは皆すぐに気付きましたが、《切り裂き顎の猛竜》について話をしているのを聞かないのが意外でした。ほとんどの除去がダメージで破壊してきますし、チャンプブロックするといよいよひどい上に《反逆の先導者、チャンドラ》や《栄光をもたらすもの》では倒せません。
《凶暴な踏みつけ》が入っていないのにも驚きで、やっぱりある程度は除去も欲しいですし、少々危険だとはいえうまく動けば強いですし、《切り裂き顎の猛竜》でドローまでできてしまいます。
新たな次元渡りたち
いろんなリストを見ているときに、新しいプレインズウォーカーを擁したデッキを探していたのですが、このデッキは面白く見えました。
6 《平地》 2 《沼》 1 《森》 4 《進化する未開地》 4 《秘密の中庭》 4 《シェフェトの砂丘》 2 《イフニルの死界》 -土地 (23)- 4 《選定の司祭》 1 《信義の神オケチラ》 -クリーチャー (5)- |
4 《致命的な一押し》 4 《燻蒸》 4 《軍団の上陸》 4 《秘密の備蓄品》 1 《アルゲールの断血》 4 《排斥》 4 《選定された行進》 4 《改革派の地図》 3 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文 (32)- |
4 《賞罰の天使》 4 《強迫》 4 《失われた遺産》 2 《領事の権限》 1 《結束への呼びかけ》 -サイドボード (15)- |
このデッキは随分前からありましたが、見た目ほど悪くはありません。ティムール相手には《燻蒸》で一掃できて、赤単相手も相性は良いと思います。
ただパワー不足な部分もあり、一度ゲームの支配権を取ったように見えても、そのままマナフラッドを起こしたり、《選定された行進》を引けずに押し切られたりしました。以前は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が大量にトークンを生み、自らも攻める強力な後押しとして入っていましたが、《栄光をもたらすもの》との相性が悪く、いろんな場面で追い込まれることがありました。
これに対して、《秘宝探究者、ヴラスカ》が処方箋として最良だと思います。《秘宝探究者、ヴラスカ》であれば、最悪の場合でも重い除去呪文として機能しますし、うまく動いたときの見返りが大きいのです。《秘宝探究者、ヴラスカ》の初期忠誠値は大きく、《選定された行進》でトークンが増え始めるとあっという間にゲームの決着を付けることができます。
《強迫》の追加も重要な鍵です。以前であれば多くの相手に何もできぬまま倒されていたのですが、《強迫》で劇的に改善されます。
世界選手権2017でプロたちが持ち込むのは前からあるデッキなのでしょうか、それも新しい切り口のものなのでしょうか。気になって仕方ないです。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
ペトル
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