世界選手権を終えて -ラムナプレッドを選び、忘れられぬ経験を手にするまで-

Javier Dominguez

Translated by Kenji Tsumura

原文はこちら
(掲載日 2017/10/17)

世界選手権に参加できたこと

光栄なことに、先週末に世界選手権2017に出場することができた。この経験を俺はこの先決して忘れることがないだろう。

世界選手権に参加できるなんてことは、もちろん予期していなかった。若いころはとても真剣にマジックに打ち込んでいたが、ここ最近の俺はと言えば完全なるカジュアルプレイヤーなんだ。統率者戦、キューブドラフト、カオスドラフト、ヴィンテージなど、考えうるほとんど全てのフォーマットで遊んでいる。俺はただ単にこのゲームをプレイするのが好きなんだ。

シルバーレベルプロとして、次のプロツアーに参加できるかどうか分からない状態で2年間を過ごしたあと、2015~2016年は俺にとって大きな転機となった。たくさんのグランプリに参加した長いシーズンが終わり、最終的にゴールドレベルになるのに十分なプロポイントを手にしたんだ。ゴールドになれたのはとんでもなく大きな違いだった。なんせ全てのプロツアーに参加できることがあらかじめ分かっているんだからな。

ただし、シーズン最初のプロツアー『カラデシュ』が燦々たる結果だったことを受け、自分が上手くなるためにできることは何でもやろうと決心したんだ。少なくともこのシーズンが終わるまでは。これは可能な限り練習をするってことだけじゃなく、色々な角度から試合の勉強することも含まれている。俺は自分の習慣に、“観覧可能な記事には全て目を通す” ことを付け加えた。

貪欲な読書家

複雑だと感じた記事はもう一度読み返すようにしている。その記事内にある全ての情報を、あますことなく吸収するためにな。それと友人やチームメイトに自分のドラフトを共有し、ドラフトの技術を改善しようと試みた。当時の俺にとってドラフトは弱点そのものだったんだ。

それと、先月から上手いプレイヤーのビデオを1週間に1度以上のペースで朝方観るようにしている。昔のプロツアーや世界選手権、グランプリなど大会は何だって構わない。最高のプレイを観ながら、必要であれば一時停止してゲームの行末を考えられるのは俺にとって非常に有益なツールだ。

リスティックの研究

俺はこれらの時間を勉強のための投資だと考えていた。目的はもちろんより良いプレイヤーになるためだが、それと同時にこの作業を心の底から楽しんでいたし、やりたくないことをやっているような感覚はなかった。他に上達する助けとなったのは、チームメイトの意見に耳を傾けるようになったことだ。自分と異なる視点はゲームをより深く理解する助けになったし、自分とは違う洞察力を持つ人々は俺にとってこれ以上ないほどに貴重な存在だ。

1年間マジックに打ち込んだ結果、55点のプロポイントを獲得してプラチナレベルに到達し、世界選手権2017にも滑り込むことができた。幸運だと感じる瞬間もあったし、それがこの結果を後押ししてくれたことに疑いはないが、これまでの努力とチームメイトの支えがなければ間違いなくプラチナレベルに到達することはなかった。

もしも昨シーズンで最も大きく改善できた点をひとつ挙げるとすれば、それはリミテッドの技術にほかならないだろう。ドラフトとプレイの両面でだ。リミテッドは俺の弱点だったわけだけど、もう《死の重み》を背負っているなんて感じることはない。

死の重み

たくさんリミテッドをプレイすることは、その環境のゲームが上手くなるための鍵となる。ゲームを分析することも明確に上達の助けとなる一方で、リミテッドにおける発見の多くはあまりに独特だ。とは言え、その経験は未知のシチュエーションを評価するための基礎体力となる。

構築戦は十分な数のゲームをこなしたならば、その後何が起こるかを的確に予想できるか否かだと思う。これはデッキ選択と試合中の両面に当てはまる。

調整前の事前準備

大きな大会前には、チームでの調整を開始する前にいくつかの準備をこなすようにしている。俺はこれを “調整前の事前準備” と呼んでいる。

この段階では、構築は主要なアーキタイプのポテンシャルを把握するよう努める。『イクサラン』のリストが公開されるや否や、重要なデッキであるティムール・エネルギー、ラムナプ・レッド、《王神の贈り物》、青黒コントロールでたくさんのゲームをこなした。

逆毛ハイドラ熱烈の神ハゾレト王神の贈り物スカラベの神

ここでの目的は新しいものを試すわけじゃなく、デッキの操縦に慣れておくことだ。この時点で各デッキの扱い方が分かっていれば、大会直前の貴重な時間を節約することができる。経験を積むには時間がかかるし、それは替えが効かないものだからな。

リミテッドは各カードのテキストをしっかりと読み返し、そのカードで何ができるかを確認する。新セット発売直後にはどういうことだかいつもテキストを誤認してしまい、そのせいで数回はゲームを落としてしまうんだ。

新カードを使った大会の前にたくさん練習を積んでおくことで、そういった小さな災害をあらかじめ予防することができる。もしも《前線の壊滅者》のクリーチャータイプが「ゾンビ」だったせいでゲームに負けたとしたら、君はこいつのクリーチャータイプを決して忘れはしないだろう。

前線の壊滅者

世界選手権に向けた調整

世界選手権に向けて、マルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho、ケルビン・チュー/Kelvin Chew、クリスティアン・カルカノ/Christian Calcano、リー・シー・ティアン/Lee Shi Tianとチームを組んだ。本戦で彼らと当たる可能性はあるものの、個々でテストするよりもその方が良いと判断したからだ。

ドラフト

俺たちのドラフトの準備に関してはカルカノが記事で紹介してくれるだろうが、個人的にこれだけは言っておかなければいけない。カルカノとマルシオは『イクサラン』のドラフトについて本当に多くのことを教えてくれた。ありがとう、ドラフトマスター!

スタンダード

マジックオンラインで『イクサラン』がリリースされ、メタゲーム上ではエネルギーを使ったいくつかのデッキが最良に見えた。世界選手権で確実にそれを使うと決心するほどではなかったが、調整初日は本戦でいずれかのエネルギーデッキを使うだろうと思っていた。ただし、その気持ちは日に日に薄れていったんだ。

ひとつの大きな理由は、対戦相手のレべルがあまりにも高いことだ。俺は自分をそこそこのプレイヤーだと思っているし、もしかしたら君は俺のことを良いプレイヤーだと言ってくれるかもしれない。ただし相手は世界最高峰のプレイヤーたちなんだ。本戦でほとんどのプレイヤーとミラーマッチをすることになれば、俺の勝率は間違いなく50%を下回るだろうと思ったわけだ。

対戦相手が自分よりも強いのならば、どう足掻いたって勝率は低くなる。対戦相手のレベルはデッキ選択において考慮すべき点だ。自分が平均的な対戦相手よりも弱いと見積もるのは決して良いこととは言えないが、その情報を大会を勝ち抜くために使えるのならば悪くない。

狙いは高く

もうひとつの、そしておそらく最大の原因はどのバージョンをプレイすべきか分からなかったことだ。たくさんの答えるべき難題があり、しかもその答え次第でそれぞれのバージョンが環境的に良いのか、それとも比較的悪いのかが決定されてしまうんだ。

スカラベの神

例えば《スカラベの神》はスタンダードで最高のカードで、必ずプレイすべきカードだと感じていた。とりわけこのカードはミラーマッチで最強だしな。ただ実際に何が起こったのかというと、他のティムールエネルギーを使うプレイヤーは《スカラベの神》に対して十分な準備をしていたんだ。そうなると3色をプレイする方が良いよな。

例え世界最高峰のデッキビルダーたちであれ、こういった特殊なメタゲームにおいてはときにデッキ選択を誤ってしまう。俺はどちらを選んだとしても安心はできないと感じていた。なぜならば、もし間違った道を選んでしまった場合に悲惨な結果を招いてしまうからだ。大会当日が近づくにつれ、俺は自分自身が赤いデッキを使うことになるだろうと思い始めていた。

ラムナプ・レッドのことはしっかりと把握できていたし、その知識は世界最高のプレイヤーたちから俺を守ってくれるだろうと考えた。もちろん、だからといって俺が本命になるとは思わないが、少なくともプレイスキルの差だけでマッチの勝率が10%下がるというようなことはないだろうと思われた。

そうだな、どうやらまた赤い魔導師になるときがきたようだ。

渋面の溶岩使い火の玉

調整最後の数日は、全てのマッチに対してちゃんとしたプランがあるかどうかを確認するために費やした。俺は “テンプレートリスト” を使うのが大好きだ。なぜならそういったリストには往々にしてテンプレートになるだけの理由があるからな。そして今回は個人的な好みを反映させはしなかった。追加の1マナ域も試したんだが、結局それらを気に入ることはなかったんで一般的なラムナプ・レッドに固執したんだ。

俺たちがプレイした中で唯一と言っていい珍しいカードは、サイドボードの《暴れ回るフェロキドン》だろう。これは《領事の権限》対策という意味合いが強い。《領事の権限》はラムナプ・レッドに対して最高のカードであり、赤単側がこれに対して何かできることはほとんどない。また、誰かがトークンデッキを持ち込んだ際にも、《暴れ回るフェロキドン》なしでは苦戦を強いられてしまう。

暴れ回るフェロキドン

つまりこのカードは基本的に最高の白対策カードなんだ。最初はこの恐竜を好きになれなかったが、これ以上に良いアイディアを思いつかなかったのと、調整中にティムールエネルギーに対して4枚入れてみた結果、悪くなかったんで採用することにした。世界選手権には白いカードが1枚もなかったんだけどな!なんてこった!

ラムナプ・レッドがメタゲーム上で素晴らしいデッキだとは思っていなかったが、少なくともそこそこのデッキだとは予想していた。想定したメタゲームはティムールエネルギーがたくさんに、それらを標的としたコントロールデッキが少し、さらにコントロールデッキを取り押さえるべくラムナプ・レッドが少々といった具合だ。俺たちが思い描いていたメタゲームと実際のメタゲームは違っていて、なんと言っても最悪だったのはコントロールデッキを使っていたプレイヤーが持ち込んだリストは、俺たちのリストに対してそこまで相性が悪いものじゃなかったってことだ。

ファルケンラスの過食者

それでも相性が悪いというほどではないものの、《ファルケンラスの過食者》が最も恋しくなる瞬間だ。また、ミラーマッチも想像以上に多かったため、4枚の《削剥》もあまり良い選択とは言えなかった。

ラムナプ・レッド

私見ではラムナプ・レッドには3種の軸があると考えていて、それはテンポ《熱烈の神ハゾレト》、そしてリーチの長さだ。

テンポ

ラムナプ・レッドはテンポに長けたデッキで、特に先手の際にそれが際立つ。こちらのクリーチャーはメタゲーム上に存在する対戦相手の干渉手段よりもマナコストが軽い、または同等程度だから、単にクリーチャーを展開していくだけでテンポ面で得することになるんだ。

だが、注意すべき例外がふたつある。先述したようにこちらは対戦相手の解答よりも軽いクリーチャーを頼りにしている。だがもしもこれが当てはまらない場合は、あえて軽いカードをプレイすることでこちらの重い脅威を相手の軽い妨害手段に突っ込ませるようなことはなくなる。

アン一門の壊し屋蓄霊稲妻

テンポを取るために、ときには脅威を展開しないことで対戦相手のマナを思い通りに使わせないようにすることもある。こういったプレイは主に《アン一門の壊し屋》などを《蓄霊稲妻》といった除去呪文から守る際に役立つな。《アン一門の壊し屋》は最高のテンポカードだし、除去をケアして展開するのは悪くないアイディアだ。

《熱烈の神ハゾレト》

熱烈の神ハゾレト

《熱烈の神ハゾレト》はこのデッキで最高のカードであり、スタンダード全体で見ても最強の座を争える1枚だ。このカードはこのデッキを使用する理由そのものでもある。《熱烈の神ハゾレト》が成すことはこのデッキが求めることそのものであり、《熱烈の神ハゾレト》が手札にあるのなら可能な限り早く彼女で攻撃できるようにすべきだろう。

彼女は少しトリッキーではあるものの、状況がすでに有利なら《熱烈の神ハゾレト》が一度攻撃するだけで対戦相手は逆転不可能になるし、仮に状況が不利でも単に《熱烈の神ハゾレト》を出すだけでゲームの行方はひっくり返る。もちろん状況によりけりだが、多少不利でも《熱烈の神ハゾレト》が2回殴ればゲームを終わらせるに十分なことがほとんどだ。

もしも負けそうな状況であっても、《熱烈の神ハゾレト》を最低でも1度は攻撃させてから守りにまわすプレイが成功になることがままある。理由としては《熱烈の神ハゾレト》以外のクリーチャーはチャンプブロックになることがほとんどであるため、一度《熱烈の神ハゾレト》をブロッカーにまわしてしまうと、そこからもう一度彼女でアタックし始めるのはなかなかに難しいからだ。そこから勝つためには明確なプランが必要になるが、幸いなことに我々の信仰する神には素晴らしい起動型能力まで付いているんだ!

リーチの長さ

ラムナプ・レッドがゲームを決める最後の要素が “リーチの長さ” だ。このデッキはライフを詰める手段を数多く持っている。火力呪文や速攻クリーチャーだけでなく、8枚の土地で対戦相手に直接ダメージを与えることができるんだ。つまり、このデッキは最後の数点を削り切る術に長けているんだ。

ラムナプの遺跡陽焼けした砂漠

問題点としては、対戦相手もこの事実を知っているため、ライフをなるべく高い水準で維持しようとしてくることだ。だが、驚くべきことにラムナプ・レッドは消耗戦でも効率的に動くことができる。古典的なアグロデッキとは違い、ラムナプ・レッドにはマナの使い道が大量に含まれているからだ。

基本的にどんなタイミングであれ、このデッキでカードを引くことがダメージに直結しないなんてことはほとんど起こりえない。これは対戦相手がより多くの解答を持ち、それゆえにゲームが長引くことの多いサイドボード後にとても重要だ。

対戦相手がサイドボード後に大量の解答を持ち合わせていようとも、ラムナプ・レッドは大体のデッキに対してしっかりと渡り合うことができると考えている。なぜならば対戦相手は依然としてマナフラッドでゲームを落としてしまうのに対し、ラムナプ・レッドにはマナの使い道がいくつもあるからな。

プランニングの重要性

ラムナプ・レッドをプレイするにあたって大きな問題となるのは、試合の途中でゲームプランを変えてしまうと、それまでのプランとその後のプランに齟齬が生じてしまうことが多い点だ。例えば序盤に《本質の散乱》を警戒して何もプレイせずにターンを返せば、手札が減らないためその後の《熱烈の神ハゾレト》の攻撃が1ターン遅れることになる。

本質の散乱

もし長期戦に持ち込んで勝利しようとクリーチャーを相打ちにした場合には、攻撃的なカードは価値を落としてしまうし、こういったケースは他にもたくさんある。これがミソで、どんなゲーム運びをしたいのかハッキリさせることが非常に重要なんだ。

地揺すりのケンラ稲妻の一撃

プランを変えるにあたって素晴らしいカードは《地揺すりのケンラ》《稲妻の一撃》だ。これらのカードはこのデッキのどんなプランにもフィットするし、判断に迷ったらこれらのカードを最初にプレイすることが正解になることが多々ある。そうすればより多くの情報を手にすることができ、他のカードをどのように使えばいいかが分かるからな。

サイドボーディング

多くのプレイヤーと同様に、俺もサイドボードガイドの大ファンではない。なぜなら良いサイドボーディングというものは非常に流動的なものだし、多くの要素を考慮した上で決定すべきだからだ。ラムナプ・レッドは他のデッキ以上にそれが当てはまり、目の前の対戦相手がプレイしているカードに合わせてサイドボーディングしなければならない。そこで、ここではサイドボードガイドではなく各マッチアップごとに俺が好んでいるカードとそうでないカードを紹介していこうと思う。

対ミラーマッチ

サイドインしたい

ピア・ナラーチャンドラの敗北霊気圏の収集艇

サイドアウトしたい

アン一門の壊し屋反逆の先導者、チャンドラ

俺が思うに《ピア・ナラー》がミラーマッチで最良のカードだ。現時点では《霊気圏の収集艇》は迫力にかけると感じているが、そうは言っても解答がなければ存在感抜群のカードだし、依然として良いサイドボードオプションだと思う。

対コントロール

サイドインしたい

反逆の先導者、チャンドラ暴れ回るフェロキドン

サイドアウトしたい

ショック削剥損魂魔道士

対コントロールデッキ戦においては、基本的にほとんどの除去呪文をサイドアウトすることになる。対戦相手が《才気ある霊基体》を使っているのならば、《稲妻の一撃》は少しマシになる。《稲妻の一撃》をサイドアウトする際には、《損魂魔道士》も弱くなってしまうことを覚えておこう。コントロールデッキに対していくら1マナ域が重要だとは言えども、1/2のバニラ (能力を持たない) クリーチャーは魅力的とは言い難い。

対トークン

サイドインしたい

暴れ回るフェロキドン反逆の先導者、チャンドラ栄光をもたらすもの

サイドアウトしたい

アン一門の壊し屋削剥

トークンデッキはこちらの脅威を捌くのがうまいので、《栄光をもたらすもの》《反逆の先導者、チャンドラ》を用いてコントロールっぽく立ち回ることになる。このマッチは明確に相性が悪いものの、プレインズウォーカーは《燻蒸》に対抗する術となる。

《王神の贈り物》

サイドインしたい

ピア・ナラー栄光をもたらすもの

サイドアウトしたい

稲妻の一撃熱烈の神ハゾレト

このマッチのように、《熱烈の神ハゾレト》がそこまで強力ではなく無視されてしまうようなマッチアップでは、4枚目をサイドアウトすることにしている。こちらは間違いなく攻撃的にいくべきだが、相手が素早くコンボを達成できそうな場合には注意しよう。《削剥》を構えながらプレッシャーをかけられれば理想的だが、追加のクロックを展開するか、それとも《王神の贈り物》に備えて《削剥》を構えておくかという選択に迫られることが多々あるだろう。賢くいこうぜ!

対ティムールエネルギー

状況によりけりだ。本当にな!

後手の《アン一門の壊し屋》は好きじゃないが、それ以外に関しては対戦相手に対して適切な脅威を選ぶようにしよう。

本質の散乱チャンドラの敗北栄光をもたらすものスカラベの神

《栄光をもたらすもの》は対戦相手が《本質の散乱》《チャンドラの敗北》を採用している場合には弱いものの、黒と《スカラベの神》を起用している形には強い。

反逆の先導者、チャンドラ本質の散乱熱烈の神ハゾレト慮外な押収

《反逆の先導者、チャンドラ》《本質の散乱》に対する最良のカードだ。対戦相手が大量の《慮外な押収》《本質の散乱》を採用している場合には、《熱烈の神ハゾレト》を減らすことも検討しよう。

削剥霊気圏の収集艇

《削剥》《霊気圏の収集艇》に対して素晴らしい働きをするが、それ以外だと大した活躍はしない。世界選手権ではお互いのリストが公開だったため、その他の大会と比べてサイドボーディングは簡単だった。

俺は相手のリストの細部に着目し、サイドボードがどんな形なのかを予想することにしている。例えば数枚の《マグマのしぶき》が入ったリストであれば、サイドボードに大量の《チャンドラの敗北》が含まれてたりはしないだろう、ってな具合にな。

マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2017

この大会はこれまで俺がプレイしてきた中で最高のものだった。それもダントツでな。プロツアーは大好きだけれども、世界選手権はそれ以上だったんだ。この大会に向けたWizards of the Coast社の準備は最高だったし、おかげで俺はさながら賓客のようだった。

俺はお互いのリストを知った状態で対戦するのが好きだ。個人的にその方が試合はより面白くなると思う。それにデッキリストを見ることができるのならば、他のプレイヤーがどのデッキをプレイしているかなんて気にする必要はない。つまり試合と試合の合間の時間は、他のプレイヤーのデッキを調べたりせずにただ休息してればいいんだ。これはプロツアーでもぜひ採用してほしいと思う。

ドラフトラウンド

最初のドラフトは青黒海賊デッキで、パック運に恵まれたこともあり数枚のレアを含む素晴らしい出来栄えだった。3ラウンド目のヒューイ (ウィリアム・ジェンセン/William Jensen) 戦を落としてしまい2勝1敗だったが、おそらくこの試合はもっと上手くプレイできただろう。

数回にわたる損な戦闘の後にゲームに敗北してしまったわけだが、それでもなおゲームに勝つ術はあったと思う。プレッシャーに苛まれてしまったものの、このゲームは貴重な教訓となった。こういった大会で結果を残したければ、もっとリラックスしなくちゃいけないってことだ。

セカンドドラフトは順調とはいかなかったが、複数枚の除去があるそこそこの赤黒デッキを組み上げた。このデッキでは1勝2敗だった。カルカノに負けちまった試合は、俺にとってこの週末で最も面白いものだったな。

おそらく俺は構築段階でミスを犯していた。攻撃的なリストを提出したんだが、サイドボード後の《かき回すゴブリン》などを入れたミッドレンジ風の方が良いデッキだったと思う。いいぞゴブリン、もっとやれ!

かき回すゴブリン

スタンダードラウンド

構築ラウンドは非常に運が良かった。初日は2勝2敗で、ほとんどのゲームで俺か対戦相手のいずれかがマナスクリューかマナフラッドに陥っていた。2日目はドラフトを終えた時点でトップ4に残るためには4勝0敗するほかなかったものの、それを成し遂げることができた。3日制のイベントで、ようやく最終日に進出できたことはこれ以上なく幸せだった。

(編注:ドミンゲス選手は数回にわたってプロツアーで9位になり、最終日に進出できなかった経験があります)

最後の4試合では、全てが上手くいった。トップ4進出がかかったヒューイとの試合はとても緊張していたが、《熱烈の神ハゾレト》が駆けつけてくれたし、ゲーム内容もたくさんの選択肢があるような複雑なものではなかった。

決勝ラウンド

準決勝では、俺の引きはジョシュ・アターレイトン/Josh Utter-Leytonのそれを上回った。決勝戦ではティムールエネルギーが俺のデッキを粉砕したわけだが、まあこれはよくあることだ。このマッチアップでは本来は対戦相手のミスに期待するのが1番なんだが、世界最高のプレイヤーにそれを期待するのは野暮ってもんだ。それと同様に、こちらの思い通りにゲームを進行させることも世界有数の選手相手には難しいよな。

いくつかの局面ではもっと良いプレイングができたかもしれないが、概して自身のプレイには満足している。そしてこの週末には多くのことを学んだし、俺にはまだまだ改善すべき重要な点がたくさんあると感じた。

これから

今後に関しては、ラムナプ・レッドはメタゲーム上で重要な存在であり続けると思う。このデッキはより重いアプローチでティムールエネルギーに打ち勝とうとするデッキを食い物にできるからな。多くのプレイヤーがラムナプ・レッドを標的にしている状態は良いものとは言えないが、1本目でラムナプ・レッドに強いカードってのはしばしば他のデッキに対して弱いものが多い。

直近のメタゲームでは、ラムナプ・レッドが素晴らしい立ち位置だとは思わない。上位デッキの中にとんでもなく相性が良いマッチは存在しないし、その一方で少しばかり相性の悪いマッチがたくさんあるからだ。

とは言え、ティムールエネルギーに打ち勝つために《王神の贈り物》のようなデッキが登場するようであれば、それはラムナプ・レッドにとって好機と言えるだろう。もしもラムナプ・レッドを使うと決めたなら、他のプレイヤーがこのデッキに対してどのような干渉手段を持っているのかを的確に把握しておくことが重要だ。

俺はと言えば、今現在は今シーズンの明確な目標を手にした。それは再び世界選手権に招待されることだ。世界選手権は最高のプレイヤーによる最高の大会だからな。

読んでくれてありがとう!

ハビエル・ドミンゲス

この記事内で掲載されたカード

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