By Hiroshi Okubo
決勝で相見えるのは有田 浩一朗(茨城)と
両者ともレガシーへの愛と造詣は深く、トップ8プロフィールでは『レガシーの最大の魅力』について有田は「ミスったら負けること」、津曲は「めっちゃ楽しいこと!」と回答している。
1枚のカードがもたらすアドバンテージやテンポ差が大きく、1枚の《渦まく知識》がゲーム全体に影響を及ぼすことも間々あるレガシーというゲームにおいて、有田のストイックな姿勢も、だからこそ突き詰め甲斐があり、楽しいと回答する津曲もまさしく生粋のレガシープレイヤーのそれと言えるだろう。
顔見知りのギャラリーに包まれ、和やかなムードの中で開始される決勝戦。対戦前の握手を終えると、第10期レガシー神挑戦者決定戦、最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
有田 浩一朗(茨城) vs. 津曲 修平(埼玉)
Game 1
有田「ああ……まぁ、やるでしょ」
「ANT」操る有田が先攻だ。7枚のオープニングハンドを見つめてキープを宣言し、ゲームを開始する。2点のライフを支払い、《ギタクシア派の調査》。明かされた津曲の手札は――
というもの。まさに津曲が操る「UR Delver」の絶好の初手と言えるだろう。有田も「つっよw」と苦笑を漏らし、続けて《思案》でライブラリートップを確認しつつターンを終える。
津曲 修平(埼玉)
返す津曲がすでに見られている《呪文貫き》を構えながらターンを終えると、有田も土地を置くのみで津曲の様子を伺い、仕掛け時を探る。雑談を交えながら朗らかな雰囲気でゲームを進める有田と津曲だが、決してノリや勢いでプレイすることはない。じゃれ合いながら、しかし静かに対戦相手の喉元へと喰らいつく準備を進めているようだった。
第2ターンになっても有田の様子を窺う津曲に対し、有田は《水蓮の花びら》を設置して《陰謀団式療法》をプレイする。
津曲は当然これに対応して《呪文貫き》。だが、有田は《水蓮の花びら》を起動しつつ2マナを支払い、津曲の手札から《目くらまし》を引き出す。これで有田の見ている限り津曲の手札に打ち消しはないことになった。次のターンが最後のターンだと言わんばかりに、じっくりと手札とメモを手繰りながらターン終了の宣言を行う。
もちろん津曲もそろそろ仕掛けなくてはならないことを理解している。手札に眠っていた《若き紅蓮術士》を戦場に送り込み、静かにターンを終えて有田の様子を窺うが――
時は満ちた。返す有田はまず《暗黒の儀式》。これに2枚目の《目くらまし》を当てる津曲だが、有田は構わず土地からマナを出して要求に応え、一言。
有田「残りマナとストーム数えますね」
これはつまり津曲への死刑宣告だ。まずは《強迫》で前方確認し、そこに打ち消しがないことを確認すると《陰謀団の儀式》から《闇の誓願》、《ライオンの瞳のダイアモンド》、《冥府の教示者》、《陰謀団の儀式》、《炎の中の過去》と続け……
津曲「これ死んでますね?」
有田「ええ、死んでます」
墓地にある呪文全てが「フラッシュバック」を持ったところで第1ゲームの勝敗が決した。
有田 1-0 津曲
Game 2
﨑先攻1ターン目に《秘密を掘り下げる者》をプレイするベストな動き出しを見せる津曲に対し、有田は《定業》で手札を整えるのみで静かにターンを終える。
静と動の対照的な滑り出し。津曲はアップキープに《秘密を掘り下げる者》の誘発を宣言し、ライブラリートップを確認する。
津曲「チェック……不合格」
悔しくも変身ならず、《秘密を掘り下げる者》で1点クロックを刻むのみで第2ターンを終える。2ターン目に《秘密を掘り下げる者》が変身し3点クロックを刻んでくるのは「ANT」側の負け筋の一つでもあるため、有田はこれにほっと胸を撫でおろすような心持りでライフメモを操作する。
第2ターンには有田も動き出す。《定業》から《ギタクシア派の調査》で津曲の手札を確認。そこにあったのは
の6枚。現在のところは1枚の《呪文貫き》を乗り越え、《外科的摘出》に注意を払えばよさそうだ。有田は続けて《思案》でさらに手札を整えていく。隙を見て津曲も《稲妻》をプレイし、有田のライフを少しずつ削っていく。
そして第3ターンを迎えた津曲。再びの「《秘密を掘り下げる者》検定」に挑むが、これまた変身せず……。代わりに引き込んだ2枚目の《秘密を掘り下げる者》をプレイして有田へと喰らいつく。ここまでに《ギタクシア派の調査》や《稲妻》でのダメージもあるので有田のライフは13まで減っており、手札の《稲妻》も併せて“《むかつき》死”だけは逃れられそうだ。
返す有田が《暗黒の儀式》をプレイし津曲に伺いを立て、さすがにこの《暗黒の儀式》を通すリスクは背負えないと津曲も《呪文貫き》で応じる。《暗黒の儀式》が打ち消され、《思案》をプレイ。これに対応して津曲が有田の墓地にある《暗黒の儀式》に対して《外科的摘出》!
《外科的摘出》によって覗き見た有田の手札はストームさえ足りればすぐにでもゲームが決してしまいそうなもの。その後《思案》が解決され、津曲に再びの“検定”のときが訪れる――結果は不合格。3ターン続けて変身しない《秘密を掘り下げる者》にさすがの津曲も苦笑を漏らす。
さて、ここで呪文が公開されなかったことから津曲の手札に打ち消しはないと見てよいだろう。有田はこの第4ターンを最後のターンと見定め、仕掛ける。まずは《陰謀団式療法》をプレイし黒3マナを得ると、《強迫》。
既知の事実として、津曲の手札には《稲妻》がある。有田のライフは残り11。この《稲妻》をプレイするか否か――。
結論として、津曲はこの《稲妻》を有田へと打ち込んだ。そしてそれが、ストームカウント1となり、敗因となった。
有田 浩一朗(茨城)
手札から2枚目、3枚目の《陰謀団式療法》をプレイし、《冥府の教示者》を「暴勇」なしでプレイ。手札にあった《防御の光網》を公開し、サーチしてプレイ。この時点でストームカウントは「7」。そして津曲のライフはフェッチランドと《外科的摘出》によるペイライフによって16。
有田が手札に潜んでいた《苦悶の触手》をプレイする。合計7回のコピーと《苦悶の触手》本体によって津曲のライフが吸い尽くされるのだった。
有田 2-0 津曲
有田「実は手札だけだと(ストームが)足りていなかったんです」
津曲「でも《むかつき》ルートも考えるとあそこは(《稲妻》を)プレイしない手はなかったからなぁ、難しいw」
対戦を終えた有田と津曲はすぐさま感想戦を開始する。使い古された表現ではあるが、これをこそ「飽くなき反省」と呼ぶのだろう。
マジックがマジックである以上、そこに勝者と敗者がいることは免れない。しかし、彼らの語る『レガシーの最大の魅力』は「ミスったら負けること」、そして「めっちゃ楽しいこと」なのだ。津曲は悔しくも敗退してしまうこととなったが、我々はきっとまた再びレガシーのイベントで彼の姿を見かけることになるだろうし、有田は神・川北へと挑むに際してさらなるレベルアップをしてくることだろう。
今はその日が来るのを楽しみに待つとしよう。
第10期レガシー神挑戦者決定戦、優勝は有田 浩一朗(茨城)!
おめでとう!!
この記事内で掲載されたカード
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする