By Atsushi Ito
現在のモダン環境の中心は「エルドラージトロン」「タイタンシフト」「死の影」
さすが多様性に溢れたモダン環境と言うべきか、10人を超える使用者となったのは「エルドラージトロン」「タイタンシフト」「死の影」の3つのみとなった。
「エルドラージトロン」は「ウルザ土地」と《エルドラージの寺院》という2種の加速要素を持ち合わせているおかげで3ターン目以降のスウィングが大きく、《虚空の杯》や《難題の予見者》といった干渉もあるおかげでコンボや「バーン」相手などの相性が改善し、通常の「トロン」よりも苦手なデッキが少なくなっているのが特徴のデッキだ。ただ全体の振れ幅を小さくするために干渉の方向をある程度割り切っているため、「タイタンシフト」や「親和」には厳しい戦いを強いられることにはなる。
「タイタンシフト」は土地コンボの中でも手札破壊に強いため安定性が高く、黒緑系や「エルドラージトロン」など、トーナメントを通して勝ち上がってきやすい干渉型のデッキに対して相性が良いのが魅力的だ。ただ他のデッキが速度勝負をするオールインデッキをある程度狩ってくれるのが前提になるので、フィールドがある程度干渉に寄っていないと厳しい戦いを強いられることになるかもしれない。
「死の影」は手札破壊とオールインを両立させたデッキで、「手札破壊をしてから巨大なクリーチャーを出して高速で殴りきる」という強力な嵌めパターンを持つが、逆にそのコンセプトにデッキ全体が寄っているため、コンセプトが通用しづらいフェアなデッキ相手の立ち回りが課題となるだろう。
勝ち組は「タイタンシフト」「親和」「アブザン」「ストーム」か
そんなメタゲームの中で、トップ16に複数のプレイヤーを輩出したのは「タイタンシフト」「親和」「アブザン」「ストーム」の4つのアーキタイプだった。
これらの結果から見えてくるのは、「要求されるインタラクションの多様化・一般化を逆手にとった先鋭化」だろう。デッキの種類が多いため、既に特定のデッキに対してサイドボードすらも厚めにとることができなくなってきているモダン環境においては、主に使われる干渉手段はたとえ使っているのが違うデッキだとしても共通の、定番のスペルとなってきている。そうした定番スペルによる妨害を、自分自身が尖りきった角度を保つことで、ひとまずメインでは目論見を外す/影響を小さくすることのできるデッキが活躍している傾向が見て取れる。
また、多彩なローグデッキたち (一例を挙げれば、「感染」や「ライブラリーアウト」、「氷雪赤単」や「《霊気池の驚異》」もいたと聞く) がいたにもかかわらず、それらがほとんどメタ上位のデッキには太刀打ちできなかったという事実は、モダンのメタゲームの堅牢さを象徴していると言えるかもしれない。手札、土地、クリーチャー、ありとあらゆる方向の干渉手段を要求するデッキが上位でいくつも重なり合っているメタゲームにおいては、「〇〇には有利」という小手先のアドバンテージよりも、「まずもって自分自身が、妨害されにくい強力なコンセプトを持っていること」が何よりも強みになるのだろう。
今週末は第10期モダン神挑戦者決定戦も開催される。このメタゲームを前提に、次なる勝ち組はどうなっていくのか。ぜひこのメタゲームをあなた自身の手で動かしてみて欲しい。
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