Player Focus -ジェリー・トンプソン-

晴れる屋メディアチーム

by Jeremy Dezani
Translated by Takuma Kusuzawa

原文はこちら
(掲載日 2017/11/17)

「プレイヤーフォーカス」へようこそ!

「プレイヤーフォーカス」は、世界に名立たるマジックプレイヤーにインタビューする企画です。日本のみなさん、そして世界中へ彼らの事を広めていきたいと思っています。毎回違うプレイヤーを紹介しますので、楽しみにしてくださいね!

今回はジェリー・トンプソン(@G3RRYT)です。プロツアー『アモンケット』を見事な黒単ゾンビで勝ち取ったアメリカのプレイヤーです。StarCityGamesで戦うプレイヤーで、ライターでもあります。

インタビュー

氏名: ジェリー・トンプソン
年齢: 33
国籍: アメリカ合衆国
スポンサー: Metagame Gurus Sun
生涯プロポイント: 336
プロレベル 2017-2018: プラチナ

職業 / マジック以外の趣味

俺はオタクなんだ。読書をしたり、JRPGを遊んだり……アニメも見るし、スマートフォンでハースストーンやシャドウバース、エルダースクロール:レジェンズを遊んだりもするよ。

そして、俺の仕事がマジックだ。毎週、StarCityGames.comに記事を書いて、それで生計を立てている。大会で目標にしているのは、赤字を出さないことさ。

マジックを始めたのはいつ、どのセット? マジックを知ったきっかけは?

俺が最初に買ったのは『ポータル』で、ブースターパックに描かれているドラゴンが好きだったからだ。ルールブックも、インターネットも、一緒に遊ぶ相手もいなくて、何年かは靴箱の中で眠らせていたけどね。

15才で働き始めたんだが、同級生であるAdam Gundersonも一緒に働いていたんだ。共通の趣味を探したときに、マジックが候補に上がったんだ。仕事を終えると彼の家へ行き、遊び方を教えてもらった。俺のデッキを作ってくれて、不利なトレードを持ちかけられたこともあったかな。

彼は以前から大会に参加していて、俺に『インベイジョン』のプレリリースへ行く決断をさせるのは簡単だった。そんなことをしているうちに、色々なことに挑戦するようになっていったんだ。

プロプレイヤーになるまでに、あなたに一番影響与えた有名プレイヤーは?

カイ・ブッディ

カイ・ブッディだ。俺が一番やる気になれるのは、強くなるための練習だ。そして彼はその「強くなるための練習」に対して強い信念を持っていて、「努力をすれば、大きなものに届くことができる」という自信を俺にくれたんだ。

これまでの実績

プロツアー・トップ8: トップ8を2回、優勝1回

グランプリ・トップ8: トップ8を11回、優勝2回

その他: アメリカ選手権17 準優勝、SCG Tourでの記録多数

好きな日本人選手とその理由

多くの日本人選手の大ファンだけど、津村 健志は特にお気に入りだ。Kaiと同じく、彼は偉大な信念を持っている。あと、彼は外国人プレイヤーとたくさん交流をしているんだ。俺にとっても、他の日本人プレイヤーよりも彼とは多く話していることになるだろうね。健志はいつも冗談を言ってみんなを楽しませようとしてくれるんだが、誰かを楽しませるというのは、俺がマジックに求めていることそのものなんだよ。

津村 健志

伊藤 敦はとにかくクールなデッキを作るし、渡辺 雄也はスキルの権化だ。そして、齋藤 友晴はマジックが盛り上がるために最高以上のことをしてきている。日本は素晴らしい人でいっぱいだよ。

お気に入りのフォーマットとその理由

俺の一番のお気に入りは2002年頃のエクステンデッドだ。『リバイズド』のデュアルランドはあったけど、『オンスロート』のフェッチランドはなくて、いろんなアーキタイプがあった。俺が本格的に取り組んだフォーマットの一つで、たくさんのことを学んだフォーマットだから、懐かしさもひとしおだ。

今のお気に入りは、モダンかな。「モダンがお気に入りだ」なんて言う日は来ないと思ってたんだけど、今のモダンは多種多様なアーキタイプが存在して、ゲーム自体もサイドボードのカードを引けるかどうかだけでは終わらない。過去にも何度かそういう時期があったけれど、今はとても良い状態だと思っているよ。

実際には、どのフォーマットにも好きな所があるんだけどね。

現時点のドラフトでお気に入りのアーキタイプとその理由

俺が好きなのは青黒海賊に強いカードをタッチして、宝物を活かして使用するものなんだが、最善のアーキタイプではないね。もし勝ちたいなら、白黒吸血鬼を毎回選ぶだろう。

巧射艦隊の略取者人質取りマガーンの鏖殺者、ヴォーナ饗宴への召集

お気に入りのデッキ

ウルヴェンワルド横断死の影タルモゴイフタール火

調整チームを組んでグランプリ・バンクーバー2017を制圧し、《死の影》の力をリアルのマジックに解き放った。《死の影》は、俺がモダンとレガシーでずっと試し続けたカードで、ようやく輝かせることができて嬉しかったよ。

死儀礼のシャーマン断片無き工作員精神を刻む者、ジェイス祖先の幻視

BUG続唱のリストとして、これがベストなものでないことは分かっている。特に、今となってはね。それでも、このリストはずっとお気に入りなんだ。このデッキのほとんどは一から考えたものだ。レガシーのデッキで《断片無き工作員》を初めに入れたのはBrian DeMarsだったけどね。少しの時期であったとしても、レガシーのTier1デッキを作ったことはとても大きな功績だと思っているよ。

アグレッシブやコントロール、ミッドレンジやコンボなどでお気に入りはありますか? また、それはなぜ?

マジックを始めて、あっという間にコントロールデッキが好きになった。俺がやっていたのは対戦相手のゲームプランを阻止するマジックだったんだ。その頃からはマジックは大きく変わってしまって、そういうコントロールデッキというのは見かけなくなってしまったね。

最近は、ミッドレンジを使用することが多いけど、これも好きになってきた。どんな状況でも答えを出せるようなデッキを作ることができるし、「ゲームに勝利する」というのが出すべき基本的な結論になる。ミッドレンジはその結論へ向けて、積極的にアプローチできるんだ。

可能ならばテンポデッキが好きなんだけど、そういうデッキが組めることは稀だ。そして、残念ながら純粋なコンボを回すのは苦手なんだ。あと、他のゲームで遊んでいたことがアグロデッキをプレイするときに役立っていると思うよ。

フォーマットを問わず、今現在、特に気に入っているデッキは何ですか?

光袖会の収集者スカラベの神機知の勇者才気ある霊基体

世界選手権2017プロツアー『イクサラン』に向けた練習の中で、特に試したデッキの一つがこの青黒《航路の作成》だ。実際に使う勇気は出せなかったけどね。ただ、今となっては、これでグランプリ・ポートランド2017に出るのは、やぶさかでもないよ。

《光袖会の収集者》現環境で最高のカードだけど、あまり見かけない一枚だ。そして《スカラベの神》はスタンダードで一番優れたフィニッシャーだ。大体の人がスゥルタイに入れようと考えるけど、緑は必要ないと考えている。緑を入れない代わりに、《才気ある霊基体》などが使いやすくなって、ティムールの《牙長獣の仔》《逆毛ハイドラ》に対して強くなる。マナ基盤も良くなるしね。

大きな大会で青黒ミッドレンジが活躍することはあまり見られないけれど、Magic OnlineではM3L0QやJaberwockiが色んな調整を押し進めていた。《機知の勇者》《死の権威、リリアナ》《害悪の機械巨人》をデッキから抜いたのは、正しい方向へ大きく進んでいると考えている。《スカラベの神》の方が圧倒的に良いフィニッシャーだし、《奔流の機械巨人》パッケージの分、枠も空くしね。

1パック目の1手目、どれをピックしますか?

血に狂った聖騎士群棲する猛竜風雲艦隊のスパイ小綺麗なスクーナー船ティロナーリの騎士
激情の猛竜女王の任命身勝手な粗暴者立ち枯れの守り手風を跨ぐ者
破砕依頼殺人軍団の征服者縄張り持ちの槌頭森

ほぼ即断で《縄張り持ちの槌頭》かな。

《依頼殺人》は強そうに見えるけど、環境的にちょっと遅くて一番目のピックにしたいカードじゃない。《風雲艦隊のスパイ》も魅力的でいいんだけど、《縄張り持ちの槌頭》の方がダメージを素早くねじ込めて、『イクサラン』のようなアドバンテージよりも速さを優先したいときには取りたい。2マナのカードを確保するのはとても大事だから、《ティロナーリの騎士》は納得できるけど、全体的に《縄張り持ちの槌頭》よりも弱いしね。

『イクサラン』ドラフトでは、初めの何ピックかは広く受けて、空いてるアーキタイプへ移行しやすいカードを取る戦略を試し続けている。今は部族カードが最善手ではあるんだけど、無理に押し通すと、うまく回らなかったときに大事故になってしまうからね。

プロツアー『アモンケット』で優勝を果たしたあと、驚くべきことをしましたね。トロフィーを売却して、Planned Parenthoodに寄付しました。その理由を教えてくれますか?

プロツアー『アモンケット』で優勝したあと、熱烈な祝福を受けたんだ。俺は、助けを必要とする人に対してそのお返しをしたいと思っていて、プロツアーの優勝で人助けができるチャンスだと思ったんだ。

特に大きな理由があって寄付をしたわけではないんだけど、Planned Parenthoodは俺が考えいてた要件をすべて満たしていた。Planned Parenthoodは毎年何百万人という人を救っていて、そのほとんどは他の組織では救えない人たちなんだ。活動資金がなくなりそうだという話も聞いていたから、彼らに寄付するのが、一番世界を救えると思ったんだ

俺自身、裕福な家庭に生まれていないから、子供時代には良い思い出がない。だから、共感するだけでなく、誰もが経験するであろう苦しみも分かるつもりさ。何か良いことができるなら、ぜひやりたいと思っているよ。こういうとき、俺はあまり感傷的にならずにすぐ行動に移せるんだ。毎日プロツアーのトロフィーを眺めるという暮らし方もあっただろうけど、それが世に出て役に立つなら、ちゃんとした意味があると思うんだよ。

期待をはるかに上回って落札価格は6,000ドルを越えたんだ。オークションに参加してくれた人には感謝しきれないよ。

2017年に、生涯初の世界選手権へ出場しましたが、どうでしたか?誰があなたの印象に残っていますか?

世界選手権2017に参加したのは、人生で最高の体験だったのは言うまでもない。少人数の招待制大会は、その場にいるだけで特別な気分になれるから素敵だよ。WotCはプレイヤーたちに、「自分は注目されている。評価されている」と思わせるいい仕事をしてくれた。

結果は7-7で9位だった。最終戦でもトップ4圏内だったから、かなりいい線だったし、とても誇りに思っているよ。

あと、ドラフトの一戦でケルヴィン・チュウには脱帽したよ。数ターンの間、彼は完璧な攻撃判断を見せて、俺が彼を倒せるちょうど1ターン前に俺のライフをきっちり0にしたんだ。プロツアーの常連でも負けうるゲームだったと思うけど、彼は完璧に勝利を手に入れた。本当に印象的な一戦だったよ

ケルヴィン・チュウ

以前はウィザーズ・オブ・ザ・コーストで働いていましたね。その時のことを教えてください。どういう仕事をしていましたか? マジックのイベントに参加できないのは大変ではありませんでしたか? もしできるなら、またやりたいですか?

今までの人生で出会った中で最も頭のいい人たちと一緒に働けたおかげで、たくさんのことを学べた。すばらしい経験だったよ。

『タルキール覇王譚』の開発にインターンとして入り、『タルキール龍紀伝』の開発チームにもいたんだ。ドラフトやシールドをしたり、構築を試したり、というのをお金をもらいながら続けられて、それはもう夢のような時間だった。自分のした仕事には誇りがあるし、素晴らしいスタンダードの一時代を導けたと思うよ。

実際には明らかにいくつかミスをしていて、《宝船の巡航》《時を越えた探索》はモダンを少しかき乱したし、《包囲サイ》はスタンダードにしてはちょっと強すぎたし、『運命再編』ドラフトはレア依存になってしまっていたけど、実はもっととんでもないことになってたかもしれないんだ。

時を越えた探索宝船の巡航包囲サイ

最終的に辞めた理由はマジックをしたくて仕方なかったからだ。それまでは、暇なときはマジックをしているか、もしくはマジックのことを考えている、という状態だったから、仕事にしてしまうと家に帰ったときにやることが何もなくなってしまったんだ。自分の大部分を失ってしまったみたいだったよ。プロツアーに参加しながら、マジックを作る手助けができればもちろんやるだろうけど、残念ながらそれは許されていない……少なくとも今はね。

12月にはアメリカを代表して、フランスのニースで開かれるワールド・マジック・カップに出場しますね。チームのこと、そして国別選手権でのことを教えてください。

複数のフォーマットがある大会でほとんどの場合鍵になるのが、ドラフトで優位に立つことだ。多くの人が準備しきれていないフォーマットだから、構築を頑張るよりも大きなアドバンテージを得やすいからね。

俺はアメリカ選手権のドラフトで6-0して、そのままトップ8に残れたんだ。

正直なところ、アメリカ選手権に行ったのは賞品が「リード・デュークとチームを組めるから」ってだけさ。日本とブラジルは素晴らしいチームで来るけど、俺たちのチームもかなり良い。オリヴァー・トマコの強さはあまり知られていないから、みんなが過小評価してくれるといいな。

リード・デューク

オリヴァー・トマコ

これまで公式の場で、国を代表してマジックをすることができる場面はなかった。だから、これは俺にとってとんでもない名誉だ。ずっとやりたいと思っていたことだったからね。

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