Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2017/11/24)
本日は『イクサラン』リミテッドについて、主にいくつかのレアと神話レアカードについてお話ししたいと思います。レア、そして神話レアは一般的にリミテッドにおいて最も評価するのが難しいとされていますが、これは下記2点が原因です。
これらの理由から、新しいドラフトフォーマットが始まった際には可能な限りのレアカードを試すことを強くお勧めします。50回もドラフトをすれば、全てのコモンとアンコモンを評価できるようになるでしょう。しかし何種類かのレアや神話レアを試したことがなかった場合、仮にそれをプロツアーでを引いてしまった際にあなたは問題に直面してしまうことになります。
それでは、ここからは『イクサラン』環境におけるいくつかの例を見ていきましょう。
《再誕の司教》
グランプリ・静岡2017秋 (チームシールド) で白黒吸血鬼を担当していた私は、2日目に2枚の《再誕の司教》を引きました。このカードを初めて目にしたとき、誰もがこれはゲームを台なしにしてしまうほどに強力なカードで、シールドでもドラフトでも引きたい1枚だと思ったことでしょう。
しかしながら、実際のこのカードはどうかというとあなたが予想していたよりも弱いカードです。私はグランプリで《再誕の司教》を2枚ともプレイしていましたが、《再誕の司教》よりも2枚の《輝くエアロサウルス》、または《選定された助祭》の方が良かったです。その理由について説明しましょう。
《再誕の司教》は《太陽のタイタン》ではありません。もしかすると少し小さな《太陽のタイタン》に見えるかもしれませんが、これらのパワーレベルには大きな隔たりがあります。《太陽のタイタン》には「戦場に出たとき」に誘発する効果があるため、対戦相手が《太陽のタイタン》をすぐさま除去してしまった場合にも、これをキャストしたターンに戦場にインパクトをもたらすことができます。
もしも《再誕の司教》をプレイして《決別の砲撃》で除去されてしまったとしたら、盤面の優位もカードアドバンテージすらも獲得することができないのです。3/4で回避能力を持たないカードは、5マナのカードとして素晴らしいとは言えません。《卑怯な行為》や《吸血鬼の士気》といったカードがなければ、《再誕の司教》を生かせるような良い攻撃を行うことは困難なのです。
また、『イクサラン』環境にはたくさんの5マナのカードがあり、率直にいって《再誕の司教》は他のコモンやアンコモンの5マナのカードよりも優れているというわけではありません。
白の5マナのコモン・アンコモン
白黒吸血鬼の5マナのコモン・アンコモン
まとめ
もちろん、このカードはそれほど悪いものではありませんが、《マガーンの鏖殺者、ヴォーナ》などの爆弾レアには遠く及びません。私は《再誕の司教》を流すことに何ら抵抗はないですし、これよりも《縄張り持ちの槌頭》や《崇高な阻止》を優先します。ただし、皆がこれを知っているわけではありませんし、《再誕の司教》が流れてきたことを “白が空いているシグナル” だと思ってピックしてしまうプレイヤーがいることには気を付けましょう。
《定命の枢軸》
このカードは毎セット恒例の “使えない神話レア” に見えます。しかし、使い方さえ心得ておけばこのカードには大いに可能性があるのです。
このカードを使うにあたって、攻撃をしないことが重要になります。あなたが与えてしまった全てのダメージは、あなたが後にライフの交換によって得られるはずだったものを削ってしまうということを意味します。
そしてそれ以上に把握しておかなければいけない重要な点は、このカードをプレイするべきタイミングです。このカードは「6マナはあるけど他にすることもないし、とりあえず出しとくか」といった類のカードではありません。できるだけ対戦相手に悟られないようにすべきなのです。そうすることで対戦相手はあなたを攻撃してくるでしょうし、それによりこのカードの重要性は高まります。
目標としては、対戦相手が致死ダメージを叩き出せるようになる1ターン前に《定命の枢軸》をキャストすることです。”致死ダメージを叩き出せるようになる” という言葉には、本体火力や《巨大化》系の呪文が飛んでくる可能性も含まれています。こうすれば、相手は《定命の枢軸》が出た瞬間に攻撃をやめてしまうでしょう。
《定命の枢軸》は毎ターンライフを交換することができますが、おそらく一度しか使いません。繰り返しになりますが、ライフの交換を行うべき正しいタイミングは慎重に判断しましょう。ライフ交換を行うと対戦相手は再び攻撃できるようになるので、攻撃を始めるターンまで《定命の枢軸》の能力を使わないように注意しましょう。
この過程でゲームが長引いてしまい、お互いに大量のパーマネントを展開することになるでしょうが、あなたにはライフ面で大きなアドバンテージがあります。飛行やブロックされないクリーチャーは、あなたに勝利をもたらしてくれることでしょう。
また、この環境には《定命の枢軸》と完璧に機能するカードがいくつか存在します。それはライフを支払う効果を持ったカードたちです。ライフを支払った後に《定命の枢軸》の能力を使用すれば、簡単にゲームを終わらせることができるでしょう。
《トカートリの儀仗兵》
このカードが素晴らしいものかどうかを簡単に判別するには、『イクサラン』環境にこのカードの影響を受けるカードがどれだけあるかを数えれば分かります。
通常の「戦場に出たとき」に誘発する能力を持ったクリーチャーに加え、『イクサラン』環境には多くの「探検」や「強襲」能力を持ったクリーチャーが存在するので、それもカウントしましょう。1本目が終われば、対戦相手が大量の「戦場に出たとき」の能力を持ったクリーチャーを擁しているどうかを知ることができるでしょう。
こちらが《トカートリの儀仗兵》によって影響を受ける各色のカードリストになります。
白:7
青:11
黒:10
赤:8
緑:8
多色:4
ご覧のように、数種のクリーチャーは《トカートリの儀仗兵》によってより深刻な被害を被ることになります。例えば、《巧射艦隊の操舵手》の能力が誘発しないのと《流血の空渡り》の能力が誘発しないのでは意味合いが大きく異なります。
《トカートリの儀仗兵》が自分のデッキにどれくらい影響を及ぼすかも把握しておくべきでしょう。とはいえ、対戦相手にとってこのカードが致命的になる可能性は十分にあるということです。
また、《トカートリの儀仗兵》は《嵐を変容する者》のようなディスアドバンテージになりえる能力を取り消すのに役立つことは覚えておきましょう。
《溢れ出る洞察》
《溢れ出る洞察》の明確な強みはカードアドバンテージです。これを唱えて良い状態で次のアンタップを迎えられたのならば、かなりの確率でそのゲームに勝つことができるでしょう。続いてはこのカードの弱点と、いかにしてそれを解決すべきかを見ていきたいと思います。
これはソーサリーで7マナ、さらにキャストしたターンには戦場に何の影響も及ぼしません。
つまるところ、《溢れ出る洞察》をキャストするためには1ターン丸々パスしなければいけないということを意味します。これを実行するために、劣勢になることもあるでしょう。《スフィンクスの啓示》といったカードは、こういった問題を自己解決しています。
インスタントなので対戦相手の動向次第で《スフィンクスの啓示》を唱えるかそれとも他の呪文を唱えるか決めることができますし、ライフ回復能力が失ったテンポ分を補完してくれるからです。
《溢れ出る洞察》をキャストしようとするのならば、盤面に気を配らなければいけません。最良の方法は盤面にインパクトを与えることができ、なおかつ下記のいずれかを実行できるカードをプレイすることです。
マナ加速
例えマナ加速カードが序盤の《溢れ出る洞察》のキャストに繋がらなかったとしても、それらは《溢れ出る洞察》で引いたカードをキャストするのに貢献し違いを生み出してくれます。この点において、《宝物》を生み出せるカードは最高ですね。
ライフ回復
ライフを回復することは、《溢れ出る洞察》をキャストして対戦相手に干渉できないターンに失ってしまうライフを軽減する助けになります。
《溢れ出る洞察》の直前の相手のターンにキャストできるカードを使う
仮にソーサリーばかりだと、《溢れ出る洞察》をキャストする直前のターンに現れたクリーチャーに干渉することができません。その点インスタントで干渉すれば、《溢れ出る洞察》をキャストすることで失ってしまうテンポを効率良く抑えることができます。
おわりに
この記事を読んでみなさんが『イクサラン』のドラフトをプレイしたくなり、上記カードを試して楽しんでいただければ幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ジェレミー・デザーニ