By Genki Moriyasu
これまでに2日間9回戦という長丁場の決闘を生き抜いてきた戦士たち。
決勝進出に芽を残すラインでのマッチアップから、阿部 倫央(東京) vs. 金子 真幸(東京)をフィーチャーした。
先日のグランプリ・静岡2017秋のチーム・リミテッド戦を早川 翔、橘 健太郎らとともに優勝した阿部 倫央。
プロプレイヤーチームへのジャイアントキリング(大物潰し)を繰り返した雄姿は鮮烈にして強烈であった。
しかしながらThe Last Sun 2017は個人戦、そしてスタンダードとレガシーの混合構築フォーマットという、グランプリ・静岡2017秋とは真逆の環境だ。
競技舞台の最前線へ華やかなデビューを果たした阿部はここまでで7勝2敗。オールマイティに戦えることを証明していた。4色エネルギーというスタンダードを代表するデッキを握り、Round 10へ挑む。
対するは金子 真幸。新潟出身だが、最近は東京でプレイしているプレイヤーだ。
「PPTQに出たことはないが、グランプリのような大規模大会はお祭り感覚で楽しく参加している」と話す。The Last Sunも年末を彩る祭として、広くプレイヤーに受け入れられてきているようだ。
その金子が選択したデッキは青緑黒(スゥルタイ)。
《光袖会の収集者》によるアドバンテージを中心に、王者ティムールに対して物量戦を仕掛けられるデッキだ。
”楽しく遊ぶ”と表現していたが、試合に挑むにあたっては、もちろん真剣な面持ちだ。
Game 1
ダイスロールで先手を獲得した金子が《霊気との調和》から《光袖会の収集者》と続けて、展開しつつもハンドをまったく減らさないスゥルタイ然とした立ち上がりを見せる。
阿部も《導路の召使い》スタート。
マナ加速のアドバンテージを得たいところだったが、金子が《光袖会の収集者》の能力で引き込んだ《致命的な一押し》をプレイして”待った”をかける。
阿部はこれ以上ハンドの枚数に差をつけられないように《ならず者の精製屋》プレイより《蓄霊稲妻》を優先して、《光袖会の収集者》を退場させる。
ここで金子のドローは《逆毛ハイドラ》。
戦況を決めうる1枚だが、残念ながら《植物の聖域》《沼》《沼》《島》と土地を並べる金子は、{緑}{緑}を捻出できずこれを召喚する権利を持たない。
ハンドに追加の土地もなく、《ならず者の精製屋》プレイで引いたカードも、緑マナ生成とは縁遠いクリーチャー・カードだ。
阿部も《ならず者の精製屋》の鏡打ちだが、余った1マナから《霊気との調和》をプレイして、マナ基盤を盤石なものにする。
次のターンには《つむじ風の巨匠》を着地させ、既に大量に生み出されているエネルギーの消費先も用意した。
金子は《ならず者の精製屋》を飛行機械トークン2体と相打たせたあと、《多面相の侍臣》で阿部の《ならず者の精製屋》をコピーする。
お互いの盤面にはいくらかの土地と《つむじ風の巨匠》(本体とクローン)のみ。
このタイミングで所有するエネルギー量は阿部が6つに対して金子が9つと、微差ながら戦場の主導権を握るのは金子だ。
金子はエネルギーを飛行機械トークンへと変えつつ、《光袖会の収集者》と《逆毛ハイドラ》を追加してゆく。
減らないハンド。伸びる戦線。
金子のスゥルタイがその実力を存分に見せつけるなか、ハンドが土地に染まった阿部が潔く次ゲームへの進行を申し出た。
阿部 0-1 金子
Game 2
緑マナのない初手をマリガンした阿部。金子は充分な土地と除去とカウンターで7枚をキープする。
阿部の初動《導路の召使い》へ、金子は《致命的な一押し》を当てる。
金子の《逆毛ハイドラ》がエネルギーを生み出す誘発型能力に対応して、阿部が《蓄霊稲妻》を当てる。
動かず、動かさせず。
ここから動きなくコントロール対決さながら土地を5枚6枚と伸ばしあった両者だが、そのデッキタイプの差からドロー・ゴーの意味合いは少し異なる。
金子「(明らかに)除去がいっぱいあるんだもんなあ」
4色エネルギーが5マナを越えても動かないということは、阿部はハンドに火力呪文を中心とした除去を沢山抱えるということだ。
阿部「エンドで動けるそっちの方が有利そうなんだよなあ」
4色エネルギーより青要素の濃いスゥルタイは、打ち消しやドロー、そしてそれらを再活用する《奔流の機械巨人》といったインスタント・アクションが多い。
事実、金子は《至高の意志》で隙少なくハンドの充実を図っていく。
互いが互いを牽制しあうなか《自然に仕える者、ニッサ》プレイで先手をとりにかかる阿部。
金子は対応してプレイした《奔流の機械巨人》で《至高の意志》を使いまわし、阿部の立ちマナを枯らすとコンバットで《自然に仕える者、ニッサ》を落とす。
さらに《秘宝探究者、ヴラスカ》の[+2]能力で海賊トークンも追加すると一気に盤面が整った。
対する阿部もここで抱えていた除去を吐き出してゆく。
まず《多面相の侍臣》で《奔流の機械巨人》をコピーして、墓地の《蓄霊稲妻》を海賊トークンへ当てて破壊。次いで《削剥》で金子の《奔流の機械巨人》を破壊。
阿部が盤面をかなり取り戻した……かに見えたが、金子の《ヴラスカの侮辱》でクローン《奔流の機械巨人》が追放されたあと、更地の戦場で、金子の《秘宝探究者、ヴラスカ》の[+2]能力がゆうゆうと機能しはじめる。
阿部も起死回生をかけて《秘宝探究者、ヴラスカ》鏡打ちで戦況をイーブンに持ち込もうとしたが、《否認》が刺さると「負けましたっ」と歯切れ良い一言でマッチを締めくくる。
阿部 0-2 金子
”グランプリ・チャンピオン”阿部を、普段は競技シーンにそこまで触れていない金子がストレートにくだす。
グランプリ静岡2017・秋にてジャイアント・キリングを果たした阿部が、今度はジャイアント・キリングで討たれる側となった。このジャイアント・キリングはグランプリさながら多様なプレイヤーが参加するThe Last Sunの風物詩だ。
残りスイスラウンド、4戦。
金子はこの勝ち戦に勢いをつけて決勝進出を目指す。
阿部も、この敗戦をバネに残る試合を全て勝ちで収めれば決勝進出の芽は残っている。