By Hiroshi Okubo
The Last Sun 2017といえば、プロプレイヤーも多数参加している。そして、プロプレイヤーにはその長いマジックキャリアと数々の大舞台でのプレイ経験から、様々なエピソードがつきものだ。
高橋 優太と山本 賢太郎。プロツアー・サンディエゴ07で相当巨人戦のコンビを組んで準優勝に輝き、現在へと至るプロとしての経歴をスタートさせたこの2人が、10年の月日を経てThe Last Sun 2017トップ8進出をかけた大一番の勝負に臨むとは、なんという運命の悪戯か。
ペアリングが発表され、フィーチャーマッチテーブルへとやってきた2人は、しかしそんな偶合にもまったく動じることなく淡々とした様子だった。日ごろから勝負の世界に身を置く2人に、もはやそのような感慨はないのかもしれない。
最も重要なのは、ただ勝利すべき試合で眼前の対戦相手に勝利すること。そして今こそ、勝利すべき時だ。
Game 1
高橋「先手取れた。大事、大事w」
先んじてマナを使用できる先攻の有利性について、ましてやエターナルにおいてのそれは語るまでもないだろうが、まずは先攻を得た高橋が嬉々として《思案》。返す山本も《思案》をプレイし、レガシー定番の鏡打ちの滑り出しとなった。続くターンも互いに手札を整え、山本は着実にコンボパーツを探し、高橋はそれに対応しきるためのカードを集めていく。
先に仕掛けたのは高橋だ。第3ターンに《僧院の導師》をプレイして山本の反応を窺うと、小考の間も持たず山本も虎の子の《意志の力》を以て打ち消した。
返す山本はまだじっくりと仕掛けどころを探り、高橋が次の攻撃の担い手を探しにドロースペルを連打したタイミングで手札の《騙し討ち》を解き放った。これに高橋が《意志の力》で呼応すると、山本も《意志の力》で応じる。
無論、高橋はこれを通すわけにはいかない。大いに悩みつつ、《瞬唱の魔道士》で《渦まく知識》を「フラッシュバック」して対応策を探り、《意志の力》を引き当ててこれを打ち消す。激しい打ち消し合戦は高橋が勝利を収め、《騙し討ち》はスタックから取り除かれた。
返す高橋は《精神を刻む者、ジェイス》をプレイして「0」能力を起動。さらに《瞬唱の魔道士》でコンバットを行い、山本のライフを削っていく。返す山本から2枚目の《騙し討ち》が飛び出してくるも、高橋も3枚目の《意志の力》で対処し、いよいよ高橋が反撃の狼煙を上げた。
まずはフェッチランドを残していない山本のライブラリトップを《先触れ》で検閲。さらに《精神を刻む者、ジェイス》で手札の質を高めていき、《瞬唱の魔道士》で攻撃。流れるような動きで行われる一連の所作は、その一つ一つが山本を絶望の淵へと追いやっていく。しかし、先の《先触れ》嵌めのせいで不要牌ばかり引かされる山本には当然この状況を打開することはできなかった。
やがて高橋が2枚目の《瞬唱の魔道士》をプレイし、《先触れ》を「フラッシュバック」し山本へとプレイしたところで第1ゲームの勝敗は決した。
高橋 1-0 山本
Game 2
第1ゲーム同様、互いにドロー呪文で手札を整えるスタート。先ほどは3ターン目に《僧院の導師》をプレイして山本を揺さぶった高橋だったが、今回はじりじりと土地を並べるだけでターンを終える。
やがて山本が動き出す。《古えの墳墓》を絡めて3マナを出し《実物提示教育》!
仕掛けてきたか、とこのコンボに備えてきた高橋は、まず《予報》で2ドローを行った後に《狼狽の嵐》。「ストーム」2のこれが山本の《実物提示教育》に突き刺さるのを受け、山本は土地から2マナを捻出してオリジナルに《意志の力》。だが、これに高橋からも《意志の力》が撃ち込まれ、山本からの“第一波”を凌ぐことに成功した。
この攻防で手札が3枚まで減ってしまった山本に対し、今度は高橋が仕掛ける。続く山本のドローステップに《ヴェンディリオン三人衆》をプレイ!
山本が一瞬固まり、対応して《渦まく知識》でその手札をじっくりと、高橋の“ミス”を誘えるような4枚へと作り替えていく。ひりつくような時間、高橋は「心理戦だ」とこの状況を楽しんでいる様子だ。やがて明かされた手札は……
「なるほど」高橋が苦笑を漏らす。そして再び深く「なるほど……」と考え込む。その手札には明確に厄介な《防御の光網》が見えるが、これを《ヴェンディリオン三人衆》で抜いてしまうと山本が先の《渦まく知識》で《実物提示教育》をライブラリーの上に積み込んでいた場合に裏目になってしまう。
思考を言語化し、整理した高橋はやがて「そのままで」と宣言。山本からは《防御の光網》を設置され、いよいよゲームの温度が一段階上がったような錯覚を受けた。
返す高橋は《引き裂かれし永劫、エムラクール》への対処策となり得る《精神を刻む者、ジェイス》をプレイ。「0」能力で手札を強化した後《先触れ》。山本のライブラリートップ3枚のカードを見て、山本を一瞥。「良い、良いよ」と山本へと笑いかけ、ライブラリーをシャッフルする。どうやら先ほどの《ヴェンディリオン三人衆》をめぐる攻防は無駄ではなかったようだ。
返すターン、山本が《定業》をプレイするのを見て祈るような所作を見せる高橋。どうやらこのターンはまだゲーム終了のときではなかったようで、山本もターンを終える。
再び高橋にターンが巡ってきた。まずはと《僧院の導師》をプレイし《精神を刻む者、ジェイス》の能力を起動。さらにフェッチランドを起動し、《解呪》で山本の《防御の光網》を破壊する。
着実に高橋に形勢が傾いていく。《精神を刻む者、ジェイス》がいて、《僧院の導師》まで出ている以上、このままじっくりと腰を据えたゲームをしていては山本の敗戦は必至だ。ここが潮時と山本は2枚目の《防御の光網》を設置しつつ、乾坤一擲の《裂け目の突破》!
高橋は唸りながら《予報》でドローしつつ、これを通す。無事に《グリセルブランド》を着地させた山本はさっそく攻撃を行い、7ドロー。ターンさえ帰ってくれば再び仕掛けられる状態まで手札を回復させた。
……だが、高橋の盤面には《僧院の導師》に加えて《解呪》と《予報》によって生成されたモンクトークンが2体いる。《予報》、《渦まく知識》、《思案》、《思案》とプレイした高橋は素早くクロックを16点まで増大させ、一撃で山本のライフを蒸発させた。
高橋 2-0 山本