by Jeremy Dezani
Translated by Kazuki Watanabe
(掲載日 2017/12/23)
「プレイヤーフォーカス」へようこそ!
「プレイヤーフォーカス」は、世界に名立たるマジックプレイヤーにインタビューする企画です。日本のみなさん、そして世界中へ彼らの事を広めていきたいと思っています。毎回違うプレイヤーを紹介しますので、楽しみにしてくださいね!
今回インタビューするのは、マイク・シグリスト(@MSigrist83)です。プレイヤー・オブ・ザ・イヤー2015に輝いたアメリカのプレイヤーで、当時から素晴らしい成績を残し続け、留まることを知りません。世界の頂点に君臨するプレイヤーの一人です。
インタビュー
氏名: マイク・シグリスト
年齢: 34
国籍: アメリカ
スポンサー: ChannelFireball.com
生涯プロポイント: 269
プロレベル 2017-2018: ゴールド
職業 / マジック以外の趣味
双子の娘のお父さん
マジックを始めたのはいつ、どのセット? マジックを知ったきっかけは?
『フォールン・エンパイア』のころに始めたよ。友人がお金を拾って、目の前にあった店に入り、そのまま『第4版』のスターターデッキを買ったんだ。そこから遊び方を覚えて、それ以降ずっと遊び続けてる。
プロプレイヤーになるまでに、あなたに一番影響与えた有名プレイヤーは?
デイブ・シールズが自分を競技レベルに、そしてプロツアーを目指し、出場し続けるように導いてくれたんだ。少し前までマジックは控え気味だったんだが、彼に会ったら「マジックをもっとやるように」と言われたよ。
これまでの実績
プロツアー・トップ8: 3回
グランプリ・トップ8: 8回
その他: 2015年プレイヤー・オブ・ザ・イヤー
好きな日本人選手とその理由
中村 修平だ。
Channelfireballで彼と共にたくさん練習をしたし、とても多くのことを彼から学んだよ。 彼はいつだってベストなプレイヤーで、そんな人が自分の仲間にいたことはとても恵まれていたことだよ。あと、京都のグランプリのときに足を怪我してしまったんだが、そんな僕を彼は病院に連れてってくれたんだ。
お気に入りのフォーマットとその理由
ブースタードラフトさ! 卓で空いている色や、アーキタイプを探るプロセス、毎回新たなデッキを作り上げるということ、そして常に新たなゲームが待っている。とにかく大好きだよ。
現時点のドラフトでお気に入りのアーキタイプとその理由
もし一つ選ぶとしたら、5色宝物かな。基本的なベースは青黒で、そこから《裕福な海賊》《新たな地平》を使って、どの色のパワーカードが来てもプレイできるようする、というやつさ。
アグレッシブやコントロール、ミッドレンジやコンボなどでお気に入りはありますか? また、それはなぜ?
ミッドレンジなデッキを好むかな。相手の動きに対応できるし、それだけでなく必要に応じてアグレッシブな戦略を選ぶことができるのも好きなんだ。ミッドレンジは最も戦略を切り替えることが可能なデッキなんだ。お気に入りのデッキ
モダン:グリクシスシャドウ
スタンダード:4Cエネルギー
レガシー: スニークショー
フォーマットを問わず、今現在、特に気に入っているデッキは何ですか?
現在最も好んでプレイするデッキはモダンのグリクシスシャドウだ。《思考囲い》を唱えて、相手の情報を完璧に手に入れた状態でどのように勝ちへ進むか探る、というのが好きなんだ。パズルを解くような感じだよ。グリクシスシャドウが優れている理由として、《思考囲い》や《コジレックの審問》を駆使してどのようなマッチアップでも勝てる可能性があることで、挑戦的なデッキに対して速いクロックを刻むことだってできるんだ。
参加することはできなかったんだけど、グランプリ・オクラホマシティ2017で使う予定だったデッキのリストを載せておくよ。
1 《島》
2 《湿った墓》
1 《血の墓所》
1 《蒸気孔》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
-土地(18)- 4 《死の影》
4 《瞬唱の魔道士》
4 《通りの悪霊》
2 《黄金牙、タシグル》
2 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー(16)-
4 《選択》
4 《思考掃き》
4 《思考囲い》
3 《頑固な否認》
2 《コジレックの審問》
1 《血清の幻視》
1 《終止》
2 《コラガンの命令》
1 《四肢切断》
-呪文(26)-
2 《外科的摘出》
2 《最後の望み、リリアナ》
1 《頑固な否認》
1 《集団的蛮行》
1 《紅蓮地獄》
1 《コジレックの帰還》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《ヴェールのリリアナ》
-サイドボード(15)-
1パック目の1手目、どれをピックしますか?
僕のピックは《深海艦隊の扇動者》だね。
とても弱いパックだ。そして《深海艦隊の扇動者》と《深根の戦士》のどちらをピックするべきか悩ましい。この判断を下す理由として、赤は緑より優れていて、《深海艦隊の扇動者》なら《海賊のカットラス》を最速で3ターン目に装備できる。
あなたとブラッド・ネルソンのジョークをよく聞きます。どういったものなのでしょうか?
プロツアー『イニストラードを覆う影』のことなんだけど、ブラッド・ネルソンのお父さんが、”自分を負かしたスティーブ・ルービンの優勝を祝して胴上げしていたことをとても誇らしく思う”というメッセージを送ったんだ。
— Brad Nelson (@fffreakmtg) 2016年4月24日
優勝したスティーブに、Top 8でブラッドは敗れていた。そして敗れた息子が自分を負かした相手を祝福している姿をお父さんが見て、感動したわけだ。実際にはスティーブを胴上げして祝福していたのは僕さ。ブラッドじゃないんだ。
多くの人が僕たちをそっくりだと言っていたけど、彼の父親ですら間違えるほどだったわけだ。この一年くらい前に、僕も母から『ブラッドという人はあなたにそっくりね』と言ったこともあったよ。だから、まあ、親ですら認めるほどそっくりなのさ。
2015年にプレイヤー・オブ・ザ・イヤーとして歴史に名を刻みましたね。あなたにとってどのような出来事でしたか? そして次の目標はなんですか?
プレイヤー・オブ・ザ・イヤーには、なろうとしてなったわけではないんだ。プロツアー『マジック・オリジン』であんなに勝って、準優勝できると思ってなかったよ。この年のプレイヤー・オブ・ザ・イヤー・レースではエリック・フロリッヒが周囲を圧倒していたんだけど、プロツアーで僕の方が多くの勝ちを重ねて決勝に駒を進めることができて、彼をぎりぎり抜くことができたんだ。
このタイトルに関してはとても誇らしいと思っている。多くの優れたプレイヤーが目指し、少しでも多くのプロポイントを獲得するために努力してる中で、その頂点に発つということ……今になって考えてみると、それがどれほど難しいことだったか痛感しているからね。このタイトルを勝ち取ったことで、「世界の強豪と僕は渡り合えるんだ」と自信が付いたよ。
もし僕が「殿堂入りしたくない」と言うのであれば、それは嘘になる。このゲームは僕の人生にとってとても重要で、いつか殿堂入りすることができるようであれば、それは叶えられないと思っていた生涯の夢を叶えることになるんだからね。
奥さんと2人のお嬢さんが居ますよね。イベントの準備や移動は難しいですか? 家族がいることはモチベーションにどのような影響を与え、支えになっていますか?
双子の娘たちが生まれてからは、マジックをプロレベルで行うのはたしかに少し難しくなったよ。妻が仕事に行ってる間も娘たちが毎日家に居るから、Magic Onlineでたくさん練習する、というのもできなくなった。でも、妻と家族がとにかくサポートしてくれるからあまり大きな問題ではない。とても恵まれているよ。
家族が居ることで、モチベーションは上がっている。以前は自分が楽しむために昔のドラフトやキューブで遊ぶこともあったけど、今は目の前にあるイベントに集中して準備をしている。
マジックは趣味だけではなく、職業になったんだ。娘のアナベラとソフィアが生まれなければ、こんな風に見ることはなかっただろうね。
どのイベントがあなたをプロプレイヤーに変えましたか? また、それ以前は何をしていましたか?
プロツアー『タルキール覇王譚』が、もっとマジックに打ち込むきっかけをくれたかな。大きなチームでテストするのは2回目で、僕自身初のトップ8で終えることができた。
以前は経済学の学校に通っていて学位まであと少しだったんだ。だけど、2人の娘が生まれたので一旦辞めて、”仕事”に打ち込むことにしたんだ。仕事というのは、もちろんマジックだよ。
あなたはチームシリーズで、ChannelFireballに参加してます。殿堂入りしている5人の仲間について、教えてください。
Team ChannelFireballに加わることができたことは、とにかく幸運だと思ってる。殿堂入りしていないプレイヤーは僕だけなんだ。しかも5人はこのゲームでは伝説の存在さ。
ルイス・スコット=ヴァーガスはこのゲームの天才だ。彼が情報を整理する速度は、とにかく嫉妬するほどだよ。
パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサとベン・スタークはいつでも口論しているような仲だ。珍しいかもしれないけど、僕はこの口論を聞くのがとても好きなんだ。アメリカでは”喧嘩するほど仲が良い”と言うんだが、本当に仲が良くなければ彼らのように口論を続けることはできないだろうから、彼らはこの言葉がそのまま当てはまると思うよ。
ジョシュ・アター=レイトン、もしくは“Wrapter”は、このゲームの歴史上最も優れたデッキビルダーの一人だと思うよ。常に彼は未知なるアーキタイプを見つけて、新しいアイディアでいっぱいさ。彼の発想には脱帽するよ。
マーティン・ジュザはこの中では一番面識がないんだ。プロツアー『イクサラン』のために顔を合わせたのが初めてのテストだったからね。彼はとてもポジティブで、僕に近い性格のように思えた。このゲームにとにかく情熱的に向き合っていて、彼が継続的に世界を旅してイベントに参加してることから分かるよ。
僕はチームメイトのみんなが好きで、このチームに選ばれたことをとても幸運だと思っているよ。