By Atsushi Ito
始まりは、2017年9月のことだった。
「唐突だけど、そろそろマジックのカードでできた椅子、欲しくない?」
晴れる屋スタッフ「はい?」
「やっぱりマジックのお店にはマジックのカードにちなんだアイテムが必要だと思うんだよね。というわけで、製作よろしく!」
何の罪もない晴れる屋スタッフ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
というわけで、晴れる屋では諸悪の根源社長命令により、水面下でマジックのカードを使った椅子の製作という企画が進行することになったのである (※おそらくフィクションです)。
だが、はたしてマジックのカードを使って椅子を作るなんてことが本当に可能なのだろうか?
早速製作を任されたスタッフに密着して、その製作過程を追ってみることにしよう。
マジックのカードで柱を作る
「そもそもカードでできた椅子に座ったりしたら、折れたり曲がったりして椅子が潰れちゃうのでは?」
「そこなんですよ、耐過重の問題ですね。ですが似たような牛乳パックで作った椅子の事例を参考にすることで、耐荷重の問題はクリアされました。要は、柱を作ればいいんです」
「いやいや、こんな適当に重ねた束なんて上から座ったら横にズレてオシマイでしょ」
「それがそうでもないんですよ。何せこの柱は、接着剤で固めてありますからね」
「!?」
「だけど、本当にこんなので柱として大丈夫なの?強度面とか」
「大丈夫です。触ってもらえばわかりますが、この柱には人を殺せる固さがあります」
「なにそれこわい」
できた柱をくっつける
「耐荷重の問題がクリアされたので、あとは柱をつなげていきます」
「柱同士はどうやってくっつけるの?」
「接着剤を使います」
「またかよ!」
「なんだか嫌な予感がしてきたので一応聞くんだけど、まさかこの柱をあと十数本作ってくっつけて終わりなんてことないよね?」
「そうですけど?」
「マジで言ってんのかよこの企画!」
マジックで椅子ができた (できたとは言っていない)
「それではご覧ください。これが本邦初公開、マジックでできた椅子です!」
「なんでわざわざ角度調節したの?」
「その方がオシャレかなと思って……」
「そんなこと気にする前にもっと色々やることあるでしょ!見栄えも悪いし、そもそもこんなの椅子じゃなくてただのブロックじゃねぇか!」
「これは椅子なんだ……誰が何を言おうと椅子なんだ……」
「無茶な企画で精神に異常をきたし始めている」
「いや、でもこの椅子はすごいんですよ。柱一本あたり1150枚のカードが必要になるんですが、それを16本くっつけているので、約18400枚のカードでできているんです!」
「そんな『シロナガスクジラって体重100トンもあるんですよ』みたいなこと言われても誤魔化されないぞ」
「(無視) さあ、じゃあ早速この椅子をプレイスペースまで運んで実際に座ってもらいましょう!」
実際に座ってみよう!
こうして「マジック椅子」が完成した。これはマジックと生活とを結びつける新たな可能性だ。
予言しよう。ここからマジックは新たな領域に突入する。「マジック机」「マジック風呂」「マジックハンドスピナー」「マジックネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲」……すべてがマジックであり、マジックはすべてになる。
さあ、未来を始めよう。この椅子をトーナメントセンターに設置し、訪れる最高の未来への記念すべき第一歩を踏み出すのだ。
そう思いながら、この完成した「マジック椅子」を設置すべく、私は椅子を持ち上げようとした。
グッ。
………。
ググッ。
……………。
……( ^ω^)……?
持ち上がらない。
※約34kg
それは 椅子というにはあまりにも大きすぎた
大きく 分厚く 重く そして大雑把過ぎた
それは 正に鉄塊だった
「よし、捨てるか」
「 」
その後
「そういえばあの粗大ゴミどうなった?」
「側面にリメイクシート貼ったらそれっぽくなりました」
「なんかそれっぽくなったな」
「じゃあ早速、トーナメントセンターの全椅子をマジック椅子にすることで経費削減を図ろう☆」
「出たなサイコパス!これでも食らえ!(火事場の馬鹿力で34kgを持ち上げる)」
「な、なにをする!ぐわーっ! (34kgの一撃を後頭部に受け昏倒)」
「これでマジック界が平和になる。マジック椅子はこのために必要だったんだ」
-完-