By Hiroshi Okubo
『イクサランの相克』、発売!
『カラデシュ』ブロック、『アモンケット』ブロックのカードに『イクサラン』『イクサランの相克』の「恐竜」や「海賊」といった新カードが入り混じった環境で活躍するのは、はたしてどのようなカード、どのようなデッキとなるのでしょうか?
さて、今回はつい先週末、『イクサランの相克』発売直後のMOPTQで上位入賞を果たした「赤緑モンスター」をご紹介します。
赤緑モンスターとは?
3 《森》
3 《隠れた茂み》
4 《花盛りの湿地》
4 《根縛りの岩山》
1 《竜髑髏の山頂》
2 《ハシェプのオアシス》
-土地(23)- 4 《マーフォークの枝渡り》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《打ち壊すブロントドン》
2 《不屈の神ロナス》
4 《再燃するフェニックス》
4 《レギサウルスの頭目》
2 《原初の飢え、ガルタ》
-クリーチャー(24)-
2 《貪る死肉あさり》
2 《チャンドラの敗北》
2 《焼けつく双陽》
2 《捲土+重来》
2 《形成師の聖域》
1 《マグマのしぶき》
1 《生命の力、ニッサ》
-サイドボード(15)-
「赤緑モンスター」は、『イクサランの相克』のリリースとそれに伴う禁止改定によって成立した新たな中速ビートダウンデッキです。前環境で支配的だったティムールエネルギーに居場所を奪われていた《レギサウルスの頭目》や《不屈の神ロナス》に加え、注目の新カードである《再燃するフェニックス》といった優秀なクリーチャーで暴力的に攻め立てます。
デッキに入っているカードのほとんどがパワー3以上(《マーフォークの枝渡り》のみサイズが不確定)なので、このデッキにとって《キランの真意号》はさながら原付や軽自動車のようなもの。気軽に「搭乗」しては空から4点クロックの猛打を浴びせることができます。
また、《原初の飢え、ガルタ》は12マナ・12/12という冗談みたいなサイズこそ最大の除去耐性になっており、《蓄霊稲妻》や《削剥》といった火力除去ではびくともしません。とはいえ《ヴラスカの侮辱》や《イクサランの束縛》には耐性を持ちませんが、対戦相手にしてみれば貴重な追放除去は除去耐性のある《再燃するフェニックス》に当てたいところ。雑にプレイするだけで不自由な二択を迫ることができるでしょう。
デッキ名は『ラヴニカへの回帰』~『テーロス』ブロック期に活躍したデッキ「グルール(赤緑)モンスター」に肖っているようです。5マナ域をマナカーブの頂点に据え、優秀なサイズを持ったクリーチャーたちで圧殺していく様子は、まさに同様の戦略で一斉を風靡した「グルールモンスター」のそれと言えるでしょう。
注目カード3選
《再燃するフェニックス》
『イクサランの相克』の目玉カードとして下馬評の高かったこのカードは「赤緑モンスター」の中軸カードとして4枚採用されています。4マナ4/3飛行という《まだらグリフィン》が見たら失神しそうな優秀なボディに加え、復活能力も持つという壊れたスペックのクリーチャーで、通常の除去で対処するためには2枚のカードを費やさなければいけません。
赤の4マナ域には《反逆の先導者、チャンドラ》という選択肢も存在しますが、《原初の飢え、ガルタ》や《キランの真意号》を採用しているこのリストでは”パワー4のクリーチャーである”ということにも価値があります。同様に4マナのクリーチャーである《熱烈の神ハゾレト》も対抗馬になり得ますが、そこまで手札消費が早くないこのデッキでは《再燃するフェニックス》に軍配が上がるでしょう。
いわゆるただ強クリーチャーである《再燃するフェニックス》は「赤緑モンスター」のみならず、赤を含むミッドレンジデッキではよく見られることになりそうです。
《原初の飢え、ガルタ》
デカァァァァァいッ説明不要!!12マナ!!!12/12!!!と思わず叫んでしまいそうになる『イクサランの相克』最大のクリーチャー。といってもマナコストは見かけだけで、そのコスト軽減能力によってほとんどの場合2~6マナ程度でプレイされます。また、前項でも述べた通り、現在のスタンダード環境で最もポピュラーな除去は火力除去なため、その超大なサイズこそが一種の除去耐性として機能します。
また、サンプルデッキリストに4枚採用されている《レギサウルスの頭目》との相性の良さは目を見張るものがあり、《レギサウルスの頭目》1枚で7マナ分のコストを賄うことができ、その後出てくる《原初の飢え、ガルタ》は「速攻」を持ってコンバットを行うことができます。
《打ち壊すブロントドン》
大きくなって帰ってきた《クァーサルの群れ魔道士》。3/4というサイズは十分戦力に数えられますし、1マナで《帰化》できる能力は見かけ以上に強力です。
ざっと環境を見渡してみても「グリクシスエネルギー」の《アズカンタの探索》や《奔流の機械巨人》、「マルドゥ機体」の《キランの真意号》、「エスパー王神」の《王神の贈り物》、「白青副陽」の《排斥》や《イクサランの束縛》など割りたいカードは無数に存在しており、メインボードに4枚採用されるのも頷けます。
また、《恐竜との融和》で探すことができるというのも忘れてはいけません。どうしても対処しなくてはならない置物がある場合にもたどり着きやすく、頼りになります。
サイドボード・ピックアップ
《貪る死肉あさり》
墓地対策能力を持った恐竜クリーチャー。《スカラベの神》や《王神の贈り物》、《奔流の機械巨人》といった墓地利用カードも多数存在する現環境ではぜひともサイドボードに用意しておきたい1枚です。
もちろんこれも《恐竜との融和》で探すことができるため、2枚挿しとはいえアクセスしやすいことでしょう。
《捲土+重来》
除去と墓地対策を兼ねる1枚。これも《スカラベの神》や「エスパー王神」デッキへの対策として有効なカードで、前述の《貪る死肉あさり》と合わせて墓地利用系のカードを強く意識していることが伝わってきます。
《貪る死肉あさり》は非常に効率的な優良クリーチャーではありますが、誘発のタイミングが限られていることや《貪る死肉あさり》自身が除去されやすいということもあって、墓地対策の全てを任せるわけにはいかないようです。
《形成師の聖域》
ミッドレンジデッキの宿命として、除去やアドバンテージ獲得源を多数擁するコントロールデッキにはゲームを掌握されやすいですが、《形成師の聖域》があれば飛躍的に継戦能力が向上します。
過去の緑系ミッドレンジのサイドボードでは《造命師の動物記》が使用されていましたが、《削剥》が幅を利かせている今は《形成師の聖域》の方が安定して運用できそうです。
まだまだ環境初期!
今回ご紹介したのは、タフな恐竜たちで対戦相手を圧倒する「赤緑モンスター」でした。今週末の大会では、さらに洗練されたデッキが活躍するはずです。
既存のアーキタイプに新カードを足したもの。これまで見たこともないようなコンセプトで組み上げられたもの。そういった様々なデッキに出会えるのも、環境初期の魅力です。その中から、のちにトップメタに君臨するデッキが現れるかもしれません。
ぜひ始まったばかりの『イクサランの相克』環境のスタンダードで、色々な自分なりのアイデアやデッキに挑戦してみてください!