勝ちたいなら勝ちたいって言ってよ! -グランプリ・静岡14編-

高橋 純也

高橋 純也



 まず、つらつらと語り始める前に、一言だけ謝らなければならない。

 マジックの神様、ごめんなさい。

 今まで「勝ちたい」と口だけの嘘を吐いていて。



1.勝ちたいなら……

 これは胸を張って言うではないが、僕はいわゆる『弱いデッキ』を作りたがることで知られている。

 『強いデッキ』の対を為す、という意味での『弱いデッキ』である。

 例えばでいうとプロツアー史上最弱候補と名高い『青白GAPPO』などが耳通りがいいかもしれないが、それに負けず劣らないくらい、僕は『弱いデッキ』を好き好んで作りあげてきた。
 
 ただ、ここで勘違いしてほしくないのは、僕は『勝てないデッキ』は嫌いだということだ。

 首をかしげる方が多いかもしれない。『弱い=勝てない』なのではないのか、と。

 しかし、それは少なくとも僕の中では明確に線引がされている。トーナメントに持ち込んでも勝率が出ないデッキは『勝てないデッキ』だが、『弱いデッキ』は、たとえ勝利が望めども『弱い』のだ。

 『勝てる・勝てない』という評価軸は、たとえばメタゲームといった相対的な観点から判断することができる。デッキ本来のポテンシャルや構造は無視して、結果的にそのデッキが勝利することができるかどうかだけをみるのだ。親和デッキの最盛期にアーティファクト除去をふんだんに詰め込んだデッキを評価するならば、そのコンセプトや構造はともかくとして『勝てるデッキ』だと考えられる。

 そして『強い・弱い』とは、すなわちデッキの構造やコンセプトの強さ、といったアーキタイプの評価になる。具体的な話をするならば、親和や続唱ジャンドや発掘などは『強いデッキ』の代表格だ。そのデッキの骨子にある戦略を実行するだけで、周囲は対策なしには脅かされる。逆に『弱いデッキ』とは、実際の勝率はともかくとして、そのコンセプトや骨子が弱いものが挙げられる。『勝てるデッキ』の一例として紹介したアーティファクト破壊デッキなどは、対戦相手のアーティファクト依存率に頼った『弱いデッキ』だと考えられるだろう。



 このように、『勝てる・勝てない』と『強い・弱い』とはまったく別の段階で評価されるものだ。『勝てる』かどうかは結果的なもので、『強い』かどうかはデッキの根本的な問題だといえる。だから、『勝てるけれど弱いデッキ』や『勝てないけれど強いデッキ』というものも、度々マジックの歴史には登場している。

 それでは、ひと通り整理したところで話を戻そう。

 僕は『勝てるけれど弱いデッキ』が好きだった。

 つまり、デッキの骨子は弱くともメタゲーム的な部分において勝率を叩き出したい、という嗜好だったということだ。これには「なんとなく環境を攻略した気になれる」ことや「人とは違った戦略をとれるから楽しい」といった理由が2割ほど含まれていたが、残りの8割は純粋に勝利を望む気持ちだった。ただ、そのわずかな2割の嗜好を大事にして、本当に手に入れたかったものを蔑ろにしてしまった。

 だから、いつかの京都の夜にボロボロになった『青白GAPPO』を前に問い詰められた挙句、「勝ちたいなら勝ちたいって言ってよ!」と叫んだことに嘘はない。

 それは自分の2割が吐き出した本音だったから。

 ただ、優勝トロフィーを掲げることを夢見ていた8割の本心は、皆と一緒に鼻で笑っていた。
 
 言い訳するにしてもマシなことを言え、と。

 前の連載である『Rush Met』シリーズでは、メタゲーム的な観点から『勝てる・勝てない』に限った話をしてきた。『強さ・弱さ』については目をつむり、環境の姿と仕組みについての説明を繰り返した。

 ところが、気がついてしまったのだ。

 『勝てる』は表面的な工夫で装飾しただけの張りぼてで、その価値がとてもあやふやな前提のうえで成り立っているものだと。

 その点、『強さ』はアーキタイプの骨子という、ゲームの仕組みに関わるような本質そのものだ。

 これに気がついたからには、いい加減素直になって、真剣にゲームと向き合おうと思う。

 理論だとかメタゲームはあくまでもオプションでしかない。

 たとえ『勝てた』としても『弱いデッキ』には別れを告げよう。

 なぜなら『勝てる強いデッキ』を探求することこそが最高の選択肢なのだから。

 だから。

 「勝ちたいなら勝ちたいって言ってよ!」



2.グランプリで勝ちたいなら『強いデッキ』を使え!!

 それでは、第一回の内容に入っていこうと思う。

 目前に控えたグランプリ・静岡14を攻略することが今回の本題である。

 ここではスタンダードで開催される大規模グランプリをどうすれば勝利できるのか、を考えていくことが焦点になる。

 まずは構築グランプリというトーナメントの要素を整理することから始めよう。



 この中で最も注意しなければならないのは、1.の『様々なプレイヤーたちが参加している』という点だろう。これはグランプリが素晴らしいイベントである理由のひとつながら、このプレイヤープールを戦略的に攻略することが難しいことを示している。

 なぜなら、メタゲームという集団傾向を利用した戦略が機能しにくいからだ。

 「トーナメントに参加するとなれば、メタゲームを意識してデッキを選択したい」……というように、まず環境の姿を考えて、狙いのトーナメントにおける勝ち組を探そうとする。これがトーナメントに慣れたプレイヤーたちの一般的な思考だとは思うのだが、ここで少し待って欲しい。

 そのトーナメントは本当にメタゲーム的な観点が重要なトーナメントなのだろうか?

 この疑問には、メタゲームという魔法の言葉を支えている前提が関わってくる。

 メタゲームとは高次のゲームであり、『他のプレイヤーたちが事前情報をどのように処理しているか』を知り、その傾向を理解したうえで自身の選択をすることで、後出しによる有利を得る戦略である。

 そのためメタゲームが機能するためには、他者の選択が自分が想像した通りの理屈で行われていることが最重要な前提となっている。

 逆にいうと、それぞれが違う情報を元に選択しているのであればメタゲームは機能しない。そのため、メタゲームを思考するにあたっては情報の確度が肝で、簡単に使われる言葉の割には意外とあやふやな地盤のうえで成立している戦略なのだ。

 ここで『グランプリ』というトーナメントに改めて焦点を当ててみよう。楽しみに来た人から優勝を狙っている人、海外より来た人から日本国内の人まで、様々な目的を持って様々な地域からとても多くのプレイヤーたちが集まっている。



 これは、前提となる情報の確度の信頼性が低く、メタゲームを武器に戦っていくことが難しいことを示しているというわけだ。

 狭い地域のプレイヤーたちで争う日常的なトーナメントや、ハイレベルなプレイヤーばかりが集うプロツアーでは有力な戦略のひとつであるメタゲームではあるが、どのようなトーナメントでも最優先に考慮すべき戦略というわけでもないのだ。



 では、グランプリを攻略するためには、どのように考えればいいのだろうか。

 メタゲームを利用した『勝てるデッキ』には信用が置けない。

 ならば正々堂々と、会場で最も『強いデッキ』を持ち込めばいいのだ。



3.『強いデッキ』とはなにか?

 これ以降は『強いデッキ』の選定に移る。

 冒頭の話に戻るが、『強さ・弱さ』はアーキタイプの持つ骨子の強さを表現している。そのため、ここから探していくデッキとは、コンセプトがしっかりとした、誰もが知っているありふれたものだ。

 青単信心、黒単信心、赤系信心、青白コントロール、緑系信心、白系アグロなどなど。

 このようなありふれた『強い』と言われているデッキたちの中から、『本物』を、高いポテンシャルを持つデッキを選抜することがゴールだ。

 では、ポテンシャルとは。『強さ』を支えているコンセプトの強さとは一体何なのだろうか。

 この要素を整理するところから話を進める。


 メタゲームを無視すれば、この2つの内容が『強さ』のほぼ全てである。

 1.について、マジック・ザ・ギャザリングは『対戦相手よりも早く勝利条件を達成すること』を目的としたゲームであるため、決定力が重要になる。とりわけ、決定力を支える要素である『速度』や『角度』を持った攻撃パターンは、それだけで強力だといえる。親和のような『速度』や、リアニメートのような『角度』、果てはストームや発掘のようにどちらも兼ね備えたアーキタイプたちは、これまでの歴史の中で『強さ』を見せつけてきた。

 その反面で、攻撃手段は平凡ながら、それでも『強さ』を示してきたアーキタイプも、少なからず存在する。それらは総じて2.の『対戦相手の攻撃を受けるだけでなく、攻めへと転じる手数を稼ぐシステム』を持っている。『ジャンド』の『続唱』システム、『フェアリー』のテンポ偏重の種族シナジー+《苦花》、『Caw-Blade』の《戦隊の鷹》《精神を刻む者、ジェイス》+装備品システムなどが代表的だろう。

 2.について付言すると、一般的なデッキでは、攻撃か防御かというそのどちらかの選択にリソースを費やすと、そののちに局面が均衡を迎えた場面の次なる選択のために備えが残されないことが多い。そのため、いざ均衡を迎えたあとにぐだぐだとトップデッキを願ったり、攻めきれなかった際に相手の残りわずかなライフを眺めながらチャンプブロックに執心する羽目になる。

 そもそも、1.のような強力な攻撃手段を持たないデッキは、防御へと回る機会が自然と訪れるはずだ。その際にはしっかりと防御したうえで、疲弊した対戦相手に素早い反撃を与えるためのリソースを確保できる根強さが求められる。防御的なデッキが受けきったあとに強力なフィニッシャーを投入するように、ある程度攻撃的なデッキであったとしても、防御したあとのプランは、『強いデッキ』であるからには持っていてしかるべきなのだ。

 以上の2点が『強さ』を支える要素である。

 それでは整理したところで、次は「現在のスタンダード環境に『強いデッキ』は存在するのか?」について考えていこう。



4.選抜!!スタンダード環境で『強いデッキ』はこれだ!!

 おおよそ20前後のアーキタイプをテストしたところ、『強いデッキ』と呼ぶにふさわしいものが浮かび上がってきた。
 
 『青単信心』と『赤単信心タッチ白』。

 勝率的には他にも魅力的なデッキを少しは見かけたものの、この2つに勝るだけのポテンシャルは感じられなかった。

 それでは、これらを選抜した理由をデッキの解説に交えて説明しよう。


「青単信心」

20 《島》
4 《変わり谷》

-土地(24)-

4 《審判官の使い魔》
3 《雲ヒレの猛禽》
4 《凍結燃焼の奇魔》
4 《潮縛りの魔道士》
4 《海の神、タッサ》
4 《夜帷の死霊》
4 《波使い》
2 《予知するスフィンクス》

-クリーチャー(29)-
2 《急速混成》
1 《サイクロンの裂け目》
2 《家畜化》
2 《タッサの二叉槍》

-呪文(7)-
4 《反論》
2 《払拭》
2 《思考を築く者、ジェイス》
1 《霊異種》
1 《サイクロンの裂け目》
1 《家畜化》
1 《タッサの二叉槍》
1 《真髄の針》
1 《記憶の熟達者、ジェイス》
1 《ニクスの祭殿、ニクソス》

-サイドボード(15)-
hareruya


 直近のグランプリで大活躍している本命のアーキタイプで、よく『黒単信心』との双璧だと耳にするが、とても並べて評価することができないくらいに、『青単信心』は突出したパフォーマンスを発揮している。

 その強さの鍵は、ずばり<海の神、タッサ>だ。

海の神、タッサ


 すばやく顕現すれば5/5のアタッカーとして機能し、顕現しなくとも『占術』能力で無駄なドローを省いて理想的なゲームプランを提供してくれる。『強いデッキ』の条件でもある『決定力の高い攻撃パターン』とはまさにこのことだろう。

 そして何より、他の『神』シリーズとは一線を画する3マナという軽さが驚異的で、3ターン目の《海の神、タッサ》に損することなく対応することは難しい。都合よく《本質の散乱》などでカウンターするか、腹をくくって《海の神、タッサ》を無視して殴り続けるか、苦しく《拘留の宝球》を投げつけるしかないのだ。

 『青単信心』は《海の神、タッサ》頼みのデッキである。ただ、その構造が分析されていてなお強力なのは、《海の神、タッサ》がワントップのキーカードだとわかっていても対処しにくいカードであるからに他ならない。

 また、《海の神、タッサ》の顕現を支えている《夜帷の死霊》も、現在の環境では対処されにくい存在だ。『黒単信心』でも使用されており、メタゲーム上のシェアが高いカードであるにもかかわらず、風あたりはさほど強くないという変わったカードである。黒除去が効かない、タフネスが3ある、『飛行』を持っている。これらの要素が《夜帷の死霊》を強力なカードに変えており、《海の神、タッサ》にはやや劣るものの、しっかりとしたゲームプランを構築してくれる。

 『青単信心』はクリーチャーの塊のようなデッキであるため、《至高の評決》《ミジウムの迫撃砲》のようなリセットには弱い面があるものの、それを踏まえた上でも有り余る攻撃力は魅力だ。


「赤単信心タッチ白」

10 《山》
4 《聖なる鋳造所》
4 《凱旋の神殿》
2 《ボロスのギルド門》
4 《ニクスの祭殿、ニクソス》

-土地(24)-

4 《炎樹族の使者》
4 《凍結燃焼の奇魔》
4 《灰の盲信者》
4 《ボロスの反攻者》
4 《モーギスの狂信者》
2 《鍛冶の神、パーフォロス》
4 《嵐の息吹のドラゴン》

-クリーチャー(26)-
4《ミジウムの迫撃砲》
2《岩への繋ぎ止め》
2《パーフォロスの槌》
2《紅蓮の達人チャンドラ》

-呪文(10)-
4 《チャンドラのフェニックス》
4 《ボロスの魔除け》
3 《神々の憤怒》
2 《岩への繋ぎ止め》
2 《軍勢の集結》

-サイドボード(15)-
hareruya


 『青単信心』をプレイした後に他のデッキを触ることはやや退屈だった。他のデッキには《海の神、タッサ》が入っていなかったし、中途半端な攻撃力と『青単信心』と渡り合うには頼りない防御力しかないデッキばかりだったからだ。

 しかししばらくして見つけた『赤単信心タッチ白』は、退屈を吹き飛ばし、かつ、この環境ならではの『強いデッキ』の条件を知らしめてくれた。

 その条件とは、誰もが予想したであろう、『信心』というシステムが採用されていることである。

 まだカードプールが充実していないこともあって、対応型のアーキタイプを筆頭に防御力に難を抱えたデッキばかりだ。つまり環境的に『信心』を受けきることは難しく、『信心』というシステムだけでも『決定力の高い攻撃パターン』として成立してしまう。

モーギスの狂信者鍛冶の神、パーフォロスニクスの祭殿、ニクソス


 そして、その『信心』を軸にしたシステムのなかでも飛び抜けて攻撃的なものが『赤単信心』には組み込まれている。《モーギスの狂信者》《鍛冶の神、パーフォロス》というダメージに特化した『信心』持ちを軸にしており、しかも《ニクスの祭殿、ニクソス》から提供される大量のマナは《ミジウムの迫撃砲》《嵐の息吹のドラゴン》に注ぎ込まれるのだ。

 上に紹介したリストは、その中でも重く構築されたもので、サイドボード後から柔軟に戦略を変更できる作りになっている。コントロールや消耗戦を挑んでくる相手には《チャンドラのフェニックス》《ボロスの魔除け》を入れてより攻撃的に変化できるし、『信心』系には除去を詰め込んで擬似的な除去コントロールとしても振る舞える。



 こうして選抜した『強いデッキ』は奇しくも、どちらも『信心』を軸にした『青単信心』と『赤単信心タッチ白』だった。

 まだ対応型のアーキタイプの構成が整っておらず、『信心』はその有り余る攻撃力を存分に振るっている。展開力に特化しすぎて弱点ばかりが浮き彫りになっている『緑系信心』、速度に期待できず後ろ向きな『黒単信心』は『信心』の恩恵を授かりきれていないが、いまだ表舞台には顔を出していない『白系信心』には期待が持てるかもしれない。

 ただ、『強いデッキ』の条件の2.にある『攻防を臨機応変に行える手数差を生むシステム』に相当するアーキタイプは見つからなかったことは、自然なことながらやや残念だった。普通の防御さえもままならない環境の中では、攻防一体かつ手数とリソース差で跳ね返せるほどの地力を持ったデッキは到底見つかるはずもなかったということだろう。

 ともあれ、とりあえず調整する材料である『強いデッキ』は見つかった。

 あとは、この『強いデッキ』をグランプリで『勝てるデッキ』へと変える作業に移ることにしよう。



5.『強いデッキ』を『勝てる強いデッキ』へと変える!!

 『強いデッキ』はそれ自体ですでに強力なので、メタゲームの知識やその他もろもろの味付けで『勝てるデッキ』へと変えることは比較的ハードルが低い取り組みなのだが、今回の2つに限っては相当の努力を強いられた。

 それは、どちらも『信心』という、デッキの構成の大半を大きく制限するものであったことと、『信心』vs『信心』というメジャーな顔合わせはちょっとした工夫が効果を表すほどの長いゲームにはなりにくく、どうやっても本当に心なしか有利くらいにしかならなかったからだ。

 そして、残念ながら『赤単信心タッチ白』に関しては、執筆中に最終的な構成を見つけることができなかった。

 調整すべきポイントは理解できているため、あとはその点に留意して構築し直すだけなのだが、あと一歩が本当に遠いデッキだった。最終的なリストを公開することができないのは残念だが、せめてその整理したポイントだけは書き記しておくことにする。



1.<嵐の息吹のドラゴン>の価値を疑うこと
→『赤系信心』を象徴するようなカードではあるが、現在のスタンダード環境では特に何に強いカードでもなく、ただタフなアタッカーとして採用されている。多くの負け試合では《嵐の息吹のドラゴン》が手札から飛び出さないまま終わってしまうことが多かった。サイドボード後の消耗戦では評価できるカードなので、メインボードでは枚数を抑えて、より軽いパーマネントへと変更すべきかもしれない。

2.クリーチャー除去はメインからより多く採用するべき
→除去ばかりの手札を抱えてコントロールに敗北するのはいつだって屈辱的だ。だから僕も《岩への繋ぎ止め》の枚数を抑えて構築した。だが、現在の環境はクリーチャーデッキばかりで、特に『信心』同士のマッチアップなどでは、半端なパーマネントよりも除去のほうがよほど効果的に働く。また、『赤単信心タッチ白』はメインボードにおけるコントロールとのマッチアップはやや不利なことが多い。そこで、コントロール戦には不安は増すものの、《岩への繋ぎ止め》を増量するか《稲妻の一撃》を採用して、より多くのマッチアップの勝率向上を望むべきだろう。

 この2つが『赤単信心タッチ白』をより良いものへと作り変えるポイントになるだろう。《稲妻の一撃》《チャンドラのフェニックス》は『信心』とは一見すると噛み合わないカード(一般的に『信心』に重要なのは2マナほどの軽量パーマネントと、小回りは利かなくてもいいから爆発力のある呪文)だが、大振りすぎる『信心』の弱点を隠すために、この『信心』らしくない2枚こそがブレイクスルーを与えてくれると信じている。

 今回は僕の構築能力が低いがために脱落してしまった『赤単信心タッチ白』だが、時間さえ許せばきっと魅力的なデッキに仕上がることは間違いない。



 それでは、今回の僕が選択することになった『青単信心』について考えていく。『赤単信心タッチ白』が脱落したことによる消去法的な選択とも思えるが、脱落する以前に最強候補筆頭だったのでむしろ助かったくらいだ。

 では、問題点とその解決について話していこう。

 この『青単信心』にある問題点とは、同型戦がなかなかに不毛なものになりやすいことだ。

 お互いに妨害が薄いため、メインゲームはできることをやった末にドローが強かったほうが勝利し、サイドボード後には《反論》を投げつけ合う消耗戦を終えて、力尽きなかったほうが勝利する、という様相だ。

 要するにドローが強かったほうが勝者となる清々しい勝負なのだが、グランプリ本戦に多くの『青単信心』がいることを思うと、いたずらに何回も愚直な運勝負を挑むのもどうかと思ってしまうのだ。

家畜化


 そこで、上で紹介したリストにおいても《家畜化》をメインボードから採用し、少しばかり『青単信心』の同型を見据えた工夫をしていた。《家畜化》は『信心』系デッキすべてに効果的なカードなので、青系コントロールとのマッチアップでは出番がなくとも、メインボードから差をつけるには魅力的すぎるほどの選択肢だ。

 ただ、サイドボード後には《反論》祭りが始まることは確実なのだ。そのカウンター合戦を見据えて《払拭》を採用してみてもなお、勝率がわずかに増す程度だったことには衝撃を受けた。

 誰しもの仮想敵を堂々と選択するにもかかわらず、同型戦を制することができなければ、それはただ『強いデッキ』を見つけただけでしかない。僕が見つけるべきは『勝てる強いデッキ』なのだから、もう一歩だけ先に進む工夫が必要だろう。

 そこで青黒コントロール風味の『青系信心』にシフトしてみたり、《家畜化》を4枚にしてみたり。

 様々なアプローチを経て、たどり着いた構成はこのようなものだった。


「青単信心タッチ緑」

11 《島》
4 《繁殖池》
4 《神秘の神殿》
1 《シミックのギルド門》
4 《変わり谷》

-土地(24)-

4 《審判官の使い魔》
3 《雲ヒレの猛禽》
4 《凍結燃焼の奇魔》
4 《潮縛りの魔道士》
4 《夜帷の死霊》
4 《海の神、タッサ》
4 《波使い》
1 《練達の生術師》
1 《予知するスフィンクス》

-クリーチャー(29)-
1 《急速混成》
1 《サイクロンの裂け目》
1 《シミックの魔除け》
2 《家畜化》
2 《タッサの二叉槍》

-呪文(7)-
3《霧裂きのハイドラ》
3《反論》
2《思考を築く者、ジェイス》
1《予知するスフィンクス》
1《払拭》
1《急速混成》
1《古代への衰退》
1《家畜化》
1《真髄の針》
1《ニクスの祭殿、ニクソス》

-サイドボード(15)-
hareruya


 緑を加えることで、『青単信心』同型戦を思いきり単純化してみた。

 このような単色のデッキを多色化するバランス調整はあまり良くない手法だと言われている。それは1つには単色の魅力である安定性が損なわれるからだ。さらに2つ目として、多くの場合では無理して色を増やさずとも差をつける工夫ができるからである。

 ただ、『青単信心』においては稀ながら多色化できる見込みがあった。

 まずは1つ目の安定性についてだが、多色化したとしても緑色を要求する呪文の比率は実はとても少なく、問題があるとすればタップイン土地を採用することのマナカーブ上の弊害くらいである。そのタップイン土地に関しても、サイド後は多くのマッチアップにおいて1マナ域を減らして遅いゲームに対応できる形に変えるため、1ターン目のタップインがそこまで苦ではなく、占術土地の恩恵のほうが大きい可能性すらあった。

 次に2つ目の無理して色を増やさずとも工夫次第で、という点についてだ。これは『青単信心』が干渉力が小さいアーキタイプであることに加え、デッキの大半が固定パーツで構成された種族デッキに近い構成になっているため、他のアーキタイプのように構成の自由度には期待できない。そのため、多色化して対応力と決定力を増すという選択は、急場ながらも合理的なものだといえるだろう。

 さらに、緑という色を加えることで、致命的なほど打開策が見つからなかった同型戦が開拓されたことには有り余るほどの価値がある。《霧裂きのハイドラ》がそのうちの1枚で、カウンターされず、《変わり谷》以外にはブロックされない巨大なクロックとして活躍する。

 また、《海の神、タッサ》を捌き、《家畜化》を剥がし、さらには《拘留の宝球》から取り除かれたパーマネントを取り戻す《古代への衰退》も、緑ならではの見逃せないオプションだ。現在は1枚しか採用されていないが、2枚に増やすことも検討できるくらいに効果的なカードである。

霧裂きのハイドラ古代への衰退


 『強いデッキ』である『青単信心』をアップデートし、同型戦を克服した『勝てる強いデッキ』である『青単信心タッチ緑』こそが。

 グランプリ・静岡14に持ち込むべき最高の選択肢に違いない。



6.おわりに

 さあ、いかがだっただろうか。

 詳細な調整過程を省いてしまったことが心残りだが、これさえ読めば、読者の皆さんが勝利を望んでいるのに『弱いデッキ』を持ち込んで苦しむ、なんてことはなくなっただろう。

 「グランプリ静岡で勝ちたいなら何を使えばいいのか?」

 その疑問の全てはこの記事に詰め込んだつもりだ。

 また勝ちたいと願う場面があれば呼んで欲しい。

 誰よりも勝ちたい僕がその疑問にお答えしよう!!