By Hiroshi Okubo
第11期モダン神挑戦者決定戦。《血編み髪のエルフ》と《精神を刻む者、ジェイス》の解禁によってその人気に拍車がかかっているモダンのトーナメントには満員である310名が集い、ここまでに激しい9回戦の予選ラウンドと決勝ラウンド2回戦を終えていた。
さて、早速だがこれから始まる決勝戦。神・渡邉 真木への挑戦権を懸けた最後の戦いに臨む2名をご紹介しよう。
1人は小田 光一(埼玉)。これまで目立った戦績はないようだが、その実力は300名超のトーナメントでここまで駒を進めてきたことから確かだ。
使用デッキはオリジナルの緑白カンパニーに《献身のドルイド》と《療治の侍臣》を組み込んだもので、《聖遺の騎士》+《幽霊街》あるいは《廃墟の地》によって土地コンボ系のデッキをメタりつつ、ビートダウンプランも完備している独特のデッキだ。元々は《ラムナプの採掘者》なども採用し、徹底的に土地メタを狙っていたそうだが、今回は様々な相手と対戦することを想定した調整が施されている。
相対するは中尾 元彦(東京)。2016年のPWCCトップ8、BIGMAGIC Invitationalでもトップ8に入賞など関東近郊の草の根トーナメントで実力を磨く猛者だ。
選んだ得物は青赤ブリーチ。一般的な赤緑ではなく、青赤の2色で組まれたやや珍しい先日解禁された《精神を刻む者、ジェイス》を採用した変則的なコンボ・コントロールデッキだ。ドロー呪文によって《裂け目の突破》+《引き裂かれし永劫、エムラクール》にアクセスしやすく、多数採用された火力呪文や打ち消し呪文によって防御的なプレイにもスイッチできる柔軟さがデッキの強みだ。
両雄相並び、ギャラリーが取り巻く中シャッフルを行う。2人の姿に疲労の色は見えず、数分後に始まるであろう決戦に向けて闘志十分といった様子だった。
やがてジャッジが対戦開始のアナウンスを行うと、第11期モダン神挑戦者決定戦、決勝の火ぶたが切って落とされた。
Game 1
勝負は一瞬の間に決まった。
先攻の小田が《森》から《極楽鳥》、第2ターンに《聖遺の騎士》と動き出す。1マリガンの憂き目もあり、除去呪文をキープできていない中尾はこの《聖遺の騎士》にも対応することができず、小田が《聖遺の騎士》と《極楽鳥》によってマナを加速し、《貴族の教主》と《集合した中隊》で盤面のリードを広げていく様子を眺めていることしかできない。
小田はこれによって《不屈の追跡者》と《クルフィックスの狩猟者》を戦場に呼び出し、なおもドロー呪文を手繰る中尾を尻目に2枚目の《集合した中隊》をプレイ。戦場に《療治の侍臣》と2体目の《聖遺の騎士》を並べ立て、手札から《不屈の神ロナス》をプレイ。《不屈の追跡者》によって手がかりも大量に得ており、やりたい放題だ。なお、ここまで4ターンの出来事である。
《引き裂かれし永劫、エムラクール》による滅殺6があったとしてもなお継戦能力を失わない、小田の圧倒的な軍勢。ここまでのブン回りを見せつけられてしまっては中尾は力なく自らの敗北を認めることしかできなかった。
Game 2
先ほどは緑白カンパニーの華麗なブン回りに対応し切れなかった中尾だったが、今度はしっかりと除去の豊富な手札をキープ。《血清の幻視》でドローを整えつつ、小田のプレイした《漁る軟泥》に《稲妻》を合わせるスタートを切る。
小田は二の矢として《薄暮見の徴募兵》を戦場に送り込むが、返す中尾は4枚の土地を寝かせ、満を持して《精神を刻む者、ジェイス》を叩きつける! この「-1」能力が小田の《薄暮見の徴募兵》を手札へ押し戻すと、小田の更地の盤面を《精神を刻む者、ジェイス》が睨むという理想的な恰好となった。
このまま《精神を刻む者、ジェイス》を維持されてしまえば敗北は必至。かといって1体だけクリーチャーを出したところで《精神を刻む者、ジェイス》の「-1」能力の餌食になってしまうか、「0」能力で除去を探されてしまうだけだ。返す小田は小考しつつ、《不屈の追跡者》と《ブレンタンの炉の世話人》をプレイする。
悩ましい組み合わせで登場したクリーチャーたちに、今度は中尾が頭を悩ませる番となった。もちろん盤面を更地にするのは容易なのだが……その手札にある除去は《神々の憤怒》と《焙り焼き》。どちらも強力な火力呪文だけに、《ブレンタンの炉の世話人》と交換するのはやや効率が悪い。かといって生き残りさえすれば勝利という最大の成果を上げてくれるであろう《精神を刻む者、ジェイス》をみすみす死なせることもできない。
ここで中尾は腹をくくって《神々の憤怒》をプレイ。当然これに小田が《ブレンタンの炉の世話人》の能力を起動し、盤面にポツンと残った《不屈の追跡者》には《精神を刻む者、ジェイス》で再びの「-1」。小田の戦場を更地に帰す。
だが、これによって《精神を刻む者、ジェイス》の忠誠値が1となり、小田にとっては僥倖な状況となった。まずはと《不屈の追跡者》をプレイしつつ5枚目の土地を置き、「X=1」で《歩行バリスタ》!
中尾「うわ……」
小田のデッキ、緑白カンパニーに入っている本体火力は1枚挿しの《歩行バリスタ》のみ。そう思って《精神を刻む者、ジェイス》の忠誠値を1まで減らしたのに、小田はそのわずか1枚を引き当てていた。当然、小田はこれによって《精神を刻む者、ジェイス》を対処し、厄介な《精神を刻む者、ジェイス》がいなくなったところでいよいよゲームの巻き返しを図っていく。
中尾の《稲妻》が《不屈の追跡者》を焼くが、ここまでに3つの手がかりトークンを得ている小田はどこ吹く風とばかりにこれを通す。中尾にして見れば、この手がかりトークンは物言わぬ脅威だ。《引き裂かれし永劫、エムラクール》の「滅殺6」が軽減されてしまう上に、ロングゲームになればやがてアドバンテージの差で押し負けることとなる。
小田はさらに《薄暮見の徴募兵》をプレイ。第4ターンに《精神を刻む者、ジェイス》でバウンスした時点では少しお洒落な熊に過ぎなかったこのクリーチャーも、ゲームが中盤戦に差し掛かり、小田のマナが伸びた今となっては十分に脅威だ。中尾はこれを処理すべく2枚目の《神々の憤怒》をプレイするが、小田は《召喚の調べ》から《無私の霊魂》を呼び出して《薄暮見の徴募兵》を守り、続くターンに4/4の《聖遺の騎士》を送り込む。
中尾はこの《聖遺の騎士》こそ《焙り焼き》で除去するが、その手札からはいよいよ除去が枯渇してしまう。一方小田はこのとき《幽霊街》によって《聖遺の騎士》を6/6にして守ることもできたのだが、すでに盤面もアドバンテージも優位な状況でリスクを冒すことはないと判断したようだった。
こうしている間にも《薄暮見の徴募兵》の2点クロックが着実に中尾の寿命を蝕み、その起動型能力が2枚目の《聖遺の騎士》を見つけ、再び4/4が戦場に降り立つ。小田の一向にして減らないクロックに対し、ただでさえマナフラッド気味の中尾は完全に打ちのめされ、敗北は時間の問題となってしまった。
最後のターン、中尾はマナをフルオープンの状態でターン終了を宣言し、返す小田の攻撃を聞き届ける。このとき小田のクロックは2点だけ足りていなかったのだが、この決勝の舞台まで勝ち上がってきた小田は間違えない。「《幽霊街》で自分の《森》を割ります」の一言で、中尾は自身の敗北を認めて右手を差し出すのだった。
第11期モダン神挑戦者決定戦、優勝は小田 光一(埼玉)!!
おめでとう!!