By Kazuki Watanabe
景山 広樹(エルドラージ) vs. 醍醐 利宗(赤単プリズン)
神決定戦の常連とも言える景山 広樹は、「エルドラージ」を手にトップ8進出を果たした。《エルドラージの寺院》や《古えの墳墓》、《裏切り者の都》といった強力な基本でない土地を利用して、各種エルドラージを素早く戦場へ送り出して戦場を蹂躙する、というのがこのデッキのコンセプトだ。
この準々決勝では、ダブルマリガンを選択しながらも《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》、《エルドラージの寺院》と並べて動き出しす。生み出せるマナは潤沢。手札にはまだ土地が控えている。あとはエルドラージを引くことさえできれば……。
思い描かれる、多数のゲームプラン。しかし、《山》、そして《裏切り者の都》と続けた醍醐 利宗が《血染めの月》を唱えたことで、勝負が一瞬の内に決まってしまう。
景山のデッキに、「基本でない土地」は存在しない。
一度戦場をリセットすることを選んだ景山は、《山》と化した土地を畳んだ。
景山 1-0 醍醐
2ゲーム目も醍醐が戦場を染めて行く。
《裏切り者の都》を利用して《血染めの月》を速やかに戦場に据える。相手のマナを縛り付けた上で、《ゴブリンの熟練扇動者》を送り出して攻撃を仕掛ける準備も整えた。
景山は唸りながらターンを受ける。《真髄の針》を唱えて、《反逆の先導者、チャンドラ》を指定した。
戦場に居座った《ゴブリンの熟練扇動者》を止めることはできないが、これで強力なプレインズウォーカーが戦場を支配することは未然に防げた。
それが戦場に残れば、の話だが。
醍醐は《焦熱の合流点》を唱え、《真髄の針》を破壊した上で、本体に火力を見舞う。
あとは、《ゴブリンの熟練扇動者》が配下を引き連れて攻撃を仕掛けるだけ。《血染めの月》が照らす戦場は、無数の《山》とゴブリンで埋め尽くされた。
景山 0-2 醍醐
小野 光太郎(スニークショー) vs. 嘉藤 裕樹(スゥルタイコントロール)
《死儀礼のシャーマン》2体を戦場に送り出し、《精神を刻む者、ジェイス》、そして《トレストの使者、レオヴォルド》と並べて、嘉藤 裕樹は盤石の布陣でターンを返す。
対する小野 光太郎の盤面に並ぶのは土地のみ。アドバンテージを稼ぎ続ける相手に対して、一撃必殺を決めるべく、仕掛ける瞬間を待つ。
嘉藤が3体目の《死儀礼のシャーマン》を送り出し、その瞬間が来た。
小野は《騙し討ち》を唱えると、《引き裂かれし永劫、エムラクール》を戦場に送り出して、「滅殺6」を炸裂させる。
15マナの《引き裂かれし永劫、エムラクール》を《騙し討ち》で送り出す。これは確かに速い。しかし、今回はそれでも遅すぎた。
先ほどの一撃で、嘉藤のライフは1まで削られている。しかし、ここまで嘉藤が稼いできたアドバンテージが上回った。度重なる攻撃、そして《死儀礼のシャーマン》の能力で、小野のライフも残り2まで減っている。
「滅殺」を生き延びた《死儀礼のシャーマン》が能力を起動し、ライフを削りきった。
嘉藤 1-0 小野
わずかに間に合わなかったが、小野が使用する「スニークショー」の一撃が強力であることは間違いない。
その強さを見せつけるために。《引き裂かれし永劫、エムラクール》、それを戦場に送り出す《実物提示教育》と《騙し討ち》、さらに《古えの墳墓》という手札をキープした小野が、一気に勝負を仕掛ける。
《実物提示教育》は《狼狽の嵐》によって阻まれ、そのまま《外科的摘出》で追放されてしまうが、続けて唱えた《騙し討ち》が通り、戦備が整った。早速起動し、戦場に《引き裂かれし永劫、エムラクール》を降臨させる。
攻撃されてしまえば「滅殺」の餌食となる。嘉藤はプロテクション(有色の呪文)を掻い潜る《悪魔の布告》を唱えて、これを凌ごうとする。
生け贄に捧げられ、墓地を引き連れて《引き裂かれし永劫、エムラクール》がライブラリーに。これで終わるか、と思いきや、小野は再び《騙し討ち》を起動する。まだ、メインフェイズは終わっていない。
再び君臨する、《引き裂かれし永劫、エムラクール》。
「滅殺6」。嘉藤の戦場には、塵一つ残らない。
すでに反撃の芽が潰えていた嘉藤が何もできずにターンを返せば、その残りわずかなライフを削り切るために、小野が最大級のとどめを《騙し討ち》から送り出す。
3体目の《引き裂かれし永劫、エムラクール》を見て、嘉藤は静かに投了を告げる。
敗北の場面で使われる、「土地を畳んだ」「戦場を片付けた」という常套句。それが今回は使用できない。嘉藤の盤面には、パーマネントが一つとして残っていないからだ。
嘉藤 1-1 小野
先手の嘉藤がゲームを始める前に、小野が《神聖の力線》を盤面に据える。
それを見た上で、嘉藤は《森の知恵》を張る。ライフを支払う必要はあるが、緑の持つ貴重なドローエンジンだ。
《森の知恵》を利用して手札を整えながら、嘉藤がクリーチャーを唱える。それを見て、小野は思わず呟いた。
小野「《タルモゴイフ》?」
嘉藤は静かに頷いて返す。さらに、続けて《トレストの使者、レオヴォルド》も送り出し、戦力は十分。
対する小野は《グリセルブランド》を2枚手札に抱えるが、戦場に送り出す手段がない。その上、嘉藤の《不毛の大地》で《Volcanic Island》、続けて《古えの墳墓》を砕かれ、マナも不足気味になる。
嘉藤が従えた《タルモゴイフ》のサイズは3/4。阻むもののない戦場で、《トレストの使者、レオヴォルド》と共に攻撃を続ける。
そして、嘉藤が《外科的摘出》を唱えて《Volcanic Island》を指定する。
《外科的摘出》を唱えられた場合、手札を公開し、それからライブラリーを渡す、という手順を踏むことがほとんどだ。手順通り小野は手札を公開するが、そこに一言だけ付け加えた。
小野「負けました」
小野 1-2 嘉藤
伊藤 瑞基(青白奇跡) vs. 冨澤 晋(グリクシスデルバー)
冨澤 晋が《秘密を掘り下げる者》を送り出し、伊藤 瑞基が唱えた《相殺》を《意志の力》で打ち消す、という動き出し。
さらに《死儀礼のシャーマン》を送り出すが、《終末》が戦場を一旦沈静化させる。冨澤は《真の名の宿敵》を戦場に加えて、再び戦線を構築し始めた。
《思案》《予報》といった呪文を唱えて手札を整えながら、伊藤は《精神を刻む者、ジェイス》を唱える。
《真の名の宿敵》が攻撃を仕掛けてくるが、これを《終末》で退け、さらに《アズカンタの探索》を唱えて、伊藤が戦場をコントロールする。《精神を刻む者、ジェイス》によって相手のデッキトップを確認し続けて13まで忠誠値を伸ばし、「-12」能力を起動する。
《精神を刻む者、ジェイス》の奥義。それは「ゲームの勝敗を決定する能力」と言っても良いだろう。
伊藤 1-0 冨澤
冨澤が唱えた《死儀礼のシャーマン》は《真髄の針》で止められ、伊藤の《アズカンタの探索》は《紅蓮破》で打ち消される。互いに相手の動きを制しながら、2ゲーム目が始まった。
能力を起動できない《死儀礼のシャーマン》が、地道に攻撃を加える展開が続く。《不毛の大地》で《Tundra》を砕き、自身は《Volcanic Island》《Underground Sea》《Tropical Island》と3種類のデュアルランドを並べている。
レガシーというフォーマットの最大の特徴は、これらデュアルランドの存在と言っても過言ではない。2つの基本土地タイプを持ち、各種フェッチランドを利用することで自在にマナを供給することができる。
2つの基本土地タイプを持つ……そう、それが特徴だ。デュアルランドは、たしかに2つの基本土地タイプを持つ。しかし、基本土地でない。
だからこそ、このカードが刺さるのだ。
伊藤が命令する、《基本に帰れ》。
冨澤の戦場に並んだデュアルランドが、途端に重くなる。一度マナを生み出してしまえば、再利用は容易ではない。
色マナの供給を6枚のデュアルランドに託している冨澤に対し、伊藤の「青白奇跡」には合計8枚の基本土地が採用されている。マナの供給に細心の注意を払わねばならない相手を眺めながら、悠々と《精神を刻む者、ジェイス》がプレインズウォークし、忠誠度を高め始めた。
何としてもマナを供給したい冨澤は、伊藤が唱えた《思案》に《目くらまし》を唱えて1マナを要求。難なく伊藤は支払うが、冨澤の目的は起き上がらなくなった《Volcanic Island》の回収だ。
《基本に帰れ》を破壊するために《紅蓮破》を唱える。しかし、それを《水流破》が阻んだ。
あとは、《精神を刻む者、ジェイス》が精神を刻むのみ。
伊藤 2-0 冨澤