By Hiroshi Okubo
『基本セット2015』以降のエキスパンションで印刷されたカードのみを使用するフロンティアも発足から実に1年半ほどの月日が経過しており、その間に『霊気紛争』『アモンケット』『破滅の刻』『イクサラン』『イクサランの相克』と5つものセットが追加されてきた。発足時には『基本セット2015』~『カラデシュ』までの10セットしかなかったので、カードプールは1.5倍ほどに増えていることになる。
開拓者を意味するフォーマット名「フロンティア」が意味する通り、これまでフロンティアでは《奔流の機械巨人》+《時を越えた探索》や《ボーマットの急使》+《幽霊火の刃》など、誰も見たことのないシナジーや強力なデッキが開拓されてきた。単にスタンダードのマイナーチェンジデッキを回すためのフォーマットとしてではなく、様々な創意工夫が実践される場として数々のプレイヤーを魅了してきた舞台と言えよう。
そして第11期フロンティア神挑戦者決定戦の決勝で争うことになった2人は、まさにそんなフロンティアに魅了されてきた2人だった。
石渡 康一(東京)。
グランプリ・千葉2016のサイドイベントであるサンデーフロンティアでの優勝経験もあり、日頃から晴れる屋でその腕に磨きをかけているという石渡。フロンティアの魅力について尋ねると、「モダンよりも参入難易度はずっと低くて、だけどエターナルらしさもあるやり込み甲斐のあるフォーマット」と、頼もしい答えを聞かせてくれた。
そんな石渡の使用デッキは直前に友人からデッキリストをシェアしてもらったという「ティムール《霊気池の驚異》」だ。『戦乱のゼンディカー』~『カラデシュ』期の霊気池デッキをベースにスタンダードでは終ぞ共存し得なかった《削剥》や《アズカンタの探索》といった優良カードが多数搭載されたリストだ。
相対するは星 和人(埼玉)。
晴れる屋の神挑戦者決定戦やLMCなど関東近郊のトーナメントで叩き上げられてきた強豪プレイヤーの1人で、フロンティアのトーナメントにも精力的に参加しているというベテランだ。石渡とは普段からフロンティアのイベントでよく顔を合わせる仲のようで、笑みを湛えつつ対戦テーブルへと着席する。
星のデッキは「ジェスカイテンポ」。石渡曰く、星のデッキはもはや「専用機」と呼んでも差し支えないレベルまで使い込まれているらしく、そのリストからは《カマキリの乗り手》3枚など初見では意図を掴みかねるシビアな調整の跡が見て取れる。
どちらもフロンティアを心から愛す強豪同士の対戦。石渡と星の対戦の行方は果たしてどうなるのか? 両者デッキカットを終えて初手の7枚を覗き込むと、決勝の火蓋が切って落とされた。
Game 1
先攻の星が急いた様子で《スレイベンの検査官》をプレイし、続けて《無私の霊魂》を盤面に投入する。素早く展開されるクロックに対し、石渡は《霊気との調和》でエネルギーを蓄えながら《蓄霊稲妻》で《無私の霊魂》を除去し、流れるように第3ターンの《ならず者の精製屋》へと繋ぎ、安易なリードを許さない。
だが、拮抗したゲーム展開は長くは続かない。第4ターンに星が《反逆の先導者、チャンドラ》を呼び出してその「-3」能力で《ならず者の精製屋》を除去すると、これに対する解答を持たない石渡は苦し気な表情を浮かべながら呻く。
石渡が2枚目の《ならず者の精製屋》をプレイするも、星は《反射魔道士》で対処しつつ盤面に《魂火の大導師》を追加。石渡が《コジレックの帰還》で星のクリーチャーを何とか追い返そうとするが、星はさらに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を追加してゲームの主導権を握っていく。
やむことのない星の猛攻に石渡のライフは5まで減らされていた。キーカードである《霊気池の驚異》を引けない石渡の挙動はややゆったりとしてティムールミッドレンジといった様子で、星の操るジェスカイテンポにとってはまさに格好の獲物だ。なんとか盤面だけでも取り戻そうとプレイした石渡の《墓後家蜘蛛、イシュカナ》も2枚目の《反射魔道士》で手札へと強制送還され、その間にも星の《反逆の先導者、チャンドラ》が刻一刻と石渡のライフを削り取っていく。
それでもなんとか《精霊龍、ウギン》に辿り着いた石渡だったが、時すでに遅し。余命いくばくもない石渡へと星の《密輸人の回転翼機》と《カマキリの乗り手》が飛び掛かると、そのライフは露と消えるのだった。
石渡 0-1 星
Game 2
石渡が《発生の器》、《織木師の組細工》と動き出す。対する星は最序盤に動きを見せないでいたものの、3ターン目に《試練に臨むギデオン》をプレイ!
たった3枚の土地をタップして登場した脅威。石渡のデッキはPWへの備えは多くはなく、ひとたび着地してしまえば《試練に臨むギデオン》への対抗手段はほとんどない。先に盤面を作り上げていればまだしも、不幸にも石渡は《つむじ風の巨匠》も《ならず者の精製屋》もプレイできておらず、この先の展開が《試練に臨むギデオン》1枚に苦しめられることは目に見えていた。
石渡「うげ、そっちのギデオン!分かってるなぁw」
石渡は呻き声を上げ、乾いた笑いを絞り出すことしかできない。一手遅れてプレイした《ならず者の精製屋》には星の《稲妻の一撃》が突き刺さり、さらに続くターンに星は《カマキリの乗り手》を追加。石渡のライフをすさまじい速度で溶かしていく。
だが、石渡もまだ勝負を捨ててはいない。《ムラーサの胎動》や《織木師の組細工》でなんとか延命を図り、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》をプレイ。これは《軽蔑的な一撃》に阻まれてしまうが、続くターンに《約束された終末、エムラクール》を通すことに成功し、星のクロックを減らす。
リアクションスペルばかりだった星の手札を枯らすことはできなかったものの、石渡の盤面には13/13飛行・トランプル・プロテクション(インスタント)という怪物が残されている。星からすればこの生物をなんとかして対処しなくてはならず、《試練に臨むギデオン》の「+1」能力をこの《引き裂かれし永劫、エムラクール》に費やすことになってしまう。
押されつつも《約束された終末、エムラクール》によってひとまず数ターンの猶予を得た石渡。この《引き裂かれし永劫、エムラクール》が《石の宣告》によって処理されてしまう頃には十分なマナを得て《精霊龍、ウギン》へとたどり着いていた。
ここまで一方的に押してきた星もこの消耗戦で登場した《精霊龍、ウギン》には対処することができず。「-X」能力で盤面を一掃された後「+2」「+2」「+2」と着実に忠誠度を増やされ、その奥義――「-10」能力を浴びせられる。星と石渡の手札・ライフ・盤面全てのリソース差がひっくり返り、石渡が逆転勝利を収めた。
石渡 1-1 星
Game 3
驚異的な逆転劇を見せた第2ゲームと打って変わって、第3ゲームは一瞬でゲームが決まることとなった。
2ターン目に《密輸人の回転翼機》をプレイした星だったが、その盤面に並んでいる土地は《感動的な眺望所》2枚。だがしかし1マリガン後の手札は真っ青で、何も展開することができない。マナトラブルである。
事故で身動きが取れないまま第3ターンと第4ターンを飛ばした星の前に、石渡が《ならず者の精製屋》、《霊気池の驚異》と並べたところで星がカードを片付けた。
石渡 2-1 星
第11期フロンティア神挑戦者決定戦、優勝は石渡 康一(東京)!!
おめでとう!!