既存のデッキをアップグレードしよう

Petr Sochurek

Translated by Yoshihiko Ikawa

原文はこちら
(掲載日 2018/04/21)

皆さん、こんにちは!今回は新セットである『ドミナリア』を見ていきましょう。

この新セットは本当に面白く、これまで見たことのなかった新しいコンセプトと対応手段を与えてくれているので、新しいデッキを作れる可能性を大いに秘めています。ですが今回はそういう時間ではありません。

セットが発売された後、人々はすぐに新しいデッキを作り始めますし、もちろんそれは理解できます。新しいカードを使ってプレイすることは最上の楽しみですからね。ですが現実には、新セット発売直後の大型トーナメントの結果を見てみると、いつも(大抵は)旧環境で証明されているデッキたちの方が成績を残しているのです(もちろん、新セットからのアップグレードを含んでいる場合もあります)。どうしてこんなことが起こるのでしょうか?

スカラベの神熱烈の神ハゾレト

そう、いつだって、すでにプレイされているTier1のデッキはしっかりチューニングされたマシーンなのです。人々がすでにあらゆるバージョンを試し、そして最終的にそのアーキタイプのベストに近い状態に仕上がっているのですから。新しいデッキを持ってきた人は、もしそのアイディアが素晴らしければそのデッキが最終的に有名になることもありますが、大抵の場合、最初の数回のトーナメントでは良い成績を残せず、悲惨な経験をもたらすことになります。

Wizardsが”ぶっ壊れ”を印刷したり、部族カードのようなものを強くプッシュしたりといったことが明白でない限り、新しいデッキの「最適化された」バージョンはプロツアーでお目見えすることになります。なぜなら、StarCityGames.com Openのようなトーナメントの場合を除き、プロチームが何日も何週も試行錯誤に費やすのですからね。

このように、環境初期は使い方を知っているデッキを選ぶ方が基本的には安全なので、今回は『ドミナリア』が既存のスタンダードのデッキにもたらすアップグレードを見ていきましょう。

白黒トークン

最初に見ていくのは白黒トークンです。白黒トークンというアーキタイプは今もしばしば見られますが、決して上位のデッキではなく、競技レベルたるにはいくつかのピースが欠けていると感じられていました。

『ドミナリア』はこのデッキを変えることができるでしょうか?僕にも定かではないですが、数枚の明らかにパワフルなカードが『ドミナリア』に収録されています。

『ドミナリア』から採用しうるカード

《ベナリア史》

ベナリア史

従来のトークン生成カードは騎士・クリーチャーを生成してくれない(《ベナリア史》が強いと証明されたときに、変更すべきカードがない)ので、白黒トークンというデッキがこのカードにとって最適な居場所かは自信がありません。ですが3マナで2体の2/2クリーチャーを生成しつつ、そのクリーチャーたちを強化してアタックできるのは、《選定された行進》が入っているこのデッキにとって十分優秀です。

《ベルゼンロック典礼》

ベルゼンロック典礼

《秘密の備蓄品》《選定された行進》《選定の司祭》といったカードを搭載している白黒トークンに、トークンを生成する「英雄譚」カードである《ベルゼンロック典礼》が入る可能性があります。

このカードは何もしない0/1トークンたち、そして相手が手札に抱えている無数の除去を食らうだけの6/6トークンを生成するだけ、と単体では弱くみえます。ですが正しい準備さえすれば非常に強力だろうと僕は予想します。《選定された行進》で小さいトークンを8体出して《秘密の備蓄品》で生け贄にすることもできますし、《ベルゼンロック典礼》から出てくる6/6トークンへの備えにもなります。(既に述べた通り)1ゲーム目では6/6トークンを出しても、《選定された行進》でさらに追加の6/6トークンが出ても大したことはないでしょうが、サイドボード後には対戦相手に解答を持っているかどうか押し付ける形になること間違いなしです。

《騎兵呼集》

騎兵呼集

ええ、このカードが凄く良いとは僕も思っていません。ですがもし《ベナリア史》が優秀だと判明した際には、このカードにも役割が出てくるかもしれません。

《不純な捧げ物》

不純な捧げ物

ここまで言及した他のカードについては分からないですが、この《不純な捧げ物》については確信しています。《致命的な一押し》では対処できず、《徹頭+徹尾》《排斥》のような不器用なカードに頼らざるをえないので、白黒トークンというデッキは《栄光をもたらすもの》のような大型クリーチャーへの対処に問題を抱えていました。ですが《不純な捧げ物》はそれらを効率的に対処することができます。

青黒コントロールのようなデッキにすら入ると興奮していた人もいましたが、キッカーコストを気軽に払えるデッキでないならこのカードは弱いんじゃないかと僕は思います。

こちらが新しいカードたちを使ったサンプルリストです。

赤単アグロ

このセットで恩恵を受けたと僕が思っている2番目のデッキは、古き良き《熱烈の神ハゾレト》アグロです。

新しく面白いゴブリンカードたちが多数あるので、多くの人々がゴブリンデッキを組もうとするでしょう。ですが、僕は既存の赤単アグロにゴブリンカードを足すのが最良の選択だろうと思っています。

僕が興味を持ったのはこれらのカードです。

『ドミナリア』から採用しうるカード

《ゴブリンの鎖回し》

ゴブリンの鎖回し

このカードの強さは環境にタフネス1のクリーチャーがいるかに大きく依存するでしょうし、単なるサイドボードカードになる可能性もあります。ですが正しい状況であればかなり強力なのは間違いないですし、最悪でも3マナ3/3先制攻撃というのはそれほど酷くないと思いませんか?

《包囲攻撃の司令官》

包囲攻撃の司令官

《包囲攻撃の司令官》はスタンダードで使えるときは常にその環境で使われてきましたし、今回も使われないとは到底思えません。《栄光をもたらすもの》のようなクリーチャーとどちらが優秀でしょうか?この問いに答えるのはとても難しいですし、メタゲームによるでしょうが、これだけは明言できます。もし環境に単体除去スペルが溢れているようであれば、《包囲攻撃の司令官》はそれに対抗するのに良い選択肢となるでしょう。

新しいカードたちを使用した赤単アグロのサンプルリストはこちら。

青黒コントロール

僕が見ていこうと思う最後のデッキは青黒コントロールです。青黒コントロールは多くのタイミングにおいてメタゲーム上の正しい選択肢のように見えますが、ベストデッキの一つとなることはありませんでした。その理由はデッキに多くの欠点 -主に軽量で優良な妨害呪文が不足しているために《渇望の時》《本質の散乱》《検閲》といった状況を選ぶカードを使わざるを得ない- があるからです。手札にある解答が状況にあったものではなかったことがそのまま敗着になることもしばしばありましたが、『ドミナリア』がこの点を改善してくれそうです。

『ドミナリア』から採用しうるカード

《喪心》

喪心

多くの伝説のクリーチャーが環境にいるであろうことは明らかなので、この呪文だけに頼るべきではありませんが、それでもこの《喪心》は非常に優秀です。対処が遅れがちな2マナ域のクリーチャーのほとんどをたった2マナで対処できますので、きっと多くのデッキで複数枚採用されると予想しています。

《中略》

中略

《中略》は弱いカードではなく、2マナでプレイできる素晴らしいカードだと思います。しばしば非効率であり、ケアされると簡単に弱くなってしまうのは事実ですが、それでも2マナ域であり後半でも有用であるという柔軟性は、コントロールプレイヤーが求めていたものです。カウンターしたカードを追放する効果も、今のスタンダードでは十分な意味を持ちます。

《巻き戻し》

巻き戻し

奇妙に聞こえるかもしれないですが、僕はこのカードが《否認》よりも優れているのではないかと予想しています。

賢いプレイヤーがコントロールを倒す方法の一つ、それは相手が《天才の片鱗》を構えているターンに脅威を唱えるというプレイングであり、このプレイをされると構えた土地を《否認》のために使ってしまうため《天才の片鱗》でカードを引くことはできません。ですが《巻き戻し》は「脅威を打ち消す」「《天才の片鱗》でカードを引く」という両方の行動を可能にしてくれる可能性があります。これが決まるだけで実質的にゲームを終わらせてしまうこともあるでしょう。

青黒コントロールのサンプルリストはこちら。

今回の記事が、これらのデッキを使う皆さんの一助になり、皆さんがプロツアー前の大会で活躍することを願っています!

読んでくれてありがとうございます。

ペトル・ソフーレク

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