これまでのあらすじ
グランプリ・シアトル2018(レガシー)で16位に入り、プロポイント24点となったタカハシ。
ゴールド・レベル到達のためにも、プロツアー『ドミナリア』では何としても10点以上のプロポイントを獲得したい(11勝5敗以上)。
新環境のスタンダードを学ぶべく、BIG MAGIC Open Vol.10に参加するのであった。
■ 『ドミナリア』発売!
新カードはどれも強力で、デッキを作りたくなるようなものばかりだ。
大会に出る前に、頭の中で相手に使われて強いであろうカードにランク付けをしてみた。
タカハシランキング☆トップ10☆
- 《ラノワールのエルフ》
- 《ウルザの後継、カーン》
- 《ゴブリンの鎖回し》
- 《鉄葉のチャンピオン》
- 《喪心》
- 《中略》
- 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
- 《艦の魔道士、ラフ・キャパシェン》
- 《封じ込め》
- 《黎明をもたらす者ライラ》
基本的にスタンダードは2マナが中心となりやすい。
先手が強い2マナ域を出したら後手は2マナで除去。同様に3, 4マナもカードの交換をし、5マナの圧倒的なパーマネントを守って勝ち、というのが最近のスタンダードのイメージだ。
3, 4, 5マナは代わりになるものが多いが、2マナだけは厳選しなければいけない。
《キランの真意号》《光袖会の収集者》のように除去できないとそのまま敗因につながるようなパーマネントもあるので、2ターン目を何もせずパスすることだけは絶対に避けたい。
2マナは必ず展開 or 妨害のターンなのだ。
《喪心》《封じ込め》のインスタント除去は2マナでありつつ自分より上のマナ域とも交換できるので評価しており、また《中略》は4, 5マナの自分より上のマナ域と2マナで交換できたときは素晴らしい(もちろん、ビートダウン相手に腐りやすいデメリットもある)。
《ゴブリンの鎖回し》は相手の2マナを倒せたときは4マナ以上の性能だし、《鉄葉のチャンピオン》はそもそも対処できる除去が少ない。
《ウルザの後継、カーン》は感覚としてはとても性能の良い《地下世界の人脈》。毎ターン2ドローはもちろん強いのだが、最近のビートダウンは《キランの真意号》《鉄葉のチャンピオン》などパワーが高いので手放しで出せるカードではない。
除去で場を作ったあとは強いが、ビートダウンにはサイドアウトすることもあるカード。とは言え場に出たあとは支配的で、是非コントロールで使いたい。
そして1位の《ラノワールのエルフ》。マナ域の交換の話をしたが、2マナスタートが基本のスタンダードで光り輝く1マナ域。しかも1→3→4の動きは後手に回ると対処が非常に難しい。
《ラノワールのエルフ》→《鉄葉のチャンピオン》→《ウルザの後継、カーン》の動きをされて勝てるデッキはほとんどない。
■ デッキ構築
以上を踏まえて、新スタンダードの仮想敵は以下。
- ① 緑単ビートダウン
- ② 青白コントロール
- ③ 赤系ビートダウン
- ④ 青白《王神の贈り物》
- ①はスタンダードベストの動きである《ラノワールのエルフ》→《鉄葉のチャンピオン》を使える。
- ②はタカハシランキング☆トップ10☆のカードをもっとも多く使える。
- ③は前環境で強かったのと、《ゴブリンの鎖回し》を使える。
- ④は前環境で強かったのと、『ドミナリア』でアーティファクト対策や墓地対策が増えなかったから。
スタンダードのプールで、後手で《ラノワールのエルフ》に対抗できるのは《致命的な一押し》《ショック》《狂信的扇動者》の3つ。
赤か黒を必ず使わなければいけないので二択に。しかし《ショック》《狂信的扇動者》は自動的に赤単系デッキになる上、赤単は《鉄葉のチャンピオン》を1枚で除去するのが難しいため却下。
そうなると、《致命的な一押し》をうまく使えるデッキを考えることになる。
そしてもう1つ、僕が『ドミナリア』で使いたいと思ったのが《戦慄の影》。
《戦慄の影》は序盤から《鉄葉のチャンピオン》《ゴブリンの鎖回し》を乗り越えることができるし、《ウルザの後継、カーン》も一撃で倒すことができる。
また青白コントロールには《残骸の漂着》を撃たれたあとのフィニッシャーとして心強い。まず《戦慄の影》を対処しないと《ドミナリアの英雄、テフェリー》などのプレインズウォーカーを出しにくくなる副次効果もある。
最初に脳内で組んだのがこちら。
《陰謀団の要塞》を入れるかも考えたが、《沼》が5枚目以降でないとマナが増えない。またスタンダードには優秀な能力持ちの土地が多いので、それらを押しのけてまで使うほどのカードではないと判断。
《リッチの騎士、ジョス・ヴェス》は相手の2マナ除去と交換する恐れがあり印象は悪かった。4マナ以上のクリーチャーは《豪華の王、ゴンティ》のように戦場に出たときの能力があるか、もしくは《再燃するフェニックス》のように除去耐性があるか、《栄光をもたらすもの》のように1回攻撃できれば元が取れているものを選びたい。
2マナ除去と1:1交換して良いのは3マナクリーチャーまでで、4マナ以上は除去と1:1交換してはいけないというのが僕の考えだ。
《板歩きの刑》は《黎明をもたらす者ライラ》や《原初の飢え、ガルタ》などの伝説のクリーチャー対処用、かつ《鉄葉のチャンピオン》《ゴブリンの鎖回し》も難なく除去できる。ただインスタントが欲しい場合も多いので《喪心》と散らすことに。
黒のベストな先手2ターン目の行動は《霊気拠点》→《光袖会の収集者》。
またこのデッキのままだと《王神の贈り物》に触ることができず、除去コンはどう考えても青白《王神の贈り物》に弱いので2色目は欲しい。《霊気拠点》も使えるし、タッチ1色くらいなら《戦慄の影》を運用できるのでは? と考えて次に。
スタンダードで最も強い5マナは《スカラベの神》なので青をタッチ。生き残れば自動的に勝つカードなので、《ヴラスカの侮辱》されても良いように4枚!
《死の権威、リリアナ》は赤単と《鉄葉のチャンピオン》に対して弱いためすべて削る。
また後半でも《致命的な一押し》の価値を下げないためにも「紛争」用に《進化する未開地》。
《才気ある霊基体》は青白コントロールと《王神の贈り物》に弱く、《ヴラスカの侮辱》は《王神の贈り物》に弱いので、相手によって強さが上下するカードを3枚に変更。除去は相手によって腐る展開もあるので多すぎない方が良い。
青白コントロールと《王神の贈り物》に打ち消し0だと好き放題されるので《中略》《至高の意志》を追加。ここの部分は最後まで疑問があり悩み続けたが、相手によってブレにくい打ち消しが一番良い選択肢だと判断した。
《戦慄の影》と《中略》は一見相性が悪いように見えるが、常に選択肢を残せるのでクロックパーミッションには《戦慄の影》が合っていたのが嬉しい誤算だった。
ここまで実践0。すべて脳内会議の結論で、デッキが完成したのが大会前日の夜10時だったので1ゲームだけMagic Onlineで回す。マナベースに納得したのと《中略》が思ったより良かった。
黒の2/2/2先制攻撃・白呪禁の騎士。3/2先制攻撃になるから3番目誘発されてもガッチリキャッチ。白除去も効かず。 pic.twitter.com/NQBRVPw7pf
— Yoshihiko Ikawa (@WanderingOnes) 2018年4月24日
井川さんおすすめサイドの《悪意の騎士》が赤単・白ビート・青白コンコントロール全部見れて感触も良く、安心して就寝。
■ BMO本戦
ラウンド数 | 対戦デッキ | 勝敗 |
ラウンド 1 | 赤黒ビートダウン | 〇×〇 |
ラウンド 2 | 赤単 | ×〇〇 |
ラウンド 3 | 緑単ビートダウン | 〇×〇 |
ラウンド 4 | 青白王神 | 〇〇 |
ラウンド 5 | 青白コントロール | ×〇〇 |
ラウンド 6 | グリクシスエネルギー | 〇×〇 |
ラウンド 7 | 緑単ビートダウン | 〇〇 |
ラウンド 8 | 赤黒機体 | ×× |
ラウンド 9 | 青白コントロール(※テキストカバレージ) | 〇〇 |
ラウンド 10 | ID | -- |
ラウンド数 | 対戦デッキ | 勝敗 |
準々決勝 | 青赤王神(※テキストカバレージ) | ×〇× |
青白《王神の贈り物》は《否認》が効きやすいのでまだマシだが、クリーチャーベースの青赤《王神の贈り物》はこちらの干渉手段が少なく、サイドボードが足りていなかった。仮想敵に青赤《王神の贈り物》を組み込まなかったのが敗因だ。
次にこのデッキを使うとしたら《ファイレクシア教典》はぜひ試したいカードだ。
《戦慄の影》を残して全部破壊したら勝つだろうし、墓地追放の能力が《王神の贈り物》デッキに対して良い働きをするので、《バントゥ最後の算段》と入れ替えで入るだろう。
ではまた。
高橋 優太