By Jeremy Dezani
Translated by Daijiro Ueno
(掲載日 2018/05/19)
「プレイヤーフォーカス」へようこそ!
「プレイヤーフォーカス」は、世界に名立たるマジックプレイヤーにインタビューする企画です。日本のみなさん、そして世界中に彼らのことを広めていきたいと思っています。毎回違うプレイヤーを紹介しますので、楽しみにしてくださいね!
今回のゲストはスティーブ・ルービン/Steve Rubin(@RubinZoo)です。
彼はアメリカのプロプレイヤーです。 プロツアー『イニストラードを覆う影』で優勝を果たし、一躍有名になりました。それ以来、世界屈指のトッププレイヤーとして活躍しています。
インタビュー
プロフィール
- 氏名: スティーブ・ルービン
- 年齢: 26
- 国籍: アメリカ合衆国
- スポンサー: TCGPLAYER.com、Ultra-Pro
- 生涯プロポイント: 257
- プロポイント2017/2018: プラチナ
職業 / マジック以外の趣味
Riot Gamesでゲームデザイナーを、TCGPLAYER.comではライターをしています。
マジックを始めたのはいつ、どのセットですか? また、マジックを知ったきっかけは何ですか?
6才のとき、『ウルザズ・サーガ』ブロックのころにマジックを始めました。僕の兄が遊び方を教えてくれました。当時は2人とも正しいルールをまったく理解していなかったのですが、鞄にマジックのカードを詰め込んで遊んでいる僕たち兄弟を見ていたお父さんが、マジックの正しいルールを調べて、僕たちに教えてくれたんです。
プロプレイヤーになるまでに、あなたに一番影響を与えた有名プレイヤーは誰ですか?
有名な人は居ませんが、カーネギー・メロン大学で一緒にドラフトをしていた僕の友達(Zohar Bhagat, Bill Senneway, Harry Corvese, Ron Kotwica, and Jason Martel)は競技レベルのマジックにのめりこむ最大のきっかけを与えてくれましたね。僕たちはほとんど身内でしかドラフトをやらなかったのですが、そこで様々な経験をする内に「もっと上手くなりたい」という気持ちが生まれました。「自分のチームに居て欲しいけど、敵に回ったら恐ろしい」……そんなプレイヤーになりたいと思うようになったんです。マジックをプレイし、ゲームを作り上げ、大会で競い合うことも好きですが、常に「マジックは僕の趣味の1つだ」と思っています。マジックで何かを手に入れることができたとしたら、それは僕にとって「ボーナス」みたいなものですね。
これまでの実績
プロツアー・トップ8: 1回
グランプリ・トップ8: 10回
その他: MOCS 2017 準優勝、SCGオープン(スタンダード)優勝2回
好きな日本人選手とその理由
行弘 賢です。
自身で生み出したデッキを常に持ち込む、という彼の能力は尊敬に値します。特に印象深いのは、プロツアー『アモンケット』のスタンダードです。彼は《ホネツツキ》を使用してトップ8入賞を成し遂げた、唯一のプレイヤーでした。プロツアー殿堂入りを決める投票では、彼に投票しようと思っています!
一番好きなフォーマットとその理由
ドラフトです。リミテッドは毎回異なる試合展開が楽しめるので、一番面白いと思います。
アグロ、コントロール、ミッドレンジ、コンボの内どれが好きですか?
構築ではミッドレンジが好きです。このアーキタイプを使用しているときは、良い結果を得られていますね。僕は柔軟性を持ったデッキが好きなんです。ミッドレンジは、状況に応じてアグレッシブに動くことも、コントロールのように構えることもできますからね。
一番好きなデッキ
スタンダード: 「黒赤機体」
モダン: 「《死せる生》」
レガシー: 「デルバー」
今プレイしていて最も楽しいデッキは?
モダンの「人間」です。モダンで人気がある「《虚ろな者》」と「ジャンド」の両方に対して、すごく強いんです。ものすごくアグレッシブなデッキで、初手によっては爆発的な展開が可能であり、さらに妨害手段も豊富です。普通はこれらすべてを兼ね備えたデッキを使う、なんてことは不可能ですからね。僕は少し重めのカード、例えば《修復の天使》や《つむじ風のならず者》を採用しています。これらによってフェアデッキ相手に強くなっていますし、マナフラッドが原因で負けることも防いでくれます。
4 《古代の聖塔》
4 《魂の洞窟》
4 《手付かずの領土》
4 《地平線の梢》
2 《金属海の沿岸》
-土地 (19)- 4 《教区の勇者》
4 《貴族の教主》
4 《サリアの副官》
4 《帆凧の掠め盗り》
4 《翻弄する魔道士》
3 《スレイベンの守護者、サリア》
3 《幻影の像》
1 《闇の腹心》
4 《カマキリの乗り手》
4 《反射魔道士》
1 《ケッシグの不満分子》
1 《つむじ風のならず者》
-クリーチャー (37)-
2 《戦争の報い、禍汰奇》
2 《再利用の賢者》
2 《修復の天使》
2 《人質取り》
2 《墓掘りの檻》
1 《イゼットの静電術師》
1 《罪の収集者》
1 《四肢切断》
-サイドボード (15)-
『ドミナリア』のドラフトです。1パック目、どれを最初にピックしますか?
《ウルザの殲滅破》をピックします。 自分のクリーチャーに被害が及ばない可能性がある全体除去は、リミテッドですさまじく強力です。たしかに、相手の伝説のパーマネントが残ってしまうのは気になりますが、このカードを効果的に使えるように残りのピックを進めていけば良いので、問題はないですね。同じレベルとは言えないかもしれませんが、リミテッドにおける強力なボムであった《砂塵破》や《集団の石灰化》のような強力なリセット手段と同じように使えるかもしれません。強豪の集まった2017 Magic Online Championshipで準優勝を果たしましたね。偉大なプレイヤーが多数参加したイベントでしたが、どのプレイヤーが一番印象に残りましたか? また、準優勝という素晴らしい結果について、感想を聞かせてください。
印象に残ったプレイヤーはギョーム・マティノン/Guillaume Matignonです。僕のデッキはとても強かったのですが、彼は本当に立ち回りがうまくてドラフトで唯一敗北を喫しました。完敗でしたね。ハイレベルなプレイヤーが集ったドラフトで6-0を成し遂げたプレイヤーは、全員注目に値すると思います。準優勝という結果については、嬉しかった半面、がっかりしていたのも事実です。MOCSで優勝すると自動的にプラチナ・レベルが確定しますし、翌年のMOCS参加権利も得られますからね。もう一歩のところで優勝に届かなかった、というのは、チャンスがまったくなかったときよりも残念な気持ちが強くなるものです。
プロツアー優勝はマジックプレイヤーの夢ですが、あなたはプロツアー『イニストラードを覆う影』でそれを成し遂げました。成功の秘訣やアドバイスはありますか?
僕の成功の秘訣は勝利するためにしっかりと準備をすることです。僕はプレイングに長けているわけではありませんから、プロツアーには最高のデッキを用意できるように準備し、リミテッド、構築ともに何度も何度も練習を繰り返しました。練習を積み重ねたことで、スイスラウンドの試合で犯した失敗から立ち直ることができました。僕はルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas (LSV)と対戦していて、《大天使アヴァシン》の変身を忘れてしまい、勝つチャンスを逃してしまったのです。そのときはとにかく心が乱れてしまって、「もうトップ8は無理だ……」と思い込んでしまいました。ですが、これまで積み重ねた練習のおかげで冷静さを取り戻し、最後は優勝することができたのです。僕から将来のプロツアーチャンピオンたちへアドバイスをするとすれば、ハングリー精神を忘れないこと。そして負けても自分を責めないことです。
現在プラチナ・プロとして活躍していますが、プロになる前は何をしていましたか?また、いつ自分がプロになれると気づきましたか?
以前は診療所で受付の仕事をしていました。しばらく働いている内に仕事に飽きてしまって、大学に戻ってビジネスを勉強し直すことが自分のやるべきことだと感じたんです。学校に戻ってからは、マジックでも良い成績を収めるようになり、学業と両立するのが難しいところまで達してしまいました。そして、勉強とマジックを天秤にかけて、最終的にマジックのプロになる道を選びました。
新しいプロポイント制度について様々な議論がありますが、あなたの考えを教えてもらえますか?
僕は今回の変更に大賛成です。この制度はプレイヤーに不都合をもたらす可能性があるので、多くの人が混乱したり戸惑ったりしていますね。でも来年になっても今年の結果のうち上位12個が引き続き参照されますし、その時々の成果がより確実に反映されていくのは良いことだと思います。
それに、新しい制度はプロツアー中に途中で諦めてしまうプレイヤーをなくすことができると思います。これからは、ポイントはシーズンのどの時期に獲得しても価値あるものになりますからね。去年、残念ながら僕はぎりぎりのところでライバルたちに置いていかれ、世界選手権の出場権利を逃してしまいました。権利を獲得した内の何人かは、最後のプロツアーの最終ラウンドで、それ以上戦おうとすることなく投了していました。ですから、この新制度はすべてのプレイヤーたちに、より健全で公正な勝負の場を提供してくれると思っています。