インタビュー: マルシオ・カルバリョ ~マスター・オブ・ドラフトの語る『ドミナリア』の概観~

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 プロツアーの取材準備をしながら、「さて、今回は誰に何を聞こうか」と思考を巡らせるときに、必ず候補に入るプレイヤーがいる。

「……やはり、彼にドラフトの話を聞いてみたいな」

マルシオ・カルバリョ

 彼の名は、マルシオ・カルヴァリョだ。

 世界選手権2017の取材以来、彼には何度もインタビューを申し込んでいる。今回も会場で彼と顔を合わせ、ひとしきり挨拶を済ませたあと、早速問いかけてみた。

「今回も、ドラフトの話を聞いても良いかい?」

 すると、彼は笑いながらこう答えてくれた。

マルシオ「もちろんさ! 何でも聞いてくれよ」

 では、その言葉に甘えて、『ドミナリア』ドラフトの概観を聞いてみよう!

マルシオが教える、一番重要なこと

――「早速だけど、『ドミナリア』のドラフトで勝つために、最も重要なことは何だと思う?」

マルシオ「一番重要なのは、カード・アドバンテージを重視する! ということかな」

――「カード・アドバンテージ、か。どんなときでも重要なことだと思うけど、今回は特に、ということだね?」

マルシオ「そのとおりさ。『ドミナリア』のドラフトは極めて遅い。2/3や3/4といったタフネス偏重気味なクリーチャーによって戦線が膠着し、じっくり睨み合うようなゲーム展開になる。速いアグロも存在するが、攻めきれずに終わることの方が多いだろうね。こういった環境では、カード・アドバンテージを意識してプレイすることを心掛けると良いんだ。カード1枚の差が、圧倒的に響いてくるんだよ」

――「なるほど。では、もう少し詳しく聞いていこう。環境のベストカラーは何色だと思う?」

マルシオベストは白、次点で青だ。白は戦場を支えてくれるクリーチャーの質が高く、除去も優秀なんだ」

――「そうなると、白青がベストな2色かな?」

マルシオ「と言いたいところなんだが、難しいね。白青で飛行を活かしたビートダウンは確かに強力だ。だけど、個人的には青赤で”ウィザード”、黒緑で”苗木”を活かした形の方が好きかな。どちらもシナジーがとにかく強いから、安定しているんだ。あと、白青の強さは知れ渡りすぎて、人気が高い傾向にある。特に白のカードをどれくらい集められるかがポイントだね」

――「なるほどね。ちなみに、ベストコモンはなんだと思う?」

祝福の光

マルシオ《祝福の光》だ。重たいカードに見えるかもしれないが、とにかく強力だよ。《ペガサスの駿馬》も捨てがたいが、どちらかといえば、除去の方に重きを置きたいね」

全力で考えて、ドラフトを繰り返す

――「ありがとう! では、ここからはドラフトの練習方法について教えて欲しいんだ。君のようにリミテッドの名手になるには、どうすれば良いの?」

マルシオとにかくドラフトをする! これに尽きるよ。ただし、前も言ったと思うが、考えなしに繰り返すのではなく常に全力で、だけどね。何度も何度も繰り返していくうちに、自然とドラフト感のようなものが身についてくる。こればっかりは数をこなさなければダメなんだ」

――「今回の『ドミナリア』ドラフトは、どれくらい練習したの?」

マルシオ100回以上はやってるね。リアルで半分、オンラインで半分くらいだ。多いと思うかもしれないが、まだまだ十分ではないと思っているよ。どのドラフトでも反省点がある。『これをピックすべきだった』『コンバットを間違えた』と思う瞬間があって、その度に思うのさ。『まだまだ練習が足りないな』と」

――「な、なるほど……とにかく練習あるのみ、ということだね」

マルシオ「そうだね。厳しいと思うかもしれないけど、練習すればするほど強くなるし、楽しくなるよ。『ドラフトが辛い』と思ったことは一度もない。苦手だと思う人は、ぜひプレイしてみて欲しいね。構築とは違った楽しさが分かってもらえるはずだよ」

――「では最後に、日本のマジックプレイヤーにメッセージを貰えるかな?」

マルシオ「俺は日本が好きなんだ、と言ってもあまり信じてもらえないかな? よし、じゃあ今まであまり言ったことはないんだが、この話をしよう。実は、日本のアニメが好きなんだ。ポルトガルでも、よく放送していてね。だから、日本には常に行ってみたいと思っているんだ」

――「そうだったんだ! 一番好きな作品は?」

マルシオ「ボクシングの『はじめの一歩』さ。何度も見ているよ。日本は遠いが、憧れの国でもある。機会があれば、ぜひ晴れる屋にも行きたいね。ドラフトが毎日開催されているって聞いたから、そこに飛び込んでみたいよ。気付いてくれるかな?」

 「もちろんだよ!」と私が告げると、彼は笑顔で続けた。

マルシオ・カルバリョ

マルシオ「それは嬉しいね。いつか必ず遊びに行くよ。これからも戦い続けるから、応援してくれ」

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