By Hiroshi Okubo
『ドミナリア』のリリースはスタンダード環境に大きな変革を与えた。
前環境で見られたスゥルタイ・エネルギーや赤単色の《熱烈の神ハゾレト》を使ったデッキ、あるいは《王神の贈り物》デッキのようなデッキたちは、環境から駆逐はされないまでも、トップメタの座を新たなデッキたちに明け渡すこととなった。
そんな激動のスタンダード環境で、各国のプロたちは果たしてどのようなデッキを選択したのか? あるいは、どのようなデッキを生み出してきたのか?
今回もメタゲーム・ブレイクダウンを参考に、彼らの選択に迫っていこう。
赤黒アグロ: 65人/14.1%
この結果を意外と感じる人は少ないかもしれない。グランプリ・バーミンガム2018ではトップ8中6人が赤黒のアグレッシブなデッキを選択していた。
4 《泥濘の峡谷》
3 《燃え殻の痩せ地》
4 《竜髑髏の山頂》
1 《産業の塔》
-土地(24)- 4 《ボーマットの急使》
4 《損魂魔道士》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ゴブリンの鎖回し》
3 《ピア・ナラー》
2 《再燃するフェニックス》
1 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー(22)-
2 《チャンドラの敗北》
2 《強迫》
2 《大災厄》
2 《木端+微塵》
2 《霊気圏の収集艇》
1 《栄光の刻》
1 《ヴァンスの爆破砲》
1 《最古再誕》
-サイドボード(15)-
《ボーマットの急使》は同型対決において《ゴブリンの鎖回し》で除去されてしまうこともあって、赤いデッキが支配的な現環境では採用率を落としていたものの、コントロールデッキへの対抗策としては依然として優秀で、今大会のトップメタデッキとなった。
また、《無許可の分解》はアーティファクトをコントロールさえしていれば過去最高クラスの除去である。《屑鉄場のたかり屋》はもちろん《ボーマットの急使》を採用していることもあり、3点ダメージのボーナスも活かしやすい。このカードの存在も、プロたちが赤黒アグロを選択した理由の一つに違いない。
赤黒ミッドレンジ: 57人/12.4%
赤黒アグロに次いで人気があったのは赤黒ミッドレンジだ。アグロデッキと異なり《ボーマットの急使》は採用されておらず、少し重めのデッキ構成になっている。
1 《沼》
4 《泥濘の峡谷》
4 《竜髑髏の山頂》
3 《産業の塔》
2 《燃え殻の痩せ地》
-土地(25)- 4 《歩行バリスタ》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ゴブリンの鎖回し》
2 《ピア・ナラー》
4 《再燃するフェニックス》
2 《熱烈の神ハゾレト》
2 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー(22)-
2 《大災厄》
2 《アルゲールの断血》
2 《炎鎖のアングラス》
1 《栄光をもたらすもの》
1 《グレムリン解放》
1 《木端+微塵》
1 《最古再誕》
1 《反逆の先導者、チャンドラ》
-サイドボード(15)-
『ドミナリア』からの新カードである《最古再誕》は手札にダブつくと弱いため採用枚数は抑えられているが、Ⅰ章~Ⅲ章までコントロール相手に効果的な1枚で、サイドボード後の消耗戦で一気に差をつけてくれる。もちろん同型対決でも強く、赤黒という2色でありながら様々なレンジの相手と戦えるこのデッキが二番人気というも納得である。
また、このデッキでも《ゴブリンの鎖回し》が採用されている。多くのプロたちにとって、《ゴブリンの鎖回し》こそが今回のプロツアーの鍵を握る存在であるというコンセンサスがあったようだ。
赤単: 48人/10.4%
赤単もまた依然として人気のあるアーキタイプで、今回のプロツアーでは10%のプレイヤーがこのデッキを選択していた。
1 《ザルファーの虚空》
-土地(24)- 4 《ボーマットの急使》
3 《損魂魔道士》
4 《地揺すりのケンラ》
2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》
4 《ゴブリンの鎖回し》
3 《アン一門の壊し屋》
4 《熱烈の神ハゾレト》
1 《再燃するフェニックス》
-クリーチャー(25)-
3 《火による戦い》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《屍肉あさりの地》
1 《再燃するフェニックス》
1 《チャンドラの敗北》
1 《マグマのしぶき》
1 《削剥》
1 《木端+微塵》
1 《宝物の地図》
-サイドボード(15)-
《熱烈の神ハゾレト》は前環境から引き続き最強の神として赤いアグロデッキの中核をなしている。他にも《反逆の先導者、チャンドラ》や《再燃するフェニックス》など強力な4マナ域が競っており、赤は現環境で最も恵まれた色と呼んでも差し支えなさそうだ。
デッキリストはほとんど変わっていないが、このデッキでも《ゴブリンの鎖回し》が4枚採用されており、今回のプロツアーでは35%以上のプレイヤーが《ゴブリンの鎖回し》を使用していることが明らかとなった。
緑単ガルタ: 40人/8.7%
ここまで赤絡みのデッキが上位だったが、ここにきて『ドミナリア』プレビュー期間中にも話題になっていた《鉄葉のチャンピオン》を採用した緑単ガルタが登場した。
4 《花盛りの湿地》
4 《森林の墓地》
3 《ハシェプのオアシス》
-土地(24)- 4 《ラノワールのエルフ》
3 《緑地帯の暴れ者》
4 《マーフォークの枝渡り》
4 《屑鉄場のたかり屋》
1 《立て直しのケンラ》
4 《鉄葉のチャンピオン》
3 《不屈の神ロナス》
1 《翡翠光のレインジャー》
1 《打ち壊すブロントドン》
3 《原初の飢え、ガルタ》
-クリーチャー(28)-
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《押し潰す梢》
2 《栄光の刻》
2 《霊気圏の収集艇》
2 《生命の力、ニッサ》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《秘宝探究者、ヴラスカ》
-サイドボード(15)-
3ターン目に《原初の飢え、ガルタ》を着地させることもできるこのデッキ。ブン回ったときの強さは環境でも随一で、それでいてマナレシオに優れた優秀なクリーチャーが数多く採用されていることからビートダウンデッキとして立ち回っても強力だ。
《燻蒸》擁する白青コントロールにはやや厳しい戦いを強いられることになるが、赤系アグロに対しては五分以上に立ち回れることから、上位35%が赤系のデッキである今回のプロツアーでは多くのプロが選択したようだ。
黒緑巻きつき蛇: 34人/7.4%
『戦乱のゼンディカー』~『霊気紛争』期のスタンダードでトップメタの一つだった黒緑巻きつき蛇が『ドミナリア』のリリースによってふたたびメタゲーム上位へと返り咲いた。
3 《沼》
4 《霊気拠点》
4 《花盛りの湿地》
4 《森林の墓地》
-土地(22)- 4 《歩行バリスタ》
4 《ラノワールのエルフ》
4 《巻きつき蛇》
4 《光袖会の収集者》
2 《マーフォークの枝渡り》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
4 《翡翠光のレインジャー》
4 《貪欲なチュパカブラ》
4 《新緑の機械巨人》
-クリーチャー(32)-
タフなクリーチャーたちが赤系のデッキに対して強い上に、『ドミナリア』から《森林の墓地》と帰ってきた《ニッサの誓い》こと《冒険の衝動》が追加されており、再び全盛期の安定性を取り戻している。
さらには《闇の掌握》などが採用されていた枠が《貪欲なチュパカブラ》と入れ替わっており、デッキの一貫性は全盛期をも凌ぐかもしれない。こちらも今回のプロツアーで注目のアーキタイプの一つだ。
ここでは上位5つのデッキをご紹介させていただいたが、まだまだ《ベナリア史》擁する「白黒機体」や《ドミナリアの英雄、テフェリー》を採用した「白青コントロール」など多数のデッキが存在している。
はたしてトップ8の内役はこのメタゲーム通りとなるのだろうか? 2日目の動向にも注目だ。
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