Deck Tech: グジェゴジュ・コヴァルスキ先生の「鉄葉ストンピィ with ガルタ」

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 メタゲームブレイクダウンを眺めてみると、赤黒のアグロ、コントロール系に次いでランクインしている「鉄葉ストンピィ」というデッキ名が目に飛び込んできた。

鉄葉のチャンピオン

 『ドミナリア』で各色に1枚ずつ存在する、トリプルシンボルのカードたち。その中でも、屈指の強さを持つのが《鉄葉のチャンピオン》だ。

 その名を冠したデッキについて、誰かに話を聞いてみようと思いながら会場を歩いていると、こんな場面に出くわした。

 1ターン目、《ラノワールのエルフ》。2ターン目、《鉄葉のチャンピオン》。まさに今求めていた動きだ!

ラノワールのエルフ鉄葉のチャンピオン

 しかし、そのデッキは、これで終わらなかった。

 3ターン目に《立て直しのケンラ》を唱えると、《原初の飢え、ガルタ》が戦場に飛び出してきたのである。

原初の飢え、ガルタ

 そのまま《原初の飢え、ガルタ》が攻撃を開始し、あっという間に相手のライフを削りきった。

 勝利を収め、席を立った先生は、笑顔で話しかけてくれた。

グジェゴジュ「滅多にお目にかかれないロケットスタートだった。かなり早く終わったから、次のラウンドまでゆっくり過ごせるよ」

 「せっかくなので、デッキの話を聞かせてもらえませんか?」と申し込むと、

グジェゴジュ「おお、もちろん良いよ! なんでも聞いてくれ。まだ対戦中のテーブルばかりだから、少し向こうまで行こうか」

 と、快諾してくれたのだった。

 それでは始めよう。グジェゴジュ・コヴァルスキ先生直伝、「鉄葉ストンピィ with 《原初の飢え、ガルタ》」!

コヴァルスキ先生、どうして鉄葉ストンピィを選んだんですか?

グジェゴジュ・コヴァルスキ

グジェゴジュ・コヴァルスキ

グジェゴジュ「デッキのコンセプトは極めてシンプルだよ。相手よりも強いクリーチャーを用意して、殴り勝つのさ

――「なるほど。どのようなデッキが多い、という予想だったのですか?」

グジェゴジュ「まず、青白コントロールと赤系のアグロ、特に赤黒が多いだろうと予想した。これは、ほとんどのプレイヤーも同じだったであろうし、どうやら正解だったみたいだね。そうなると、『これらを使うか、もしくは倒すか』を選ぶことになる」

――「そして、倒す側を選んだわけですね」

グジェゴジュ「そういうことだね。その上で、相手を一気に倒せるベストな動きを探したのさ。つまり、誰かに『このデッキのベストな動きは?』と聞かれたときにはっきりと答えられる、ということだね。《ラノワールのエルフ》《鉄葉のチャンピオン》というロケットスタートは、間違いなく環境最高の速度だよ」

――「2ターン目に5/4を出して、しかもチャンプ・ブロックを許さない、というのは強力ですよね」

グジェゴジュ「ああ、そのとおりさ。『接死で止められるのでは?』と思うかもしれないが、《才気ある霊基体》《豪華の王、ゴンティ》《鉄葉のチャンピオン》の前では無力なのさ

――「おお……たしかに。接死で阻むこともできないんですね」

グジェゴジュ「つい見落としがちだが、重要な能力だね。そして、いつの時代でも《ラノワールのエルフ》のようなマナ加速は強力だ。そのマナの注ぎ先として、《鉄葉のチャンピオン》はまさにチャンピオンだよ。この2枚が使える、という点だけでも、緑を濃くする価値があるのさ」

――「そして、見事なスタートを見せた後は、《原初の飢え、ガルタ》が仕事をしてくれる、と」

原初の飢え、ガルタ

グジェゴジュ「そうだね。『3ターン目に《原初の飢え、ガルタ》を出しても、除去されるだけだ』と誰かに言われたよ。だが、このデッキは《原初の飢え、ガルタ》を出すことに特価したコンボデッキではない。強力なクリーチャーを展開して、攻撃を繰り返しているうちに、こいつが戦場に飛び出してくるのさ。2マナで12/12、トランプル、というのは目に見えて脅威だし、仮にこいつを除去されたとしても、他のクリーチャーで攻めることができるのさ」

――「なるほど。《原初の飢え、ガルタ》が出せなくても、まったく問題はないわけですね。その他に注目するカードはありますか?」

顕在的防御打ち壊すブロントドン

グジェゴジュ「大抵の脅威を1マナで弾ける《顕在的防御》は重要だね。望ましい使い方ではないが、《原初の飢え、ガルタ》を唱える助けにもなる。あとは、《打ち壊すブロントドン》については触れておこう。カードに目を近づけてテキストを読めば、『ああ、《解呪》を持っているんだね』で終わってしまうが、少し目を離して環境全体を見渡して欲しい。エンチャントとアーティファクトで溢れかえっているだろう?

――「赤黒は《屑鉄場のたかり屋》《キランの真意号》を採用していますし、青白コントロールは《アズカンタの探索》《封じ込め》を採用していますよね」

グジェゴジュ「そして、それらをすべて打ち壊すことができる。タフネス4も極めて重要で、《ゴブリンの鎖回し》を止めることができるんだ。現在のメタゲームならば、メインから大活躍してくれるよ」

――「では、次はサイドボードについて。《秘宝探究者、ヴラスカ》《生命の力、ニッサ》《栄光の刻》が採用されていますね」

秘宝探究者、ヴラスカ生命の力、ニッサ栄光の刻

グジェゴジュ「少し重たく、コントロール寄りに変えられるようにしているんだ。《生命の力、ニッサ》には、ぜひ注目して欲しいね。強力なプレインズウォーカーだよ。相手が《残骸の漂着》を唱えてきたら、喜んで《森》を持って来よう。その1枚1枚で、再び相手に襲いかかることができるからね」

コヴァルスキ先生、いつもありがとうございます!

――「ありがとうございます! では最後に1つだけ。いつも見事な記事をありがとうございます。日本でも、あなたの記事は大人気なんですよ」

グジェゴジュ「本当かい? それは嬉しいね。自分の知識や経験を、みんなにシェアしたいんだ。これはプロの仕事でもあるが、同時に自分自身のためでもある。自分の頭の中にあるものは、大抵の場合、雲がかかったように捉えづらい。言葉という形にすることで、初めて良し悪しが判断できるんだ。『このカードは強そうだな』と思ったら、それを言語化してみる。そうすると、さらなる利点に気付くこともあるし、間違いを見つけることもあるんだよ」

――「なるほど。あなたも強くなるし、我々読者は楽しく読める……良いことだらけですね」

グジェゴジュ・コヴァルスキ

グジェゴジュ「それが理想だね。次の記事を何にするか、考えているところさ。もちろん、自己満足で終わらないように心掛けるよ。せっかく記事にするのなら、価値のあるものを届けたいと思っている。まあ、楽しみにしていてくれよ」

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