奇跡コントロールという時間のかかるデッキを素早く使いこなす斉藤。
思うに斉藤の強さは綿密な情報分析だ。
例えば互いにデッキリストを交換する、その時点で行うことはサイドボーディングのチェックであるし、既定の時間が過ぎたあとに行うのは自身のサイドボーディング。
制限時間内に終わらせる努力が至る所に見受けられる。
かたや中道というプレイヤー。
PWCCトップ4-スタンダード、モダン神決定戦トップ4-モダン、今大会準決勝進出-レガシー
・・・・構築フォーマットへの造詣たるや。
まして今回のレガシー神決定戦が彼の初レガシーというのだから、このセンス、本物と言わざるを得ないだろう。
“神”決定まで後二つ。
努力と才気がぶつかり合う。
Game 1
《渦まく知識》
《対抗呪文》
《Force of Will》
土地4枚
という手札をキープした斉藤。
そして中道が繰り出す1ターン目《霊気の薬瓶》をノータイムで《Force of Will》(《対抗呪文》をコスト)。
この”ミラクル” vs “デスタク”というマッチアップを十二分に理解している証拠、何がキーカードになっているかは体で分かっていると言わんばかりのスピードである。
《スレイベンの守護者、サリア》が中道の手から飛び出せば、《渦まく知識》&フェッチランドで2枚の《Karakas》を。
置かれている《不毛の大地》を念頭に、綿密なゲームプランを練り上げる。
はたして斉藤の思惑通りゲームは続く。
《スレイベンの守護者、サリア》は”2枚目の”《Karakas》でコントロールされ、土地の止まった中道は《石鍛冶の神秘家》をプレイするしかない(《殴打頭蓋》をサーチ)。
そして斉藤は《精神を刻む者、ジェイス》を。
《石鍛冶の神秘家》をバウンスして一気にコントロールの掌握を図る。
マナが伸びずに苦しい中道は何とか《ファイレクシアの破棄者》で最悪を免れようとするのだが、斉藤は《造物の学者、ヴェンセール》。
繰り返される《精神を刻む者、ジェイス》の”ブレインストーム”、1ターンに1アクションしか取れない中道は首が絞まっていく思いだろう。
何しろ《造物の学者、ヴェンセール》を再利用出来る《Karakas》まで場にあるのだ。
一度見た光景、再登場した《造物の学者、ヴェンセール》が《ファイレクシアの破棄者》を再び戻し、何とか土地を引き込んだ中道の《ルーンの母》は《精神を刻む者、ジェイス》に戻される。
そうこうしている内に《師範の占い独楽》により中道の運命は定められた。
予約された”奇跡”、《師範の占い独楽》により《天使への願い》奇跡が《ファイレクシアの破棄者》の攻撃に合わせられてしまうと、中道に出来ることは盤面を片付けることだけだった。
斉藤 伸夫 |
中道 0-1 斉藤
斉藤はパーマネントを並べてくるデッキには遅い《相殺》をサイドアウト、《仕組まれた爆薬》《至高の評決》等のコントロールカードに変更する。
Game 2
中道の初動《ルーンの母》で斉藤は長考。
《Force of Will》は出来る、だが後続と《ルーンの母》どっちが危険なのか。
手札に除去も無く、今後のゲームプランを推し量るには難しい局面。
とはいえここがターニングポイントだったとしても、何らかの結論は出さねばならぬ。
悩んだ末に《造物の学者、ヴェンセール》をコストに《Force of Will》を。
だが中道は《ルーンの母》に続けて《スレイベンの守護者、サリア》を呼び出し、さらには《石鍛冶の神秘家》(《殴打頭蓋》サーチ)という言わば”ベストムーブ”。
これは中道取り返したか。
そう思わせる力強い展開だ。
しかし斉藤がターン終了時に《渦まく知識》を使うと、中道にとっての悪夢―突然の《終末》がドローステップに炸裂!
これがあるから奇跡コンは怖い。
《スレイベンの守護者、サリア》《石鍛冶の神秘家》《殴打頭蓋》という圧倒的な場が、ただの2マナで薙ぎ払われてしまう。
中道は2体目の《石鍛冶の神秘家》(《火と氷の剣》サーチ)から戦線を復旧させようと試みるも、ここで問題になるのは一本目同様2枚で止まってしまったマナベース。
対して斉藤は悠々《精神を刻む者、ジェイス》を呼び出す。
こうなると中道は苦しい。
《ちらつき鬼火》で《殴打頭蓋》を再利用するなど必死に攻撃ラインを構築しようとするのだが、斉藤はただただコントロール路線を続けるのみ。
《剣を鍬に》→《ちらつき鬼火》
初手から持っていた《解呪》→《殴打頭蓋》
《精神を刻む者、ジェイス》のプラス能力→中道へ
ただ斉藤にとっては予定外か、《ルーンの母》が登場すると《精神を刻む者、ジェイス》の能力は《ルーンの母》に使うより他無く、再登場した《ルーンの母》が《火と氷の剣》を纏うと対応手段が無くなってしまったからだ。
中道 大輔 |
だがここで斉藤を救ったのもやはり《精神を刻む者、ジェイス》だった。
一度は手札からX=1でプレイした《天使への願い》だが、2枚目を引き込むと《火と氷の剣》を装備した《ルーンの母》と《石鍛冶の神秘家》に対して《渦まく知識》。
その姿は天使では無くさながら悪魔のよう。
溢れるマナから5体の天使が現れ、中道のクリーチャーをブロックすると―。
中道の神への挑戦はここで潰えることとなった。
中道 0-2 斉藤
ここで疑問に思えるのは斉藤の《天使への願い》だろう。
何故1枚目を奇跡でプレイしなかったのか。
しようと思えば天使を4体は呼ぶことが出来たのに。
斉藤曰く、これは致命的な《大変動》をケアしたものらしい。
せっかく《精神を刻む者、ジェイス》をキープできているのだから、ここからの負け目は《大変動》だけだからだ。
持ってなさそうな雰囲気も見てとれたそうだが、それでも《漸増爆弾》も入っている以上ここで動く気にはなれなかったという。
《ルーンの母》《火と氷の剣》も盤面にあったわけで、奇跡プレイが決定打になる保証もまだ無かったからだ。
結果的に中道は《大変動》《漸増爆弾》を持たず、その我慢は特に意味の無いものになってしまったが、優位に驕らず負け目を極力減らす、トッププロに比肩する戦略眼を持っていると言えるのではなかろうか。
また敗れたとはいえ中道、何の縁かhappymtgでカバレージを取る大会での勝率が恐ろしく高い。
PWCCでトップ4、モダン神決定戦でトップ4、今大会でトップ4。
不思議と毎回トップ4止まりというのもラッキーなのかアンラッキーなのか判断に困るところだが、いずれにせよどのフォーマットでも結果を残し続ける中道の実力たるや、恐るべしである。
いずれにせよ一つの決着はついた。
中道のセンスは称賛に値するものだったが、それでも斉藤という壁を超えることは出来なかったのである。
“未冠の雄”斉藤 伸夫、決勝進出!