これほどの、精鋭。
これほどの『濃い』トップ8面子が集まったトーナメントは、スイス9回戦、300名の大会であるということからすれば。
数年に1度のレベルといって問題ないだろう。
『レガシー神決定戦』。この大会に、感謝しなければなるまい。
準々決勝から既に、どのマッチも観客垂涎の屈指の好カード揃い。
その中でも、この対戦。
ミスターカナディアンスレッショルド、BIGMAGIC OPEN準優勝の黒川と、
2013年のWMCQを突破しての日本代表経験や、グランプリサイドイベントのレガシートーナメントでの優勝経験もある強豪の日下部。
日本レガシー界でも広く名の通ったプレイヤー同士が、準々決勝からいきなり火花を散らす。
さてここからは互いのデッキリストが公開になるわけだが。
日下部 「《もみ消し》4枚かー。メインはそっちが有利ですね」
黒川 「ですね。でもサイド後は……いやー、《石鍛冶の神秘家》はでかそうだな」
リストを見るなりこの会話。有利不利だけでなく互いのカード採用の意図を瞬時に見抜く洞察力と、何より圧倒的な経験値。
どちらが勝ってもおかしくはない。そしてそのことは、両者ともに十分に承知している。
ここが既に決勝戦であるかのような。
そんな研ぎ澄まされた緊張感が、2人を包んでいた。
Game 1
後手の黒川がワンマリガン。だがそれ以上に日下部にとっては、この先手が非常に大きい。
その証拠に日下部の1ターン目は、フェッチランドを起動してからの《師範の占い独楽》。4枚入った黒川の《もみ消し》を気にしなくていい状態を生かして、手を進める。さらに《敏捷なマングース》スタートの黒川が続くターンに《思案》をプレイすると、スタックで《渦まく知識》を通す。
だがこの段階で日下部のコントロールする土地は《島》が2枚。つまり《終末》は撃てない。ならば恐れる必要がないとばかりに黒川、《秘密を掘り下げる者》を追加展開しにいく。
返すターン、ここで日下部のプレイは《瞬唱の魔道士》で《渦まく知識》をフラッシュバックという、『青白奇跡』のイメージにそぐわないタップアウト。
この隙に黒川も《秘密を掘り下げる者》を即座に『変身』させて攻め立てるが、日下部の一見無謀とも思えるプレイングが、1つの成果を導いた。
すなわち、《相殺》。既に場にある《師範の占い独楽》と合わせて、黒川にとって悪夢のコンボが揃ってしまう。
日下部のライフはまだ15点もある。どうやって削る?どうやって倒す?
ここで黒川の導き出した回答は、対応して《稲妻》を《瞬唱の魔道士》に飛ばし、盤面のクロックで削りきるというもの。
だが、日下部はさらなる《渦まく知識》を持っており、トップに《終末》を積み込むことに成功する。
黒川もメインで《二股の稲妻》を本体に飛ばし、スタックで日下部が《師範の占い独楽》のタップ能力を起動したところで、それを《もみ消し》。《相殺》と『奇跡』を同時にかわす好プレイを見せつつ、《敏捷なマングース》のスレッショルドを達成してのアタックと、最後の手札=《稲妻》で日下部を残り3点まで落とし込む。
……の、だったが。
黒川 直樹 |
黒川 「足りねー。こっからどうやって勝てばいいんだ」
続くターンには当然《終末》が『奇跡』でプレイされ、黒川に残されたのは土地のみ。
すなわち、クロックも手札もない状況で《師範の占い独楽》+《相殺》が定着してしまう。
さらに挙句の果てにその直後日下部がプレイしたのは、《精神を刻む者、ジェイス》!!
もはや黒川には、この状況を覆す手段がなかった。
黒川 0-1 日下部
Game 2
黒川が《思案》に対して、日下部が《渦まく知識》。この戻す2枚目に《終末》を仕込み、黒川の2ターン目《タルモゴイフ》、3ターン目《敏捷なマングース》の返しで、計算された『奇跡』を呼ぶ。
これは《もみ消し》する黒川だったが、続く日下部の《石鍛冶の神秘家》には合わせるべき火力を持ち合わせておらず、虎の子の《Force of Will》を切るしかなくなってしまう。
こうなるとあとは盤面の5点クロックに頼るしかない黒川だが、日下部は2枚目の《渦まく知識》を引き込んでおり、再度の計算された『奇跡』を目論む。
これに対応できるカードを《思案》のリシャッフルで探しにいく黒川だが、見つけることが出来ずに《終末》が訪れる。
日下部 恭平 |
その直後、このゲーム自体にも終末が訪れようとしていた。
メインフェイズに入った日下部がキャストしたのは《相殺》。
これが何とかクロックを作ろうとした黒川の《秘密を掘り下げる者》に、しっかりと計算づくの『戻した2枚目』《剣を鍬に》を公開し、続くターンには相棒の《師範の占い独楽》が揃い踏み。
これに対して、3マナ余っているところにダメもとで《呪文貫き》を合わせる黒川だったが。
トップからめくれた《渦まく知識》による『ナチュラル相殺』が、黒川の心を折った。
黒川 0-2 日下部