Translated by Kazuki Watanabe
(掲載日 2018/07/07)
はじめに
マジックでは、毎ターン1枚の土地を置くことができます。そう、置くことが“できる”のです。土地を置く、というのは、1つの選択肢です。マジックは単純なゲームではありません。土地を置かずに手札に残しておくことが、特にリミテッドでは、アドバンテージに繋がることもあります。なぜ、あるときには土地を手札に残しておくことがメリットになり、またあるときにはデメリットになってしまうのかを、今回は説明したいと思います。
土地を手札に残しておく目的は?
ブラフ
土地を置かない主な理由は、ブラフです。分からないカードがある、というのは、対戦相手のプレイをぎこちなくさせたり、最適なプレイをできなくさせたりします。
例えば《ギデオンの叱責》があるかもしれないから、攻撃をしない。《一瞬》があると予想して、《セラからの翼》を温存しておく。《猛り狂い》があるかもしれないから、ブロックしない、といったものですね。
ブラフは余分な土地に付加価値を与え、その土地をライフに変換することができるわけです。
手札破壊から呪文を守る
《カリゴの皮魔女》のようなカードを使われたとしても、手札に残しておいた土地を捨てることで、重要なカードを守ることができます。
「手札を捨てる能力」を持つカードを利用する場合
手札を捨てなければならない能力を使用するならば、土地を捨てられるように残しておくことが重要です。
「上陸」のような能力
デッキに「土地をプレイしたときに誘発する能力」を持つカードがあるならば、これも土地を手札に残しておく理由になります。
相手の手札破壊を空振りさせる
あなたの戦場に4枚の土地があり、手札にも1枚土地がある状態を考えてみましょう。もし、あなたがその土地を置いて手札がなくなってしまえば、相手がわざわざ《抜去》のような手札破壊を唱えることはありません。ですが、もし手札に残していたら? 「まだ唱えることができない6マナのクリーチャーかもしれない!」と思い込んで、唱えてくるかもしれません。また、土地を置き、その次のターンに6マナのクリーチャーを引き、唱えられずに手札に残してしまっていたら、相手の《抜去》で捨てることになるかもしれません。
《ハルマゲドン》に備える
土地を残しておけば、《ハルマゲドン》後のゲームに備えることができます。
土地を置かないと、どのようなトラブルが起こるのか
土地を置かない理由はお分かりいただけたと思いますが、土地を置かなかったことで起こるトラブルももちろんあります。2枚以上の土地が手札にある場合と、1枚しかない場合に分けて考えてみましょう。
ケース1: 2枚以上の土地が手札にある場合
デッキの最も重い呪文
2枚以上の土地が手札にある場合、あなたのデッキで最も重い呪文は何かを考えましょう(「キッカー」のような追加のコストも含めて計算します)。
もし2枚の土地が手札にあり、戦場に8枚の土地を並べていたとしましょう。そして、あなたのデッキには《リッチの騎士、ジョス・ヴェス》が入っています。このターンに土地を置かない、ということは、「次のターンに《リッチの騎士、ジョス・ヴェス》を引いたとしても、『キッカー』コストが支払えない」ということを意味します。
マナコストにXを含む呪文
1つ前に紹介した点と同じ考え方ですが、Xが含まれる呪文がある場合、デッキのマナコストの最大値は無限です。もしこういった呪文がデッキに入っているならば、土地を置き続ける理由になります。ダブルシンボル、トリプルシンボルの呪文
《山》を5枚、《平地》を1枚並べた状態で、《平地》が2枚手札にあったとしましょう。もし次のターンに《ベナリアの軍司令》を引いたとしても、唱えることはできません。
マナが必要な起動型能力
重要なのは、唱える際のマナコストだけではありません。起動にマナが必要な能力も同様です。《密航者、スライムフット》は3マナ、4マナ、4マナ、4マナ……とマナコストを要求してきます。土地を置くかどうか考える際には、こういった点も考えねばなりません。
土地をクリーチャー化する呪文
こういった土地をクリーチャー化するカードを使う場合、「土地を置かない=与えられるはずだったダメージを逃す」ということになります。
打ち消し呪文の存在
土地を置かないと、《中略》のような呪文が厄介な存在になるかもしれません。
ケース2: 手札に土地が1枚ある場合
もし土地が1枚手札にあって、唱えるために追加で2枚以上土地が必要な呪文が1枚もない場合、これ以上マナは必要ないので土地を置かないことも選択肢になり得ます。
もう1枚土地を引いたら、片方を置いてターンを返します。唱えるために追加の土地が必要な呪文を引いたとしても、先に土地を置けば良いだけです。
ここまでは良いですね。ですが、常にこんなに簡単とは限りません。
特別な土地を引いた
基本土地が手札にあって、戦場に出さなかったとしましょう。その後、あなたは《結束の記念像》を引きました。そして、《結束の記念像》を置いて、他の土地はまだ残したとします。
次のターン、基本土地を引きました。《結束の記念像》を生け贄に捧げて、クリーチャーを探してみましょう。
2ターン前に土地を置かなかったせいで、見つけたクリーチャーを唱えることができません。これは良くない展開です。最悪なのは、対戦相手がここで《抜去》のような手札破壊を唱えてくることです。
土地を持ってくる呪文
6枚の土地が戦場にあり、手札にも1枚あります。土地を置かずにターンを返し、次のターンに《予言》を引いたとしましょう。これを唱えてみたところ、土地と《最古再誕》を引きました。先ほど土地を置かなかったことによって、《予言》のあとに《最古再誕》を続けて唱えることができません。
別の状況を考えてみましょう。あなたは《予言》を唱え、戦場に7枚の土地があり、手札に《冷水カミツキガメ》と、このターンに置かなかった土地がある状態でターンを返しました。
次のターンに《這い回る偵察機》 をドローしました。しかし、もしこれを唱えてから土地を置いたとしても、《冷水カミツキガメ》をプレイすることはできません。
そこで、《冷水カミツキガメ》を唱えることにしました。
相手が《最古再誕》を唱えたので、《冷水カミツキガメ》を生け贄に捧げることになってしまいました。このように、土地を置かなかったことで様々な影響を受けてしまいます。
手札破壊
先ほど言ったように、手札に土地を残しておけば、相手の手札破壊から呪文を守ることができます。つまり、もし手札に1枚しか土地がなければ、常にその土地を捨てるリスクが伴うわけです。手札破壊される前に土地を置くべきか、それとも手札に残してブラフに使うのか、どちらが最善なのか判断する必要があります。
相手が《激動》のような呪文を唱えてきた場合
対戦相手によって複数のパーマネントを手札に戻された場合、盤面の再構築を最大限に行うためには、土地をしっかりと用意しておく必要があります。
まとめ -土地を置くか、それとも?-
土地を置くか、置かないか……これは1つの芸術です。同じ状況でも、土地を置くメリットとデメリットがあるのです。その場面ごとに様々な確率と、その結果について考える必要があるので、最適な選択を導き出すのはとても困難です。
手札の呪文を、相手の手札破壊から守りたい。だけど、10マナの呪文を引いたら唱えたい……さて、あなたならどうしますか?
これを判断するためには、これまでのターンを思い出し、考える必要があります。相手が手札を2枚捨てさせる呪文を唱えるタイミングが、これまでの流れであったかを考えてみましょう。相手がそのカードを引く可能性のみをリスクとして負うのか、それとも既に手札に持っているのかも考えねばなりません。また、自分のデッキのカードをしっかりと把握し、「この土地を置かないとキャストできない呪文はあっただろうか?」と考えて、そのカードをドローする確率も計算しましょう。
リミテッドの大会では、自分のデッキに入っているカードをしっかりと把握するために、不戦勝のラウンド中や、ラウンドの合間に、しっかりとデッキを回し、練習することを強くおすすめします。次にドローするカードについて考えるとき、正しい決定を下すことができるようにすることは、とにかく重要です。
リミテッドの試合前にしっかりとデッキを回して練習することは、自分がどんな状況でブラフを仕掛けられるかを把握しておくためにも大切ですからね。
完璧なプレイを目指すならば、シンプルな”土地を置く”という動作がとても複雑になる。それが、この素晴らしいゲーム……マジックです。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
ジェレミー・デザーニ