ゾンビにふれたよ!!

Christian Calcano

Translated by Yoshihiko Ikawa

原文はこちら
(掲載日 2018/07/18)

はじめに

『基本セット2019』がスタンダードリーガルになり、Magic Onlineではすでに使えるようになってから1週間が経過しましたので、新しいカードたちがスタンダードにインパクトを与えている様子をすでに見ることができます。

破滅の龍、ニコル・ボーラス

『基本セット2019』で最も影響のあるカードが《破滅の龍、ニコル・ボーラス》であることは疑いようもなく、このカードを用いたグリクシス・カラーのデッキが上位アーキタイプに返り咲いています。

茨の副官蔦草牝馬ヴィーアシーノの紅蓮術師苦悩火

緑単も《茨の副官》《蔦草牝馬》という新戦力を手に入れました。赤単は《ヴィーアシーノの紅蓮術師》《苦悩火》が選択肢に入りました。これらのデッキに加え、青白コントロール、《王神の贈り物》デッキ、そして赤黒アグロ/ミッドレンジが、今の仮想敵とすべきメタゲームです。

ゾンビの話に入りましょう。ちょうど去年の今頃、ゾンビはとても強力なアーキタイプでしたが、ローテーションによりデッキの核となるカード達を失い姿を消しました。今日は、スタンダードに甦ったゾンビについて、メタゲーム上でどんなポジションなのか、そしてマジック25周年プロツアーではどうなると考えているのか、お話していきたいと思います!

ゾンビ軍団の復活

死の男爵戦墓のグール墓地の司令官死が触れぬ者、リリアナ

2017年9月のローテーションの後も、ゾンビ・カードはいくつかスタンダードに残っていましたが、カードが足りないのは明らかでした。そして今『基本セット2019』で、《戦墓のグール》《死の男爵》といった昔のゾンビたちが帰ってきました!それに加えて、『基本セット2019』には《墓地の司令官》《死が触れぬ者、リリアナ》という、素晴らしいゾンビ・カードたちが新たに収録されたのです!

スタンダードで再びプレイできるレベルにまで、ゾンビが十分にサポートされているのを見てとても興奮しました。そして新環境1週目にして、いくつかのバージョンのゾンビデッキがMagic Onlineの競技リーグで5-0したようです!

金属ミミックゴブリンの鎖回し

2つのリストは似ていますが、メインボードとサイドボードにいくつか違いが見られます。まず最初に、私は今のメタゲームで《金属ミミック》をメインボードに採用するのはあまり好きではないことをお伝えします。

こういった部族デッキではとてもパワフルなカードですが、《ゴブリンの鎖回し》が環境を支配している今、タフネス1のクリーチャーを採用したいとは思えないのです。中~長期戦になれば戦場に帰ってきてくれる《戦慄の放浪者》はもちろん例外ですね。

屑鉄場のたかり屋

また《屑鉄場のたかり屋》についても、このデッキに採用すべきなのか確信が持てません。見ての通り、Tinefol_Ruさんはメインボードに4枚採用していますが、一方のDavidBeaudrieさんはメインサイド合わせても0枚なのです。私はいくつかの理由から、《屑鉄場のたかり屋》がこのデッキの方向性には合わないと判断しました。

まず1つ目の理由として、《屑鉄場のたかり屋》はゾンビ・クリーチャーではありません。2つ目の理由として、《屑鉄場のたかり屋》の起動型能力は《墓地の司令官》《戦慄の放浪者》との相性が悪いです。そして3つ目の理由として、《屑鉄場のたかり屋》は赤単や緑単といったアグロデッキたちに対して弱いカードなのです。

これらを念頭に置いた上で、現在のメタゲームに合わせて私が考えたバージョンのゾンビデッキがこちらです。

メインボードのカード選択について

これまでのリストと上記リストとの一番の違いは、《致命的な一押し》や2-3枚目の《ヴラスカの侮辱》よりも優先してメインボードに4枚投入された、4枚の《大災厄》と3枚の《喪心》です。私はいくつかの理由から、《大災厄》《喪心》を選びました。

大災厄

4

対応するのが難しい脅威を対処できる、数少ないカードの1枚なので、私は《大災厄》はスタンダードのベストカードの1枚だと考えています。スタンダードの強力なカードの大部分はコストが4か5なので、《大災厄》はそのカードがプレイされる前に止めることができます。それは《破滅の龍、ニコル・ボーラス》のように対処が難しいカードも含みます。今のメタゲームでは、《大災厄》が弱いマッチアップは存在しないと感じています。

喪心

3

《喪心》を採用して《致命的な一押し》を採用しなかった理由、それは《喪心》《栄光をもたらすもの》《打ち壊すブロントドン》《ゴブリンの鎖回し》《霊気圏の収集艇》といった本当に対処したいクリーチャーを倒すことができるからです。攻撃的なデッキに対しては《致命的な一押し》に比べれば《大災厄》《喪心》は確かに遅いですが、ゾンビデッキには1マナクリーチャーが8枚も入っているので、相手を減速させることができるでしょう。

ウルザの後継、カーン

2

私がメインに採用することに決めた最後のカードが《ウルザの後継、カーン》です。こういった類のデッキでは、アドバンテージ・カードの欠如が問題となりがちです。《アルゲールの断血》は確かに黒のアドバンテージ・カードとしては最高の1枚ですが、アグロデッキに強いカードではありません。《ウルザの後継、カーン》はマナカーブにピタッとはまる上に、《リリアナの支配》のための5枚目の土地を安定させてれたり、アクションするための呪文を探してくれたりする素晴らしいカードです。

死が触れぬ者、リリアナ

2

カードアドバンテージを生み出してくれるもう1つの手段が《死が触れぬ者、リリアナ》です。最初にこのカードを見たときは、「+1」の能力があまりにも平凡なので、あまり惹かれませんでした。ですがその能力自体は《墓地の司令官》のエサを増やしつつ《戦慄の放浪者》を落としてくれますし、ロケットスタートで相手のライフを削っていた場合は残り数点を削るフィニッシュにもなりえるので、そこまで悪いものではありません。

残りの2つのマイナス能力はとても強いです。ゾンビは《リリアナの支配》《墓地の司令官》のおかげで盤面を構築する能力に長けているので、《死が触れぬ者、リリアナ》の「-2」能力はタフネス3や4のクリーチャーですら倒せることがあります。また、もう1つのマイナス能力である「-3」は、少なくとも出してから1ターン後でないと本領を発揮できないため単体ではそこまで強力ではありません。ですがゾンビデッキが長期戦を戦い抜く手段の1つとして活躍が見込めます。

サイドボードのカード選択について

サイドボードについてですが、5-0していたリストのサイドボードに《金属ミミック》4枚と《バントゥ最後の算段》3枚を追加しました。

金属ミミック

4

《金属ミミック》《ゴブリンの鎖回し》デッキ相手以外にサイドインします。マッチアップに合わせて《戦墓のグール》か除去呪文をサイドアウトすることになるでしょう。緑単のような軽くてサイズの大きいクリーチャーデッキに対しては、あまり戦闘で役に立たない1マナクリーチャーを減らすことにしています。またコントロールデッキに対しては、除去呪文を減らし、サイドボード後はより攻撃的な形にするのです。

バントゥ最後の算段

2

《バントゥ最後の算段》は、緑単とのマッチアップのために今試しているところです。ゾンビデッキでは戦場に出てしまった《原初の飢え、ガルタ》を対処するのが非常に困難なので、主にこのマッチアップを意識しての採用です。新しいタイプの赤単に対しても有効だとは思いますが、もし相手の構成が火力多めの形であれば1-2枚程度しか必要ではないでしょう。

サイドボードの残りのカードは、手札破壊、追加の除去、そして数枚のアドバンテージカードで構成されています。

まとめ

ゾンビはある程度プレイされるとは思いますが、どれぐらいの数になるかは予想できません。なぜなら、ゾンビにはスタンダードで戦えるだけの力があると確信していますが、スタンダードはグリクシス・ミッドレンジと赤黒系のデッキがトップメタとなり、そこにフォーカスした環境になるのではないかと考えているからです。ゾンビのマッチアップ相性を話しますと、赤系のデッキとコントロールはかなり良い勝負ですが、緑系のデッキと《王神の贈り物》には厳しい戦いを強いられるでしょう。

この記事を楽しんで、そして去年のようにゾンビデッキをプレイしてもらえると嬉しいです!

読んでいただいて、ありがとうございます。

クリスティアン・カルカノ

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