By Akihisa Tomikawa
前回関西帝王戦モダンとは打って変わって賑やかな、いや、騒がしい雰囲気で始まる決勝戦。それもそのはず、そもそも準決勝の時点で「知り合いしかいないやん」と言われるほどのレガシージャンキーが勝ち上がってきた。
相見えるのは小平 昇太と森嶋 亮太。共にKMCの常連で仲も良い二人だ。
小平が使うのはデッキテクでも紹介したドラゴン・ストンピィ。対する森嶋をこの舞台まで連れてきたのは《ギタクシア派の調査》を失ってなお力を保つANT
小平「盤面でコンバットしないから他でコンバットしないといけないよね」
森嶋「たしかに」
意味深に言葉を交わす2人。ギャラリーはその言外に込められた意図を察してか、それぞれの席の背後に回り込んで「こだおじー!」「もりしー!」などと決勝テーブルで相見える2人のニックネームを声高らかに喚呼する。熱狂に包まれる会場のボルテージは最高潮を迎えた!
……無事に終えることができるのだろうか。
Game1
先手は小平。7枚キープからの《山》《猿人の指導霊》。2マナから唱えられたるは《魔術遠眼鏡》!
指定は森嶋の手札にたった1枚の土地、《霧深い雨林》! そして悶絶する森嶋に叩きつけられる《虚空の杯》「X=0」!
森嶋「おいいいいww!!!!」
《水蓮の花びら》を唱えることすら許されなかった森嶋は静かに《霧深い雨林》を置き――
小平「《虚空の杯》」
2枚目の《虚空の杯》が「X=1」で設置されるのを見届けると、森嶋は無言でカードを片付けた。
小平 1-0 森嶋
鮮やかな1ターンキルで決着がついたGame1。サイドボード中もお互い『仲良く』会話を続ける。特に1ゲーム目の先取を許した森嶋の弁舌が止まらない。
森嶋「(賞品の)スプリットしません?」
森嶋「前回の自分(の順位)を超えられただけで満足」
森嶋「サイド後《瘡蓋族の狂戦士》あるじゃん! サイドボード変えまーす」
一方的なトラッシュトークに見えるかもしれないが、森嶋が畳みかけるように冗談を飛ばす様子にはギャラリーからも笑い声が上がり、小平も満更ではなさそうに笑みを浮かべる。筆者の文章力の問題か、この場の盛り上がりを文章で伝えきるのは難しい。
対戦テーブルを取り巻く観衆の中から「動画でほしいな」という声が漏れるのも無理からぬことである。このゆるい雰囲気こそが、関西のレガシーの真髄(?)と言えるのかもしれない。
しかし、何はともあれ勝負は勝負だ。歓談を交わしながらもサイドボーディングとシャッフルを終えた2人はマリガンチェックを行い、第2ゲームを開始した。
Game2
両者マリガン無し。ゲーム開始時に小平から《虚空の力線》が置かれ、森嶋は多少嫌そうにするが、想定内の対策だったため手札を見ながら計算を開始する。
そしてまずは《Underground Sea》から前方確認の《思考囲い》。小平の手札は《山》《裏切り者の都》《反逆の先導者、チャンドラ》《猿人の指導霊》2枚、《魔術遠眼鏡》というもの。
小平「チャンドラ出るけどどうする?」
森嶋は真っ先に《魔術遠眼鏡》を抜こうと手をかけたが、1ターン目に《反逆の先導者、チャンドラ》の着地させることができるとあって、小平の手札をじっくりと吟味する。だが、やはりロックをかけられることを嫌い《魔術遠眼鏡》を捨てさせる。
だが、小平は続くターンにひとまず様子見のセットランドのみでターンを終え、第2ターンになって動き出す。《裏切り者の都》《山》と《猿人の指導霊》から4マナを得て、唱えたるは《反逆の先導者、チャンドラ》!
森嶋「マナ出す方でいいですか?」
小平「何でだよww」
森嶋「知らないんですか!? その女、マナ出せますよ!!」
小平「トップ追放するよ!」
森嶋の願いも虚しく、《反逆の先導者、チャンドラ》の「+1」能力によってゲーム終了までのカウントダウンがスタートする。
返す森嶋は矢継ぎ早に《定業》2枚を唱え手札を整え、いよいよ動き出すかと思われたが、ぼそりと「猿切ってREB(《赤霊破》)あるな……」とつぶやきターンを渡す。
そう、小平が最速で《反逆の先導者、チャンドラ》を唱えなかったため、フルタップのように見えても手札には1枚の《猿人の指導霊》が眠っている状態である。従って、いつでも《赤霊破》あるいは《紅蓮破》が飛んでくる可能性があった。
そして実際に小平は《紅蓮破》を握っていたのだ。じわりと様子見に1ターンを費やし、森嶋は先ほど我慢をした《渦まく知識》を唱え、その解決はやはり予想通り小平の《紅蓮破》によって阻まれる。
だが、「ストーム」はそのターンに唱えられた全ての呪文をカウントする。つまり、”小平が唱えた呪文の数も”である。
森嶋「喰らえ!スプリンクラーじゃ!」
さらにマナ加速を追加し、森嶋が唱えたのは《巣穴からの総出》!! 飛び出したゴブリンの数は実に12体!!
これが無事に解決され、ターンを受けた小平は12点のクロックを前に少し考える。現在ライフは小平20点、森嶋13点。まずはと《反逆の先導者、チャンドラ》の「+1」能力でライブラリーの一番上のカードを追放し、森嶋のライフを残り11点にすると、小平がおもむろに土地を倒し、クリーチャーをプレイしてすぐさま攻撃に移る!
飛び出したのは《領空のヘルカイト》! 6点!
森嶋も見慣れないカードなのか、能力の説明を受ける。4マナ飛行6点クロックという破格のコストのデメリットとして次のターンは戦闘開始時にタップされるため、殴られないことを確認する。ここまでで小平のライフ20点に対し森嶋のライフ5点。いよいよゲームは佳境を迎える。
森嶋ももはや12体のゴブリンの行き先を指定するしかやることはない。《反逆の先導者、チャンドラ》の忠誠度が7なので、「-7」能力を確認してから2体をチャンドラに、10体を小平に。これで《反逆の先導者、チャンドラ》の奥義を封じつつ次のターンには小平をゴブリントークンの群れで屠ることができる算段だ。
そしてターンを受けた小平。手札は3枚だが、このターンで森嶋を仕留めることはできない。《領空のヘルカイト》はこのターン、タップするためダメージを与えることはできない。
とすればあとはトップデッキに望みを託すのみ。《反逆の先導者、チャンドラ》が《焦熱の合流点》をめくれば勝ちという状況で――
……《古えの墳墓》。
小平 1-1 森嶋
お互いのデッキの強みを見せつけ、マッチは最終戦へと突入していく。掛け合いを続けながらも小平はトークン対策の《火山の流弾》をサイドインする。
森嶋「スプリットします?」
小平「うーん、あるな」
そんなお馴染みとなってきた会話を続けていると、突然森嶋がサイドボードを表向きに広げだした!
森嶋「こんなかから入りそうなんあります?」
これが大阪か、これがKMCなのか。
前代未聞の事態に混乱していると、ギャラリーから「おじ(小平)はやらんの?」との声が。
小平「何入れたかばれるやん!」
ごもっともです……
って結局見せるんかい!
Game3
森嶋が6枚になった手札をキープするのに対し、小平はため息の後2マリガン目を宣言する。
そしてゲーム開始時。小平から《虚空の力線》が置かれるものの、先手の小平は土地を置かずにターンを渡す。
小平「《Underground Sea》でいいよ。デュアルランドは?」
森嶋「値段が高くて持ってないです」
小平「さっき出してたよね?」
森嶋「いやー、買取りに出しました」
などと軽口を交わしつつ、森嶋は《ライオンの瞳のダイアモンド》を出してターンを返す。
小平はなんとか《山》を引き込んだものの、手札には《血染めの月》と《反逆の先導者、チャンドラ》が重く横たわる。しかし、森嶋も《虚空の力線》に邪魔されて思うようにコンボを揃えられずにいる。
小平はダブルマリガンの遅れを取り戻すべく、ようやく引き込んだ《魂の洞窟》に加え《猿人の指導霊》から《血染めの月》を唱えるが、森嶋の《突然の衰微》でしっかりと対処される。
そして満を持して森嶋が《暗黒の儀式》を唱え、「ストーム」のカウントを開始する。
小平「死んだ?」
森嶋「《むかつき》だから知らんですわ」
小平「わかった! F6! 数えるからめくっていいよ!」
《冥府の教示者》のために丁寧に黒マナを1つ浮かせて《むかつき》を開始! しかし、めくれるカードは……
森嶋「残り……7! え? 《炎の中の過去》!? ……残り3! よわっ! 弱いわ! これ!」
森嶋の《むかつき》はこのターン決めきるには及ばず。とは言うものの、マナが足りない小平が薄氷の上に立たされている状況は依然として変わらない。
次のターン、《水蓮の花びら》から《定業》。チャレンジを再開する森嶋。ライフは残り3だが、「大丈夫、大丈夫」とつぶやきながら前方確認の《思考囲い》を唱え、《紅蓮破》《赤霊破》の目を潰す。
そして。
対象は自分の《ライオンの瞳のダイアモンド》。解決後に自らの土地を生贄に捧げ、呪文をコピーする。これによって《ライオンの瞳のダイアモンド》2枚と《水蓮の花びら》2枚を手札に戻し、再度唱える。ストームカウントは8。そして《冥府の教示者》にスタックして《ライオンの瞳のダイアモンド》を起動。
そうだ、この流れこそ、このコンボデッキを使う者たちが憧れとともに何度も練習した動きだ。
森嶋「『暴勇』達成で、探すのは《苦悶の触手》です」
小平「負けました!」
小平 1-2 森嶋
決着。
ルール適用度:KMCで終えるかに思えたマッチは、しかししっかりと競技イベントらしく、随所で互いが緻密なプレイングを見せることで、また新たな歴史を作り上げた。
新たな帝王は仲間たちのみならず、対戦相手からも拍手で迎えられる。
前回帝王からも祝福を受ける。
『第二期関西帝王戦レガシー』、優勝は森嶋 亮太! おめでとう!!