By Akihisa Tomikawa
Hareruya Hopesの平見 友徳を始め、大森 健一朗、あるいは村栄 龍司といった関西地区の名だたるプレイヤーと話していると、時たまとある人物の話を聞くことがある。
曰く、「ブロンズプロになってPPTQに出られなくなり悲しんでいる男」。
曰く、「世界で一番ブロンズプロになりたくなかった男」。
話を聞くたびに内心では「こいつら話盛ってるだろ……」と疑っていたものの、なんとも面白い話である。仮に嘘だったとしても、どうしてそんな話になったのか。興味は深まるばかりだ。
ぜひともこの機会に詳しく話を聞いてみたい。
というわけで、第1回の関西帝王戦スタンダードから継続して『プロ・プレイヤーズ・クラブにてブロンズレベル以上は参加費が無料となります』の制度を使い、今回も第3期関西帝王戦スタンダードに参加していた谷口 裕昭、そして彼と親しい村栄 龍司に話を聞いてみた。
――「ずばりお聞きしたいのですが、谷口さんはブロンズプロになったことを喜んでいないというのは本当の話ですか?」
谷口「そうですね。正直あまり嬉しくはなかったですね」
――「理由としてPPTQに出られなくなったからだとも聞いているのですが」
谷口「そのとおりりです。私は週のうち日曜日は必ず休みなのですが、この日にPPTQに出られないと、マジックができないので困ります」
――「噂は本当だったのか……昨年のシーズン末にブロンズプロの導入が発表されたとき、僕の周りだと平見とかはかなり喜んでいたのですが、谷口さんとしてはあまり嬉しいものではなかったということですね?」
村栄「ぐっちょん(谷口)さん、プロツアー『破滅の刻』の最終戦で勝てばプロポイント1点プラスされるって状況で相手にトスしていましたからね。相手がポイント欲しがっていたからって」
――「……ん? そのプロツアーってブロンズプロが発表される前ですよね?」
村栄「いや、後ですね。それだけブロンズになりたくなかったってことです。結局なったんですけど」
谷口「グランプリ・神戸2017が14位でプロツアーの権利を得てプロポイント4点、グランプリ・京都2017が163位でプロポイント2点。そしてプロツアー『破滅の刻』が143位で4点、合計10点でした。特別どこかで入賞したということもなかったです」
――「プロツアーに出場しなければ3点が加算されることもなく、6点でシーズンが終わったのではないでしょうか」
谷口「プロツアーに参加したくないわけではないんです。強い人と戦えるのは楽しみですし、折角の機会なので参加しないという選択肢はなかったですね」
――「なんとなく谷口さんのスタンスがわかってきました。少し話は変わりますが、2017-2018年シーズンで使った中でお気に入りのデッキはありますか?」
谷口「うーん、『《王神の贈り物》』ですかね」
――「今日も使ってらっしゃいましたもんね!メタゲーム的な立ち位置はどうでしょう?『《王神の贈り物》』といえば、先日グランプリ・シンガポール2018で市川 ユウキプロが緻密な分析で優勝したのが印象的でしたが」
谷口「別に悪くはないと思うんですけどね……。まあ、ずっと使っているから持ってきました」
村栄「ぐっちょんさんは、あまりメタゲームとかでデッキを変えないですね。『《王神の贈り物》』もずっと使っていて、一緒に行ったプロツアー『ドミナリア』も赤黒機体と《削剥》が流行ったせいで、メタゲーム的にかなりヤバいポジションだったんですけど、その中でも2日目に残って『《王神の贈り物》』を使っていた2人のうちの1人ですし(注:メタゲームブレイクダウン参照)」
――「どちらかというと、使い慣れたデッキで勝ちたいということでしょうか。たしかに、一般的には流行っていると言われているものの、100%相手がそのカードを持っているわけではないですもんね」
谷口「はい、今日も4-2だったので、やはり悪くはない。という印象です」
――「最後になりますが、2018―2019年シーズンの目標はありますか? 今回のインタビューで判明したように、ブロンズプロは嬉しくないということでしたが、例えばシルバーだと次のプロツアーの権利も出ますよね」
谷口「うーーーーーーん……。いや、本当に、重要なのはそこじゃないんですよね……」
――「というと?」
谷口「大切なのはプロツアーじゃなくて、休日の過ごし方なんです。シルバーレベル以上でもPPTQに出られないのは変わらないですよね? 私としては各地を巡ることも苦ではないので、とにかくPPTQに出たいというのが本音ですね」
――「なるほど。すごく納得しました。谷口さんにとってプロツアー予備予選の『プロ』の部分はそれほど重要じゃないんですね。どちらかというと、毎週近隣で行われているレベルの高い大会という側面が強いということですよね?」
谷口「そうなりますね。もちろん、優勝すると嬉しいので勝ちに行こうとは思っています。ですから目標は次回のRPTQの権利を獲得することになるかと思います。ようやくブロンズプロの期間が終了するのでまたPPTQを周れますよ」
――「ありがとうございました。PPTQ突破のあかつきにはまた晴れる屋の大会にご参加ください!」
プロツアーに参加したプレイヤーのインタビューでこんな言葉を見たことはないだろうか?
「プロツアーは強いプレイヤーしかいないから楽しい」
「憧れの場所。また参加したい」
そう考えた彼らは、次は安定してプロツアーに参加できるよう、レベルプロを目指していく。
だが、谷口 裕昭は違った。
プロツアーは憧れの場所かもしれない。しかし、それはあくまで「ご褒美」なのだ。
それよりも、強いプレイヤーと遊びたい。
『ガチ』すぎるわけではない。しかし『カジュアルプレイヤー』と呼ぶには違和感がある。まさに『エンジョイ』している、というのが相応しい表現ではないだろうか。
マジック:ザ・ギャザリング25周年の歴史は様々な人の想いを受け、この先も続いていくのだ。