By Shin Tomizawa
晴れる屋でおなじみの『先生』、グジェゴジュ・コヴァルスキにとって、昨シーズンは良いものだった。
ポーランド代表チームのキャプテンとしてのワールドマジックカップ準優勝。そして4度のGPトップ8(ちなみに優勝・準優勝・トップ4・トップ8をコンプリートしている)と、好調を維持しプラチナレベルに到達、ついには獲得プロポイント上位として世界選手権への出場を果たしたのだ。
今回、コヴァルスキ先生はいかにして世界選手権に取り組んだのか?メタゲームのとらえ方とデッキ選択についてをご教授いただこう。
初めての世界選手権に向けて
――「いつも考察に富んだ記事を提供してくれてありがとうございます。僕たちはあなたの記事を『コヴァルスキ先生の○○講座』として展開していてファンも多くついています。今回は世界選手権という舞台で先生が考えてきた戦略、また構築戦への取り組み方を聞かせてもらいたいと思っています」
グジェゴジュ「面白いキャラ付けをしてくれて感謝しているよ。日本にもファンがいてくれることはとても励みになる。遠く離れた日本に私の考えていることが届くというのはモチベーションを高めてくれる」
――「世界選手権の構築戦は少人数で行われるため特殊なイベントですが、これを踏まえてどういう準備をしてきましたか?」
グジェゴジュ「そうだね、今まではグランプリをはじめとした多数のプレイヤーが参加する大会に照準を合わせて調整してきたけど、今回は大きく違うものを想定しなければならなかった。最も影響されたのは、対戦相手のプレイスキルという要素だね。普段だったら青系のコントロールを使用するのが好みだが、世界で最高のプレイヤーたちとミラーマッチをプレイするのはあまり得策とは思えなかった。だから赤黒を選択したよ。もちろん、このデッキのミラーも多いとは思ったが、コントロール対決ほど複雑さはなく、要は引きに依る部分が大きくてよりランダムだ。プレイングで自分より勝っている相手にも勝てることが多いのはみんなよく知っているだろう?デッキ構築面でも同型対決を意識して、《ボーマットの急使》はメイン3枚とした」
――「ということは、コントロールデッキが多いメタゲームを想定していたのですね?」
グジェゴジュ「ああ、そこは予想を外してしまった。40%が赤黒、40%がコントロールというフィールドを想定していたから驚いたよ。トッププロ達はコントロールを好むと思っていたんだが…」
スタンダードにおけるデッキ選択
――「スタンダードで最適なデッキを選ぶこと。これは多くのプレイヤーの関心ごとであり悩みです。デッキ選択の際に心掛けていることは何でしょうか」
グジェゴジュ「とにかくフォーマットを理解すること。各デッキ相性の良いマッチアップと悪いマッチアップを理解したら、次はメタゲームに占める割合だ。例えば、もし1つのデッキだけに相性が悪くて、他のデッキには有利だという選択肢があったとしても、その悪いデッキがフィールドの多数を占めるようなときは使いたいとは思わない。今だと赤黒が顕著な例だね。これに負けるデッキはたとえ他のマッチアップが良いものであっても選ぶべきではない。」
グジェゴジュ「あとは大会の性質によっても選択肢を変えることはある。5回戦の店舗大会だったらあまり意識する必要はないと思うが、ラウンド数の多い大会だとビートダウンのように短い時間でゲームが決まるデッキを選ぶというのも有効な戦略の一つだ。私はこういう理由もあって、プレミアイベントではビートダウンデッキを使う方をより好むね」
先生が選ぶ『ラヴニカのギルド』注目カード
――「先生が『ラヴニカのギルド』で気になっているカードを教えてください。メジャーになるであろうものと個人的に気になっているもの。それぞれ理由もお願いします」
グジェゴジュ「気になっているカードで言うと《無効皮のフェロックス》だな。「鉄葉ストンピィ」は大好きなデッキではあるんだが、今の環境で勝つのは正直なところ厳しい。次の環境ではこのカードを加えて活躍してくれることを期待しているよ」
グジェゴジュ「そして使われるカードを的中させるのは難しいが……、恐らく人気になるのは《イゼット副長、ラル》だろう。色こそ違うものの《ドミナリアの英雄、テフェリー》と同等の能力を持っているから、強力なカードだということは予想がつく。「+1」でカードを引けて、「-3」能力で除去、「-8」能力を使えばおよそほとんどのゲームで勝利できるという点でとてもよく似ているよね」
最高の舞台で
――「初出場を果たした世界選手権について感想を聞かせてください」
グジェゴジュ「とても良い雰囲気だね。この空気は今まで経験したトーナメントでも最高だ。遠くからジャッジを呼び出す必要はないし、対戦相手は最高の選手達だからプレイも早くて、お互いに決断にのみしっかり時間を使える。参加できるというだけでも素晴らしく光栄なことだし、プロとしての実績を一つ積み上げた達成感で満たされているよ。初日を6-1で終えられたのは思ったよりずっと素晴らしい成績だったから尚更だね」※このインタビューは、初日終了後に実施しました。
――「ありがとうございました。2日目も引き続きご健闘を祈っています!」
あくまでも冷静に環境を睨むコヴァルスキ先生のデッキ選択における決断力は、彼の成功の秘訣の一つだろう。
さらに我らが先生は初出場にして決勝ラウンドまで駒を進めることに成功した!
プロツアー・世界選手権を含めて初の日曜日に臨み、頂点を目指す先生の姿にご注目あれ!
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