By Hiroshi Okubo
『ラヴニカのギルド』がリリースされてから2週間強の月日が経過した。先週開催されたMOPTQではゴルガリミッドレンジが上位をほぼ寡占していたが、まだローテーション後から日も浅いこともあり、世界の各地で日々様々なデッキが試行錯誤されている。今回の第12期スタンダード神挑戦者決定戦も、スタンダードの活気を裏付けるかのように259名ものプレイヤーが集まっていた。
ローテーション後の新環境というのはまっさらな地図を持って探検をするようなものだ。無論スタンダードには『イクサラン』~『基本セット2019』のカードが残されてはいるが、ローテーションとは往々にしてそれまで見向きもされなったようなカードが活躍したり、あるいはまったく逆のことが起きたりと大きな変化が起こるものだ。
それこそがスタンダードというフォーマットの最大の魅力でもあるのだが、しかし針路を持たずに未開のカードプールに放り出されるというのは心細さも伴う。環境が定義されていない分、明確な仮想敵を定めることができず、五里霧中の地でとんでもない遠回りをしている可能性だってあるのだ。
しかし、だからこそ。デッキビルダーはそんな広漠な『ラヴニカのギルド』環境という大海原にイノベーションというロマンを探し求める。関東の大規模草の根コミュニティであるPWCを中心に活動しているグラインダー、小島 義史(東京)もまた、そんな新世界の熱狂に魅入られた男の一人だ。そのデッキ開発能力は界隈でも一目置かれており、小島がTwitterで一言「新しいデッキができた」という旨のツイートをすれば、彼の友人たちはもちろんのこと、名だたるレベルプロたちでさえも興味を示すほどである。
そんな小島が満を持してこの第12期スタンダード神挑戦者決定戦へ持ち込んだのは、《発見の道》という見慣れないエンチャントを4枚採用した意欲作。その名も「コジマ探検隊」だ。聞けばこのデッキは気鋭のマジックコミュニティ・Onogamesに所属する池端 涼と、ご存知Hareruya Hopesの鈴池 史康の2人とデッキをシェアし、第4回戦終了時点でそれぞれを4-0ラインへと送り込んでいるらしい。
「コジマ探検隊」とはいったい何なのか? その謎を明らかにすべく、我々はアマゾンの奥地へと向かった――。
「コジマ探検隊」とはいったい!?
――「セレズニアデッキは特段珍しくありませんが、《発見の道》が4枚採用されているものは初めて見ました。このデッキはどのように生まれたのでしょうか?」
小島「MOで行われたPTQがあったじゃないですか、ゴルガリミッドレンジがトップ8に6人入賞したやつ。僕もあの大会に参加していたんですけど、そのとき当たったデッキを参考にしています」
――「MOPTQで当たったんですか。そのときの相手のデッキにはすでに《発見の道》が採用されていたのでしょうか?」
小島「入ってましたね。そのときのゲームは僕が辛勝したんですが、相手のデッキがすごくおもしろそうな挙動をしていたんですよ。で、自分でもそれっぽいデッキを組んでみて回してみると《発見の道》が稼ぎ出すアドバンテージカードが凄まじくて、それからは夢中になってデッキを調整していました(笑)」
――「なるほど。デッキリストはどのように決まっていったのでしょうか?」
小島「まずキーカードの《発見の道》と相性のいいカードを集めるところからでしたね。たとえば《不和のトロスターニ》なんかは4マナ→5マナの動きなので綺麗に決まりますし、『探検』で《不和のトロスターニ》のタフネスが5になるとほとんど除去される心配もなくなるんですよ。そうしていくうちに自然とセレズニア軸のデッキになったので、《大集団の行進》や《議事会の裁き》といったカードも入って、今の形に近づいていきました」
――「《発見の道》と《不和のトロスターニ》は流れも綺麗で興味深いですね。デッキには他にもシナジーはありますか?」
小島「うーん、いろいろありますけど……」
鈴池「シナジーといえば、さっきのゲームでは僕の《野茂み歩き》が《殺戮の暴君》にダブルブロックされたんですけど、《名誉の記念像》を起動して《発見の道》を誘発させて一方的に打ち取ったりしましたね」
池端「あるある。《発見の道》に《野茂み歩き》が絡むと結構とんでもないことが起こるよね。《名誉の記念像》とかは見えてるけど意識が回らないことも多いし、《大集団の行進》が実質的にコンバットトリックになったりするし、相手からすると考えることが余計に増えると思う。特に《大集団の行進》は土地が立ってない状況でもプレイできるし」
――「たしかに。ゴルガリやボロスとのマッチアップではコンバットが絡むやりとりが多いですし、インスタントタイミングで『探検』することで意表を突ける機会は多そうですね」
小島「デッキは今朝の5時まで調整していて、3枚目の《不滅の太陽》を入れたり《民兵のラッパ手》を採用したりとけっこうバタバタ形が変わり、ようやく納得のいくリストになりました」
――「そういえば《不滅の太陽》もあまり見ないカードですね。これはどうして採用されているのでしょうか?」
小島「これはトークン戦略と《栄光の頌歌》が噛み合うというのはもちろんですが、一番大きいのはゴルガリ対策として優秀だからですね。ゴルガリは序盤から中盤にかけてサイズの大きなクリーチャーでマウントを取って、最終的にプレインズウォーカーで蓋をするデッキですが、《不滅の太陽》があればプレインズウォーカーを封殺することができるので、相手のゲームプランを崩すことができます」
鈴池「ゴルガリ側は《不滅の太陽》を対処できるカードが《暗殺者の戦利品》くらいしかないですし、置物対策は《秘宝探究者、ヴラスカ》に頼っているところも大きいんですよね」
――「でも、その《秘宝探究者、ヴラスカ》は《不滅の太陽》で能力を封じられていると」
小島「実際、今日も《不滅の太陽》を設置した返しに《秘宝探究者、ヴラスカ》をプレイされて『-3』を起動されそうになったんですけど、『いや、それできませんよ』って」
池端「インクの染みみたいな能力がいっぱい書いてあるんですよね。実際、僕も使ってみるまでうろ覚えでしたし(笑) ただ、さすがに6マナのアーティファクトだけあって非常に強いです。超強くなった《ニンの杖》みたいな」
――「ありがとうございます。最後に、このデッキを使いたいと考えているプレイヤーにコメントなどはありますか?」
小島「今日は僕自身は負けてしまっていますが、鈴池さんと池端さんは2人とも4-0しているのでデッキ自体は結構強いと思います。《発見の道》は見た目以上に強いカードですし、回していてとにかく気持ちいいデッキなので、ぜひ興味があれば組んでみてください!」
実は筆者も昨晩この「コジマ探検隊」のリストをもらって回していたのだが、あまりにも楽しくて気が付いたら6時間経っていた。《発見の道》を設置したあとのデッキの挙動はスタンダードとは思えないほどの爆発力があり、《野茂み歩き》が《引き裂かれし永劫、エムラクール》以上のデカブツに育つこともザラだった。
特に彼らも冒頭で述べていた通り、《発見の道》から《不和のトロスターニ》へと繋ぐ動きは脳の皺が1本減るくらいの快感だ。プロツアーまであと3週間ほどの時間もあり、環境の全容が解明されるまではまだまだ日もあることだろう。もしもまだピンとくるデッキが見つからないという方は、ぜひ組んでみてはいかがだろうか?
3 《平地》
4 《寺院の庭》
4 《陽花弁の木立ち》
4 《名誉の記念像》
-土地 (24)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《マーフォークの枝渡り》
4 《野茂み歩き》
4 《翡翠光のレインジャー》
3 《民兵のラッパ手》
4 《不和のトロスターニ》
-クリーチャー (23)-