Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/11/02)
イントロダクション
みなさん、はじめまして。これが俺にとって晴れる屋に投稿する初めての記事になる。俺のことを知らない人のために、簡単に自己紹介しておこう。俺の名前はイマニュエル・ゲルシェンソン。現在25歳で、医用生体工学を学ぶ学生だ。
今回はスタンダードについて書いていこうと思う。グランプリが2つ(リール、ニュージャージー)もあったし、プロツアーも控えているからね。グランプリの結果が出たから、参考にすべきデッキリストもたくさん出てきた。だけど、ただそのリストを見ていくのではなく、環境やメタに影響を与えているカードについて話そうと思う。
環境の柱となるカードたち
《実験の狂乱》
最初に紹介したいカードは、『ラヴニカのギルド』で俺のお気に入りのカードの1枚だ。そしてグランプリ・リール2018の優勝デッキに4枚入っていたカードでもある。《実験の狂乱》だ。
初めてこのカードのテキストを読んだとき、効果がよくわからなかった。そのときは「《未来予知》っぽいもの」だと思ったんだけど、実際はそれ以上に《未来予知》に近いものだった。土地も置けるし、呪文だって複数回唱えられるんだ(マナがあれば、だけどね)。
スタンダードの赤がカードアドバンテージを生むカードを使えることはあまりない。また、使いたいと思える赤の軽量カードがスタンダードに豊富にあることはもっと珍しい。しかし、現在のスタンダードはそういったカードが存在していて、《実験の狂乱》を使うと毎ターン3枚近くドローができるという状況になるんだ。これから紹介するデッキリストを見てもらえればわかると思うけど、本当に軽いカードばかりで構築されている。《遁走する蒸気族》と《実験の狂乱》が揃ってしまえば、まさに”狂乱”することができる。
-土地 (22)- 4 《狂信的扇動者》
4 《ギトゥの溶岩走り》
4 《遁走する蒸気族》
4 《ヴィーアシーノの紅蓮術師》
4 《ゴブリンの鎖回し》
2 《再燃するフェニックス》
-クリーチャー (22)-
このデッキは《実験の狂乱》を非常にうまく使っていている。なぜなら、これさえあれば今までに実現することができなかったゲーム運びが可能になるからだ。どういうことか説明しよう。こういった軽量のカードが多いデッキの強みは、最初の数ターンで相手よりも多く動くことができる点にある。そしてそれらの軽いアクションは、対戦相手にリソースの消耗を強いるんだ。
そして4ターン目、5ターン目ごろにこちらはリソースがなくなるので、そこで《実験の狂乱》の出番というわけだ。《実験の狂乱》がゲームを支配し、ゲーム中盤以降でも相手より多くの呪文を唱えられる展開ができるという寸法だ。
《殺戮の暴君》
次に注目するカードは、多くのプレイヤーに愛され、そして嫌われてもいるカード。《殺戮の暴君》だ。
数週間前、話題のデッキはゴルガリ・ミッドレンジであり、最強とまで言われることが多かった。だからこそミラーマッチで勝つことが課題だったんだ。出したカードは大体除去されてしまうし、出したターンしか盤面に影響を与えられえないことが多かった。何か打開策が必要だったんだ。そこで除去耐性があり、多くのマッチアップで無類の強さを誇る《殺戮の暴君》に白羽の矢が立ったというわけだ。
《殺戮の暴君》と《採取+最終》のコンボに対しては、全体除去かタイミングよく生贄に捧げるカードを使えないと太刀打ちできない。また、《殺戮の暴君》にはもうひとつ見逃せない点がある。それはコントロールデッキに対して非常に強力であり、アグロデッキに対しても早々にゲームを終わらせてしまう力があるということだ。この力があれば、ゴルガリのトップの座はさらに確固たるものになるだろう。Hareruya Prosの仲間であるハビエル・ドミンゲスはこれに気づいていたようで、《殺戮の暴君》を使ってグランプリ・リールでトップ8に入っている。そのデッキリストがこれだ。
5 《沼》
4 《草むした墓》
4 《森林の墓地》
2 《愚蒙の記念像》
-土地 (23)- 4 《ラノワールのエルフ》
4 《マーフォークの枝渡り》
2 《探求者の従者》
2 《野茂み歩き》
4 《翡翠光のレインジャー》
2 《真夜中の死神》
1 《エルフの再生者》
3 《貪欲なチュパカブラ》
1 《ゴルガリの拾売人》
3 《殺戮の暴君》
-クリーチャー (22)-
《弾けるドレイク》
このカードが環境で一番いいカードだというプレイヤーもいるから、ここでも話しておく他ないだろう。次に紹介したいカードは《弾けるドレイク》だ。このカードのうまい使い方は非常にわかりやすいと思う。呪文をいっぱい使ってサイズをでかくする!以上!しかも、戦場に出たときにカードが引けるので後続を探すことができるんだ。
《弾けるドレイク》はうまい使い方がわかりやすいだけでなく、さまざまなタイプのデッキで使いやすいと思う。これからデッキリストを2つ見てもらうけど、どちらもゲームプランに共通点がある。それは、ゲームのある時点において、《弾けるドレイク》で数回攻撃して、できれば2回以下の攻撃で勝つというものだ。違うのは「ゲームのどの時点で勝とうとしているか」だ。一方はできるだけ早く勝とうとし、他方はできるだけゲームの終盤で勝とうとする。
そして前者の、早く勝とうとするタイプがこれだ。Hareruya Prosの仲間であるアーネ・ハーシェンビスが使ったものだ。
6 《山》
4 《蒸気孔》
4 《硫黄の滝》
-土地 (21)- 3 《ゴブリンの電術師》
4 《奇怪なドレイク》
4 《弧光のフェニックス》
3 《弾けるドレイク》
-クリーチャー (14)-
3 《焦熱の連続砲撃》
2 《パルン、ニヴ=ミゼット》
2 《軽蔑的な一撃》
1 《潜水》
1 《否認》
1 《標の稲妻》
1 《火想者の研究》
1 《アズカンタの探索》
-サイドボード (15)-
そしてこちらが後者のタイプ、相手をさばききった後に2回の攻撃で勝とうとするタイプのものだ。
2 《本質の散乱》
2 《裁きの一撃》
2 《稲妻の一撃》
4 《轟音のクラリオン》
4 《イオン化》
4 《薬術師の眼識》
1 《浄化の輝き》
2 《発展+発破》
2 《アズカンタの探索》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (29)-
3 《否認》
2 《黎明をもたらす者ライラ》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《裁きの一撃》
1 《原初の潮流、ネザール》
1 《パルン、ニヴ=ミゼット》
1 《残骸の漂着》
-サイドボード (15)-
《ベナリア史》
そして最後のカード。これも忘れてはならない。《ベナリア史》だ。
基本土地と《選択》を除けば、2つのグランプリを通じてもっとも使われたカードが《ベナリア史》だ。どうしてこんなに使われたのか理由をあげていこう。
理由をあげようと思えばもっとあるけど、《ベナリア史》が非常に強いことはわかってもらえたと思う。先週末に行われた2つのグランプリからサンプルデッキリストを2つ用意した。一方は《ベナリア史》を単純なパワーカードとして使っているタイプであり、他方は盤面を広げていくうえで《ベナリア史》を使っているタイプだ。
5 《山》
4 《聖なる鋳造所》
4 《断崖の避難所》
3 《ボロスのギルド門》
-土地 (25)- 4 《アダントの先兵》
4 《トカートリの儀仗兵》
4 《輝かしい天使》
4 《再燃するフェニックス》
3 《正義の模範、オレリア》
3 《黎明をもたらす者ライラ》
-クリーチャー (22)-
マナカーブ通りに動き、そのマナ域でトップクラスのカードパワーを持つカードたちを叩き付けていくタイプのものだ。
4 《森》
4 《寺院の庭》
4 《陽花弁の木立ち》
1 《オラーズカの拱門》
-土地 (21)- 4 《茨の副官》
3 《協約の魂、イマーラ》
2 《豊潤の声、シャライ》
4 《敬慕されるロクソドン》
3 《不和のトロスターニ》
-クリーチャー (16)-
まさにクリーチャーで盤面を広げていくデッキだ。デッキに入っているカードのほとんどが複数のクリーチャーを出したり、複数のクリーチャーを強化したりするものだ。仮にこういったカードを引けなくても、マナカーブに沿って動けていれば、単純にアグレッシブなデッキとして動き、相手がほとんど何もできないうちに勝つこともできるだろう。
まとめ
今回の記事を通じて、今のスタンダードには強力なカードがいろいろあるんだとわかってもらえたら嬉しい。俺個人としてもプロツアーは楽しみだし、プロツアーはスタンダードが今後どう変化していくのか占ってくれることだろう。
何か聞きたいことや提案があれば、TwitterやFacebookからいつでも連絡してくれ。
それではまた次回。
イマニュエル・ゲルシェンソン