Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/11/02)
はじめに
私は昔から大のミッドレンジ好きです。同じデッキパワーであれば、たいていの場合ミッドレンジのタイプのものを選ぶことでしょう。別にコントロールやアグロを使いたくないという訳ではありません。大会で勝てる確率が高まるのであれば、そういったデッキも喜んで使います。
実際に私が昨シーズンに使ってきたデッキを振り返ってみますと、プロツアー『イクサラン』ではティムールエネルギーを、プロツアー『イクサランの相克』では緑単トロンを、プロツアー『ドミナリア』では赤単を、マジック25周年記念プロツアーではデス&タックスを使っています。このなかで純粋なミッドレンジといえるのは、ティムールエネルギーぐらいではないでしょうか。
最強のミッドレンジを求めて
グランプリ・リール2018とプロツアー『ラヴニカのギルド』が近づいてきたころ、環境トップのデッキたちと渡り合えるミッドレンジはないかと考え始めました。そこでMagic Onlineの結果を見てみると、幸運にもゴルガリミッドレンジがいい結果を残していることを知りました。そして1回目と2回目のプロツアー予選を優勝し、2回目に関してはトップ32に数多く入賞していたのです。
以前からゴルガリミッドレンジが最強だという自信がありましたが、プロツアー予選の結果は私の確信を強めました。唯一の問題は、結果を残しているゴルガリにもタイプがいろいろあり、どれがベストなのか判断がつかなかったのです。
《陰惨な生類》を採用したタイプのゴルガリ
赤単が流行っていたころ、手始めに《陰惨な生類》を使ったタイプのものを試すことにしました。このタイプは「探検」と《野茂み歩き》をもっともうまく使える形であり、アグレッシブなデッキに対して有利に戦えます。特に《陰惨な生類》で《野茂み歩き》と《翡翠光のレインジャー》を戦場に戻せば、6点回復しつつ盤面を再構築することができるのです。
7《沼》
4《草むした墓》
4《森林の墓地》
-土地 (23)- 4《ラノワールのエルフ》
4《マーフォークの枝渡り》
4《野茂み歩き》
2《探求者の従者》
3《真夜中の死神》
2《疫病造り師》
4《翡翠光のレインジャー》
3《貪欲なチュパカブラ》
2《破滅を囁くもの》
-クリーチャー (28)-
ちょうどこのころ、ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifが私と同じようなデッキをTwitchの配信で使い、スタンダードのリーグで勝ちまくっていました。これは私にとってとても喜ばしいことでした。と同時に、ゴルガリで使う《真夜中の死神》の強さを思い知ったのもこのときのことでした。
しかし、ミラーマッチの機会が増えたために《陰惨な生類》タイプは諦めました。ゲームが長引いた場合には、古典的なミッドレンジから繰り出されるプレインズウォーカーたちの方が《陰惨な生類》を使ったシナジーよりも強力であるように思えたからです。もしアグレッシブなデッキが多い環境に戻っていくようなことがあれば、《陰惨な生類》タイプが復権することでしょう。
クラシック・ゴルガリ
そして私は“古典的な”ゴルガリのデッキリストを試すことにしました。目的としては、デッキに入っているカードの選択理由を理解することと、Magic Onlineのプロツアー予選の結果から感じたデッキの強さが本物なのかどうかを確認することです。
6《沼》
4《草むした墓》
4《森林の墓地》
2《愚蒙の記念像》
-土地 (24)- 4《探求者の従者》
4《マーフォークの枝渡り》
2《野茂み歩き》
2《疫病造り師》
4《翡翠光のレインジャー》
2《管区の案内人》
3《貪欲なチュパカブラ》
2《ゴルガリの拾売人》
-クリーチャー (23)-
新しい環境で手探りしているときに私がよくやるのは、もっとも人気のあるアーキタイプのなかでも、もっとも人気のデッキリストを選び、自分の手を加えることなくとりあえず使ってみることです。この方法を使うと、環境の核心に触れることができるのです。環境を理解できれば、今後環境が変わったときにどこを変えればうまくいくのかがわかるようになるのです。
とはいえ、当時の形のままでもゴルガリは強く、安定性もありました。しかし、Magic Onlineの結果を見たときに期待したほどの強さはなかったなという印象でした。実際のところ、ゴルガリを使っても楽に勝てるというわけではありませんでした。グランプリに向けてデッキが決まっただろうと思っていたものの、このデッキで行こうという確信が持てなかったのです。
このころにはすでにゴルガリへの対策が強まり、戦い方を見つけられてしまっていたのです。序盤に使える除去が少ないというゴルガリの弱点を突いてくるデッキもありましたし、白のデッキにいたってはメインデッキに《トカートリの儀仗兵》を入れ始め、今もなおメインデッキに入っているデッキリストが流行しています。
プロツアーも迫ってきていて、ゴルガリだけに時間を費やしたくありませんでした。ですから、プロツアーで使用するデッキを探すため多くのデッキに目を通すようになりました。しかし、ミッドレンジが使いたくて仕方なかったので、グランプリはゴルガリで行きたいという思いでした。
一筋の光明
冒頭でもお話ししましたが、「好き」がそのデッキを使用する理由にはなりません。ですから、このタイプのゴルガリも諦める覚悟でした。もし使うのであれば、デッキを修正し勝てるようにする必要がありました。小さな変更を重ね、練習を続けてみると、興味深いことにめぐり合いました。ミラーマッチでサイドボードから《殺戮の暴君》が投入されるようになっていたのです。そしてそれはまだ私が試したことのないものでした。
そこで私も《殺戮の暴君》を試してみたところ、ミラーマッチでの勝率を変えるカードだと徐々に気づき始めました。特に《最終》と組み合わせると、《殺戮の暴君》に+2/+2カウンターを載せつつ、勝利への道をこじ開けることができるのです。
ゲームの勝敗を決定づけるのが《殺戮の暴君》と《採取+最終》である確信が強まっていったため、《秘宝探究者、ヴラスカ》ではなく《殺戮の暴君》をメインデッキに入れる人が出てきてもおかしくないだろうと思い始めました。《殺戮の暴君》と《採取+最終》はもっともゲームに影響力のあるカードであるという評価はテストを重ねても変わらなかったため、この2枚のカードを軸にしたデッキにしようという考えになり、4枚ずつ入れることにしたのです。
デッキ解説
メインデッキ解説
グランプリ・リールに持ち込んだ最終的なデッキがこちらになります。成績は12-3で12位に入賞しました。
6《沼》
4《草むした墓》
4《森林の墓地》
1《愚蒙の記念像》
-土地 (23)- 4《ラノワールのエルフ》
4《僧帽地帯のドルイド》
4《マーフォークの枝渡り》
2《真夜中の死神》
4《翡翠光のレインジャー》
3《貪欲なチュパカブラ》
4《殺戮の暴君》
-クリーチャー (25)-
グランプリを通して、いいデッキ選択ができたという実感がありました。残念ながらトップ8には入れませんでしたけどね。 一般的なデッキリストとは異なる、特徴的なカード選択についてお話ししましょう。
土地が23枚(《愚蒙の記念像》は1枚)
マナクリーチャーが8枚入っているので、土地は23枚が適正だと思います。緑の「探検」クリーチャーも入っているため、土地を伸ばしやすくなっているというのもあります。
《愚蒙の記念像》は以前のデッキリストから気に入っている土地であり、消耗戦に強くしてくれるカードです。ただ、このデッキは強力なカードをマナカーブ通りに出すことが重要であるため、タップインランドを増やしてマナカーブ通りに動けないということを避けたいのです。ですから私は《愚蒙の記念像》は1枚に抑えました。
《ラノワールのエルフ》が4枚
ゴルガリに《ラノワールのエルフ》を入れるべきかどうか、というテーマだけで記事を1つ書けてしまうかもしれません。個人的には使うべきだと思います。スタンダードで『ベータ』のカードが使えるなら使うべきですし、私は『ベータ』で4枚揃えていますしね。『ベータ』のカードは最高です。
冗談はさておき、《ラノワールのエルフ》を使うべき理由は、相手よりも先に盤面を作れるからです。これはまさにゴルガリがやりたいことであり、ましてや今はプレインズウォーカーが多いメタゲームですし、このリストには《殺戮の暴君》が4枚も入っているんですからね。
《僧帽地帯のドルイド》が4枚
《僧帽地帯のドルイド》を入れるために《探求者の従者》を抜きました。《探求者の従者》は弱いカードではないのですが、好きになれませんでした。《僧帽地帯のドルイド》は以下のような特徴があります。
《真夜中の死神》が2枚
3マナ域には《翡翠光のレインジャー》に加えてこの死神を使うことにしました。《陰惨な生類》タイプのゴルガリで使ってみて衝撃を受けたカードでしたが、古典的なミッドレンジタイプのものでも活躍してくれたのです。このデッキのクリーチャーはリソースの交換に使われることが多いため、相手からすれば《真夜中の死神》は非常な厄介な存在になるのです。
また、《轟音のクラリオン》や《浄化の輝き》のような全体除去への耐性がつくため、盤面にクリーチャーを展開しやすくなります。さらに、《最終》で自分のクリーチャーを巻き添えにしてしまうことも少なくないのですが、そのような場合でも《真夜中の死神》がいれば手札を補充できるのです。
《ウルザの後継、カーン》が2枚
デッキのなかで一番弱いカードだと思いますが、3ターン目に能動的にプレイできる4マナのカードとして使っています。《ゴルガリの拾売人》も4マナですが、墓地に何もない3ターン目に出しても仕方ないですよね。
アーティファクトを使うデッキではないので《ウルザの後継、カーン》のトークンが大きくなるわけではないのですが、マナ加速から出した《ウルザの後継、カーン》はこのうえなく倒しづらいため、カードアドバンテージはもちろん、ゲームへの影響力が大きいカードを探し当ててくれることでしょう。
《殺戮の暴君》と《採取+最終》が4枚ずつ
他のゴルガリとの大きな差はここでしょう。《殺戮の暴君》を相手よりも先に出すことは大きなアドバンテージです。《殺戮の暴君》を2体、3体でブロックして倒そうとするのは好ましくありません。なぜなら、実際に複数のクリーチャーでブロックした場合、ブロッカーに除去を1枚撃たれるだけで盤面を崩壊させられてしまうからです。もうひとつの理由として、《最終》を使われると、ブロッカーとして並べた複数のクリーチャーが一掃されてしまう可能性も常にあるからです。
だからこそ、《殺戮の暴君》は《殺戮の暴君》で倒すことが一番安全な方法であり、実際にそういう場面が多くなる理由でもあります。幸い、今回のデッキリストでは《採取+最終》を4枚入れているので、《採取》で回収して何度も《殺戮の暴君》を出すことができるようになっています。
サイドボード解説
サイドボードガイドを知りたい人もいることでしょう。グランプリで実際に私が使っていたサイドボードを紹介しましょう。