Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/11/01)
はじめに
みなさんはじめまして。シンガポール出身、プラチナレベルのケルヴィン・チュウ/Kelvin Chewです。 今回が晴れる屋に投稿するはじめての記事になります。
グランプリ・アトランタ2018が今週末まで迫っていますので、私のもっともお気に入りのデッキであるバントカンパニーについてお話しようと思います。《珊瑚兜への撤退》が登場してからずっと愛用してきたデッキです。
バントカンパニーとは
バントカンパニーはフェアなミッドレンジデッキです。盤面を作る力があり、リソースを削りあう長期戦に強いため、クリーチャーを主体とするデッキやコントロール系のデッキをもっとも得意な相手としています。
また、このデッキの魅力はサイドボード後のゲームプランにあります。サイドボードのカードが優秀であるため、デッキの形を柔軟に変え、モダンのあらゆるデッキに対して勝率を最大限まで高めることができるのです。
先日行われたグランプリ・香港2018では、惜しくも一番相性の悪いボロスバーンにバブルマッチで負けてしまい、トップ8に入ることができなかったものの9位に入賞することができました。そのときに使ったデッキリストがこちらになります。
1《島》
1《平地》
1《繁殖池》
1《神聖なる泉》
1《寺院の庭》
4《霧深い雨林》
4《吹きさらしの荒野》
2《溢れかえる岸辺》
1《植物の聖域》
1《地平線の梢》
1《廃墟の地》
1《ガヴォニーの居住区》
1《幽霊街》
-土地 (22)- 4《極楽鳥》
4《貴族の教主》
2《漁る軟泥》
3《復活の声》
2《翻弄する魔道士》
1《ヴェンディリオン三人衆》
2《永遠の証人》
2《不屈の追跡者》
4《聖遺の騎士》
4《呪文捕らえ》
2《反射魔道士》
-クリーチャー (30)-
2《否認》
2《統一された意思》
2《石のような静寂》
2《精神を刻む者、ジェイス》
1《復活の声》
1《ヴェンディリオン三人衆》
1《拘留の宝球》
1《仕組まれた爆薬》
1《ボジューカの沼》
-サイドボード (15)-
『ラヴニカのギルド』による変化
『ラヴニカのギルド』が発売されたことでバントカンパニーは「ある新しいカード」を手にしました。そのカードの登場で今まで足りなかった部分をすべて埋められることになったのです。
そのカードとは《秋の騎士》です。バーンとの相性を改善するだけでなく、《虚ろな者》や《罠の橋》、《血染めの月》、《硬化した鱗》といった厄介なアーティファクトやエンチャントを除去できるようになったのです。
そしてよく聞かれる質問があります。「《秋の騎士》を入れる代わりに、何を抜けばいいの?」というものです。私が実際に何を抜いたのかは後でお話ししましょう。
《秋の騎士》が果たす役割
現在のトップメタを分析してみましょう。もっとも人気のデッキは、青白系のコントロール、5色人間、トロン、バーン、スピリット、硬化した鱗、ホロウワン、ドレッジといったところですね。
次に、こういったデッキに対して《秋の騎士》がどういう役割を果たすのか考えてみましょう。
対 コントロール
4/3のクロックとして活躍できますし、《アズカンタの探索》や《拘留の宝球》を破壊することもあります。
対 5色人間
《秋の騎士》の4/3というサイズは、5色人間が使う大半のクリーチャーと相打ちできるサイズです。また、《霊気の薬瓶》を破壊できるのも大きな意味を持ちます。なぜなら、5色人間は初手の土地が少なくても《霊気の薬瓶》があるとキープすることがあり、それを破壊すれば相手は数ターンの動けず、そこで得たテンポで勝つことができるからです。ライフを4点する能力もダメージレースをするうえで重要です。
対 トロン
クロックとして優秀であるとともに、必要があれば《忘却石》や《探検の地図》を破壊することもできます。
対 《硬化した鱗》親和
もっとも活躍するマッチアップです。相手の使ってくるカードの大半を破壊することができるうえ、2/1というサイズのクリーチャーが残るためです。
対 ホロウワン
デッキ名になっている《虚ろな者》を破壊することもできますし、ライフ回復の能力も《稲妻》で負けてしまうライフになってしまった場合に重要になるでしょう。
対 バーン
ライフを4点回復するというのは、まさにこのマッチアップで求めているものです。また、《大歓楽の幻霊》やサイドボード後から不意をつくためによく投入される《罠の橋》を破壊することができます。
《珊瑚兜への撤退》を入れない理由
いまお話しした通り、現在のトップメタのデッキはクリーチャーやコントロールをベースにしたものが多く、バントカンパニーはそういった相手に対して消耗戦で勝つことを得意としています。こういった相手に対して役に立たない《珊瑚兜への撤退》を序盤で引いてしまうと、せっかくの強みが薄れてしまいます。だからこそ《珊瑚兜への撤退》は入れないのです。
グランプリ・香港後におこなった変更
私はグランプリ・アトランタに参加する予定ですが、今からご紹介するデッキリストで参加するつもりです。さきほどご紹介したグランプリ・香港からメインデッキに加えた変更点は2点です。まず、《献身のドルイド》などのクリーチャーを使ったコンボデッキが減ると予想しているため、《反射魔道士》を《秋の騎士》に変更しました。次に、墓地を使ったデッキが増えるだろうと予想しているため、《翻弄する魔道士》を《悔恨する僧侶》に変更しました。
1《島》
1《平地》
1《繁殖池》
1《神聖なる泉》
1《寺院の庭》
4《霧深い雨林》
4《吹きさらしの荒野》
2《溢れかえる岸辺》
1《植物の聖域》
1《地平線の梢》
1《廃墟の地》
1《ガヴォニーの居住区》
1《幽霊街》
-土地 (22)- 4《極楽鳥》
4《貴族の教主》
2《悔恨する僧侶》
2《漁る軟泥》
3《復活の声》
1《ヴェンディリオン三人衆》
2《永遠の証人》
2《不屈の追跡者》
2《秋の騎士》
4《聖遺の騎士》
4《呪文捕らえ》
-クリーチャー (30)-
2《否認》
2《統一された意思》
2《石のような静寂》
2《仕組まれた爆薬》
2《精神を刻む者、ジェイス》
1《ヴェンディリオン三人衆》
1《秋の騎士》
1《ボジューカの沼》
-サイドボード (15)-
サイドボードガイド
モダンの主要なデッキに対する、サイドボーディングと対戦するうえでの注意点を解説していきましょう。
青白系コントロール
対青白コントロール
バントカンパニーにはマナクリーチャーが入っているため《終末》や《至高の評決》といった全体除去に弱く、《流刑への道》のような腐ってしまうカードがあるため、1本目は厳しい戦いを強いられます。そんななかでも1本目をする際に覚えておきたいテクニックがあります。全体除去呪文を《呪文捕らえ》の能力で追放し、その能力がスタックに乗っているときに《流刑への道》で《呪文捕らえ》を追放すれば永久的に全体除去呪文を追放できるのでぜひ覚えておきましょう。
サイドボード後は、カウンター呪文やプレインズウォーカー最強の一角である《精神を刻む者、ジェイス》を使えるため、相性が劇的に改善されます。また、「奇跡」で《終末》を撃たれとしても、「奇跡」がスタックにあるときに《ヴェンディリオン三人衆》でデッキに戻してしまえば《終末》は唱えられなくなりますので、これもぜひ覚えておきましょう。そしてサイドボード後は《精神を刻む者、ジェイス》を着地させることが最優先です。相手のエンドフェイズ時に《集合した中隊》を撃ち、《謎めいた命令》でカウンターされたとしても《精神を刻む者、ジェイス》を通す価値があります。
黒緑系ミッドレンジ
対黒緑ミッドレンジ
《暗殺者の戦利品》が登場したことで人気が復活したデッキであり、バントカンパニーにとっては喜ばしい兆候です。なぜなら、バントカンパニーには《集合した中隊》や《復活の声》、《永遠の証人》といったアドバンテージを生むクリーチャーがいるため、ミッドレンジ相手に有利に戦えることが多いからです。このマッチアップで勝敗分けるのはカードアドバンテージなので、《不屈の追跡者》を使うときは、アドバンテージをとれるような使い方をしましょう。
ホロウワン
対《虚ろな者》
1ターン目に《虚ろな者》を複数出されない限り、もっとも相性の良いマッチアップのひとつです。なぜなら、《聖遺の騎士》は相手のクリーチャーよりもサイズが大きくなることが多いですし、《呪文捕らえ》は《炎跡のフェニックス》を止められるためです。
覚えておいていただきたいのは、できるだけ《聖遺の騎士》を《稲妻》で除去されないサイズのときに出すということです。というのも、《聖遺の騎士》が能力を起動し始めると大体勝てるからです。また、《漁る軟泥》や《悔恨する僧侶》は相手の墓地を封じるという大きな役割を果たしてくれます。
トロン
対トロン
1本目の相性は良くありません。例外的に、2ターン目に《聖遺の騎士》を出し、《幽霊街》や《廃墟の地》をサーチしてトロンをペースダウンさせることができれば可能性があります。《永遠の証人》がいれば、上記の土地たちを回収して妨害し続けることができるでしょう。
サイドボード後は相性が劇的に改善されます。というのも《石のような静寂》を出せば相手がトロンの土地3種を素引きしない限りは勝つことができることが多いからです。また、相手の脅威を打ち消すカウンターもサイドボードから使えることも大きな強みになります。そして、《秋の騎士》はゲーム序盤の《探検の地図》や《忘却石》を破壊してくれるので、ここでも大きな役割を果たしてくれます。
バントスピリット
対バントスピリット
相性はほぼ互角であり、ダメージレースで勝負が決まることが多いですね。ですから、《流刑への道》は《至高の幻影》のようなロードクリーチャーに使い、《呪文捕らえ》によるテンポ負けをしないように気をつけることが大切です。
サイドボード後は除去を増やして相手をスローダウンさせることができます。素のサイズはこちらの方が大きいことが多いため、相手がロードクリーチャーの軍勢を揃える前に押し切ってしまいましょう。また、相手のクリーチャーはロードクリーチャーと組み合わさると厄介なので、積極的にクリーチャー同士で相打ちするようにします。
5色人間
対5色人間
マジック25周年記念プロツアーに向けた練習でわかったのは、このマッチアップの1本目は事故を起こさない限り先手が勝つことが多いということです。《民兵のラッパ手》入りのタイプですと、厳しい戦いになります。というのは、《幻影の像》が入っているため《民兵のラッパ手》を連打されることが多く、最終的に《サリアの副官》で強化しながら膠着した盤面を打開してくるからです。
サイドボード後は、《仕組まれた爆薬》が素晴らしい働きをするとともに、《反射魔道士》が《翻弄する魔道士》のロックを解いてくれるため除去が打てるようになります。サイドボードで《呪文捕らえ》を2枚抜くのは、《反射魔道士》に対して弱く、《カマキリの乗り手》をブロックすることもできないからです。ただ、《帆凧の掠め盗り》を「瞬速」でブロックできたり、ゲーム終盤に《ガヴォニーの居住区》と合わせれば《カマキリの乗り手》をブロックできるため、2枚は残しておいていいでしょう。
ストーム
対ストーム
このマッチアップは相性が悪いと考えています。理由としては、1本目は相手がコンボの準備に集中できるのに対して、こちらはコンボに備えて《呪文捕らえ》を構え続けなければならず、勝つには手札がうまくかみ合っていないといけないからです。また《遵法長、バラル》や《ゴブリンの電術師》に対して《流刑への道》を撃つのも、相手の土地を伸ばしてしまうため厳しいですね。
サイドボード後は相性が改善されます。カウンター呪文が増やせますし、《炎の中の過去》のルートに対しては《聖遺の騎士》で《ボジューカの沼》をサーチできるようになるからです。
ドレッジ
対ドレッジ
《這い寄る恐怖》が登場し、ドレッジの数が増えてきているように思います。ゲームの序盤で《漁る軟泥》や《悔恨する僧侶》を引けていない限り、1本目は《這い寄る恐怖》に対してなす術はあまりありません。
マルドゥパイロマンサー
対マルドゥパイロマンサー
マルドゥパイロマンサーの主な勝ち方は、1:1交換を繰り返してから《騒乱の歓楽者》を出すことです。そのプランに対して有効なのが《漁る軟泥》と《悔恨する僧侶》であり、このカードたちが《騒乱の歓楽者》対して睨みをきかせ続けてくれます。そして《騒乱の歓楽者》が連打されなければ、こちらがリソース勝負で勝つことができるでしょう。
サイドボード後は、相手が《血染めの月》を入れてくることが多いので、フェッチランドから特殊地形を持ってきすぎないように注意しましょう。
《硬化した鱗》親和
対《硬化した鱗》
《硬化した鱗》親和は除去がないので、テスト段階から非常にやりやすい相手でした。《呪文捕らえ》は《電結の荒廃者》が唱えられるまで温存し、《流刑への道》は相手がコンボを仕掛けてきたときに使うようにしましょう。
白緑オーラ
対白緑オーラ
《秋の騎士》が加わったことで、互角よりも少しだけ相性が良くなったように思います。《聖遺の騎士》は《ぬめるボーグル》と渡り合えるサイズまで大きくなることが多いですね。《呪文捕らえ》は《怨恨》や《夜明けの宝冠》、《霊魂のマントル》といった相手のキーパーツをカウンターできます。仮に《呪文捕らえ》でカウンターできなくても、《秋の騎士》で破壊することもできます。
サイドボード後は、《仕組まれた爆薬》のおかげで相性が改善されます。ただし、《ガドック・ティーグ》を出されると《仕組まれた爆薬》や《集合した中隊》が使えなくなるため注意が必要です。除去は《ガドック・ティーグ》のために温存しておきましょう。
《クラーク族の鉄工所》コンボ
対《クラーク族の鉄工所》コンボ
バントカンパニーは《クラーク族の鉄工所》コンボに対して有効なカードが揃っています。具体的には、《呪文捕らえ》は《クラーク族の鉄工所》をカウンターでき、相手は《仕組まれた爆薬》以外で1本目は除去する手段がありません。また、《流刑への道》は《屑鉄さらい》を除去できます。
サイドボード後、相手は《練達飛行機械職人、サイ》や追加の除去を入れてきます。《石のような静寂》は《クラーク族の鉄工所》コンボに対して効果が抜群であり、相手は《自然の要求》を引けないとそれが負けに直結してしまいます。また、サイドボード後はカウンターを追加して《クラーク族の鉄工所》を通さないようにします。
バーン
対バーン
《秋の騎士》は《大歓楽の幻霊》を破壊したり、4点のライフを回復させてくれるなど、バーン相手にほしかった部分をすべてカバーしてくれています。そのため、バーン側は土地を引かずに、呪文を立て続けに引いてこないと勝てず、以前ほどバーンとの相性は悪くなくなったはずです。バーンと戦ううえで重要なのは、土地からダメージを受け過ぎないこと、火力で焼き切られる前に勝つように意識することです。
火力一枚で除去されないように《聖遺の騎士》は4/4以上のサイズで出すようにしましょう。《聖遺の騎士》は除去されずにターンが返ってくれば早々に勝ちをもたらしてくれることが多いカードです。また、《呪文捕らえ》もバーン相手に非常に有効なカードです。なぜなら、《呪文捕らえ》で追放したカードを取り戻すためには、相手は火力呪文を《呪文捕らえ》に使わなくてはならないからです。
サイドボード後に関しては、バーン側は《罠の橋》を入れてくることが多いのですが、ここでも《秋の騎士》が相手のプランを潰してくれます。
赤単《弧光のフェニックス》
対赤単《弧光のフェニックス》
新しいアーキタイプであり、まだこのデッキを相手にテストをしたことがありません。しかし、ホロウワンとの戦い方に近いのではないかなと思っています。つまり、序盤の猛攻をしのいでから、こちらのデッキにふんだんに入っている「ゲームに勝つカード」で逆転するイメージです。
サイドボード後は相手が《神々の憤怒》を入れてくるため、クリーチャーを出しすぎないように気をつけましょう。また、《血染めの月》も入ってくるので、フェッチランドからは基本地形を持ってくるようにしましょう。
おわりに
今回の記事はここまでになります。バントカンパニーへの理解を深めていただけたら幸いです。デッキやサイドボードについてお聞きになりたいことがありましたら、コメント欄やTwitterに書き込んでいただけたらと思います。よろこんでお答えします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。