みなさんこんにちは。
今週末には、プロツアー『ラヴニカのギルド』が開催されます。そしてアメリカでは、各地でモダンのRegionals Championshipが開催されます。賞金も豪華でプレイオフ進出者にはSCG Invitationalの参加権も与えられます。
さて、今回の連載ではSCGO Charlotteとグランプリ・アトランタ2018の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCGO Charlotte
モダン環境を揺るがす緑の巨人
2018年10月27-28日
- 1位 Amulet Titan
- 2位 Amulet Titan
- 3位 TitanShift
- 4位 Azorius Control
- 5位 Storm
- 6位 Jund
- 7位 Bant Spirit
- 8位 Izzet Wizards
Will Pulliam
トップ8のデッキリストはこちら
『ラヴニカのギルド』加入直後の環境では、新戦力を獲得したDredgeが猛威を振るいましたが、今大会ではメインから《大祖始の遺産》などを採用したデッキも見られるなど、流石に対策が厳しく上位まで勝ち残ったのは少数でした。
今大会で最も印象に残ったのは、Amulet TitanやTitan Shiftといった《原始のタイタン》デッキが上位を支配していたことでした。
Amulet Titanで優勝を果たしたWill Pulliamも、トップ8プロフィールで環境のトップ5のメタデッキに有利と語っているなど、事前から密かにベストな選択肢として注目されていたようです。
SCGO Charlotte デッキ紹介
「Amulet Titan」「Titan Shift」「Jund」
Amulet Titan
4 《宝石鉱山》
1 《魂の洞窟》
4 《グルールの芝地》
4 《シミックの成長室》
1 《ボロスの駐屯地》
3 《トレイリア西部》
1 《ボジューカの沼》
1 《カルニの庭》
1 《幽霊街》
1 《光輝の泉》
1 《処刑者の要塞》
1 《軍の要塞、サンホーム》
1 《ヴェズーヴァ》
-土地 (27)- 1 《歩行バリスタ》
4 《桜族の斥候》
4 《迷える探求者、梓》
1 《再利用の賢者》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (14)-
2 《削剥》
2 《炎渦竜巻》
2 《大祖始の遺産》
1 《不屈の追跡者》
1 《強情なベイロス》
1 《女王スズメバチ》
1 《自由なる者ルーリク・サー》
1 《約束された終末、エムラクール》
1 《仕組まれた爆薬》
-サイドボード (15)-
《精力の護符》を軸にした土地コンボで、《精力の護符》+バウンスランド+《迷える探求者、梓》など、土地を同じターンに複数プレイすることを可能にするカードによってマナ加速していき、最終的に《原始のタイタン》をキャストして《処刑者の要塞》や《軍の要塞、サンホーム》をサーチしてゲームを決めます。それ以外でも《ボジューカの沼》など、ユーティリティ土地を状況に応じてサーチすることも重要なファクターとなります。
《花盛りの夏》が禁止カードに指定されて以来、一部を除いてあまり見かけることがなくなりましたが、現環境ではTronやHumansといったデッキに強く、UW Controlなどコントロールデッキとも互角以上の勝負になるなどポジション的にも有利です。最速2ターン目にゲームを決めることができるので、ブン回ればデッキ相性に関係なく勝てることもこのデッキの魅力です。
デッキの相性を覆せるほどのパワーを持つ一方で、プレイングの順序など繊細なプレイングも求められるので、このデッキを使う場合は、ほかのデッキ以上に練習することをお勧めします。
☆注目ポイント
《冒険の衝動》は1マナと軽く、流行りのDredgeに対しても《ボジューカの沼》、置物対策に《再利用の賢者》といったメインの1枚挿しのカードも引き当てやすくなります。《再利用の賢者》は、このデッキにとって天敵となる《血染めの月》をメインから無理なく対策できるカードなので、必ず1枚はメインに採用したいカードです。
最終的に《原始のタイタン》を《処刑者の要塞》や《軍の要塞、サンホーム》で強化してゲームを決めます。これらの土地は相手のクリーチャーも対象に取れるので、HumansやBant Spiritとのマッチアップでは《幻影の像》を対策することもできることを覚えておきたいところです。
サイドには追加のフィニッシャーが数種類見られます。《約束された終末、エムラクール》は、特にUW/Jeskai Controlとのマッチアップで有効なフィニッシャーで、《冒険の衝動》や《古きものの活性》からも探してこれるのも魅力です。緑黒系のミッドレンジや、Humansなどフェアデッキとのマッチアップでは《女王スズメバチ》、コンボに対しては《自由なる者ルーリク・サー》といったように使い分けていきます。
マナ加速から最速で《原始のタイタン》を展開することだけでなく、《トレイリア西部》や《冒険の衝動》、《古きものの活性》から《光輝の泉》や《ボジューカの沼》、《魂の洞窟》、《ヴェズーヴァ》といった土地を状況に応じてサーチしていくことも重要で、こういったテクニカルな面も持ち合わせているのも、デッキのプレイングの難易度が高い要因となっています。
Titan Shift
2 《森》
4 《踏み鳴らされる地》
3 《燃えがらの林間地》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
-土地 (27)- 4 《桜族の長老》
4 《原始のタイタン》
-クリーチャー (8)-
今大会は、《原始のタイタン》使いにとっては有意義な週末だったようです。Titan Shiftはマナ加速から土地を伸ばし《風景の変容》でフィニッシュを決めるコンボデッキで、Amult Titanよりもコンボスピードは遅くなりますが、《神々の憤怒》や《稲妻》といった除去も採用されているので、コントロールのようにも振舞えます。
ハンデス以外で《風景の変容》コンボに対する妨害手段を持たない緑黒系のミッドレンジや、Tronなどに有利で、Humans、UW Controlなどとも互角以上です。カウンターやハンデスなど妨害手段がないため、IronworksやStormなどコンボデッキに対しては不利が付きます。
☆注目ポイント
コンボやコントロールなど、スイーパーが無駄カードになりやすいマッチアップでは、《焼けつく双陽》がフレキシブルで使いやすくなりますが、Dredgeなどがポピュラーな現環境ではクリーチャーを追放する《神々の憤怒》に軍配が上がります。墓地を使う戦略を意識していたことは明らかで、《大祖始の遺産》もメインから採用されています。コントロールに対しても《瞬唱の魔道士》を対策でき、多くのマッチアップで有効なので、墓地対策が必要ないマッチアップでもキャントリップによって無駄にならないのも利点です。
《血編み髪のエルフ》が採用されたミッドレンジコンボ寄りのバージョンも見られましたが、現在は《カルニの心臓の探検》や《探検》によって土地を伸ばすことによってコンボスピードを上げたバージョンが主流のようです。
追加の墓地対策として《墓掘りの檻》も見られるなど、Dredgeを徹底的に対策しています。《減衰球》が登場するまでは、StormやIronworksといったコンボに対する有効なサイドボードカードに恵まれなかったので、最近のカードの中でも最も大きな収穫の1枚です。コントロール対策も多めに採られており、《不屈の追跡者》や《殺戮の暴君》に加えて《破滅の刻》という珍しいカードも見られます。《精神を刻む者、ジェイス》と《ドミナリアの英雄、テフェリー》をまとめて除去できます。
Jund
2 《沼》
2 《草むした墓》
1 《血の墓所》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《新緑の地下墓地》
2 《血染めのぬかるみ》
2 《樹木茂る山麓》
4 《黒割れの崖》
3 《怒り狂う山峡》
1 《黄昏のぬかるみ》
-土地 (24)- 4 《闇の腹心》
4 《タルモゴイフ》
3 《漁る軟泥》
3 《血編み髪のエルフ》
-クリーチャー (14)-
3 《稲妻》
2 《致命的な一押し》
2 《思考囲い》
3 《暗殺者の戦利品》
2 《コラガンの命令》
1 《大渦の脈動》
1 《虚無の呪文爆弾》
4 《ヴェールのリリアナ》
-呪文 (22)-
2 《台所の嫌がらせ屋》
2 《外科的摘出》
2 《神々の憤怒》
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《強迫》
1 《致命的な一押し》
1 《集団的蛮行》
1 《墓掘りの檻》
1 《虚無の呪文爆弾》
-サイドボード (15)-
《血編み髪のエルフ》が解禁されて以来、コンスタントに結果を残し続けている環境を代表するミッドレンジデッキ。
『ラヴニカのギルド』から万能除去の《暗殺者の戦利品》が加入し、苦手としていたTronなどとの相性もいくらか改善されたようです。
《思考囲い》などハンデス、《稲妻》や《致命的な一押し》除去、《タルモゴイフ》を始めとした軽い優秀なクロックと揃っているので対応力があり、愛用しているプレイヤーも多いデッキです。
☆注目ポイント
《暗殺者の戦利品》は、決して無視できないデメリットがあるものの2マナと軽く、《大渦の脈動》と異なり土地にも触れるので、トロンランドやミシュラランドも対策可能です。メインからどんなパーマネントにも触れるおかげで、置物対策に《古えの遺恨》や《幻触落とし》を採用する必要性も薄れたため、サイドボードのスペースにも余裕ができました。
《外科的摘出》、《墓掘りの檻》、《虚無の呪文爆弾》《ゲトの裏切り者、カリタス》といった墓地対策や、《神々の憤怒》など、このデッキが苦手とする戦略の対策を無理なく採用できるようになったことが、このデッキにとって大きな収穫です。
《虚無の呪文爆弾》がメインから採用されているなど、ほかのデッキと同様にDredgeを意識しています。Dredge以外にもHollow OneやStormなどにもある程度の効果があり、キャントリップも付いているのでメインから無理なく入る墓地対策です。
環境の変化に応じてカスタマイズしていく必要があるデッキなので、Dredgeが少ないメタではメインの《虚無の呪文爆弾》は追加の除去や《集団的蛮行》など妨害スペルに差し替えてみてもよさそうです。
グランプリ・アトランタ2018
グランプリのメタに強いBant Spirit
2018年11月3-4日
- 1位 Bant Spirit
- 2位 Ironworks
- 3位 Hardened Scales
- 4位 Infect
- 5位 Hollow One
- 6位 Ironworks
- 7位 Bridgevine
- 8位 Tron
Peiyuan Zheng
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プロツアーが控えた週末ということで、アメリカ以外の国からの参戦者が普段の北米のグランプリよりも多く、レベルの高い大会でした。
明確なベストデッキが存在しない混沌とした環境のモダンは、グランプリでも変わらず、プレイオフは2名の入賞者を出したIronworksを除いて、全てが異なるアーキタイプでInfect、Hollow Oneなど直線的な戦略が中心でTronやAmuletなど土地コンボデッキに強いコンボ系が上位で多く見られました。
そんな中優勝を果たしたのは、Bant Spiritでした。『ラヴニカのギルド』リリース直前に開催されたグランプリ・ストックホルム2018やグランプリ・プラハ2018でも結果を残していたデッキで、軽いクロックをカウンター、《呪文捕らえ》などでバックアップしていく戦略は、コンボデッキが多く勝ち残っていた今大会ではポジション的にも有利で、コンボやコントロールが上位に多く残る傾向にあるGPに強いアーキタイプです。
グランプリ・アトランタ2018 デッキ紹介
「Bant Spirit」「Izzet Phoenix」
Bant Spirit
1 《島》
1 《平地》
1 《繁殖池》
1 《神聖なる泉》
1 《寺院の庭》
3 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《吹きさらしの荒野》
3 《植物の聖域》
3 《地平線の梢》
1 《魂の洞窟》
1 《ムーアランドの憑依地》
-土地 (21)- 4 《霊廟の放浪者》
4 《貴族の教主》
4 《至高の幻影》
3 《幻影の像》
2 《無私の霊魂》
1 《鎖鳴らし》
4 《ドラグスコルの隊長》
4 《呪文捕らえ》
3 《反射魔道士》
1 《聖トラフトの霊》
-クリーチャー (30)-
2 《スレイベンの守護者、サリア》
2 《秋の騎士》
2 《石のような静寂》
1 《聖トラフトの霊》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《ドロモカの命令》
1 《統一された意思》
1 《崇拝》
1 《トーモッドの墓所》
-サイドボード (15)-
《霊廟の放浪者》や《呪文捕らえ》 といった妨害能力を持つクリーチャーに、《安らかなる眠り》 や《石のような静寂》といった、特定の戦略に対して劇的な効果が望めるサイドボードカードにアクセスできるBant Spiritは、今大会のようにコンボデッキが多く勝ち残っていた環境で強さを発揮します。
少数ながら『ラヴニカのギルド』からの収穫もあり、現環境ではコントロールに強く、サイドボードの選択肢にも恵まれていることからも、同じ《霊気の薬瓶》デッキのHumansよりも現環境のメタでは有利な選択肢となりそうです。
☆注目ポイント
《秋の騎士》は、1枚で複数のマッチアップをケアできるので、限られたサイドボードのスロットをほかのマッチアップのために空けることにも貢献します。《ドロモカの命令》などスペルと異なり、《集合した中隊》のクリーチャーカウントを減らさずに済むのも無視できない要素です。
Peiyuan Zhengは、メインの《聖トラフトの霊》と《流刑への道》を減らしてその枠に《反射魔道士》を採用しています。《反射魔道士》は《集合した中隊》との組み合わせが強力で、過去のスタンダードのBant Companyを彷彿させます。Humansと同様に《幻影の像》とのシナジーもあります。
全体的に墓地対策が多めのリストが多かった今大会でしたが、このデッキも例外ではなく、サイドに3枚の《安らかなる眠り》に加えて、《トーモッドの墓所》も追加の墓地対策として採用されています。《安らかなる眠り》と異なり対策できるのは一回きりですが、展開を遅らせることなくDredgeなど墓地を活用する戦略を抑止できるのは、このデッキにとっては極めて重要です。
Izzet Phoenix
プレイオフには残れなかったものの、《弧光のフェニックス》を軸にしたIzzet Phoenixも最近MOを中心によく見られるようになってきたのでご紹介していきたいと思います。
このデッキは、軽いスペルと相性の良い《弧光のフェニックス》や《氷の中の存在》を搭載したシナジーデッキで、《稲妻》、《噴出の稲妻》、《癇しゃく》といった軽く相手の行動にも干渉できるものが多数積まれています。《信仰無き物あさり》や《思考掃き》、《魔力変》といった軽いドロースペルやキャントリップで墓地を肥やしつつドローを進めていき、《弧光のフェニックス》を墓地から復活、《氷の中の存在》を変身させて相手のライフを攻めていきます。
☆注目ポイント
スタンダードで活躍している《弧光のフェニックス》は、軽い優秀なスペルが多数存在するモダンにおいて、スタンダード以上にポテンシャルを発揮できる可能性があります。アタッカーとしてはもちろんのこと、墓地から復活する能力を活かして相手のクリーチャーと積極的に相打ちを取りにいけるブロッカーとしても有用です。
《騒乱の歓楽者》は軽いスペルを連打して墓地を肥やすこのデッキとの相性が抜群によく、息切れ防止になると同時にフィニッシャーとして活躍します。このデッキでは「マッドネス」スペルの《癇しゃく》とのシナジーもあり、《弧光のフェニックス》を墓地に落とす手段にもなります。《信仰無き物あさり》や《思考掃き》といったスペルで数体墓地に落ちることも珍しくなく、一度に複数同時に戦場に復活させることも可能なので、スタンダード以上に爆発力が高いデッキとなっています。
墓地の状況に大きく依存するデッキなので、《安らかなる眠り》や《虚空の力線》といった墓地対策カードが致命的となります。ほかにも《流刑への道》のような追放系の除去で《弧光のフェニックス》を対策されると、デッキ内の脅威の枚数が少なくなり、勝つのが難しくなるので、そういった除去を多用するデッキに対しては、サイド後はメインとは少しことなる勝ち手段を用意しておいた方がよさそうです。今回のリストには不採用ですが、サイドに《若き紅蓮術士》を採っているリストも見られるので色々と試してみることをお勧めします。
総括
多色がテーマのセットはカードパワーが高く、下の環境にも影響を与えることが多く『ラヴニカのギルド』から《暗殺者の戦利品》、《這い寄る恐怖》、《弧光のフェニックス》、《秋の騎士》などが早速使われています。
特に《這い寄る恐怖》と《暗殺者の戦利品》は、Dredgeを一気にトップメタにまで押し上げ、その反動によりSCGO Charlotteとグランプリ・アトランタ2018で勝ち残った多くのデッキには、メイン、サイドともに普段よりも多めに墓地対策が採られていました。
Dredge、Ironworks、Hollow Oneなど直線的な戦略が主流の現環境では、墓地やアーティファクトを対策することは極めて重要となるので、モダンの大会に参加する際はお忘れなく。
以上USA Modern Express vol.22でした。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!