決勝戦:市川 貴義(埼玉) vs. 山本 賢太郎(埼玉)

晴れる屋

晴れる屋

By Daisuke Kawasaki

 そういえば、山本 賢太郎(埼玉)のプレイが下手だと言うプレイヤーにあったことが無いなと思う。

 山本を知ったのは、プロツアー・サンディエゴで高橋 優太(東京)とプロツアーサンデーに進出して以来なので、その前の事を知らないのだが、少なくともそれ以降で山本のプレイが下手だというプレイヤーにあったことが無い。

 もちろん、プロツアーサンデーに進出しているプレイヤーなのだからそれは当たり前の事なのだろうけれども、相棒であった高橋がその後、グランプリ2連覇をはじめタイトルを獲得していったのに比べると、その後大きな戦績は無かったので、なんとなく山本が強いのか弱いのかは余り知られていなかったのではないかとも思う。

 そんな山本が今年は大ブレイクを果たした。プロツアー「テーロス」でトップ8に入賞すると、その後のグランプリ・北九州でもトップ8入賞、さらにはグランプリ・京都でも、「魔王」三原 槙仁(千葉)、「英知」坂東 潤一郎(茨木)とくんだチームで準優勝とプレミアムイベントのカバレージで続けて名前を見るようになった。静岡こそ惜しかったものの、このThe Last Sunでも7位でトップ8に入賞すると、スニークショーで、《秘密を掘り下げる者》系デッキ相手に4連勝して決勝まで駒を進めた。

 そんな山本が決勝戦で対戦するのは、予選ラウンド3位突破の市川 貴義(埼玉)。The Last Sunの決勝ラウンドは予選ラウンド上位のプレイヤーがレギュレーションを選択する権利を持っているので、お互いのデッキリストを見た上で、市川が選択をする。



 スタンダードのデッキは、山本が青白コントロールで、市川がタッチ緑の赤単信心。

 レガシーのデッキは、山本が前述のようにスニークショーで、市川はBUGデルバー。

 市川はかなり悩んだ末、基本的な相性を信じて、レガシーを選択。結果、山本は決勝ラウンドをすべて、スニークショーでデルバー系デッキと戦うことになったわけなのだが、しかし、ここまで1本も落とさずに戦ってきている。

Game 1


 先手の山本は《渦まく知識》が2枚に《騙し討ち》《グリセルブランド》《呪文貫き》、そして《Volcanic Island》《裏切り者の都》という初手をキープ、対して市川はマリガンを選択する。

 6枚の初手をキープした市川は、山本が1ターン目にセットした《Volcanic Island》《不毛の大地》で破壊する。それに対応して山本は《渦まく知識》をプレイ。ここで《実物提示教育》2枚と《霧深い雨林》を手に入れる。山本は《霧深い雨林》をセットしてターンを終了する。

 市川が《Underground Sea》から《死儀礼のシャーマン》をプレイし、《もみ消し》の危険性が無い所で山本は《霧深い雨林》を起動し《島》を持ってくると、続くターンに《水蓮の花びら》をトップデック。《裏切り者の都》《水蓮の花びら》とプレイして《実物提示教育》

 コレに対して、静かに「通ります」と返した市川。《グリセルブランド》を前に、ドローをすると土地を片付けたのだった。



山本 1-0 市川

 ここまでの決勝ラウンドで山本のマッチを担当してきたのだが、見ていて印象的なのは、とにかく山本の引きが良いということだ。

 もちろん、相性の悪いマッチを勝ち上がってきているのだから当然、通常ではないくらいには有効なカードを持っていなければいけないのだが、初手で足りなかったパーツを引いてくるのが本当に早く、何かのシナリオがあるかのようにカードが手札に揃っていくゲームが多かった。



 今年ブレイク中の山本だけに、こういうものを勢いと呼ぶのかもしれない。そして、別にだからといって山本を「引きが強いだけで勝っている」と揶揄したいわけでもない。と考えていて、そういえば、山本を悪く言うプレイヤーにもあったことがないなと思い至った。

Game 2

 《霧深い雨林》《古えの墳墓》《呪文貫き》《水蓮の花びら》。そして《グリセルブランド》と2枚の《Force of Will》。呼び出す手段が無く、ドローサポートも無い初手だったが、先手の市川がマリガンした後に、山本はこの手札をキープした。



 《汚染された三角州》から《Underground Sea》をフェッチすると、《死儀礼のシャーマン》を召喚する市川。一方、山本も1ターン目に《思案》をトップデックする。《霧深い雨林》をセットすると、長考の末に《水蓮の花びら》をプレイ。そして、そのままターンを終了する。

 市川は《死儀礼のシャーマン》でアタックし、《新緑の地下墓地》をセットしてターンを終了。山本は市川のターンエンドに《霧深い雨林》を起動して《島》をフェッチする。

 山本は自身のターンに《思案》をプレイ。この3枚は《誤った指図》《グリセルブランド》《引き裂かれし永劫、エムラクール》という強力なものではあるものの、今、山本が求めているものではなかったので、シャッフルをする。

 そして、そこでのトップデックが《実物提示教育》。山本は《古えの墳墓》をセットすると、意を決したかのように《実物提示教育》。市川は《Force of Will》をコストに《Force of Will》をプレイするが、山本も《方向転換》をコストにした《Force of Will》で対抗。マナがオープンな市川だが、ここでの対抗手段を持たない。



 《実物提示教育》で山本がふせたカードは《グリセルブランド》。対して、市川が伏せたカードは……《真髄の針》。これで《グリセルブランド》を指定したことで、圧倒的なドロー能力は封じ込めたが、それはそれとして、7/7飛行・絆魂という化け物を市川は対処しなければならない。

 《グリセルブランド》が2回市川のライフを削り、市川のライフが3、山本のライフが29となったターンエンド。山本は《ヴェンディリオン三人衆》をプレイするが、これは《渦まく知識》をコストとした《Force of Will》でカウンターする。

市川 「リリアナ!」

 市川の祈りは山札に届かず、トップデックは《ヴェールのリリアナ》ではない。そして、引いたとしても、山本の手札には《呪文貫き》があった。



山本 2-0 市川

 2013年最後の大型イベント、The Last Sunは、2013年にもっともブレイクした男といっていい山本 賢太郎の優勝で幕を閉じた。

 相性が決して良くない3連戦を結果、6-0で制した山本。途中でも書いたように、この決勝ラウンドの山本の引きは古い言い方をすれば「超サイヤ人のような引き」であり、さらに言えば、比較的「ぶっぱ」に近い《実物提示教育》のプレイも、相手の手札に十分に捌ききれる妨害手段が無く、そのまま通ってしまうという場面も少なくなかった。

 と、そこでふと「山本ってこんなプレイをするプレイヤーだっけ?」という疑問が頭によぎったので、山本の後ろで観戦していた井川 良彦(東京)に聞いてみた。「山本って、こんな思い切ったプレイするプレイヤーだっけ?」と。

 井川の答えはノーだった。

井川 「そういえば、そうですね。なんとなく、ヤマケンなら待つプレイをして結果通らないみたいな感じになってるマッチも多かったかもしれないですね……」

 今回の山本の優勝は運があったのかもしれないし、今年のブレイクには勢いがあったのかもしれない。それでも、なにか状況が変わるときには、本人の意識の変化が、予想よりも大きな変化となって現れていることだってある。

 おめでとう、山本 賢太郎。初代The Last Sunチャンピオン!